1972フジ/C.A.L
上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれ十歳で家を捨て一家は離散したと語られる。
無宿渡世の日々をストイックに送る、頬の傷と長楊枝を銜えた姿がトレードマークの紋次郎を中村敦夫が演じる不朽の名作。
DVD視聴後書き直し予定(以下の記事は画質の悪いビデオとモニターで視聴したため見間違いをしている可能性が「大いに」あります)
第1話「川留めの水は濁った」1972.1.1
明神一家の壺振り・お勝が弟と組んでイカサマ博打で五十両持ってトンズラ、追う代貸・佐太郎。東海道筋をうろうろする姉弟を助ける紋次郎、お勝は恩義を感じている亡き姉に酷似。逃避行に大井川川留めの報、追い詰められるお勝たち、河原で佐太郎を斬る紋次郎。佐太郎は姉・おみつの夫で誤って死に至らしめた過去を持っていた。そしてその日は姉の祥月命日だった。
佐太郎に刑事コロンボ、川留めの島田宿に出て紋次郎ボコるちんぴらに昔の名前の火野正平。
ロケ地は古すぎて見当つかず。1972年だったら国道でも地道とかあったし。オープニングのみごとな峠は信州撮りの模様(R361旧道か・おそらくもう無い)、北嵯峨農地竹林際(荷物を忘れて取りに戻る場面)なども見える。
第2話「地蔵峠の雨に消える」1971.1.8
木曽路をゆく紋次郎、峠で腹痛に苦しむ渡世人に行き合い「あっしには関わりの無いこと」と行き過ぎると思いきや背負って妻籠宿まで連れて行ってやり旅籠代まで賭場で稼いでくる甲斐甲斐しさ。若い渡世人・十太は盲腸発症しており程なく死す。末期の十太は命に代えても届けてくれと文を二通託す。妻籠から野州まで四日で駆け通す紋次郎、内の籠に千代を訪ねるが文には桶川の親分の仇がこの手紙を持ってくるから殺せと書いてあった。夜陰襲ってくる人数を事も無げに斬り捨て、もう一通の書状届けに罠と知りつつ粕尾に向かう紋次郎。待伏せの八人が待つ雨の地蔵峠、スローモーションの殺陣をたっぷり見せる今なお色褪せぬ名シーン。
第3話「峠に哭いた甲州路」1972.1.15
姥口峠越え大関村へ紛れ込む紋次郎、排他的な村で旅籠営む一家の片足の娘・お妙と「関わりあう」。峠の向こうへの憧憬語るお妙、自分は憎しみでできていると言う。妙に送られ旅立つ紋次郎、刀を背に突き立てた村人に助け求められるが振り払い行く…が踵返し村へ。六年前村を追われ片腕失くした源太が人数引き連れ村人を殺害して回る惨状に七人斬り捨てる紋次郎。しかし源太が追われた事由は妙が崖から突き落としたお絹の一件だった。告白する妙に斬りかかる源太、源太と残りのならず者斬り瀕死の妙背負い姥口峠へ赴く紋次郎、ピークに差しかかる頃紋次郎の背で息引き取る妙に「これが峠の向こうでござんすよ、お妙さん」と呟き死体の裾風に乱れるを長楊枝で留める。
第4話「女人講の闇を裂く」1972.1.22
信州・犀川の渡しで越後二本松宿の母子助ける紋次郎、木津河原(流れ橋付近)。行き掛かりで母子の宿に世話になる。子は長年物を言わないという。
二本松の宿場では庚申待ちの日、男女に別れ寝ずの一夜を過ごす。20年前顔役の大和屋に呪詛吐き宿場を去った与七郎が復讐に来るとの噂が充満。
