第五シリーズ 第1話 迷惑な忠義者 2001.11.13 主持ちの侍の忠義と、市井に生きる御家人の正義は、最後まで平行線を辿る。 ロケ地、舟津屋と約した屋形船にその死体を見る斬九、大覚寺大沢池舟着。襲う刺客を撃退し追う斬九、五社明神。通りかかった態で出てくる小松新十郎、閼伽井前。佐次の報告を聞きながら石段を降りる斬九、神護寺石段。麻佐女に図り坂崎邸へ赴く斬九、母の駕籠の供をしてゆく路地は妙心寺福寿院への路地。この前に立ちはだかる小松、海福院前路地。小松が出てくるのは大通院裏のクランク。坂崎邸、衡梅院門。 *スクエアさで斬九を閉口させる忠義侍に火野正平、往年の明るい走り役ぶりは鳴りを潜め、冷徹な堅物を渋く熱演。持ち味の軽妙洒脱なアドリブも無し、襟元も緩めずきっちり、足袋もちゃんと履いている。路地での殺陣も、二合で決まるシンプルさがなかなか。ラスト、斬九にわざわざ別れを告げに来るシーンの笑みには昔の面影がのぞく。 第2話 箱根の鬼 2001.11.20 鬼蔓の伝吉を箱根に受け取りに行った雷おこしが、伝吉の手下に襲われ行方不明に。江戸へ戻ったお供の佐次は斬九郎に助力を要請するが、ストレートには受けないひねくれ者…と見えて実は西尾の立場を慮ってのことというへんが泣かせる。 ロケ地、伝吉を護送してくる韮山代官所の行列、谷山林道杉林。西尾と箱根関所役人に引渡しが行われるのは切り通し。その後護送の列が襲われるのは保津峡落合崖上の道。西尾が谷に落とされるのは落下岩。箱根の湯治場、みろくの里オープンセット。西尾が失跡の現場を検分の斬九と佐次、落合河口(西尾がおはるに助けられたのも同所)。 *箱根行きを渋る斬九、おえんや蔦吉にボロクソに罵られるが、なぜかりよ殿だけは信じていて佐次の旅支度を整えてあるのが笑える。*蔦吉が紛れ込む一座の役者崩れの和七郎に三ツ木清隆、なんでこんなにオカマが似合うのか。*手品仕立てで伝吉を見せつける際、斬九郎が別の箱から土蜘蛛の糸を投げて現れる趣向も傑作。 第3話 最後の忍者 2002.1.8 斬九郎が拾った奇妙な老人は、なんと忍び。永く仕えた女主を亡くした彼が形見に貰った笛、これに先君の隠し金のありかが隠されていて狙われ、母に金を届けにゆく斬九と共にする道中には里入りも含めて忍者出まくり。最後は老忍が辿り着いた女主の生家で、爺さんも忍び技を駆使しての大立ち回りが繰り広げられる。 ロケ地、麻佐女さまがご満悦の鬼怒川温泉、摂津峡の露天風呂。老忍を一晩屋敷に泊めた斬九が奇怪な忍者たちに連れ込まれる、下鴨神社池跡。その前の縁日は馬場にセット。日光街道をゆく斬九と爺さん、忍者群の襲撃を受ける小休止の水辺は柊野堰堤落差工下。見張りがこれを見下ろすのは保津峡落合落下岩(見上)。その後街道筋と襲撃場所に摩気橋(橋上)、摩気神社(境内)、摩気民家裏手畑地、鳥居本八幡宮(舞殿、広場、石段下)。老忍の亡き女主の生家(廃墟)、酵素民家セット(脇に水車セット)。 *忍者の描写が秀逸。狙ってくる主体の連中は歌舞いた妙ちきりんな格好、宿の飯炊き女や村の子供が里入りの草という「茶店地獄」みたいなくだりが見もの。ラストの大立ち回りでは、セットを一部破壊しての迫力ある場面が連続する。*レギュラーメンバーは、斬九郎も含めお遊び要素たっぷりに描かれフレームを形成する。 第4話 盗賊見習い 2002.1.15 雷おこしの依頼で、佐次を斬る芝居までして盗っ人の懐に入り込む斬九郎だが、はじめから正体を見抜かれていて、まんまと三万両もの金を盗られてしまう。 ロケ地、斬九と佐次がツナギをとる田原町の天神さんの梅の木、北野天満宮本殿東側の木。材木商から三万両を奪ったあと、船着きで置き去りにされる斬九、嵐峡左岸船着き。