魔の紅蜥蜴

深田金之助監督作品  1957.7.23東映


 政権中枢に巣食う巨悪を、大岡越前守以来と評判の名奉行と、彼そっくりの容貌をしたやんちゃな浪人がタッグを組んでやっつける、痛快なお話。ヒーロー二人は市川御大が二役で演じ、互いの性格にボケ・ツッコミを入れて大笑い。美女はいろんな立場のが出まくり、悪党の手下には青龍刀を振り回す清国人などいて怪しさ満点、そも腐敗田沼を操る謎の白い爺がトンデモ設定なのだった。

二条城

ロケ地

  • 江戸城イメージ、不明。書割と思われるが、郭や櫓など凝っている。
  • 田沼意次と伊賀之亮が将軍取り込みの画策を話し合う屋形船が浮かぶ川、および弓さんと意を通じる三人組が田沼政治批判のちゃかぽこ音頭を唸る猪牙船が殺到する銅銭会から逃れ上陸の汀、不明。前者は広い水面で湛水域、後者は礫河原で、汀に木杭林立。桂川か。
  • 新しいお部屋様が初登城の際狙われてピンチのくだり、城門は東映城か。
  • 甲斐守の真意を確かめるといきり立つ田沼、その屋敷から騎馬の武士が出てゆく門は京都御所管理事務所東門(塀に海鼠壁のパネルあしらい)
  • 次期将軍に田沼の孫をとの野望潰えたあと、正体を現した伊賀之亮と弓さんが大立ち回りの江戸城内、基本的に殺陣はセット撮りで、敗れた伊賀之亮が濠ドボンの情景は二条城の濠と石垣を遠景で・ロケでの人物はほぼシルエット。

 南町奉行の曲淵甲斐守と従兄弟の素浪人・白旗弓之助は市川右太衛門の二役、結局どっちも色気女が苦手っぽくて笑える。その女・お色は日高澄子、伊賀之亮に雇われて弓さんたちをハメるが、怪しの清国女の手裏剣から弓さんを庇って果てる天晴れな婀娜っぽい姐さん。田沼政治の腐敗を訴えて殿中で刃傷におよぶ憂国の士・佐野善左衛門は岩井半四郎、一族郎党殲滅のところを弓さんに救われる妹・菊絵は大川恵子。後継の男児に恵まれず田沼に付け込まれる将軍・家治は徳大寺伸、田沼の娘で側室の津田の方は星美智子、佐野に殿中で斬り殺される田沼意知は丘郁夫。甲斐守に期待を寄せる松平定信は加賀邦男、弓さんの取り巻き連に杉狂児、目明しの音五郎は吉田義夫。名前からも明らかな、意外や生きていた前時代のトンデモ謀反人の山内伊賀之亮は進藤英太郎、手下の怪しい清国女・錦蓮は吉田江利子、田沼意次は大河内傳次郎。
 「紅蜥蜴」はお部屋さま候補暗殺の際に使われるモチーフ、これで殺したのかどうかは不明なるも、田沼邸の怪しの地下室にはこのトカゲてんこ盛りのガラスケースがある。また、ラストの悪党指弾の際に弓さんが持ってきて割る壺の中身がコレ。


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