三隅研次監督作品 1959大映
貧乏御家人の入り婿が妻を見返り、組頭の娘を娶る段で起こる惨劇。根幹の筋立ては他の作品と同じだが、長谷川一夫が主役ゆえ伊右衛門は極悪人ではなく、悪友にたばかられて悲劇を出来させる運びで、おどろおどろしい場面は少なく抑えぎみ。
- 民谷伊右衛門/長谷川一夫 貞淑で夫が役付きになることを望む妻を少々疎ましく思うも、気には掛けていて櫛も買い与える。若党の小平にはマジで嫉妬したり。
- お岩/中田康子 流産ののち体調を崩し寝込みがち。鉄漿施し、化身は蛇。
- お梅/浦路洋子 乱暴者から助けてくれた伊右衛門に一目惚れ、遂にゲットするも新床でバッサリ。
- お袖/近藤美恵子 岩の妹、夜は湯女風呂でバイトして結婚に備える。直助の魔手からは逃げ切り。
- 小平/鶴見丈二 岩への情募り抱きついたり。岩と戸板に括られ隠亡堀へ。
- 与茂七/林成年 店を持ち袖と結婚するため精出して行商、彼に悪の手が伸びることはない。
- 直助/高松英郎 岩に毒を盛る企みはこやつが考案、袖の計略にかかり悪事を開陳。
- お槇/村田知栄子 袖の乳母、直助と組んではかりごとを巡らす結構悪いおばさん。
- 秋山/杉山昌三九、関口/須賀不二男 伊右衛門の悪友の御家人仲間、金目当てで袖に取り持つ。
- 伊藤喜兵衛/嵐三右衛門 袖の父、はじめ伊右衛門をすげなく扱い笑いものにした作事方組頭。
- 宅悦/東良之助 ただの按摩で悪事とは関係なし、民谷家に出入りし岩を揉み療治。
ロケは無し、全てセット撮り。民谷家や袖を助ける茶屋など、よく作りこまれて美しい。
隠亡堀はさほど陰惨ではないが、髪が絡みつく場面はサルガッソ海みたいで気味悪し。
|