乾いて候1984年フジ/東映

キャスト
田村正和
中井貴恵
山田吾一
山口果林
島田順司
田村亮
田村高廣

 腕下主丞(かいなげもんど)は毒味唇役、子連れ狼のそれとは違いニヒルな美男子、なれどやはり相当に変わった小池ワールドの人で、作者は違えどかつてマサカズが演じた眠狂四郎とも通じる傾斜を持つ。共通点は「母」、転び伴天連が黒ミサでアレなのと、赤子に毒飲ませる狂気も似通う。また、作者がマサカズを念頭に置いたと伝わるのも似ていて、コスチュームの趣味も所作も眠気を誘う音楽まで似ている。
筆者がこの作品を見た動機の第一は実は「兄上」高廣氏、膝が抜けるような所作をかましてくれるのである。勝手なことばかりほざいてる癖に、いざ去られるや「もんどぉ」と甘えた声で鳴く、メッチャ可愛い高廣さんは永久保存モノ。主丞が父将軍に縷々述べ立てたりするレシピがまた面白いのだが、残念ながら毎回はやってくれない。

第1話 「お毒味役参上!」 1984.8.23

 父将軍に会うのにも、ハナからバンバン邪魔が入るがあくまでクールに対処する主丞。今回の敵の首魁は甲賀忍びの頭領、伊賀・甲賀の争いの根本を断つ主丞だが、誅滅された者の係累は彼を仇と狙うことに。

南禅寺

ロケ地

  • 偽の水野老中の駕籠と行き会うくだり、仁和寺中門南禅寺三門
  • 夜雨の中の登城、大手御門は東映城か。
  • 風鬼子ら腰元が宿下がりで出てくる御門、大覚寺明智門。風鬼子が怪しの雲水にさらわれるのは大沢池堤
  • 風鬼子を取り戻しに四谷左門町の大浄助のもとへ赴く主丞のくだり、大岡忠相が協力に出張るのを断わるのは相国寺方丈前、アジトへ入る際の蝋燭いっぱいの祠は宗丹稲荷にデコレーション、石畳を濡らして灯のシルエットを見せる。このあとはセットに移行、蝋燭いっぱいな演出は継続。このシークエンスは全て夜間撮影。

ゲスト 石橋蓮司/福本清三


第2話 「妖花・月光院始末」 1984.8.30

 吉宗の緊縮政策にお冠な、月光院を排除する話。無粋な男どもはばっさり斬って捨て、情勢を悟り去ってゆく未亡人には手出しせぬ主丞、もちろん指を噛まれても食指は動かさず。

彦根城大手橋

ロケ地

  • 夜半登城する主丞、お堀で鯉を釣る浄海とやり合う橋は彦根城大手橋。これをやり過ごし歩む主丞、ゆく道は埋木舎前堀端〜天秤櫓下石垣〜天秤櫓。
  • 明けての江戸城イメージ、姫路城天守
  • 大奥の刺客摘発大芝居のあと城を下がってくる主丞と風鬼子、大覚寺放生池堤
  • 月光院が参詣の下谷広徳寺、金戒光明寺参道石段。石段上で待ち構える主丞と、上がってくる月光院と、見上げ見下ろし両方のアングルが出る。
  • 月光院の示唆で吉宗に毒を盛った医師が、己も食らった毒でふらふらの帰り道、南禅寺僧堂坂(中臈筆頭が目撃の運び)
  • 真の意味で落飾した月光院と会うくだり、対面の座敷は不明(縁先にすぐ池泉、両面素通しの絵もあり)
  • 再び浄海とやり合う堀端は彦根城大手橋、手の者の修験者が出て立ち回り、欄干越えての堀ボチャもあり。