その夜きっちり女人講と男衆の集会場に同時に現われる与七郎と称する賊、近江屋夫婦を殺すが既に島送りになった末死亡した与七郎の筈も無く顔役の陰謀。賊は紋次郎に斬られ、大和屋は素性を隠し勤めていた板前・20年前与七郎が連れて逃げた高島藩の侍に陵辱されたおゆみの息子が刺しその場で自害し果てる。
暗いうちから発つ紋次郎の背に言葉を失っていた幼女が父と呼ぶ。笹沢佐保の作品によくある、民話調の陰惨な不思議なストーリー。
第5話「童唄を雨に流せ」1972.1.29
甲州鰍沢では木材伐採現場でストライキぶつ人足頭の源之助。賭場で切石の仙造に目つけられる紋次郎。材木問屋備前屋に源之助始末を依頼された仙造は紋次郎に源之助を始末させる段取りをつける。企みを察知した紋次郎は備前屋から「賞金首」の金百両を受け取ったすえ乗せられて自分を殺しに来たところをさくっと斬った瀕死の源之助をけしかける…という進行だが原作との乖離激しい。でもこの話の主眼である間引きを止めるエピソードはよく描けている。
ロケ地、おちかと約し金策に出た亭主の金蔵を探しに韮崎への道急ぐ紋次郎がゆく富士川沿いの道は保津峡落合。徒次、渡世人志願の百姓と行き合うのは広沢池東岸。
第6話「大江戸の夜を走れ」1972.2.5
夜の江戸、屋根をゆく盗賊。呼子響き捕縛される「十六夜小僧」為吉。
雨の甲州街道をゆく紋次郎、病の母子見掛ける。遠縁だという連れの男は下高井戸宿まで運んでくれと言う。助けた母子は十六夜小僧の妻子、処刑を見に行かねばならないが到底行けそうにない、代わりにこの赤いしごきを引き回しの為吉に見せてやってくれと申し出る。言われるまま合図の品預かり江戸へ発つ紋次郎、道中の風景に「斬り抜ける」などでも使われた蔵、摩気の里か。
江戸への入口・内藤新宿で博徒・白虎の源六にからまれるが、下高井戸から紋次郎を見ていた女・お小夜が仲裁。江戸へ入り花川戸への道すがら紋次郎に過去を語るお小夜、中ノ島橋、松本酒造。お小夜は為吉の情婦だと言う。
為吉の小塚ッ原への引き回し、路傍に立ち赤いしごき示す紋次郎に為吉は指を二本立て合図。その後処刑に動揺したふうのお小夜は紋次郎を引きとめる、伏見・宇治川派流大倉記念館付近。紋次郎を長屋に連れ込み呑み明かし「合図」の内容を聞き出し姿を消す。寝込んでいた紋次郎は事の次第に気付き木戸の閉まった町を抜け下高井戸へ。
お小夜が為吉の女房の遠縁の男呼び出し合図の意味を教えろと迫る、鳥居本八幡宮。白虎一味の人数が出ている。紋次郎駆けつけ一味とお小夜を斬。お小夜は白虎の女だった。
為吉の女房から金のありか聞きだそうとしていた遠縁の男こそ本物の「十六夜小僧」、紋次郎関わりまくり。
第7話「六地蔵の影を斬る」1972.2.12
水戸道をゆく紋次郎、覚えの無い仇として追われる。牛久で見る霞ヶ浦の景色、初めて見る者は海と間違うとナレーションの入る水辺、琵琶湖。対岸の雪を冠った山は比良山か。以降ロケ地は枯れ葦の中が多い。
話の大元は紋次郎に憧れる渡世人が幼馴染の仇をとった際紋次郎を騙って名乗りを上げてしまったことだった。まとわりつく金蔵と紋次郎の微妙なスタンスが見物。ラスト、憧れていた長楊枝を金蔵の死に顔にぷっと吹く紋次郎、見事に口に。これを金蔵にねだられた際紋次郎はこれを使って人を殺したことはないとちょっとムキになるシーンがあるが少し原作と違うのでは?
