第1話「辻斬り」1999.12.8
辻斬りをはたらく大身旗本を懲らしめる小兵衛、原作では半分暇つぶしに面白がって関わるが、ドラマでは不二楼を寿退職の娘が被害に遭い、腹の底から怒っての行動。
ロケ地
・頻発する辻斬りの描写、南禅寺参道南側の水路(探索に出た小兵衛に斬りかかるのも同所)、下鴨神社河合社脇。
・神田駿河台・永井十太夫邸、大覚寺明智門。庭で藁束を斬る永井、唐門と前庭、不明。
・関屋村へおはるとゆく小兵衛、西の湖(おはるの実家描写は池畔、漁具あしらい)。
・和泉屋根岸寮、中山邸門、庭。永井の家来・内山弥五郎を捕まえる小兵衛たち、大覚寺参道〜勅使門橋(パニくった内山は御殿川に落ちて逃走をはかるが弥七たちに捕まる)。
・内山を捕まえたと永井の家来・木村に告げ名乗る小兵衛、上賀茂神社ならの小川畔(雨、小兵衛は祠脇から現れる。木村は川に入って逃走)。
・永井家出入りの剣客・市口に呼び出され道場へ赴く秋山父子、大治郎がおはるから預かったおみつの守袋を渡すのは南禅寺三門。
・江戸城、二条城本丸櫓門。
・生島用人に覚悟を迫られる永井十太夫、粟生光明寺方丈(導入は石庭と縁側を見下ろしのショット、永井が控える座敷は方丈座敷から勅使門越しに甍を望む趣向)。
*市口に渡辺哲、終始怖い顔で迫力。和泉屋寮の物置から内山が逃げ出した際、着流しの三冬に打ち据えられるが、がばっと裾を広げて縁側に足を掛ける男女のエピソードを入れてある。
第2話「暗殺」1999.12.15
家来に宝を盗まれ恐喝された大身旗本が、その男を暗殺するのがお話の骨子。死に際の「女が待っている」のひとことを膨らませ、借金を済してやるつもりだった男と、笑って運命に従う女の情話をしっとりと描く。
ロケ地
・下谷・湯島天神下の五千石の旗本・杉浦丹後守邸、大覚寺大門(後段、弥七が用人を尾行するくだりでは門前の御殿川河床も使用)。
・暗殺された笹野小文吾の墓、沢ノ池東岸汀(設定は寺の裏、大治郎の道場の近くという話だから大川端か。沢ノ池は対岸を映さずに使ってある)。
・道場を襲った丹後守を大治郎が斬って捨てたあと、用人を成敗する小兵衛は大覚寺参道石橋上(原作では丹後守の処分が下された後、本所の旗本屋敷の賭場から出てきた用人を堀川の北中之橋で斬るが、ドラマでは大門から主を迎えに出たところという設定で大門を出てきているから丹後守邸近くと思われる)。
・大川を渡る小兵衛夫妻、西の湖。
*大身の殿様に立川三貴、用人に本田博太郎。原作ではさして詳しく語られていない殿様の「趣味」がドラマでは活写されている。コレクションのあぶな絵をねぶねぶする主従なんか傑作。鍔のほうもお好きなようでラシャ張った板にきれいに並べてあったり。立川氏と本田氏のアヤシイ近接ショットもあり、息苦しいまでの迫力。*たっぷりと尺をとって描かれる酒肆の女・おあき。死んだと聞いた男の消息を尋ねに隠宅へ現れた際も、酔客の相手をしてどんちゃん騒ぎの折も、自身の身の上を語るときも終始笑顔の彼女を森口瑤子が熱演。小文吾の残した金を前にしてのシリアスな顔がまたいい味。そして旅装の彼女は、墓前にその金をそっくり置いていずこへともなく立ち去り、一切語られぬ心情がイメージの積み重ねにより深い余韻を残す。この味わいに沢ノ池の風景も多大な効果を齎している。
第3話「剣の誓約」2000.1.16
大治郎の剣の師が出府、老剣客は二十年来のライバルとの決着をつけにはるばる大和から出てくるが、約定の勝負は相手の色子により阻まれてしまう。
ロケ地
