森繁久彌芸能生活五十周年記念番組 1983.11.12CX/東映
キャスト
田沼意次/森繁久彌 青山信二郎/北大路欣也 河合保之助(のち藤代家養子)/竹脇無我 田沼意知/西郷輝彦 新助(稲葉小僧)/松山英太郎 松平定信/村井国夫 松平十兵衛(勘定奉行)/伊吹吾郎 吉村隼人(松平家用人)/井上孝雄 小宮山伊織/和田浩治 徳川家治/長谷川哲夫 後註門道理(戯作者)/左とん平 藤代その子/叶和貴子 おはま/山口いづみ おさだ/吉澤京子 佐野善左衛門/船戸順 刺客/伊吹聡太朗・福本清三・小峰隆司 役人/中田博久 三浦庄司(田沼家用人)/芦屋雁之助 天王寺屋藤八郎/藤岡琢也 お滝の方/倍賞千恵子
原作/山本周五郎
腐敗官僚の象徴として語られるケースが多い、田沼意次の「リアル」を描くドラマ。到来の金品がうなっていると噂される田沼屋敷の内情は、側女が嘆くほど質素で、主の意次はろくに休みもとらず働きづめ。家族を犠牲にしても、己の評価を地に堕としても、やり抜きたい・やらねばならぬ仕事のある、引退など毛ほども考えないエネルギッシュな親爺も、台頭する新勢力に屈せざるを得ない時がやってくる。政敵は、周到な追い落とし工作を仕掛けていた。
旗本くずれの戯作者と、淫奔な天然系武家女との恋をからめて描く。
ロケ地
- 江戸城イメージ、皇居巽櫓。印旛沼干拓に関する評定が開かれるくだりで。
- 青山信二郎邸、中山邸通用門。役人が差紙を持ってきたり、閉門で竹矢来組まれたり。
- その子と信二郎が密会する中洲の料亭・やなぎ、二階から川を見る図の「流れ」は保津峡。大堰手前の左岸に「二階の手すり」を演出したものと推測、濁りの入った瀞が巌を噛む。
- 印旛沼視察のくだり、測量の船が出ていたり、卓を出して図面を広げたりしている水辺は広沢池西岸葦原。葦の間にスナイパーの新助が潜む(狙うものの的が移動して未遂)。
- 視察を終えた田沼が入る宿所、本法寺。仁王門を入り、寺僧の案内を受けるのは本堂縁先。このあと方丈へ通じる渡廊の北望の図が出て、廊の下に刺客三人が潜んでいる次第。刺客たちが「小姓は女」とひそひそ語らうのは境内の一角か。彼らと争う羽目になる保之助のシーンは、塔頭・尊陽院門前で南望の絵(映画村オープンセットと組み合わせ、細かく切り替わり)。
- 意知の葬儀が行われる寺、随心院薬医門。定信の配下が金をやって農民を使嗾し、門前に蓆旗を立てさせ投石させる。ここへ保之助が駆けつけ、門前で大立ち回り。門は閉められ、背中をざっくり斬られている保之助は一旦門扉に凭れたあとステップを下りてゆき、膾となって果てる。
- その子を呼び出し、保之助の自死とも言える最期の真相を聞く信二郎のくだり、桜花咲きかかる建物イメージは本法寺開山堂の甍。このあと映る、桜の花びら散り込む「流れ」は保津峡か。
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