冬島泰三監督作品 1955.12.27新東宝
新年早々、児雷也を演じている最中の役者が殺され、怪しの浪人から掏摸が掠めた財布からは、当の役者の名を記した書付が出る。それには、死んだ男を合わせ三人の名があり、ますますもって物騒な事態が予想されるのだった。
金さんになって町場へ出ていたお奉行は、掏摸の銀次を見込んで十手を与え事に当たらせるが、これがなかなか使える奴で、何かというと仲間を呼び大挙して押しかけてくるのも大笑い。
長屋衆のおちゃらけパートとは打って変わって深刻な「姫様」パート、歌も暗いバラード調や浪曲ふう。亡君の恨みを散じるべく水野越前守を狙う一味は、釣天井まで用意していて御老中マジで危機一髪なのだが、同志も切り捨てる非情さが仇となり内側から崩れてゆく。目的のためとはいえ、無辜の死に心痛めていた姫様は、もちろんお奉行の機転で落とされてめでたく大団円。
ロケ地
- 銀次が掏った財布から金を抜き、カラのをぽいぽい捨てる材木河岸、例の「材木置場」周辺か或いは「丸太町通」のどこかか。うしろに竹林が控えている。
- 南町奉行所、大覚寺明智門。銀次が逮捕される段を皮切りに何度も登場、出役シーンもあり。
- 春駒太夫が小屋を掛ける浅草奥山、神社境内か(あしらいもの多数、奥に松林)。その楽屋裏で第二の殺人が起きたあと、銀次が拉致されるくだりは清凉寺、声を掛けられるのは本堂脇、当て落とされるのは多宝塔前。
- 遠山邸、相国寺大光明寺。門前をうろついていた雲水と虚無僧が戦うのは南路地。
- 寺の名と思い込み「秋風寺」を捜す段、八五郎が寺名を聞くも相手も文盲でダメな門、不明(塔頭ふう)。大家が和尚に聞くも頓珍漢な答が返ってくる杢念寺、不明(庫裏の前、相国寺の塔頭によく似る)。
- 怪しい人物が次々入ってゆく屋敷、不明(寺の門か、前に短くステップ)。
- 一色の姫様が参詣する墓、黒谷墓地。
- 師匠宅から陣内を召し捕って意気揚々と引き上げる銀次と長屋衆、大寺の境内路地か。
- 備前屋が向島に新築した寮、琵琶湖畔か(萱葺き)。
- お城を下がってきたお奉行が、用人に陣内取調べを指示する玄関、相国寺大光明寺式台玄関か。
- 向島寮普請に関わった棟梁の娘を呼び止めるお仙、宇治川派流端(対岸に酒蔵)。
- 罪なき人々を殺めてまで復讐を果たさねばならないのかと、姫が源太に問う浜辺、堅田の琵琶湖岸・浮御堂を望む岸辺で、汀には杭。
- 掏摸のお仙が棟梁の娘をたばかり連れ込む寮の門、不明(まわりに深い林。後段、銀次と町衆が押しかける段の門も同所)。
- 寮に侵入し見つかってしまう金さんと銀次、用心棒と立ち回りは琵琶湖畔か(芦原と砂浜、建物の門口が水辺に近い)。
- お奉行を案じるあまり若衆姿で寮に入り込み、庭に張られた鳴子を引っ掛け見つかってしまう千草、隣松園か。
- 銀次を先頭に押し出してくる長屋衆、北小路通か。
- 事後、船に乗る姫と源太を見送る一同、琵琶湖岸。
遠山奉行は若山富三郎、もう一緒に住んでるフィアンセは瑳峨三智子。用人の爺さまは石原須磨男、与力の笹野は山茶花究、老中・水野越前守は荒井忍。掏摸から目明しになる銀次は川田晴久、馬鹿でかい十手がご自慢。銀次の妹は路マサ子、大家は柳家金語楼で娘は久保幸江、長屋衆の八五郎は堺駿二。
実は一色の姫様な春駒太夫は美空ひばり、いつも傍にいるお小姓の源太は北原隆。亡君の恨みを晴らさんとして徒党を束ねる紫紋十郎は阿部九州男、実はこの一味な豪商・備前屋は香川良介、暗殺者をつとめるも捕まり口封じに消される浪人・陣内は高松錦之助で情婦の小唄師匠は千秋みつる。一味に阿り手先をつとめる目明し・権六は沢井三郎、時に彼とつるむ女掏摸・お仙は野上千鶴子。冒頭、派手な消され方をする、一味の裏切者の役者は中村時十郎。
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