古代史ドラマスペシャル、2010年4月　NHK

キャスト
下道真備/吉岡秀隆　阿部内親王/石原さとみ　藤原仲麻呂/高橋克典　玄�ﾑ/市川亀治郎　藤原武智麻呂/刈谷俊介　真備の母/宮下順子　海蔵/山中聡　藤原宇合/井之上チャル　藤原広嗣/波岡一喜　大伴家持/中山麻聖　大伴牛養/谷口高史　藤原巨勢麻呂/南圭介　藤原乙麻呂/浜口望海　藤原房前/門田裕　藤原麻呂/田村ツトム　由利/内山理名　葛城王(橘諸兄)/草刈正雄　藤原宮子/江波杏子　行基/笈田ヨシ　光明皇后/浅野温子　聖武天皇/國村隼

原作/池端俊策　音楽/千住明　美術監修/西岡善信　演出/田中健二

前編　　2010.4.3

　長く唐土にあって博識を身につけた留学生は、揺らぐ政情のなかで「理に適った」道を選び取り、良き世の招来に尽くす。しかし野心家の友が、彼の口利きをきっかけに中枢に食らいつき、己が欲望を満たそうとしていた。

ロケ地

• 真備らが乗った帰り船が見る日本の島影、琵琶湖か。
• 真備が母と妹に再会する里、琵琶湖畔か(水面は見えず)。地震で壊れた下道家のセットを設置。母が耕す畑は竹林際。
• 仲麻呂に伴われ葛城王のもとへ赴く真備、平城宮跡朱雀門前。町を合成。
• 葛城王の館、平城宮跡東院建部門。
• 真備が葛城王に伴われ大后に会う平城京東院、平城宮跡東院庭園。ここで阿倍内親王とも出会う。内親王が真備を追いかけてきて、学問で人の心を変えられるかと問う廊下は薬師寺回廊。
• 帰国した遣唐使らが大王に挨拶する平城京大極殿、平城宮跡大極殿の両翼に建物合成、手前に「楼門」を配しナメた絵も。高御座がしつらえられた内部は、大極殿で撮ったかどうか不明。遣唐大使・多治比真人広成を筆頭に諸官一斉のシーンは平安神宮応天門を背にした広場で、葛城王が左大臣・藤原武智麻呂や参議・藤原房前と対峙するシーンも平安神宮境内。
• 真備が病人や死者、飢えた子など見る帰り道、一乗谷朝倉氏遺跡復元町並。玄�ﾑは惨状をよそに葛城王に会わせろと迫る。
• 放浪者たちが摘発され追われる道、若草山薄原。逃れた海蔵が、真備たちの耕す畑に逃げ込み匿われる。
• 疱瘡が猖獗をきわめ、多数の死者が荼毘に付される野原、不明。
• 教育係を仰せつかった真備が内親王に政治の話をする野原、若草山(鹿入り)。
• 橘諸兄から仲麻呂に乗り換えた玄�ﾑが酒色に耽る仲麻呂の館、門は平城宮跡東院建部門。
• 海蔵の過去を聞かされる、行基の架橋現場、不明(河川中流部、流れはけっこう早く、川中の石は大きいが丸い)。
• 阿倍内親王の立太子、平城宮跡大極殿。
• 広嗣の乱、挙兵の大宰府近くの野原、不明(崖の下の広場)。
• 都を出てゆく聖武帝、朱雀門を出て南へ。門越しに大極殿がちらり。

