大奥 悪霊の館

1981.9.4フジ/東映   53


 五代綱吉の世に不幸あり、開かずの間となった怪しの一室。時を経て九代家重の大奥に怪異頻発する、曰く付きの「宇治の間」には、骸となった愛しい姫を抱く、哀れな魂魄が棲みついていた。

枳殻邸

ロケ地

  • 江戸城イメージ、姫路城天守。ナレーションの大奥のフリにカメラがパン、西の丸へ。
  • 御半下に出たおとしが迷ったすえ上様に出会い、それと知らずタメ口をきいてしまう、芍薬が咲く内庭、不明(石庭?/「鬼婆」が来たので上様がおとしと共に隠れる植え込みは大刈込)
  • 懐妊したお逸の方を害そうとして、桁が落ちるよう仕組まれた池泉の橋、枳殻邸臨池亭前池泉。上様の叱責をくらう常盤局は臨池亭前縁に控え。
  • 藤波がおとしに今夜の伽はお幸の方と愚痴る庭、不明。
  • 常盤局の回想、加茂の土手をゆく姫君(後の家重正室)の輿、不明。姫君が衣を翻す林も不明。
  • 中臈になったおとしを所望した酒浸りの家重が、常盤局のイヤミにキレて部屋を飛び出して渡る庭の橋、枳殻邸侵雪橋。追っかけてきたおとしと話す池辺は印月池畔。
  • 終盤、おとしの方と上様が逍遥する吹上御苑、枳殻邸印月池畔(一天俄かに掻き曇り、雷鳴轟くシーンはネガポジ反転で描写)

 お端下からお中臈に出世し、お世継を生むに至るおとしは由美かおる。彼女を町で見とめ大奥に上げる、御寵愛深いお逸の方は山本みどり。お逸の方に嫉妬し、様々な形で妨害工作をはたらく御側室・お幸の方は岩井友見。頼まれて呪術を施す怪しの行者は田中浩。上様・家重は和田浩治。処女のまま死んだ家重の御台所についてきた侍女で、現大奥総取締・常盤の局は白石加代子。

 「出る」描写は、宇治の間の襖絵の龍の目から血涙どろりとか、腐った腕が壁や障子からにゅっと出てきて首絞めたりとか。しかし、そうした怪異よりはるかに怖い怖い白石加代子の顔、くかかかと笑う表情なんざチビリもの。だから常盤の局がくたばったあとは風船の空気抜けたみたいになって、せっかく凝って作った不気味アイテムも迫力をそがれてしまうのだった。


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