第二シリーズ
初春火の用心/居残り/母の仇討ち/北国の人/雲隠れ/仕官の罠/白魚の吉次/賞金桜/駆け込み/おみえなし/あんぶれらぁ
OPロケ地
本所のイメージに八幡掘東縁。
釣りの斬九・大沢池。
お城に彦根城佐和口多門櫓。
走ってくる斬九・仁和寺中門。
第1話 初春 火の用心 1997.1.8
正月早々、火付けが横行、夜回りは斬られるという事件が続発。そして、昨年の材木商の火事の件を気にしていた蔦吉の養父が暗殺される。
事は、公共工事で大儲け企む材木商が、ライバルを消し放火で木材の高騰を目論むという悪辣なもの。事件の核心に迫る斬九郎には、母をさらって脅しをかけてくる。これに蔦吉と語らって乗り込む斬九、加担させられていた旗本はワルの材木商を斬り、自刃して果てるという結果に終わる。
ロケ地
- 夜回りのバイト中「七」と書いた半纏を見た斬九郎が中組の若頭・音吉と事を構える堀端、八幡堀明治橋たもと。
- 植辰の死体が発見されるのは大覚寺護摩堂脇石仏の囲いの中。
- 音吉が斬九に「秘めた恋」を語る夕暮れの水辺、大覚寺大沢池堤水門そば。
- 麻佐女さまを監禁の浦田屋向島寮、中山邸(門、参道、通用門)。
- 事後、蔦吉のことを問われ相生町の親分のコレと誤魔化す斬九、このネタに母子大爆笑の同刻、くしゃみをしている佐次、心経宝塔前にセットの縁日。
- 墓参の蔦吉、帰途斬九と歩く石段、粟生光明寺参道石段上部(本堂大屋根が映りこむアングルあり)。
■黒羽織がひらり 一触即発の中組の若頭・音吉と斬九の間に投げ入れられる蔦吉の羽織。新年早々火の見櫓がふたぁつ、と剣突。
■遅い 麻佐女を助けに入った斬九、母と蔦吉両方に遅いと詰られる、間髪入れず繰り出される台詞のタイミングが絶妙。
■どうぶつ 東八の大白猫、手酌で呑んでる斬九のお相手。夜回りの斬九に従う白犬も可愛い。
■雪 養父の死に遭った蔦吉を気遣う斬九、雪の夜、橋の上すれ違いざま「お前さんに密かに思いを寄せている奴もいるからな」。
第2話 居残り 1997.1.15
佐次たちと吉原に登楼ったはいいが金が無く居残りとなる斬九郎。薪割りに拭き掃除、妓たちの営業の文の代筆と甲斐甲斐しく働き、馴染む。そのうち、道中の朝霧太夫に斬りかかった男を阻み喝采を浴び、ますます馴染んでゆく「斬さま」。
事件の裏には奥州某藩の国許と江戸表との確執あり、秘密裡に町方も出張る。花魁襲撃の内実は、朝霧太夫に岡惚れし藩金に手をつけた勘定方と、心ならずも袖にした朝霧太夫の悲恋。
ロケ地
- 居残りの斬九のため蔦吉に借金を申し出る佐次、大覚寺大沢池畔〜放生池堤。
- 花魁道中などの吉原の情景はみろくの里と思われる(クレジットあり)。「なか」の描写、ビジュアルはもちろんのこと、音も秀逸。拍子木、見世清掻、拍手、縁起棚の鈴がテンポよく配される。
■斬さま これほど遊里の似合う男もあるまいと思われる蕩児・斬九郎。敵娼だった小鶴とのやりとりが泣かせる。
■母上 佐次シメて息子の居所を知り、かんかんに怒って乗り込んでくる麻佐女さま、豪華なお膳にイチコロ。楼の法被羽織ってにっこり。
第3話 母の仇討ち 1997.1.22
父の仇を求めて国を出たまま音信不通となった息子を探して、江戸にやって来る母。仇を探す労に倦み一時グレるも、伴侶を得て日々を送る息子。
会わせぬままが良かったか、それでも信念は変わらずだったか、武家の女としての矜持を貫いた母は単身仇を討ちに行き果てる。そして「母」に弱い斬九、倅と名乗って仇討ちを果たす。
ロケ地
- 息子の家で嫁を見たあと、神社でお御籤を引き別れる母子、神光院本堂。
- 仇の駕籠を襲う母、大覚寺大沢池堤。仇討ち斬九、大覚寺五社明神。
■母 有り金持って湯治に行ってしまう麻佐女、入れ替わりにやって来る猛母。斬九たじたじ。
