1925.11.20阪東妻三郎プロダクション
キャスト
久利富平三郎/阪東妻三郎 松澄永山/関操 奈美江(永山息女)/環歌子 江崎信之丞/春路謙作 浪岡真八郎/山村桃太郎 二十日鼠の幸吉/中村琴之助 猫八/嵐しげ代 お千代/森静子 赤城治郎三/中村吉松
原作/寿々喜多呂久平 撮影/石野誠三 監督/二川文太郎 総指揮/牧野省三
ふとした掛け違いから、どん底へ堕ちてゆく男の悲劇。理不尽に怒り身を震わせ、激情を迸らせることもあったが、基本的に優しく穏やかな青年は、暴発ののち己が足もとに無残な屍が累々と転がっていることを認識した途端、へなへなと崩れ折れる。
ロケ地
- 師匠・松澄永山宅(塾)、不明(棟門、壁は腰板付き。後段、破門された平三郎が肩を落として出てくるくだりでは、向かって右手に同じ腰板を持つ建物の側面が見える・この続きは白壁)。
- 閉門となった平三郎宅、不明(袖壁?付き)。
- クサってほっつき歩く平三郎が、奈美江を中傷する若侍たちに食って掛かり乱闘となるくだり、東大寺食堂跡付近。映像では、瓦練り込み塀の角を曲がると続きは崩れ土塀で中はススキ原だが、現在の食堂跡は何も無い更地の「臨時駐車場」。竜蔵院と宝厳院は、門が明瞭に映り込んでいて、二つの塔頭の奥には小山とその裾にある段畑がのぞいていて、手前には竜松院の続きと思われる塀があるが今はフェンス。なお、竜蔵院の塀の裾にはごろごろと大きめの石が乱雑に置かれている。食堂跡のススキ原の向うには、大仏殿の大屋根がちらり。このときの乱闘相手の讒訴により、平三郎は破門。
- 破門された平三郎が俯いて歩くくだり、不明(池端、汀は石積みで水門も見える。池端はぐるっと道で、奥に建物)。
- 奈美江に誤解を解いて欲しくて永山邸へ密かに忍び入るくだり、不明(池?の小橋から、奈美江のいる縁側へ。座敷へ上がりこんで掻きくどくシーンにも「庭」が映っている。庭には池があり十三重?石塔も見える)。この翌日、平三郎に永のお暇が言い渡される。
- 故郷を後に旅に出る平三郎がゆく海辺、不明(池端か、船が多数舫っていて、対岸には松の生えた低山)。いつかはと見遣るお城、不明(石垣と濠)。このあと平三郎がゆく浜、不明(マジ海っぽいが琵琶湖の可能性も。沖にちらっと小島)。
- 一年後、牢人のまま落魄し、とある城下町をゆく平三郎、不明(人々が行き交う道は土手か。枝垂れ柳や板塀、細竹編みの塀等が見える)。このあと、小料理屋・吉野川へ。ここの娘・お千代に奈美江を重ねる次第。
- 辱めを受け暴発する料亭、不明(建物の玄関口、前庭なども料亭ふうで細竹編みの塀などあり、捕縛されて引かれてゆくシーンには冠木門と焼き杉の板塀で透垣付き)。
- 牢を出てきた平三郎がへたりこむ道端、不明(大木のある野道で、まわりは起伏のある野原)。ここで、同牢だった二十日鼠の幸吉が声を掛けてくる。以降、用心棒に。
- 吉野川で喧嘩を仲裁したのに捕縛された平三郎、解き放たれて出てくる道、不明(土塀の路地)。彼奴は命知らずの無頼漢だと通行人が謗り、避けて通るお堂前、東大寺戒壇院千手堂(映像には、今あるお堂前の木はまだ無いが、燈籠は現存)。子供に逃げられる町角、不明(土塀際、続きは板塀)。皆に忌避され溜息をつき座り込む平三郎、氷室神社境内。石段前の燈籠脇に座り込み、忌み嫌われる我が身を慷慨。ここと参道を隔てて池、池上に水場があり、溝が切られ池に続くさまも明瞭に映っている。ここへお千代がお参りにやって来て、平三郎がずいと前に立つシーンは、回廊の石段下。映り込む摂社には、今は無い囲いが付いている。脅えるお千代の背後に瓦練り込み塀が見える。お千代を口説いているところへ出くわした町人が逃げていくシーンには、大燈籠越しに博物館前の道がちらり。お千代に去られて失意の平三郎に、幸吉が悪知恵を授ける。
- 幸吉宅に捕り方が殺到、投獄された平三郎がお千代恋しさに破牢するくだり、夜回りと警備兵が去ったあと塀を乗り越えてくる平三郎、不明(崩れかけ土塀に木戸、右手は小柴垣、中は竹林)。新妻姿のお千代を見て嘆く平三郎、凭れる土塀、東大寺戒壇院土塀か(軒瓦の下の、勝手口のような開口部。ここへじわじわ近づく捕り方のシーンでは築地や大きな燈籠が見える)。その後抜き身を引っさげて転がり込む、顔役・赤城の治郎三宅は板塀の中に建物、不明(板塀は置いてあるっぽい。中に土塀ちらり)。捕り方が走る道付近には起伏あり。
- 奈美江夫婦を助けるため治郎三を斬って外へ逃れた平三郎だが、表には捕り方。急を告げる半鐘、大梯子は石垣際に立つ(ロケかセットか不明)。それを聞いてあたりを見回す民衆は池端(奥に塀、鏡池か)、ここへ平三郎を追って捕り方が殺到、池ボチャあり。このあと祠のある塀際(角地)を走りぬけ、門そばの塀の上で立ち回りのシーンは東大寺戒壇院境内・千手堂へ通じる門で、このあと塀から飛び降り、門が開いて捕り方がわっと殺到。塀際の坂を斬り抜け、その坂の上にある五本線入り塀の前での立ち回りは東大寺戒壇院門前で、道隈の土盛り上で阪妻が拠る木は今は無い。立ち回りは戒壇院塀際に移動、カメラ引いてゆき四脚門が映り、殺陣も門に移動し、次いで東へ走り去る。このあとの、いろんな道具立てで捕縛を試みる「町中」のくだりは、セット撮りと思われるが一部ロケかも。
- 引かれゆく平三郎が渡る橋、不明(欄干付き、下は浅い小川)。
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