沢島忠監督作品 1965.5.22東映
キャスト
中村錦之助 仲代達矢 松方弘樹 志村喬 桜町弘子 入江若葉 藤純子 江原真二郎 加藤武 内田朝雄 遠藤辰雄 田中邦衛 浪花千栄子 尾形伸之介 中村錦司 高松錦之助 矢野宣 脇中昭夫 潮路章 水野浩 神木真寿雄 中村時之介
脚本 野上龍雄、笠原和夫、中島貞雄
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三話オムニバスで、三通りの渡世人を描く。
筋を通す男の悲哀、稚気溢れる兄ちゃんの泣かせる話、情けない渡世人としたたかな村人の泣き笑いなど、それぞれに味わい深い逸話を、名優が熱演。
民謡「どじょっこふなっこ」をアイキャッチに使い、秋と冬と春の印象的な風景を作品に盛り込んである。秋は仲代、冬は松方弘樹、そして春は錦兄ィが演じる。
秋
祭りの季節を迎え賑わう佐原、麹屋の親分のもとに転がり込んだ渡世人は兇状持ち。疎ましく思われながら便利使いされるが、見張りを仰せつかった女郎の情人こそ、彼が宿場手前で遭遇しやむなく斬った男と知れ、渡世人の行く道は決まる。
ロケ地
- 渡し場、宇治河畔か(堤に整然と並木、流れは瀞)。
- 初雁の仙太郎が佐原さしてゆく街道、土手か。「通行料」を渡したのに男が追ってきて襲うシーンは竹林、北嵯峨か。
- 麹の金兵衛が女郎・おいねを懲らしめて監禁する船を舫ってある水辺、不明(たぷたぷの濠の如き流れ、疏水みたいな感じ。周囲に建物あり)。
- おいねの思い人・猪之吉の消息を聞きまわる仙太郎、船頭たちに聞き込む荷揚げ場、不明(流れは浅く、堤はけっこう高い。桜と思しき並木のシルエットも見える。巨椋池干拓地の前川に似る)。渡守の老爺に聞くシーンは、先に出た渡し場の川と同所・漁具あしらい。
- 佐原の手前で斬った男が猪之吉と知り、悄然と戻る仙太郎、祭りの客でごった返す橋、不明(先に出た荷揚げ場の川と同所か、木橋)。
- 早暁の宿場はずれに金兵衛を呼び出す仙太郎、流れ橋。このあと猪之吉を埋めた竹林へ案内、貸元を斬ったあと、役人との大立ち回りもここで。猪之吉の弟が、自由の身になったおいねを乗せて下ってゆく船は、先の渡し場の川と同所(堤の並木と山影が明瞭に見える)。
冬
いかさま博打をしくじり逃げる、老いた渡世人にくっついて、雪山に入る若者。老人と娘の愁嘆場を見た彼は、親子のため追っ手を引き受けて戦うが、白い奔流が全てを押し流す。
若者が故郷を追われた経緯と、因を作った父親に対する思いが涙を誘う。
ロケ地
- 源太の回想、縊れて死んだ父の葬列がゆく野道、不明(田畔)。18になって戻る、父が借りていた田地、棚田。行状を責められ叩きだされる地主の屋敷、軒瓦を出した茅葺民家。運命を呪い吠える父の野末の墓、孤立木の根方(夕景)。
春
気のいい渡世人は、したたかな村人にハメられて、鬼のように強い役人と対決することに。もちろんこの兄哥、腕はからきし。ご馳走されたり、娘を宛がわれたりして、逃げられなくなり弱りきるさまが可愛い、錦兄ィ全開のコミカルなお話。汚い裏を知ってかんかんに怒る際の、舌の回り様も見もの。
ロケ地
- 菜の花満開の田地をゆく風の久太郎、亀岡盆地か(山裾に小丘)。小川で水を飲んでいると、悪ガキが上流で立小便。兄哥が村を去るラストシーンも菜畑。
- 寝転がっている久太郎のもとに、村人が寄ってきて一献差し上げたいと申し出る鎮守、鳥居本八幡宮。ここは以降も頻出、狸獲りの罠があって、半兵衛と対決の際に役立つ。広場、本殿、崖下、小柴垣の道など、各所を使う。
- 件の里、不明(かなり角度のある立地の棚田。家も傾斜地に建ち、石積の土台などもある。土手見上げの絵では、畦畔木も見える。ここは開発で無くなってしまった個所と推測されるので、貴重な映像)。
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