田中徳三監督作品 1960.4.27大映
キャスト
備前介・酒天童子/長谷川一夫 源頼光/市川雷蔵 渡辺綱/勝新太郎 坂田金時/本郷功次郎 大和守/中村鴈治郎 菊王丸/中村豊 卜部季武/林成年 碓井貞光/島田竜三 平井保昌/根上淳 こつま/中村玉緒 桂姫/金田一敦子 観音菩薩/浜田ゆう子 千春/阿井美千子 茨木童子/左幸子 鬼童丸/千葉敏郎 九郎/伊達三郎 安倍晴明/荒木忍 袴垂/田崎潤 土蜘蛛/沢村宗之助 藤原道長/小沢栄太郎 渚の前/山本富士子
原作/川口松太郎 脚本/八尋不二
伝説通りの「大江山鬼退治」を冒頭で映像化、だが真相は、という作りではじまるヒューマンドラマ。
源氏の大将・源頼光に下げ渡された「道長の愛人」は、かつて驕り高ぶった時の人によって引き裂かれた前夫を、死の間際まで愛していた。
来るべき武士の時代を予言して、一人の武者がいずこともなく立ち去る姿で悲恋物語は締めくくられる。
ロケ地
- 渡辺綱が茨城童子に遭う一条戻橋はインドアセット、背景に何やら塔と甍、橋たもとには枝垂れ柳と竹藪あしらい。
- 都に巣食う袴垂以下の野盗たちが摘発される門、東福寺三門。大きな像(裸形の仁王さまではなく武装の天王像)あしらい、門の南側でモブシーンが展開され、馬も入る。門越しに禅堂や法堂が映り込み、砂埃巻き上げての大立ち回りのロングの絵では手前に放生池の石橋がちらりと掠めている。また、南塀の感じが今と全く違うのは木の繁り具合。門の設定は羅生門か。
- 坂田金時とこつまが大江山へ向かう山道、不明(林道か)。先に大江山へ入った武士たちが殺され吊るされている木、不明(山上の荒れ地に孤立木。禿山にがびがびの尖岩が突き出す地形)。里人に変装した二人がなお分け入る岩山、湖南アルプスか(鬼童丸に翻弄されるシーン、白い断崖絶壁の処々に幼松)。金時が岩牢に込められてしまうシーンはセット撮り。
- 捕まったこつまが連れ込まれる鬼の館、保津峡落合河口に門をセット(合成の可能性あり)。門の下に流れが見える。後段では、上から見下ろしたアングルが出て、流れはもっとはっきり映っている。
- 渚の前が頼光に語る回想、夫と二人鹿狩りに出て道長に目をつけられてしまった野原、飛火野。備前介が鹿を射るのは野原際の林で、鹿の群れ特別出演。射られてどっと倒れる大きな雄鹿はよくできた作り物。そのあと桜花のもと睦む夫婦は御手洗川の流れる丘の南側中腹(北望)、道長の牛車は率川の方から来て美女を垣間見。
- 酒天童子の回想、妻を奪った道長の館に単騎吶喊した備前介、不明(大路を示す、馬場のような「道」の両側に塀があって背後は林、館の門はセット。林には開花した桜がちらほら)。
- 同じく童子の回想、茨城童子と出会うきっかけとなった、野盗たちと戦った荒野、不明。先に出た山上の荒れ地と同所、より広大に映っている。茨木童子に藤原打倒の総大将就任を要請される洞窟はセット撮り。
- 頼光に大江山の鬼追捕の勅命が下り、戦支度に忙しい館、不明(林の際にセット建設?)。
- 迎え撃つ酒天童子軍が出陣してゆく門、先に出た落合の河口。上から門の屋根越しに見下ろす図で、「屋根」だけ浮いた感じもして合成っぽい。門を出る人数のシーンでは寄った絵も出て、先と同じ対岸からのロングも。人数は保津峡沿いの桟道を上流方向へ。
- 童子が山上から采配を振るう大会戦のシーン、饗庭か湖南アルプスか(砂地?に松)。火のついた岩を落とし防戦するシーンは岩場、露出した岩は黒っぽく、下の谷は白く流れはごく浅い。植生は松中心。
- 山伏に化けた頼光一行が、さらわれた池田中納言の娘・桂姫を見る谷川、清滝か(姫は洗濯中、頼光らは山腹の林を来る)。
- 渚の前の遺髪を渡され、酒天童子が完全に戦意を喪失したのを見ていきり立つ野盗たち、それを抑えるため一帯にびっしり配備された軍勢を見せつけるシーンは湖南アルプス。ロングの絵に源氏の幡が靡く。
- 単騎馬を駆り立ち去る「備前介」、若草山か(木の一本も見えない芝草の丘)。
大江山関係者のビジュアルも見もの、鬼童丸が化けた牛はあんまり怖くないが、土蜘蛛はにょんにょん動く脚が気持ち悪くてなかなかな巨大タランチュラ。野卑な宴はどこか南方っぽく、インファント島みたいでもある。茨木ちゃんはいまわの際の告白が泣かせる。
山伏に変装して鬼の館に入った頼光一行が試されるシーンも興味深い。五大明王について問われ、更に降三世明王について突っ込まれるもすらすら答え切り抜ける雷蔵。しかし加えて延年の舞を所望されさすがに窮し固唾をのむところ、「それがし代わって舞い候うべし」と勝新が立ち、だんっと床を踏み鳴らしたあと「とうとうたらり…//…鳴るは滝の水、絶えずとうたり」と謡い舞うさまはばっちりキマっててかっこいい。
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