第8話「一里塚に風を断つ」1972.2.19
渡世人になって名を上げようとする宿の息子に毒を盛られフラフラ紋次郎、倒れ伏すのを通りがかりの医者が助ける。
鳥居峠で関わった酔っ払い(絡んだ挙句谷へ転落)は鹿沼の清五郎の身内。これが旅の娘に絡むのを助けるが長脇差を折ってしまうというアクシデントに見舞われる。
やっと探し当てた刀鍛冶は鹿沼の一家から身を隠している身の上で先に助けた娘は刀鍛冶の妹、人間関係錯綜するなか刀鍛冶の奥方の不義などがからみドロドロ。果てには奥方の不義の相手が出てきて出世の妨げと斬ろうとするのを返り討ちの紋次郎、その相手は助けられた医者、胸に突き立てた刀は折れる。
医は仁術と感心した医者、世にはこんな夫婦もと思ったカップルも紋次郎の思いを裏切り内面ドロドロ。つくづく誰も幸せにならないドラマだこと。だからこそ当時画期的だったのか。
刀鍛冶の美貌の妻に現国交省長官、医者はよく見る悪代官の人・巧い。グルメとは程遠いが紋次郎は食事に関する描写多いような…とろろ飯とかわさび茶漬けとか…今回も毒を盛られたという味噌汁、画は無いのになんか眼前に出てくるような描写。
第9話「湯煙に月は砕けた」1972.2.26
道中で暴れ馬から娘を助けた際膝を割ってしまう紋次郎。娘の家の経営する湯治場に滞在することに。ここへ天保の大飢饉で発生した一揆崩れのならず者・奈良井の権三一味が押し入ってくるが足の動かない紋次郎以下誰も成すすべなく蹂躙し尽くされる。
湯女・お島の献身により何とか動く紋次郎の足、また死を賭して奪い返してくれた長ドスを手にして反撃開始。12人を次々各個撃破する殺陣が五分という短い尺に凝縮された作りは見事。
ならず者の一人がかつての恋人だったことで紋次郎をののしる宿の娘と、前向きに生きようとして死んでゆく湯女・お島の対比も襞深く描かれている。
第10話「土煙に絵馬が舞う」1972.4.1
夜、難所の多い甲州裏街道をゆく紋次郎、正丸峠で何者かの落とした岩に当たり崖から落ちる(またかよ)。からくも起き上がりとある堂の前まで行き倒れる。
紋次郎見つけた村人は盗賊・黒銀一家の手先と思い縛り上げる。
村といっても鉄砲水の被害でほぼ離散し残るのは茂作一家のみ。執拗に黒銀一家がここを襲うのは隠し金を茂作が隠匿したと確信しているからだった。
業を煮やした黒銀一家の襲撃で遂に一家は皆殺しになってしまう。黒銀一味は紋次郎により皆殺し。
全てが終わり、旅立つ紋次郎はまとわりついていた狂女・お花が投げて寄越す扇を楊枝で射抜く。刺さった先の絵馬からなだれ落ちる小判。茂作はここに黒銀から横取りした金を隠していた。それを認識した紋次郎は絵馬を全て破壊し、去る。
黒銀一家との殺陣、組んずほぐれつ転びつつの相変わらずの迫力とリアルさで見せる。
第11話「龍胆は夕映えに降った」1972.4.8
木枯し紋次郎を殺ったと名を上げる瀬川の仙太郎、その実は惚れた女の父親が紋次郎を殺れるほどの婿でなくてはと言ったことを受けて労咳で余命幾ばくもない渡世人に芝居をさせたもの。しかし話は親分の藤兵衛の仕込みで、仙太郎の相手の父のショバ手中にせんがための画策。
本物の降臨により全ては明らかになるが、かつて名の知れた渡世人・喜連川の八蔵の最後の願いは果たされず命を託した妹は紋次郎が金を届けた時には相対死を遂げていた。旅立つ紋次郎の足元に咲き誇る龍胆の青い花。
第12話「木枯らしの音に消えた」1972.4.15
花田源左衛門の消息を日光街道、野州から上州へ入ったあたりの茶店で尋ね、とうに亡くなったと聞かされる紋次郎。小屋を訪ね竹林をゆく、北嵯峨農道?紋次郎18の頃の頬傷の起こり、楊枝の謂れに関する回想シーンがインサートされる。
そのときまだ幼かった花田の娘の志乃が飯盛女に売られたと聞き玉村宿へやって来る紋次郎だが、志乃が身請けされ幸せそうに笑うのを見て立ち去りかける。そこへ齎された志乃の旦那になる親分が大がかりな喧嘩に巻き込まれたとの知らせ、関わってゆく紋次郎。駆けつけたときには親分は凄腕の渡世人兄弟にやられている、木津河原?兄弟と対決の殺陣が凝っている。
惨憺たる結果を見て呆然と立ち尽くす志乃。もう一人、長楊枝を笛のように吹く女、思い出しもしないが忘れもしないと別れる紋次郎。
第13話「見かえり峠の落日」1972.4.22