■オネガイ せっかくの麻佐女不在に説教臭い女を連れてこられてクサる斬九郎に、蔦吉必殺の流し目で「お願い」は男殺し。
第4話 北国の人 1997.1.29
斬九郎そっくりの侍が現れる。彼は、佐竹藩城代家老の不正を記した密書を江戸表の君主に届ける役目を負っていた。蔦吉の引き合わせで顔をあわせる二人、斬九の一計で佐竹藩江戸留守居役をハメて、密書は無事殿のもとに届く。
ロケ地
- 蔦吉が斉藤蔵人の斬り合いを見て、太刀筋から別人と気付く夜の祠、大覚寺五社明神。
- 斬九郎と蔵人を引き合わせる蔦吉、大覚寺天神島(嵯峨帝歌碑、祠)。
- 蔵人の回想、佐竹城下で村川頼母が暗殺される雪の日、三井寺唐院脇の坂(三重塔、一切経蔵との間の石橋)。
- 佐次たちが斬九の佐竹藩邸潜入を手伝ったことを怒る蔦吉、上賀茂神社ならの小川神事橋。
- 佐竹藩の依頼でかたてわざに趣く「蔵人」を乗せた駕籠がゆく道、上賀茂神社ならの小川畔。
- かたてわざの場所に設定され「斬九」と殿の寵姫が括られている、下鴨神社糾の森池跡(導入部、倒木越しのアングル)。
- 蔵人が密書を持って馬をやる道、嵐山自転車道。
■かかさま 蔵人を匿うのに自宅へ送り込む斬九、母には黙ったまま。すぐに見破られ薙刀、しかし蔵人の「かかさま」にホロリ麻佐女さま。事後、蔵人から届いた手紙に「かかさま」と暮らした日々は楽しかったとあるのを見て、斬九と比較し嫌味を言う麻佐女さまに憎まれ口叩く斬九「わたしの知らない兄弟が他にも」に即薙刀、激しくのけぞり、いつもの立会いの際の褌チラリどころではなく足丸出しでひっくり返り「あいや、暫く」。
第5話 雲隠れ 1997.2.5
戦国期より伝わる妖刀・雲隠れを得物に跳梁跋扈する復讐鬼、川添小平太。無実の罪を着せられ、妻子を目の前で斬殺された彼が、最終的に狙うのは斎藤家江戸家老・三谷帯刀。
三谷は川添の始末を「かたてわざ」を依頼し始末しようと、斬九を動かす餌に蔦吉をさらう。しかし川添とともに斎藤対馬守邸に現れる斬九郎の刃は、三谷たちに向けられる。
そして事後、仇討ちを遂げた川添と対峙の斬九、妖刀とともに抜け殻の鬼を両断し幕を引く。
ロケ地
- 子らと遊ぶ出勤前の蔦吉を見る川添、仁和寺塔前〜中門。
- 斎藤対馬守を大手門下に襲う川添、二条城本丸櫓門(内→外→側面)。大立ち回りの坂は大谷祖廟参道。
- 斎藤対馬守邸、随心院長屋門。
- 妖刀のことを斬九郎に話す西尾、仁和寺観音堂。
- 妖刀での惨殺死体を検分の西尾たち、仁和寺塀際疎林。
- 蔦吉が三谷らにさらわれる夜道、八坂神社境内。
- 蔦吉を預かったとの川添からの文を見て走る斬九郎、仁和寺中門。事後、ススキ原で川添と対峙の斬九郎、木津河原か。
■美術 それぞれに対馬守邸に向かう斬九と川添、町は大風から嵐になるくだり、不安を掻き立てる背景の、漸次強まる嵐を表現するセットが秀逸。
第6話 仕官の罠 1997.2.12
斬九郎に来た大田原藩からの仕官話、実は大騙りで、身持ち悪すぎの城代家老の息子の首の代わりを務めさせようというもの。一方、麻佐女のもとにはその暴れ者の子を孕んだ女が転がり込む。女の純情を踏み躙り、売り飛ばそうとまで企む馬鹿息子、事を掴んだ斬九郎は企みを阻止し斬って捨て、藩邸に乗り込み江戸家老もぶっすり。こちらは自刃を偽装。
ロケ地
- 麻佐女が帰る際くぐる大田原藩邸の門、随心院長屋門。おきくが様子を窺うのは大乗院東塀際。
- 切腹の場がしつらえられている藩邸の庭、相国寺大光明寺石庭。閉められた中仕切りの向こうに斬九の剣戟がちらちら見える絶妙のアングルも。殺陣は随心院長屋門へ移動、内と外を使用。
- 事後、葛飾の在へ歩くおきく、山室堤道。
