風

1967-1968 TBS/松竹

キャスト
風の新十郎/栗塚旭
かがり/土田早苗  相川左近/小林昭二  水野越前守忠邦/池辺良

 時は天保年間、老中水野忠邦による改革が推進されるが、世は混迷の度を深める。
ここに快男児・風の新十郎が現れ、剛剣をふるい遠近のトラブルに首を突っ込んでは次々と難題を処理してゆく。弱き者に優しい新十郎だが、時に無気力な民衆を叱咤激励し突き放すこともあり単なる正義漢には終わらず、理想に燃える一面ものぞかせる。水野老中にシンパシーを持ち、様々な場面で彼をサポートする働きをするが、手下ではなく対等の立場から協力する。盗賊稼業からは足を洗う新十郎だが、「風」の通り名は闇の住人をも震え上がらせる。
水野手飼いのくの一・かがりは任務第一の忠実な忍者で、ほぼパートナー状態の新十郎に思いを寄せる。しかし毎回振り回され、気持ちははぐらかされ続ける。可愛らしく拗ねる姿が魅力的な彼女の危機には、育ての親とも言うべき「源爺い」がはるばる甲賀の里から駆けつけたりする。
当初、新十郎に名前を騙られていた北町同心・相川左近は、はじめのうちこそ大泥棒を捕縛しようと追いかけるが、次第に彼と気脈を通じ親しむようになり、任務の手伝いをして貰ったり危地から助けて貰ったりする。情に脆い左近の旦那の存在は、物語に奥行きをもたらす。


第1話 新十郎登場

 風雨の夜、大凧で名古屋城の鯱を盗む新十郎のシーンではじまる。
この鯱はあとで道端に晒してあったという、破天荒な盗っ人・新十郎はこの後二年姿を晦ます。
そして再び現れたときは未だ着任せぬ同心・相川になりすまし北町同心としてしばらく勤務するトンデモぶり。そこでフィクサー・土方鉄山の不正の証拠をつかみ、鉄山に消された同心の仇を討ち隠されていた米を市中にまいたりする。老中・水野には寝所へ忍んでゆき了解を得るという行動に出る。水野の女密偵・かがりとの関わりの起こりも描かれる。

ロケ地

  • 北町同心・安藤が鉄山邸の腰元と共に爆殺される水辺、広沢池東岸に屋形船仕立て。
  • 犯人を尾けた水野の密偵・かがり(老婆に変装)が同心「相川」とチャンバラの末川に落ちる橋、中ノ島橋
  • 水野にツナギのかがり、阪口青龍苑(伝声管は別の場所)
  • 「相川」が弔問に赴く安藤のお長屋、妙伝寺塔頭(アイキャッチに挿入/後段妻女拉致の段でも出る)
  • 北町奉行所、大覚寺明智門。庭で与力に安藤の件を話す「相川」、相国寺大光明寺石庭
  • 鉄山邸を探る途中露見し追われるかがりを助ける新十郎、そのあとかがりが鳥追いになりを変えて出てくる堂、大覚寺護摩堂
  • 鳥追いのかがりと話す「相川」、木津河原か。なりすましがバれ牢に押し込まれる新十郎、その夜鉄山とグルの与力を拉致し逃げる北町まわり、相国寺方丈(湯屋前〜渡廊、法堂)
  • 事後、凧あげの安藤の妻子、木津堤か。

※ノリは大活劇、モノクロなことを忘れさせる緻密にしてテンポのよい作品。
※鉄山が米を隠匿している地下蔵の美術は圧巻、大量の米俵がぎっしりで、彼方に消失点があるという大層なもの。


第2話 獣の城

 今回は下総・関宿藩へちょっかい出す新十郎。前藩主は水野老中の政策に逆らい隠居命ぜられ、将軍ゆかりの殿を前藩主の妹と娶わせ、という話が進んでいる。
その「婿殿」に化けて入る新十郎、関宿藩の忍との対決の果て蟄居中の前藩主の謎を突き止める。