いつもの通り行き掛かりでコンフリクトに関わってしまう紋次郎。ならず者に竹薮に引きずり込まれた娘を見過ごしたその直後、身投げした娘を救う、保津峡落合。
娘は土地の富商・金丸屋の婚礼間近の次女。出戻りの長女に市原悦子。紆余曲折あって次女を陵辱した地回りも、八州の手先の二足の草鞋も殺ってしまう紋次郎。
設定は富里から下仁田への例幣使街道、川は鏑川。支流の落合の先が見かえり峠。
悄然と水辺をゆく次女を見、銃声を聞いて駆け戻る山道は谷山林道。
第14話「水神祭に死を呼んだ」1972.4.29
三州街道の天竜沿いの水場で茂左衛門に高貴薬運ぶ道中の力添え頼まれる紋次郎、保津峡落合落下岩付近。関わりの無いことと行き過ぎるがやはり「関わって」しまう紋ちゃん。高貴薬より先に薬種問屋の令嬢が祭りの神輿と共に消える。噂の人斬り伝蔵が宮田の代貸のもとにいるとの情報も飛び交う。そのうち令嬢は祭りの麦藁船と行き会った際行方知れずになる。
麦藁船が沈む祭りの果ての河原、山室?川の中で宮田の代貸との闘争、その中で茂左衛門が実は人斬り伝蔵であることも知れる。チンピラにやられ虫の息の「伝蔵」は紋次郎に渡世人は因果なもの、畳の上では死ねない・あんたも名が売れてるそうだがと言い残し死す。伝説の人斬りの証の胸の傷に紋次郎が楊枝で落とす桜花一枝。
保津峡ばんばん出てくるけど水尾へ通じる道舗装してないみたい。
第15話「背を陽に向けた房州路」1972.5.6
居酒屋でゴロツキに絡まれている老爺と孫娘を助ける紋次郎、二年前房州の酌婦に受けた恩を返しに辿る道すがら。この篤実そうな大場村の百姓がとんだ食わせ物で、哀れな様子で紋次郎に助力頼むが村総出で芝居を打っていたというトンデモ。
村人が難儀しているならず者は以前前にいたならず者を追い散らすのに金で雇った用心棒が不払いに怒って居着いているもので、彼らが根城にしている荒れ寺には村の隠し米がぎっしり。そのうえ娘を差し出せとの要求には隣村から娘をさらってきて済まそうとするしたたかぶり。紋次郎はならず者を残らず殲滅するがアジトにいた酌婦(これも金で連れてこられたが金を貰えていない)に二年前自分が房州の酌婦に貰ったと同額の二両を渡し去る。
何もかもバレたあと村の組頭がこのことは黙っていてくれと縋るのを振り払い「あっしには関わりのねぇこって」とイヤーな顔して去る紋次郎。
ロケ地、谷山林道等あるとは思ったがやはり古すぎて特定できず。
第16話「月夜に吼えた遠州路」1972.5.13
遠近江をゆく紋次郎、大井川金谷の渡し、桂川山室付近?浪人者に絡まれている渡世人を助ける羽目に。これが見付宿の天竜一家の三代目で、殺された二代目の仇討ちに出ているのだが、二代目を殺ったのは紋次郎ということになっている。
天竜一家は跡目のことで大揉めに揉めているのだが先代の意向や利権漁る子分で大騒ぎ。結局幹部連中は全て紋次郎に手に掛かり落命、所詮ヤクザはこんなものとの二代目の娘で三代目の妻の述懐で幕。
大井川として描かれる川、おそらく桂川と思われるが端々に映るエレメンツ古すぎて不明。
第17話「無縁仏に明日を見た」1972.5.20
旅寝の紋次郎が見る斬り殺される夢、行く手を暗示するかのような悪夢。
立ち寄った賭場で草津へ金を届けるようよう頼まれ、途中の鳥居峠では親子連れを助け、着いた先では届ける相手不在。親子連れの亭主は殺されこれが女房とねんごろの土地の代貸の仕込み、あおり食って息子に仇と刺される紋次郎、からくも逃れ快復を待って潜んでいると刺したガキが逃げ込んでくるという散々な目に。傷ついた体で襲撃者を返り討ちに。結局金を届ける相手も代貸に殺されていた。その金を刺された子供に与え去る紋次郎・あんな憎さげなガキに。「漢」だなー。
ロケ地、鳥居峠、谷山林道。傷を負い隠れる沢の岩場、保津峡落合桟道付近。
第18話(最終回)「流れ舟は帰らず」1972.5.27
上州へ出奔した息子を探しに来た江戸の大店の主人は斬られ、連れの娘は動転して逃げ去るが町者で方向音痴のため方々で倒れ伏しその都度紋次郎に助けられる。呆れ顔ながら次第に深く関わってゆく紋次郎、娘は兄と称する男に出会うが口利きの女の偽りで、追われるうち牧須橋架け替えの人夫として「死んだ」兄の墓に出会う。吾妻川を舟で下る紋次郎と娘、兄を「殺した」男を斬ったという紋次郎に謝す娘、発作的に身を投げようとするのを紋次郎の楊枝が舟側に突き刺さり制す。
炎上する牧須橋、落合にセット?夜の舟下りは保津峡?