変幻紫頭巾

工藤栄一監督作品  1963.1.27東映


 田沼の賄賂政治で腐りきった世に、三つの顔を持つ怪人が現れ悪を懲らす痛快劇。大友柳太朗が三役をつとめ、豪快なガハハ笑いも爽快。
 田沼の贄に供される京娘を助けに入った紫頭巾は、悪事の一部始終を記し老中職を辞する旨の誓言書を意知に書かせ、田沼に印を捺させる。三日のちに辞めねばこれを公にすると脅す紫頭巾、躍起になって取り戻そうとする田沼一味、以降どたばた風味の悪人成敗や、「頭巾」の情人の花魁がらみの哀話など描かれ、捕り方との派手な追いつ追われつもたっぷり見せて、田沼失脚後のちょっといい話で最後を締める。

ロケ地
・生き人形に仕立てたお京が運ばれてゆく夜道、塀際の道は不明(五本線入り)。田沼邸は西本願寺大玄関門(以降も登場、昼間の絵や内側からのアングルもあり)
・田沼一味の札差・下野屋夫婦が紫頭巾に拉致され晒される両国橋、瀬田の唐橋。寄っての絵はセット撮りか。
・田沼邸で目明し・佐平次の尋問を受け報に紫の字を書かせろと強要された花魁・花紫が帰ってくる日本堤、不明。
・金座後藤と贋金に近い新小判、偽紫頭巾の骸を乗せた船がくぐる橋、瀬田唐橋。どっと町衆が寄ってゆく場面では川端も。
・田沼失脚後、紀伊大納言の一の姫が伊勢参りにゆく行列に同行する、切腹したはずの佐野青年と「関係者」が通る東海道、琵琶湖岸松原。
・報竜太郎が立つ丘は琵琶湖を望む湖西の丘

 紫頭巾は大友柳太朗、中の人は田沼に潰された水野の家臣・報竜太郎で、復讐と天下万民のため田沼を狙う運び。絵師・秀麿がもう一つの顔で、ビジュアルは老爺。吉原・大文字屋の花魁・花紫が報浪人の恋人、彼女は佐野青年の姉で武家娘だが、父の失脚のため身売り・弟に御役を復させようと懸命。佐野善二郎は山城新伍、堅物ゆえ姉の金を受け取らない。父失脚の元凶なうえ系図を帰さぬ意知に憤り、殿中で刃傷におよぶ。善二郎を慕う町娘は目明しの娘で、その母は花紫を主筋と今も立てる。目明し夫婦は多々良純と花柳小菊。田沼意次は柳永二郎、意知は菅貫太郎、金座後藤は阿部九洲男、一味の札差・下野屋は吉田義夫、同じく一味の与力・春海は片岡栄二郎で彼が仕立てる偽紫頭巾は戸上城太郎。偽紫頭巾の凶行に怒り「頭巾」を斬ろうとする正義派の道場主は片岡千恵蔵、紀州家が贔屓する剣客。


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