■三味と鼓 かつかつと鼓を叩く麻佐女、不協和音を上乗せの息子の三味に激怒、叩き折ろうとするが、息子に家宝の鼓取られ休戦。
■可愛く拗ねる ストレートに斬九の不実を嘆くが黙して去る須美、悪態をつきぽんぽん殴ったあとおんおん泣いて見せるがべぇっと舌出す蔦吉、思いの丈いずこが深きか、裏の裏に秘めた思いは、直球にては出せず。
第7話 白魚の吉次 1997.2.19
掏摸の吉次と知り合う斬九郎、この伝手で武田の埋蔵金の話が出てノる。親を亡くし叔母に会いにゆく娘を送ってゆく吉次と共に甲府まで出向く斬九、忍びの襲撃、庵主の冷たい視線にも掘る掘る。そして、鶴塚からは鶴が出て万両ゲットは泡と消え、ついでっぽい感じで仇討ち代行の甲府勤番支配斬殺は自死仕立て。
白魚の吉次役の田中邦衛うますぎ、斬九も蔦吉も食われるほどで空気を支配。
ロケ地
- 佐次が吉次を張り込む黄菖蒲咲き乱れる堀端、八幡掘明治橋上手。
- 甲金の件を千江に聞く吉次、広沢池東岸夕景。
- 大黒屋が浪人らに甲金両替終了を告げる別業、中山邸通用門。
- 甲金がらみで殺された浪人の死体が上がる浜、大覚寺天神島。
- 欲かき斬九が浪人を探す途次忍びに襲撃される町角、北野天満宮文子天満宮。
- 叔母に会いに行く千江についてゆく斬九と吉次、甲府の見える峠は谷山林道切り通し。
- 甲金目当てに掘る掘る松風庵、鳥居本八幡宮鳥居下広場。
- 西尾がガサ入れの大黒屋の蔵、大覚寺明智陣屋前の蔵。
- 甲州から帰った吉次が船をおりる浜、八幡掘新町浜。吉次が蔦吉に紙入れを戻すのは白雲橋上。鰻屋に入る斬九と吉次、船橋付近のかわとに店セット。
■面長の魚はもう見飽きた 来ていたかたてわざの話がポシャり落胆の母子、メザシの日々。甲府から万両持って帰ると吹いた息子の土産がヤマメ、に吐いた麻佐女さまの言。
■キョロロロロロー 甲州街道をゆく一行のSEに使われた鳥の声。棲息地も合っていてマル、のアカショウビン。
第8話 賞金桜 1997.2.26
十人の娘が次々むごたらしく殺される事件が続く。手口は常軌を逸している。
捕まらぬ犯人に業を煮やした角屋は賞金五百両をかけ、賞金狙いの浪人が群がり送り狼となる者も出る始末で深川界隈は大混乱。
斬九郎は角屋と昵懇の浪人剣客・源内十郎と共に犯人を追う。蔦吉が襲われた際に作られた人相書きから犯人は山犬新兵衛と知れるが、これがとんでもない狂犬で通った後は死屍累々、遂に追い詰め捕えるが斬九は喉に噛み付かれる始末、しかし十人の殺人のうち二件は別口であった。
ロケ地
- 角屋の内儀の死体が発見される桜林、仁和寺塔前。
- 山犬を追い詰める寺、粟生光明寺(本堂と方丈間の回廊、本堂前)。
■きれいに咲いてるもの 用心棒してやろうという斬九郎、目当てが金と知り詰る蔦吉、姥桜と捨て台詞吐く斬九に拗ねる。
■食い物のことしか 花見の重取り寄せ贅沢三昧/賞金五百両もみんなとられ料理屋の払いに・斬九には「お駄賃」が一両。
第9話 駆け込み 1997.3.5
斬九郎の家に「駆け込み者」、麻佐女は清げな若侍を歓待、迷惑がる息子に家訓を読み聞かせる。その侍・速水慎吾は萱野藩江戸家老と勘定方支配の汚職を暴こうとする者で、斬九のかたてわざの評判を聞いて選んで駆け込み。斬九に親友の岩井津藩士・都築への連絡を依頼する。しかし都築は速水が藩邸に駆け込もうとした鼻先で門扉を閉めてしまうのだった。門前で膾となった速水の懐からは血染めの国許への訴状、遊蕩のため親友を裏切った都築に斬九の断罪の刃が振り下ろされる。
ロケ地
- 都築を藩邸に訪ねる蔦吉、金戒光明寺禅堂と東坂。蔦ちゃんと斬九が道場を覗き込む導入部には三門を使うなど凝った画面。
- 殺された女・お葉のことを聞き込む佐次、広沢池東岸(閉鎖された料亭の玄関も映る)。
