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マキノ省三追悼六十周年記念作品と銘打たれたリメイク版。吹き溜まりに暮らす浪人たちの個々のドラマは、旗本たちとの対決となる子恋いの森の大殺陣へと収斂してゆく。 次々と夜鷹を斬って憂さを晴らす旗本たちは終に酒肆の主を斬り、噛み付いた姪のお新を捕えて牛裂きにしようとするが、そこへそれぞれ別の思いを抱き馳せ参ずる浪人たち、血塗れの大殺陣が繰り広げられた終局に待っていたのは、犬扱いして追い使われていた赤牛が、主の小幡七郎右衛門を自らの身と共に串刺しにし共死にするという結末だった。 ロケ地 冒頭篠つく雨の楠、大覚寺天神島。斬られた侍の刀を自分の竹光と取り替える荒巻、上賀茂神社北神饌所裏手。酒肆・まる太はみろくの里か。まる太の主が世話を見ている夜鷹たちの出る森、下鴨神社糺の森。この後も幾度も出てくるが林床のほか池跡なども使用。博労に絡まれる夜鷹、上賀茂神社ならの小川畔摂社付近。ここもこの後アングルを変えてお新が客に高値を吹っかけるシーンやおときが足をつけているシーンなどで使用。母衣の試し斬りが行われる武家屋敷、東福寺西塀内側か。舟饅頭のお新の船がもやっている、西の湖(水辺の木々や水の濁り具合、背後の山並みから)。伊勢屋別業、中山邸通用門、参道(湖畔にセットの塀とうまく繋げてある)。辻斬りに遭ったおせんの死体が発見される、下鴨神社泉川。母衣の寓居、大覚寺護摩堂。辻斬りに殺られたおときの死体が泥濘に塗れる、下鴨神社糺の森池跡に水溜りを演出。元侍という親父の二八うどんの屋台に来る赤牛、下鴨神社参道石橋。斬られたまる太の主の通夜に乗り込んできた旗本たちを外に連れ出し、一戦交えるかと思いきや土下座して士官を乞う赤牛、糺の森池跡。まる太に帰って来ない赤牛を思い壁に手習いを書きつけ涙する「教え子」の夜鷹、仁和寺二王門(門脇のグラウンドに塀をセットと思われる)。小幡に犬扱いされている赤牛、今宮神社東参道。これを見た母衣が赤牛と話す、仁和寺北塀外側。ラス立ちの場ともなるお新が牛裂きにされようとする子恋いの森、下鴨神社糺の森馬場。荒巻が何本もの刀を差し駆けつけ、殺到する旗本たちを半裸で斬りまくるシーンは馬場から池跡へ移動。母衣が白装束に身を固め走るのは泉川。 *肉体を誇示するかのように半裸の原田芳雄の破れかぶれの殺陣もイイが、石橋蓮司の白装束を朱に染めての殺陣が凄くて居合もマル。甲冑・騎馬姿で参戦の田中邦衛が可笑しい。勝新の殺陣はもう少し長いこと見たかったが、荊軻の詩をぶつぶつ呟きながら刺客に豹変する演技がたまらなくイイので満足。それにしても、原田芳雄って出て来ただけで「原田カラー」に画面染めちゃうのは凄い。ツィゴイネルワイゼンでもざわざわ下北沢でも祭りの準備でも党宣言でもおんなじなんだもん。女に愛を告白にゆくこちこちに固いレンジも、たまらない魅力ぷんぷん発してて大スキ。やっぱこのおっさん達、カッコいい。 |