伊藤大輔監督作品 1950.11.3東横映画
キャスト
岩吉/早川雪洲 熊谷源蔵/薄田研二 山内敬之助/原保美 安藤東雄/宇野重吉 御船屋長吉/東野英治郎 吉三/三島雅夫 官員都築/加東大介 鉄五郎/山本礼三郎 坂口軍曹/永田靖 お絹/小夜福子 お咲/東山千栄子 お六/岸輝子 あぐり/村瀬幸子 小雪/早川冨士子 小雪(幼時)/藤本宥子 お新/浪路はるか 監督五月/北林谷栄 お梅/西村秀子 お初/梓真弓 五十嵐力/加賀邦男 ピン十/遠山満 チョロ熊/團徳麿 裁判長大牟田/荒木忍 検事氏家/上代勇吉 仙右衛門/高松錦之助 ミリエル司教/F.シュバリエ バティスティーヌ/M.L.トゥルヌール
脚本/棚田吾郎、舟橋和郎
監督/伊藤大輔、マキノ雅弘、渡辺寛
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ユーゴーの名作を翻案した作品、舞台は幕末から明治初期にかけての日本。
切羽詰って一椀の飯を盗んだ男、以降の彼には過酷極まりない人生が用意されていた。
執拗に彼を追う法の権化、養女にした娘との幸せな暮らし、そして永訣の日と、だいたい原作通りに話が進む。
小雪の結婚式が執り行われている教会、病んだ身を引きずってやって来た「ジャン・ヴァルジャン」が倒れ臥す、そこに十字架のシルエットが重なる演出が心憎い。
ロケ地
- 倒幕成り、薩摩東征部隊が凱旋のくだり、行進の火口原は阿蘇、市街地は不明(民家脇の道、蔵などあり)。
- ミリエル司教の教会、長崎・伊王島の馬込教会。銀の燭台を渡された岩吉が出てくるシーンでは、聖堂正面が大写し。
- 教会を去ったあと、道端で寝ていた岩吉が、角兵衛獅子が落とした銭を知らず踏んでいて悪態をついてしまうくだり、阿蘇・草千里。反省して子らを追って走るシーンでは、放牧されている牛が出てくる。
- 1873年、織物工場を経営し福岡県第三区長になりおおせている岩吉=松野栄一、導入部で映る町の全体図、不明(湾奥の町、長崎に似る)。
- 馬車の暴走で下敷きになった老爺を救う松野、不明(工場や蔵が立ち並ぶ町並み、運河脇)。ここに熊谷が居合わせ、「釣鐘の岩吉」なら苦もなく重しを除けると示唆。
- 熊谷から、無実の者が「岩吉」として裁かれていると聞いた松野、長崎へ馬車を走らせる道、不明(川堤、堤下に軒を接する民家あり・古い映画でよく見る図)。長崎裁判所、不明(洋館)。
- 御船屋から小雪を貰い受けてきた「岩吉」(網走へ送られる船が難破し「脱獄」中)、熊谷ら追っ手から逃げる山道、不明(阿蘇外輪山か、岩ごろごろの谷筋〜絶壁〜雲海を望む高地)。
- 小雪を連れて旅ゆく「岩吉」、立ち寄る京・清水寺は本物。導入は音羽の滝前の茶屋付近から舞台を見上げ、のち奥の院から舞台を望む絵に←ここで警官を見て緊張。
- ふたたび旅の途、海岸をゆく「岩吉」と小雪、琵琶湖西岸松原か。
- 東京、馬車で皇居お堀端をゆく「岩吉」と小雪、二条城前堀川通(東南隅櫓と東大手門が映り込む)。
- 舞踏会が行われる園地、グラバー邸。
- 小雪が山内青年と心を通わせる舞台となる学校、同志社大学構内。クラーク記念館を望む図で、大木や校舎も映り込む。フェンスはあしらいものか。
- 小雪と市中へ出る「岩吉」、馬車で門前へつけるくだり、仁和寺中門前。御室桜林前で青年たちが「自由糖」を売りプロパガンダ、塔映り込み。「岩吉」らはこのあと金堂前へ、熊谷とすれ違う踊り見物のシーンも境内か。
- 父・長吉の「岩吉」への振る舞いに辟易した娘が警察へ訴えて出るも、そこに熊谷がいて裏目、岩吉捕縛に警官が出動してゆく東京警視局、不明(洋館)。長吉夫婦が住まう裏長屋はセット。
- 決起した自由党の若者らが闊歩する道、不明。出動した軍隊がゆく街路、堀川通(二条城前堀川通のほか、押小路通から押し出してくる図も)。兵士らが土嚢を積み砲を構える陣地、堀川端にセッティング(背景に二条城東南隅櫓)。山内青年を助けに出た「岩吉」が、撃たれた彼を保護する橋は堀川御池交差点にあった橋か。山内を保護した「岩吉」が身を隠す路地、竹屋町通の路地か(路地の奥から二条城が見える)。「岩吉」が山内青年を背負ったまま飛び込む堀、堀川河床。
- 「岩吉」の屋敷へ医者を送り届けたあと、熊谷が佇む橋、堀川の橋か。入水シーンは別撮り。
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※この作品は、1950年11月3日と11月14日に前後編として上映されたが、2011年7月、東映チャンネルで放送された一件は、前後編ではなく一本仕立て。西南戦争あたりがすぱっと無かったので、編集がなされたものと思われる。ここに挙げたキャストやスタッフは編集版のものを書写。
※岩吉がJean Valjean、その後の変名は「松野」くらいしか聞き取れなかった。熊谷がJavert、山内がMarius Pontmercy、お絹がFantineで小雪はCosette。御船屋の一家はThenardier。Les
amis de l'ABCは自由民権運動になっている。
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