牛原虚彦監督作品 1942.5.14大映
キャスト
坂本龍馬/阪東妻三郎 中岡慎太郎/羅門光三郎 桂小五郎/市川右太衛門 吉田稔麿/尾上菊太郎 三次慎蔵/加賀邦男 西郷吉之助/片岡千恵蔵 徳川慶喜/嵐寛壽郎 松平容保/澤村国太郎 沖田総司/南條新太郎 近藤勇/阿部九州男 佐々木唯三郎/大友柳太郎 お竜/市川春代 おとせ/常盤操子 おしま(あきの叔母)/梅村蓉子 あき/琴糸路 幾松/高山廣子
幕末も煮詰まった頃、孤立する長州と、未だ旗幟鮮明ならざる薩摩を取り持ち、王政復古を果たして新時代を招来せんとした若者・坂本龍馬の活躍を描く。
池田屋事件から禁門の変を経て、沸騰する時勢。徳川幕府の威信は急激に精彩を欠いてゆき、朝廷に政権を返上せよとの意見も出始める。しかしさんざん痛い目に遭った長州は、会津に拠った薩摩に含むところあり、両者の距離は容易に近づかない。ここへ希代の快男児・龍馬が奔走、連合の要を解き、また徳川最後の将軍は重い決断を下す。そして大政奉還の上奏が明日為されると知らせを受け、欣喜雀躍し祝酒を呑もうとしていた龍馬の宿に、刺客が殺到する。
ロケ地
- 新選組に捕縛された枡屋喜衛門の口書により、所司代に慶喜の指令が下る冒頭のシーン、二条城に本物の東大手門(北から)。
- 所司代が門前払いされる薩摩屋敷の玄関、不明(長屋門)。
- 池田屋事件の後、大挙して京へ押し寄せる長州軍のくだり、毛利の旗を靡かせた船がゆく海、不明(琵琶湖か、波は静か。岬や島影は見えず)。男山へ押し出す益田右衛門介、不明(山道)。真木和泉・久坂義助らが押し出す天王山、不明(谷山林道のような切り通し)。福原越後が押し出す伏見、不明(谷地田か)。国司信濃・来島又兵衛が押し出す嵯峨天竜寺、不明(並木道?)。軍勢がゆく街道、不明(土手か)。蛤御門はセットの模様(脇に塀)。
- 長州の劣勢を訴え、薩摩に出兵を請いに伝令がやって来る薩摩藩邸、青蓮院長屋門。賊軍として長州を討つと決断した西郷が陣羽織を着て階段を下りてくるシーンもある。
- 長州の敗残兵がゆく街道、不明(谷地田)。
- あきが幾松に仕立物を届けにゆく道、相国寺大光明寺南路地に似る。
- 捕縛され連行される浪士を見る幾松、三条大橋は本物か。橋下にいた乞食に変装中の桂小五郎に会うシーンはセット、新選組が出て立ち回りとなり橋上へ移動の際は橋たもとに蔵など見える。橋には立派な擬宝珠つき。
- 山内容堂の建白書が提示され、諸侯の意見が求められるくだり、諸侯の行列が続々とやって来る二条城は本物、東大手門を南から。東南隅櫓も映り込み、堀川通は地道。
- 沖田総司が療養中のあきの叔母の家、子らの歌声が沖田の癇に障るくだり、子らが遊ぶ路地は妙心寺か大徳寺の路地か(石畳は曲折、ちょっと坂ぎみ、手前に蔵が見える)。叔母の家(寺設定か、花頭窓あり)はセット。
- 官軍が錦の御旗を掲げて東上する街道、土手と富士山を合成か。
「維新の曲」たる音楽は三種類、沖田が病を養う家の外で子らが歌う「錦の御旗」の童謡、入洛した薩長軍が奏でるヤッパンマルス、ラストシーンの官軍の「宮さん宮さん」。
バンツマの龍馬はリアル路線、しぐさや土佐言葉のほか、寺田屋を襲われてピストルで応戦するシーンや、近江屋で暗殺される際の殺陣が圧巻。
吉田稔麿を慕っていた娘・あきと、沖田総司の逸話も秀逸。池田屋事件の直前、吉田稔麿が買った祇園祭の鉾のおもちゃが沖田の病間に置かれていて、見舞いに来た近藤勇が過去を述懐する際の小道具になるあたりが心憎い。
新選組については、細かくキャスティングされているものの、近藤と沖田以外は特段の設定なし。沖田が鳥羽伏見で戦死しているのはアレだが、時代か。
エンドマークには国債を買おうというスローガンが被され、戦時色がうかがえる。
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