■あたしは旦那の懐炉じゃござんせん 斬九が金を渡すのに、そっと一枚胸元へ返してやる蔦ちゃん、甘やかしているのか手玉に取っているのか。
■松平! 速水が駆け込んできた経緯を語るのに芝居仕立てで舞い歌う麻佐女に扇で床叩き調子あわせ「松平!」と声を掛ける息子、ちょっとゲンナリ。
■猫 速水に贅を尽くした食事を出す麻佐女、しかし息子の膳にはメザシと漬物、こんなもの猫でも食わないと悪態つく斬九の背後で猫がメザシをむしゃむしゃ、朝飯食いそびれる斬九。都築を斬ったあと東八の前に立つ斬九、入りあぐねる足元に白猫、隙間あけてやり自身はそのまま立ち去る。東八の親父の心遣いも憎い。
■ラス立ちの美 都築との立会いの灯籠、光源の向こうからうっそりと現れる斬九、セードから八方に放たれる光のもとのチャンバラ。ほぼシルエットなのがたまらなく美しい照明の巧、時代劇の典型と言ってよい流麗な殺陣を演出。袈裟がけ・抜き胴で仕留めたあと抜刀姿勢のままキメる着流しの裾をさばいた姿も美しい。
第10話 おみなえし 1997.3.12
女郎に入れあげる弟分の隠密回り同心を案ずる西尾が、斬九に女を籠絡するよう依頼、どこかぎこちない斬九の女郎屋通いが続く。悲恋に終わる儚い恋を情緒たっぷりの映像で描く。
ロケ地
- 女郎花咲き乱れる水辺に佇む巴屋のお涼を隙見する斬九と蔦吉、大覚寺天神島(北の水路と大沢池に挟まれた部分をうまく掘割に見せて撮ってある)。
- 佐次が蔵番所で見かけ追った男が殺されて発見される現場、五社明神、男は北町の隠密回り同心。
- 数馬がお買米の不正の書付を渡すが斬られてしまう深川閻魔堂、鳥居本八幡宮。
- 数馬とお涼に女郎花を手向ける斬九、広沢池?周囲映らぬ夕照の景、西日が真横にきているから広沢池と思うが…。
■結局母に頭が上がらない息子 夜遊びのあと昼前まで寝ている息子に結構なお頭つきと嫌味たっぷりに鰯をむしる麻佐女さまに「子の心親知らず」「親の顔が見たいわ」とこそっと毒づくが鼻先に薙刀が突き出される。このあと事件のキイとなる和歌を判じて貰うのに差し出すは魚善の鰻重(松)。鰻に一礼し「御無沙汰しております」の麻佐女さまが傑作。
■ジェラシーも可愛い お涼のことはちょっとマジだったのではと問う蔦吉、「蔦に絡まれりゃ本望」「ばか」。
■挿話のひとつひとつが深い お涼の歓心を得ようと百人一首をお勉強の斬九郎、俄仕込みゆえ次の句が出て来ず後架へ駆け込みアンチョコを確認「昔はものを、ムカモノモノ」と呟く姿が傑作。数馬とお涼の仇を斬って捨てる際の鍔を真っ二つにする殺陣との落差が…斬九の魅力か。小道具の狸に似た野良犬もいい味。
第11話 あんぶれらぁ 1997.3.19
山谷掘の主のような夜鷹に、殺人を依頼される斬九。また、ターゲットの番頭の店で女将にも殺しを依頼される。抜け荷も絡んだ揉め事の元には、女房と愛人を利用し、己の手を汚さず邪魔者を片付けようとした商家の主がいた。
ロケ地
- 夜鷹に扮した吉原の南蛮遊女・雲乃井が佐次を通じ斬九に殺人を依頼する山谷掘、上賀茂神社ならの小川・神事橋下。
- タイトルバックに八幡掘白雲橋。
- 屋形船でツナギの斬九・西尾・佐次、大覚寺大沢池舟着。
- 雲乃井が入ってゆく根岸の寮、中山邸門。
- 麻佐女があんぶれらぁを差し楽しげにゆく縁日、松尾大社楼門前に縁日セット。
■才女の癖にミーハー 英語を解読し捜査に貢献の麻佐女さま、しかし動機はあんぶれらぁ欲しさ。これをさして得意気に縁日をゆく老女のうしろを思いっきり被害者面の須美どのがゆく対比が傑作。斬九の「ブリ天」につられ「エビ天」とつらっと言ってしまう麻佐女さまも笑わせる。
→御家人斬九郎 視聴メモ表紙
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