ロケ地

  • 関宿藩の城に彦根城。天守、佐和口多門櫓と前の濠・いろは松の岸、天秤櫓など各所が使われる。
  • 婿入りの駕籠が爆破される道、木津堤
  • 姫が次席家老に恨み言を投げつける城内の廊下、仁和寺宸殿前廊。
  • 前藩主のいるという下屋敷に赴く新十郎のシーンの坂、門の向こうに早い流れ、宇治興聖寺・琴坂
  • 事後、関宿を発った相川左近が新十郎の煙管投げると爆発してびっくり、木津堤。新十郎の渡る橋、流れ橋

※関宿の忍・一作に菅貫太郎、伝わる技が発揮できたとカタルシスのうちに死ぬ。蓬髪垂らし狂気じみた演技、忍者やってもスガカン。


第3話 王手飛車とり

 蘭学者・半井英山が暗殺され、新十郎を襲った刺客は次は福内鬼外という。
北町奉行・畠山軍蔵の繰り出す七人の刺客と戦う新十郎、かがりと従妹のくの一も参戦。関係者を装った賊に鬼外を斬られかかったり、自身はトラバサミに掛かったりと苦闘が続く。そして事後奉行失脚ののち残った意外な七人目が襲うが、新十郎に事の空しさを説かれ去るのだった。

ロケ地

  • 冒頭、足もとに飛んできた棒切れを跳んで避ける新十郎、不明(町なみの奥に橋、山近く)
  • 半井邸へ駆けつける新十郎、中山邸(参道〜門)
  • 刺客の襲撃をかがり達の助けで辛うじて防ぐ新十郎のくだり、かがり達が現れるのは南禅寺経蔵裏手回廊
  • 北町奉行所、大覚寺明智門
  • 鬼外がオランダ人に会いにゆく屋敷、勧修寺(山門、宸殿前)
  • 左近が敵と斬り結ぶ場面の鐘楼、不明(袴付き)
  • 従姉妹らを見送る街道筋、不明(池と小屋あり)

第4話 海賊と空と青春と

 地理学者・山崎と関わる新十郎、師匠・伊能忠敬よりも正確な日本地図をと意気込む青年の夢に共感。山崎の持っていた信玄の隠し金の地図をめぐり、海賊は出るは水野さまも出張るはの大騒動。見つかった金の地蔵を前に、しかし受け取り拒否の山崎、新十郎との出会いで行く道を見付けたと旅立つ。

ロケ地

  • 新十郎が山崎の唐丸を橋からドボン、犬飼川下河原橋か(木橋)
  • 船上、新十郎に夢を語る山崎、琵琶湖(新十郎は聞く耳持たず魚焼き)。新十郎の前に海賊が現れるのは湖岸。新十郎を捕まえようとした左近が海賊どもに足止めを食うのは桟橋。
  • 海賊が去ったあと、再び追ってくる左近から逃げる新十郎とかがりが渡る橋、穴太橋。その後の町角、不明(石燈籠、板塀の民家?)。木の上でいちゃつく二人、琵琶湖畔松原。
  • 福内宅で地図をひらひらさせている山崎からこれを奪い逃げる九鬼の手下、中ノ島橋(川に飛び込んで逃げる)
  • 股旅者の格好で街道をゆく海賊に地図を返せと立ちはだかる山崎、不明(地道、山なみの頂に松林)
  • 早苗と左近の駕籠がゆく街道、棚田か。
  • 山へ登る新十郎と山崎(途中でヘタり)、安行山か。
  • 左近と早苗が海賊に捕まる田んぼ、不明。
  • 山崎が米を研ぐ谷川、湖南アルプスか。捕まった左近らと地図が交換される雲取山も太神山付近と思われる(広い砂地に幼松、背後の山に激しいガレ場)
  • 山中の池辺で雲取山を指す山崎、中山池か(汀に巨岩)
  • 金の地蔵を船に乗せ川を下る新十郎たち、保津峡。船をおりる河原、大堰川河川敷(海賊が出て大立ち回り)、水野の御前が馬で駆けつけてくるのは堤。
  • 旅立つ山崎を見送る桟橋、琵琶湖岸(なぜか新十郎は水の中)