ゲスト 江波杏子/菅貫太郎/勝部演之


第3話 「徳川暗殺記」 1984.9.6

 またぞろ持ち上がる将軍暗殺計画、企むは尾張で大がかり。主丞は死地に踏み込み相手の玉を奪り悪謀を立ち消えさせ、己一人に恨みを惹き付けることで父を守ろうとする。

毘沙門堂勅使門

ロケ地

  • タイトルの江戸城イメージ、堀留に影を落とす姫路城天守
  • 主丞がゆくお城の廊下、大覚寺回廊。忠相と尾張の動向について話す庭は彦根城玄宮園龍臥橋(背景に臨池閣)
  • 参詣のお出ましを狙って仕掛けてくると見て増上寺へ下見にゆく主丞、くぐる山門は南禅寺三門(通行人あしらい)、寺社奉行と出くわすのは仁和寺中門
  • 主丞をつけてくる怪しの雲水たち、南禅寺僧堂坂。はじめ東望、門のほうへ角を曲がったところで画面切り替わり坂の上方・段差のあるあたりへスイッチ、今度は西望のアングルで、「光の兵衛」とすれ違う。
  • 尾張藩上屋敷、毘沙門堂勅使門。急勾配の市ヶ谷坂を上り詰めると、と解説が入り坂下に忍者が蠢くシーンは勅使門下の石畳。後段、門に寄っての絵もあり。
  • 尾張の企みが明らかとなり協議のくだり、江戸城イメージに菱の門越し姫路城天守
  • 尾張屋敷に潜入した風鬼が露見し傷ついて如月に逃げ帰ったあと、つけてきた兵衛と相対するのは大覚寺勅使門前石橋下・御殿川河床
  • 兵衛の亡骸を荼毘に付す雲水たち、大覚寺心経宝塔前。塔から尾張柳生の総帥が降りてきて、増上寺潜入を指示。
  • 尾張候頓死のあと、雲水たちに撤収を指示する総帥(騎乗)仁和寺金堂前参道
  • 江戸城イメージ、姫路城天守・備前丸から見上げ。忠相に旅に出ると告げる主丞、彦根城玄宮園鳳翔台。去る主丞を呼び止める吉宗は龍臥橋。
  • 風鬼子と二人旅に出た主丞に殺到する雲水たち、山道は大内か(切り通しの坂、山腹一部に赤土露出。植生は雑木に幼松混ざり)

ゲスト 長谷川明男/深江章喜/近藤洋介/寺田農/織本順吉


第4話 「女難人斬り旅」 1984.9.13

 旅の途にある主丞に殺到する尾張の刺客、彼らのメインウェポンは銃の達人の少女。彼女は主丞に斬られた兵衛の娘、幻惑し己が手に抱き取った刺客を悼む主丞だが、次なる問題が発生し彼を休ませない。

普済寺山門

ロケ地

  • 風鬼子と旅行く主丞、二人で楽しいと風鬼子が笑う山道、不明(洞窟?も見える)
  • 尾張藩上屋敷、毘沙門堂勅使門
  • 相良藩横目付と称する男が差し向けた駕籠に乗る主丞、護衛が刺客に転じて駕籠を襲う墓地は普済寺墓地。この後主丞が風鬼子と合流する街道、不明(暴将初期シリーズでも出た、山際の道で下に蔵や萱葺が半ばのぞくアレ)
  • 江戸城イメージ、姫路城天守。今頃主丞はどこにと忠相と話す吉宗、彦根城玄宮園鳳翔台。この間主丞が旅ゆく道、不明(背景にお堂、鉄板化前の普済寺本堂か)
  • 日光街道をゆく主丞、不明(主丞たちがゆく道は野道、兵衛の娘がゆく道は簡素な木橋と植林杉の林道、尾張の刺客がゆくのは山道)
  • 兵衛の娘が主丞を狙うも計略に陥ちて遂行かなわずに終る山中の滝、琴滝。滝壺前に主丞が雨宿りする小屋をあしらい。刺客の娘を戒める谷川沿い、不明(巨岩転がる渓流、段瀑状の沢も見える)
  • 尾張の刺客たちがすだく宇都宮郊外の瑞泉寺、普済寺山門(夜のシルエットと昼間の映像とあり)。堂内の絵は不明、粟生光明寺に似る。
  • 天一坊現るの報を受け忠相と話す吉宗、彦根城龍臥橋
  • 尾張衆と決戦の荒野、白水峡か湖南アルプスか(尖った白い岩が連なる崩壊地形)
  • 窮地を脱した主丞が風鬼子とともに騎馬で江戸へ急行する道、大内亀岡道(祠は映さず、祠前から亀岡道登り道の坂へ流し撮り・切り通し山腹に赤土露出)