・小兵衛の先妻・貞の墓、西教寺墓地(本堂大屋根を背負った北望のショットが主で、嶋岡礼蔵が貞の墓を去り際には琵琶湖の見える画もある。嶋岡を貞の傍らに葬ったあと立ち去る小兵衛のシーンでは南望のアングルも見られる)。
・嶋岡の回想、柿本源七郎との二度目の立会い、保津峡落合河口河原(原作では筑波山中、ドラマでは明確に示されず)。
・嶋岡の使いで柿本宅へ赴く大治郎がゆく道、桂川松尾橋下手左岸河原〜橋下手右岸堤(見上げ)。
・麻布西光寺裏の柿本宅、中山邸無畏庵。
・隠宅で夕餉のあと小兵衛が嶋岡を送って行った際の船着、広沢池観音島(石垣の降り口をうまく使ってある)。
・嶋岡に矢を射込んだ伊藤三弥を追いかけ腕を斬りおとす大治郎、西岸湿地。
・病身をおして嶋岡との約束の広尾ヶ原へやってくる柿本、不明(山の斜面のススキ原の真ん中に孤立木。木の周りは刈り込んである)。
*嶋岡に夏八木勲、柿本に東野英心。*原作では小兵衛が嶋岡に代わって柿本と果し合いをする設定はなく、柿本宅へ嶋岡の遺体をはこんでゆき詰問する運び。
第4話「婚礼の夜」2000.1.26
無二の友に迫る危機に奔走する大治郎、友に恨みを抱く浪人が巣食うアジトに潜入し、婚礼当夜の襲撃を阻止し大立ち回り。
ロケ地
・大治郎の回想、大坂での修行時代、女にフラれ荒れる浅岡鉄之助を励ます縁日の神社、北野天満宮楼門前参道(鉄之助が「牛」に手拭をぶつける)。
・大治郎の道場から出た男の話をする浪人たちを見る弥七(原作では傘徳、設定は玉川上水べりの寺脇の小道)、大覚寺放生池堤石橋。
・三冬に金を無心にゆく大治郎、田沼邸は随心院薬医門。
・不二楼で刻印金を使った浪人を捜し歩くおもと、鳥追い女のなりでゆく神楽坂、北野天満宮参道・大灯籠の裏。
・大坂、同門の平山が女に無体をはたらく現場を見て懲らしめる浅岡、大覚寺放生池堤〜天神島(設定は野田橋下手、井路川畔)。
*平山の一味が凶行に及んだ商家から盗った金が水戸さまの刻印金で、不二楼でこれを使ったため両替商でおもとが引っ括られる騒ぎはドラマのオリジナル設定。とんでもない疑いをかけられかんかんに怒ったおもとは、小判を出した浪人を捜して賭場に潜入したりする。柳眉を逆立てるといっとうキレイな梶芽衣子、鳥追い姿はほとんど「おまさ」。このほか大治郎が探索費用捻出のため借金のくだりでは、申し出の三両を三百両と誤解する三冬が描かれるのも、原作とちょっと変えてある。
第5話「勘ちがい」2000.2.2
小兵衛隠宅に鯰を売りに来た訛りのきつい男、正体は盗っ人で下見に来ており、その後あろうことか押し込みの相棒に傘徳を見初める。面白がって侵入ってくるのを待ち構える小兵衛、やりこめたあと、千両を見て腰を抜かした泥棒に使途を訊くが、丈に合わぬ金は運の悪い金との答えが返ってくる。
ロケ地
・生島用人が田沼からの千両を持ち込む和泉屋根岸寮、中山邸門。
・千駄ヶ谷の武家屋敷の賭場から出た八郎吾を尾行する傘徳、八郎吾を襲う浪人たち、大覚寺心経宝塔前〜五社明神。
・傘徳と下見にゆく八郎吾、押し込み先が鐘ヶ淵と話す大川端(右岸)、西の湖畔。
・ラスト、旅の途にある八郎吾、見事な夕映えの道は木津堤か。
*原作とは大幅に設定を変えてある。三冬が持ち込む千両→金貸し幸右衛門の遺金、八郎吾に頭をチクられて仇と狙う浪人たち→手入れの傘徳に遺恨、など。見逃される小泥棒の人の良い火野正平も味わい深いが、原作通りに女房殺しの過去なども持つ凄味のある面も見てみたかった。
第6話「三冬の縁談」2000.2.9