※海賊、海だろうと川だろうと頻繁に潜る潜る。これが非常にコミカル。


第5話 脅迫者

 今回は水野さま大ピンチ、まだ唐津の城も継がぬ若い頃言い交わした女のことで脅される。
女は異人の血を受けた曰くつき。今は髪を下ろし江戸の片隅に隠棲するその女のもとからラブレターが盗まれ、窮地に陥る老中を助ける新十郎、半分は匿ってくれて傷を手当てしてくれた庵主さまのため。脅迫者は闇将軍と称する仮面の男、実は目付。これに返り咲きを目論む元大奥老女も絡んで大騒動。

ロケ地

  • 闇将軍を探る新十郎が撃たれて逃げる際、追っ手がわらわら出てくるのは相国寺大光明寺石庭の中仕切南塀を乗り越えてゆく。
  • 左近のダンナが新十郎をお縄にしてゆく夜道、相国寺方丈塀際(ここで逃げられ)。新十郎が逃げ込んだとして踏み込むも「狸」とかごまかされ追い返される尼寺・月照院、東福寺大機院(後段では石段と下の道も映る)
  • かがりに密命を与える水野さま、釣り船の川は不明(流れはゆったりと瀞、川幅は相当太い)
  • 越後屋を脅した帰り、闇将軍が駕籠で帰る道、不明(寺院境内?の塀際〜蔵)
  • 大奥老女の使いに化けたかがりが入ってゆく目付の屋敷、相国寺大光明寺
  • 新十郎とかがりが闇将軍一味と大立ち回りの林、下鴨神社糺の森・河合社裏手。
  • 庵主が恋文を焼く庭、不明(石畳は大徳寺に似る)

第6話 小判を買う男

 懐の寒い武家が、慶長小判一万両を現行小判二万両と交換、という唐人の話に次々と乗せられ、取引現場で惨殺されるという事件が相次ぐ。
新十郎は、その話に乗りエラい目に遭いかかっている御家人とその乳兄弟の芸者を助けてやるが、芸者がまわりをうろつくもんだから早苗(蘭学者・福内鬼外の娘)もかがりもジェラシーから新十郎を邪魔しまくり。

ロケ地

  • 会津藩士たちが唐人一味に小判交換の場で殺される鈴ケ森、木津川堤(背景に流れ橋が小さく映りこむ)
  • 新十郎を探索の左近たちが渡る橋、中ノ島橋
  • 唐人の滞在する寺、黄檗山万福寺山門法堂(卍崩しの匂欄)
  • かがりから慶長小判受け取る新十郎、仁和寺(塔、経蔵、九所明神)

第7話 その火薬をわたすな

 今回は上州のとある村に現れる新十郎。
その村では在野の碩学が人々の難渋を救おうと強力な火薬を開発、鎖渡しの難所の岩塊を爆破するという偉業を成し遂げる。
これに目をつけた西国の雄藩や大塩の乱の生き残りなどが武器として使おうと群がる。学者の息子は抱きこまれ、父に提供を迫るがもちろん先生は聞き入れない。
刺客が入り乱れるなか、かがりの助けもあり危機を切り抜ける新十郎、その意を汲んで学者は自らの工房を火薬ごと爆破するのだった。

ロケ地

  • 村祭りの鎮守、鳥居本八幡宮(石段、本殿他)
  • 荒野や水辺、不明。

第8話 忍びの館

 思い切り怪しげなタイトルだが、これは水野越前守の隠密のアジトとなっている小間物問屋・唐津屋のこと。表から入ったかがりが奥へ誘われ秘密の抜け道を通ってゆくと、六部や虚無僧に化けた同僚がいるという寸法。しかし密殺される忍びが続出、かがりが唐津屋調査に入り、手代の幸吉と旧知の新十郎も新参者として入り込む。案の定水野の改革を快く思わない西国の雄藩の手先が暗躍、そんななか新十郎の友人・手代の幸吉と唐津屋の娘の縁組が進むが、唐津屋に潜む内通者は両親が死んだ経緯から武家社会そのものを憎悪する幸吉と知れる。敵方の忍びやかがりに追い詰められ深い穴に落ちる幸吉、それはほぼ自死に近いものだった。