ゲスト 中村久美/大塚良重/近藤洋介/織本順吉


第5話 「天一坊、疑惑の血脈」 1984.9.20

 吉宗の怒りに触れた忠相は助ける主丞だが、彼の主張する天一坊抹殺には不同意。もともと年少の者を斬るに忍びぬ主丞だが、紀州調査で得た真実は己よりもっと哀れな少年の身の上なのだった。

蓮華寺五智如来像

ロケ地

  • 天一坊の行列が江戸をめざす山道、不明。
  • 高輪八ツ山の旅館に入る一行、嵐亭門。
  • 江戸へ向かう主丞と風鬼子、湖南アルプスか。布を水に浸す小休止の川は天神川若布谷(河口の大岩下)
  • 登城する主丞、彦根城内石垣際(石垣の上に天守)
  • 伊賀之亮の要請で主丞を襲う尾張柳生の刺客、随心院土塀際か。
  • 天一坊と会い二人で話す庭、智積院書院庭園か(でかい築山)
  • 謹慎中の忠相に会い天一坊の件を協議の町角、不明(山門そば?)
  • 尾張藩邸を出てくる侍たち(主丞向け刺客)毘沙門堂勅使門
  • 風鬼子を置いて旅に出た主丞がゆく山道、不明。「天一坊」を取り上げた産婆の家、酵素河川敷に小屋あしらい。ここを襲った尾張の刺客とのチャンバラは天神川大堰堤上の河原にスイッチ。斬られた刺客が落ちる石積堰堤は同所か柊野堰堤か不明。
  • 伊賀之亮に紀州にいた浪人夫婦のことを話す主丞、回想シーンは罧原堤下河原か。
  • 伊賀之亮が天一坊の母たる「妻」に、主丞との立ち合いで使う芝居を練習させる夜の寺、蓮華寺五智如来像。
  • 主丞と対峙する伊賀之亮、下鴨神社糺の森(レンブラント光線派手に入り、スモークも焚かれ靄々)
  • 江戸城イメージ、姫路城天守
  • 両親の墓に参る出家した天一坊、黒谷墓地。去ってゆく彼を見届ける主丞、金戒光明寺参道石段〜三門。

ゲスト 本阿弥周子/江原真二郎/近藤洋介


第6話 「お毒味役最後の賭け」 1984.9.27

 代替わりした尾張も不穏の気配、主丞は遺恨の残らぬかたちでの決着を演出、宗春も潔く結果に従う。おとなしく隠居に応じた宗春にあわせるように、主丞も江戸を去ってゆく。

相国寺方丈

ロケ地

  • 市ヶ谷尾張屋敷での決闘(尾張は代人として鬼頭三兄弟を立てる)相国寺方丈前庭。宗春らは前縁に、座敷は開け放たれ裏の庭の緑も見える。
  • 怪しの琵琶法師の手に落ちたことを恥じた風鬼子が入水未遂、広沢池東岸
  • 旅ゆく主丞と風鬼子、天神川大堰堤上の広河原〜湖南アルプス尾根。

ゲスト 磯部勉/志麻いづみ/苅谷俊介/黒田福美/江幡高志/岩尾正隆/和崎俊哉/織本順吉/睦五郎


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