女武道に来た縁談、いつもの通り立ち会って負ければ結婚の運び。しかし此度の相手は腕達者、それを知る大治郎は三冬が負けて人の妻になることに煩悶。互いを意識しつつぎこちなく剣の稽古を続ける若い二人をよそに、縁談相手の人体を見た小兵衛は計略を用いて鼻持ちならぬ男と立会い、剣士としての命を断つ。
ロケ地
・田沼邸、随心院薬医門。
・大治郎の回想、京イメージに清水寺全景と桂川(?)のアオサギ。千本通・中立売の無外流・三浦道場、勝持寺東門(雲水を演出)。
・和泉屋根岸寮、中山邸門。
・早朝から他出し水辺に佇む三冬に型を教授すると声を掛ける大治郎、上賀茂神社ならの小川・神事橋下手の水場。
・縁談相手の大久保に道がついたと小兵衛を呼び出す弥七、妙心寺大通院裏路地(ラウンド塀角)。
・大久保引っ掛けに使う麻布森元町の柳道場、民家裏門と南塀。
*一刀流の柳喜十郎と大和郡山藩士・佐藤要の設定が原作と異なる。佐藤は柳の門人で、大久保は柳の師匠自慢を聞いて挑み、軽侮していた柳にあっさり敗北。ドラマでは小兵衛の計略で一時道場を空けて貰うための「不二楼で芸者つき接待」にヤニ下がる柳が描かれている。人の良さそうな見た目は原作通り。
第7話「いのちの畳針」2000.2.16
うすのろの為七に腹を立てたいいとこのお坊ちゃん、息巻いて斬りかかるところへ走った畳針は彼の眼球に突き刺さる。療養中の小兵衛の弟子が咄嗟に放ったものだが、相手が大身旗本の息子ゆえただでは済まず、彼らを庇った岡っ引が惨殺されるという重苦しい事態に。その岡っ引と親しかった弥七、事態に居たたまれず死を覚悟する弟子、小兵衛は馬鹿息子と取り巻きを誘い込み、さんざんに懲らしめる。
ロケ地
・植村友之助がスケッチをしているところへ通りかかり歓談の大治郎、鷺森神社本殿前(原作設定は大塚町・横小路の本伝寺境内)。その後、為七が「小堀のどら息子」に斬られかかるのを助ける友之助、参道と林間。
・小堀信濃守下屋敷、大覚寺大門。
・どら息子に為七と友之助は逃げたと虚偽の報告をしに行く前、堀端に佇み考え込む富五郎、八幡掘堀端。
・関屋村へ為七を預けて帰りの小兵衛夫婦の船、西の湖。
・小堀屋敷へ出入りの岡っ引・富五郎の死体の検分、大覚寺大沢池北西畔。
・下城の信濃守、二条城北大手門(門内から列のそばをすり抜けて三冬が走り出て、堀端で待つ大治郎にあれが信濃守と示し聞き込んできた信濃守の人となりを報告)。
・小兵衛らがどら息子らを誘い込む寺嶋村の西・白髪の渡しの寄洲、木津河原(どら息子らの船が州の間をゆく描写もある)。
・為七のほか友之助もそこで暮らすことになる関屋村、美山町民家。
第8話「悪い虫」2000.2.23
ごろつきの兄を持つ鰻売りの又六は、度重なる暴力と強奪に耐えかね大治郎に縋る。秋山父子の薫陶を受けた十日後の彼は、ひるむことなく兄に立ち向かい撃退、しかし生来優しい彼はそのうえで兄の身を案じるのだった。
小兵衛が又六に施す剣技は原作通り、恐ろしい訓練を経た又六の豹変ぶりも見事。
ロケ地
・浅草寺境内で町人にからむ無頼浪人を撃退する大治郎、清凉寺本堂前(お堂をバックの画と、山門をバックの両方のアングルを用いる)。
・又六トレーニングのためおはるに船を漕がせ大川を渡ってくる小兵衛、西の湖。
・又六が店を出す堀端は松竹のオープンセット、「不二楼」がたもとにある太鼓橋や、第一シリーズの「暗殺」で森口瑤子の勤める酒肆があったりするお馴染の場所なのだが、妙に広くいつもと違って見えて面白い。
