佐伯清監督作品 1958.6.3東映
殿様が病臥中、姫に婿を迎えてという状況のさる藩で巻き起こる、お世継ぎをめぐっての大騒動。実は姫様は双子で、よそへやられた姉姫の方こそ正嫡と言い立てる次席家老は、家老と側用人を暗殺、その「姉姫」に替え玉を用意していた。
双子の姫は、もちろんひばりの二役。男として育てられた気風のよい兄哥と、聡明な姫君を好演。妹の恋の成就の陰で、きゅんと哀しい女ごころを見せるアニキが可愛い。
ロケ地
- 扇山藩江戸屋敷、大覚寺大門。江戸家老が吉三について報告を受ける段。
- 但馬国・扇山藩イメージ、山なみに天守書割。
- 扇山城を下がる夜道で暗殺される国家老や側用人、南禅寺僧堂坂。
- 扇山藩の殿様の密命を受けた若侍が馬を駆る街道、不明(山道、途中追っ手をかわす際には川を渡渉、河原は礫)。
- 江戸、神月邸、南禅寺開山師霊光塔所門。イメージのみ。
- 両国の川開き、見物の船が繰り出す大川、不明(湛水域、ロングの絵も)。この夜、花火の音に紛れて悪党どもが蠢く次第。
- 扇山さして旅ゆく吉三(女のなり)と又之丞+金八、琵琶湖西岸(石積護岸に守られた古い家並み、葦の生えた汀も。対岸に八幡の山なみ)。ここで「花笠道中」の一番が披露される。
- 偽雪姫を仕立てて街道をゆく江戸家老一派、不明(川堤、天井川の模様。河畔林は竹。湖西か)。
- 旅籠に三人川の字に寝て、吉三の夢想のくだり、又之丞と晴れて夫婦となり二人駕籠でゆく道中、不明(土手か)。ここで花笠道中の二番、「野田の案山子さん」が出る。
- 偽姫道中の後をつけていた若侍が露見し捕われる山道、不明(植林地)。このことを山樵に聞かされる吉三たちは峠の茶店、ここも不明(道は九十九折れ)。若侍が監禁されている小屋、不明(崖にセット、このあと岩石落としが来る)。
- 扇山城へ入る偽姫の行列、東映城か。
江戸屋吉三と千代姫は美空ひばり、千代姫の幼い頃からの許婚者・神月又之丞は大川橋蔵。雪姫を託された腰元(故人)の父で、吉三を育てた「父」の吉兵ヱは大河内傳次郎、悪党の凶刃に斃れる。吉三にくっついて歩く江戸屋一家の金八は星十郎、口癖はコケコッコ。又之丞の爺やは堺駿二。姫らの父の殿様は明石潮、暗殺される国家老と側用人は香川良介と中村時之介、三人とも悪人要素無し。国元の次席家老は柳永二郎、諸悪の根源で最後まで抵抗。江戸家老は沢村宗之助、娘を偽姫に仕立てるが始末されてしまい馬鹿を見たすえ自刃。その娘は櫻町弘子、雪姫として殿の御前に出るものの、双子の筈なのに似てなくていたたまれないという気の毒。江戸家老の下にいる悪事実行犯で、吉三に親の仇として狙われる男は吉田義夫。千代姫の侍女は三条美紀、殿の密命を受ける若侍は長谷部健、行商人姿も。白鞘組の乱暴者は清川荘司や月形哲之介など。
*美空ひばり芸能生活十周年を記念して作られた映画。
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