捕り方入り捕縛される長五郎の手下の墨染の道達の寺、西明寺(境内〜門内側、斬九と長五郎が様子を窺うのは築地前)。 *佐次親分の「死体」は現場から東八に運ばれ、りよ殿が号泣。その後これは芝居とむっくり起き上がった親分、怒られ「悲しませてごめんなさい」と蚊の鳴くようなトーンが可愛い。でも八重ちゃんにこれは鶏の血だよなんて余計なことを。*斬九が岡っ引を斬って女と逐電、に麻佐女さまは白装束に着替えお家取り潰しの沙汰を待つ。真実は黙っていようとひそひその西尾夫妻の話を聞いたか、その後心痛のあまり抜いた二食分を取り戻すため「河豚など食したい気分じゃトラフグがよい毒にて死ぬれば本望じゃ」わかってやってるに違いないお袋さま。*今回風邪引き設定で姿を見せない蔦吉、斬九がからかうのに投げた濡れ手拭のみで台詞も無し、しかし存在感あり。 第5話 ゆうれい長屋 2002.1.22 収録はH11.1のテロップ 芝居仕立てのSEがフレームとなる、コミカルな一作。 ロケ地、醍醐三郎邸、妙心寺衡梅院門。醍醐を尾行する佐次親分、妙心寺玉鳳院前路地。 *貧乏長屋でしっぽり差し向かいの斬九と蔦吉、しかし麻佐女さまが来てワヤ。その都度押入れに籠められてしまう蔦ちゃんなのだった。長屋でのコミカルなやりとり、名言続発。縊れて死んだ前の住人の食器を平気で使う斬九に呆れる蔦ちゃんに「洗ったよ」などなど。*冒頭、斬九に付きまとう掛帳を首に掛けた「付け犬」柴犬が可愛い。また、これが門前に座り込むのに「暫時お待ちを」の応答も楽しい。 第6話 捨値五両 2002.1.29 おカネのことから仇討ちに関わってしまう斬九、仇のほうを匿う羽目に。兄の仇とこれを付け狙う若侍は女たちに気に入られ、斬九立場無し。そのうち知れる、仇とされる冴えないお納戸役の無実、重役が加担しての公金横領。藩からも真の標的・若侍の叔父の側用人に追捕の手伸びるが、お納戸役の、年下の頼りないあどけない妻女は自害の悲報がワルの側用人によってもたらされる。 ロケ地、質入れした鼓を請け出すため、自身に値札をつけ縁日で「お侍の御用は」と呼ばわる斬九、金戒光明寺三門。殺された徒歩目付の同役に朱印を見せ協議、仁和寺塀ぎわ。ラス立ちのブッシュと砂河原、木津と思われるが確定要素見出せず。 *妙に女たちの気を引いて同情あまたの若侍、舟久トリオからりよ殿、るい殿から果ては麻佐女さままでメロメロ。もちろんクサる斬九、子供じみた悪罵「女が三人も四人も五人も/もうおめぇらとはクチ聞かね」。 第7話 母の夢 2002.2.5 斬九に降って湧く鍋島藩留守居役の娘との縁談、諸氏を呼びつけてのそれにカチンと来た斬さまは娘を面罵、説教して去る…が却って気に入られたり。同じく話のあった鍋島藩の若侍の母が現れ、麻佐女と斬九に辞退せよと迫る。この猛母、麻佐女さまの幼馴染で幼少時の恨みつらみをブチまけまくる。猛母を持って相身互いと動く斬九郎、ことは鍋島藩のお家騒動と関わってゆく。 ロケ地、見合いの寺、随心院本堂(大木の娘が欠伸をする縁先を池越しに・斬九らが控えさせられているのは表書院)。斬九がむっさい格好を作って断られに赴く大木隼人正邸、相国寺大光明寺門。倉林母子が斬九を呼び出す回向院本堂裏、下鴨神社糺の森池跡。大木の娘・吉乃が拉致される道、金戒光明寺善教院前坂。大木隼人正が妻の実家の墓参中襲われる、金戒光明寺本堂裏墓地。吉乃が連れ込まれる肥前屋の寮、中山邸門。 *麻佐女の幼馴染を務めるは藤村志保、林隆三の万吉相手に芸者の小左門姐さんを演じていた姿が蔦ちゃんに重なったり。*斬九の見合話を聞いて変調蔦ちゃん、舟久でお掃除は水ぶちまけ、東八で手伝いには食器パリーン。可愛すぎ。でも拭き掃除しながら歌うのは「かんかんのう」…。