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後編　　2010.4.10

　仲麻呂が勢力を伸ばし、専横を極めたのち滅びるに至るプロセスを主軸にドラマが進む。偶像の意義は、その大きさにあった。

ロケ地

• 恭仁宮、不明(谷あいの里を遠望し合成?)。
• 光明皇后に大仏造立を命じられた諸兄が、真備にその困難を愚痴る宮の庭、大覚寺遣水跡(草地で安積皇子が打毬に興じている)。
• 行基が用水路工事を施工している、泉橋院近くの野、瑞穂造成地。
• 行基のもとにいる優婆塞たちの僧侶昇格は難しい旨を真備に告げる阿倍内親王、不明(谷川畔、二人は川に突き出した大岩で魚釣り。淵の色が清滝に似る)。
• 狐狩りと称して大王を連れ出し、行基に会わせようとする真備、途中で襲撃を受ける道、不明(植林杉の林道)。
• 聖武帝の回想、幼時父帝の平癒を祈った巨樹、春日山原生林。
• 行基が大仏造立への助力を応諾したあと、泉橋院境内を歩き話す真備と阿倍内親王、安楽律院。いくつかのグループに分かれて火を囲んだ優婆塞たちが本堂南の広場で読経する間を、二人が歩む。迎えが来て内親王が去ったあと玄�ﾑが出現するのは、広場南西端の斜面(宝筐印塔の下、老椿の脇)。玄�ﾑと真備が互いの思いをぶつけ合うシーンは下鴨神社池跡へスイッチ。このシークエンスは全て夜間撮影。
• 盧遮那仏造立の詔を拝聴する諸官、平安神宮(背景に鴟尾つきの甍)。各地でなされる布告風景、行基が民を説く丘は瑞穂造成地、高札立つ街路は一乗谷朝倉氏遺跡復元町並、土手下の里は大堰川河川敷。
• 詔のあと、難波宮へ向けて発つ大王一行、下鴨神社馬場。列から離れて恭仁へ戻る安積皇子が通る道は不明(落ち葉降り積もる崖際、酵素か)。
• 真備に呼び出され泉橋院へやって来る仲麻呂、優婆塞らに下馬を求められる道は酵素ダートか。
• 平城京へ戻る民衆がゆく街道、大堰川堤。
• 大仏造立現場、西別院町某所。
• 玄�ﾑが暗殺される大宰府近くの野、瑞穂造成地か。
• 行基から仲麻呂についての不満を聞いての帰り、真備が通る林、不明(雑木まじりの竹林に「巨石」のアレ)。ここから歩いて大仏現場へ向かう坂、不明。
• 阿倍内親王が登極する大極殿、平城宮跡大極殿。両脇の建物等合成。
• 開眼供養が執り行われる大仏殿、甍はCGで大仏は凝った拵えもの。
• 遣唐使船が漂着しかろうじて帰還する真備、再び仲麻呂の策略で大宰府へ飛ばされる真備、およびそこから帰還する道、不明(野原、全て同所)。
• 恵美押勝の乱、会戦(愛発関の戦?)の野、不明。三尾崎に陣取り指揮する真備、不明(丘の上)。負傷した仲麻呂が辿り着く湖畔、琵琶湖西岸(汀にはヤナギ、真備が駆けつけるシーンには河口州の広野)。

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　大仏造立プランの起こりは玄�ﾑ。権力を手に入れたら天をも突く大きな盧遮那仏を作りたいと、帰朝早々真備に語る。入唐時、洛陽近くで山全体が仏像な大仏を見たことがきっかけで、それに祈って「力」を得たと嘯く。「母御前」宮子経由で大仏造立を思い立った聖武帝が見たのは、河内の盧遮那仏←続日本記に記述あり。

　色欲名誉欲てんこもり俗物の玄�ﾑと、唐からの帰り船で一緒になった真備。オレの法力で海難から助かったと、恩着せがましく言い立てる玄�ﾑは、真備に葛城王への紹介を強要。真備はその頃、安倍内親王から太皇太后の病状を見せられていて、治療可能かと思って紹介する運び。しかし玄�ﾑは宮子婆さまをマインドコントロール、大仏造立を使嗾。聖武天皇は今まで一度も母親とまともに口も利けてなかったもんだから、「治った」ことにメロメロ←玄�ﾑ好き放題。「破戒僧」はこのほか、真備の耳元で安倍内親王とヤっちゃえとか囁いたりもするが、希った大仏の完成を見ずに儚くなる。バラバラのパーツが奈良に降ってくるとかの描写は無し。

　仲麻呂は、新帰朝の真備にいち早く目をつけ自陣に引き込もうとするが、本人の性格・思想指向に加え、お邪魔虫玄�ﾑのせいで頓挫、敵対。しかし、広嗣の乱勃発で仲麻呂まで挙兵するのを回避するための、遷都の旗持ちせよとの真備の勧告を受け、諾す。これは真備が殺されかかるぎりぎりの折衝で、緊迫のやりとりが見もの。

　安倍内親王は、真備が大后のもとに来た出会いの日、物慣れぬさまを軽薄な若者に同調してからかい、ぴしゃりと返され鼻白む。しかしすぐに真備の能力に全幅の信頼を置いて頼り慕い、果ては「一生ついてこい傍に居ろ」と「命令」。ファザコンぎみで、真備の意見を容れる際もいちいち「お父様もそうおっしゃってたそうお考えになられていた」と一言付け加える。このためもあってか藤三娘の母后とはスタンスが異なり、皇族中心指向。後編で描かれる、真備との恋を諦める姿は哀切。