*又六に「引越しのサカイ」徳井優、ごろつき兄の仁助に六平直政。*原作とさしたる違いはなし。しかし和解した兄と一緒に鰻を売る又六なんかはいいけど、又六の母、つらっと去年死んだとか言われてる…原作ではけっこう出てくるのに。あと、鰻が蒲焼なのはやっぱりちょっと…絵にならないのかも。
第9話「隠れ蓑」2000.3.1
秋山父子が関わった仲睦まじい盲いた老武士とよれよれの老僧は実は仇同士であった。たちの悪い旗本の若いのに絡まれた挙句押し込まれて果てる老武士の亡骸を前に真実を告白する法師を早暁絶たせてやる小兵衛、胸に去来するは同じく老境にある互いの来し方。寂寥感の支配するストーリイを静かな水面が彩る佳品。
ロケ地
・老武士の隣で釣りをする小兵衛、沢ノ池東岸汀。
・入谷田圃で老僧が酔った侍に絡まれているのを助ける大治郎、下鴨神社糺の森池跡。
・大治郎の回想、(さったとうげ)で見かけた老武士と老僧の二人連れに思わず喜捨を渡す、鳥居本八幡宮鳥居下。
・仇の佐藤弥五郎である老僧の回想、東海道白須賀宿はずれで仇を求め旅する堀内(老武士)がお堂に祈るのを見る、大覚寺五社明神(以降逆に尾ける日々が続く)。
・橋を渡る堀内を橋下から見上げる佐藤弥五郎、木津川流れ橋。
・僧形に身をやつす佐藤、仁和寺中門(二王門がバック)。
・盲いた身を嘆き絶望の果て自刃しようとした堀内をとどめその後共に旅する佐藤、冬の波打ち際を支えて歩く、間人海岸。
第10話「雨の鈴鹿川」2000.3.8
仇と狙われる男を助ける大治郎の兄弟子、うまく大治郎の力を利用し切り抜けようとするが年若い後輩に諭されるというしまらない結果に。人の良いお調子者で図々しい兄弟子・井上に粂八さん、この手の役をやらせたら一級品。
結局仇討ちに巻き込まれる大治郎だが、鮮やかに返り討ち、川の中・雨のもとでの派手な大立ち回り。
ロケ地
・桑名宿の浜で大治郎を待ち受ける井上、琵琶湖西岸。
・大仙寺の千代のもとへ事情を聞きに行く大治郎、高所から島の点在する海が見えるのは瀬戸内か。撮影協力に「境ケ浜」の宿泊施設が見える。また、桑名宿の灯台も同所か。
・鈴鹿川沿いの伊賀の間道をゆく大治郎一行、保津峡落合・崖上〜河口。ラス立ちもこの付近。
・事後、体を休める一行、伊織の顔を見に来る千代、大覚寺五社明神舞殿。
第11話「妖怪小雨坊」2000.3.15
かつて大治郎が片腕を斬りおとした伊藤三弥が江戸に舞い戻り、魁偉な容貌の義兄と共に秋山父子を狙う。義兄は病死とされた長男で、母を不義密通のかどで殺されたことと容貌のため遠ざけられたことで父を深く恨み、金の要求も募り父の配下を惨殺するなどの行為を重ねる。
挙句おはるをさらい秋山父子を苦しめようとするが、邪剣通じず返り討ちにあう。
ロケ地
・水天宮へ参詣の弥七とツナギをとる大治郎、上御霊神社本殿・絵馬堂。
・麻布で伊藤彦太夫の配下が惨殺される、随心院裏土塀前。
・弥七が調査に入るかつての三弥の師の住んだ西光寺裏の化け物屋敷、中山邸無畏庵。
・小雨坊が百姓夫婦を惨殺する目黒村の山中、仁和寺塀際疎林。
・おはるを送ってゆく傘徳の舟が襲われる、西ノ湖。
・負傷して気を失った傘徳の舟が流れ着く浅草橋場の不二楼近くの岸、八幡掘明治橋下。
*兄弟の父・新発田藩用人の伊藤彦太夫に近藤正臣、おどおどと怯えた態度や問い詰められ泳ぐ視線などで好演。これで最後の小雨坊説得の際の卑劣さが際立つ。
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