*見合を強要する麻佐女さま、言うことを聞かねば「舌噛む!」に息子は「…噛め」、絶妙の間が笑わせる。*吉乃に「嫌われる」算段に四十年女無しの佐次親分に秘訣を聞く…佐次、ハイとか言って「まず、しばらく風呂に入らず人前で歯をせせり屁を」このアドバイスに倣ってのスタイルは泥足…。 第8話 乱調 麻佐女 2002.2.12 富商の祝言の宴に鼓を所望された名手が、相方の笛の吹き手を選ぶ際名手ながら音色に険あると看破したその慧眼は、過たず正体を見抜いていた。 ロケ地、麻佐女さまが庄三郎とデートの高田屋自慢の庭、梅宮大社神苑(八ツ橋、池中亭、入口門)。庄三郎を待ち受ける斬九(夜)、粟生光明寺山門と石段下部。盗賊同士の抗争の果ての死体があがる川、桂川堰堤下。検死は中州下(中ノ島橋バック)。佐次が庄三郎の件を報告、粟生光明寺石段上部(昼)。 *庄三郎に林与一、老いて尚色気たっぷり。笛方の所作もいいが、上方の「本格のお盗め」のかしらとしての台詞の関西弁も新鮮「仇討ちや!地獄へ送ったるで」。*男に心揺れる麻佐女さま、庄三郎に触れた手を愛しむ姿や、こっそり派手な紅をさすところは些か気持悪めに描かれるが、可愛さ横溢。 第9話 冬木町の女 2002.2.19 奔放で思い込み激しく、斬九を自分の男と触れて回ったりする天然系の女・おつや(美保純)。しかしその振る舞いは、島流しになって帰ってこない男を待つ女が、束の間甘えてみたいじらしさ。捕物のため斬九の頼みを受け、身を危険に晒しつとめを果たした女への「ご褒美」のデートは、付きまとっていた馴染客の嫉妬の刃に血塗られて終わる。 ロケ地、島井の弥五郎一味が裏切り者を刺す川、および酔ったおつやが斬九郎に拾われる小川、上賀茂神社ならの小川神事橋下。介抱してくれたお礼に来たおつやと茶店で団子を食う斬九、神光院茶室前(池と橋越しに本堂)。まとわりつく新八をすげなく突き放すおつや、神光院蔵前。雷おこしの依頼でおつやに頼みごとをしようとして菖蒲市へ行こうと切り出す斬九、広沢池東岸。佐次の姿見て事を察知し、捜査協力を申し出るおつや、神光院中興堂東面縁先。斬九と蔦吉が参るおつやの墓、広沢池東岸。 *蔦吉に嫉妬し突っかかる場面もあるおつやだが、刺されて息絶え絶えの彼女は枕頭に蔦吉を呼び寄せ話す。その真意は、借りていた斬九を返すというものだったろうか、応えは途切れ悲しい女は眠りにつく。 第10話 最後の死闘 2002.2.26 シリーズ掉尾を飾るスペシャル版。渡辺謙自身がメガホンをとる一作。 ロケ地、久方ぶりに訪ねてきた兄を見送る斬九郎、妙心寺福寿院への路地〜八幡掘新町浜。もの言いたげに兄が渡る橋、明治橋。メリケンのキャプテン接待の屋形船、八幡掘掘割〜舟久下の舟着きは八幡掘東端のかわと。下河原藩邸、大覚寺大門、蔵、参道石橋。下河原藩家老・内藤が長野主膳と密談、粟生光明寺御廟への階〜本堂裏回廊〜方丈縁先。しばらく舟久へも東八へも立ち寄らぬと佐次に言い置き去る斬九、八幡掘明治橋・白雲橋間左岸の堀端。家老が斬九に会見を申し入れてくる白口橋天正寺、法然院山門、参道。死地に赴く斬九を待ち受ける蔦吉、上賀茂神社ならの小川神事橋。開化後の東京、人力車に乗った黒服の芸者がゆく道、龍谷大学大宮キャンパス。 *雷おこしと別れ、佐次の忠告も容れず、母の制止も振り切り死地に赴くくだりは、やはり見応えあり。雪はいよいよ降り積み、いつもの橋で待つのは蔦吉「貸すんですよ、傘。返しておくんなさいね」。The show must go on が鳴り響くなか、壮絶な殺陣も見事、裸足で雪上を走る若村麻由美の熱演もよし。何がどうなったとくだくだ語らぬラストも、長く続いたシリーズの最後には夢があっていいと思う。 |