ロケ地

  • 使いに出た幸吉が駕籠舁きに品物を渡せと迫られる夜道、金戒光明寺瑞泉院(駕籠の中から新十郎が出て立ち回り、かがりも出てお使いの品が爆薬と確認)
  • 新十郎の回想、幸吉と野辺送りの道、桂川か。
  • 事後、新十郎にくっついて行こうとする幸吉の弟分の丁稚(忍者マニア)を諌める早苗、御室八十八ヶ所御堂前(早苗が恋人たちを会わせてやるのも同所か)
  • 幸吉が入手して暴露しようとしていた密書を破り捨てる新十郎、中ノ島橋

第9話 走れ!新十郎

 実相寺昭雄監督の一作、嫁入りを間近に控えた姫が逃げ出し、ひとときのアバンチュールを経験するお話。逃げたきっかけは輿入れ先の藩の家老に暗殺されかかってのこと、以降たまたま知り合った飛脚を巻き込み、いつものメンバーで忍者と戦い大騒ぎ。

ロケ地

  • 姫の駕籠が襲われる道、不明(道端は松並木、神社境内か)
  • 水野邸を出てきたところを左近に御用と追っかけられる新十郎、相国寺法堂脇の渡廊。左近の投げ縄にはかがりがかかってしまい、逃げる新十郎の腕にはかがりの縄がかかり、三人つながりで相国寺鐘楼まわりをどたばたと走り回る。
  • 大滝藩を探っていて露見した新十郎とかがりが逃げてくる道、相国寺法堂南路地
  • 飛脚と姫がお御籤を結ぶ神社、ブランコ遊びの丘、芋泥棒の畑、不明。
  • 忍者ドジ場面、鐘に潜んでて小坊主に撞かれ落っこちるのは穴太寺。橋下に潜んでて塵芥を浴びるのは犬飼川下河原橋か(木橋)
  • 帰る飛脚に行かないでと縋る姫、宝塔寺回廊〜本堂前縁(根負けして長崎の話をする/読経の声が響いているのでお寺設定)。外へ出ようとする二人を止めるかがり、あと一日思い残しが無いよう楽しめと言う新十郎のくだりは妙顕寺歴代墓所前付近(レール撮影)
  • 門番に化けたかがりに報告を受ける水野越前守(水野邸門)、不明(大寺の門)
  • 飛脚のキツい一言で寺を出てゆく姫、宝塔寺楼門〜参道。
  • ラス立ち、下鴨神社糺の森池跡
  • 輿入れの姫、随心院薬医門。見届けて帰り道の一同が談笑する町角、長屋門前。

第10話 「すっとび東海道」  未視聴


第11話 裏切りの谷

 左近の頼みで凶盗・日本太郎を追って筑波村へ赴く新十郎、現地には御馴染みの面々も。
日本太郎、前身は下総の国の藩士、これを夫の仇と狙う女、助太刀には藩士一の剣客。ちょっと暗めな仇討ち一行はやはりワケあり、助太刀の偉そうな侍は日本太郎をたばかり罪を着せた家老の手先。盗賊一味が仲間割れするなか、刺客の剣客は新十郎とサシで勝負、唐突に出現した硫黄煮えたぎる谷に落ちたりなんかして。

ロケ地

  • 武州・筑波村の日本太郎のアジト、芦浦観音寺(参道、門のほか内部も)
  • 地獄谷ほか荒野の場面、湖南アルプス

第12話 百万両の腕

 「風」の偽物が出るお話。
お公家さんのコレクションがコンプリートで欲しい船手頭が、元岡っ引の商人と組んでちょっと哀れっぽい元盗賊の大工を脅して追い使い盗みを働かせる。脅しの内容は「家族に言うぞ」という卑劣なもの。子煩悩な大工の、その息子に接触しいたく思いいれの新十郎が乗り出し宝物を全部取り返し船手頭の髷を斬り「幸福な家庭」を守ってやる、人情話。
今回、かがりはフォローのつもりの手裏剣を新十郎に刺してしまうは、左近の旦那は邪魔しまくるはとちょっと災難の「風」だった。妙な瓦版屋も登場。

ロケ地

  • 方々から宝物を盗む風のイメージに姫路城天守
  • 瓦版売りや大工の息子と接触する新十郎のくだり、今宮神社東門付近(門、橋、茶店)
  • 船手頭・堀田備前守邸、相国寺大光明寺(門、石庭)
  • 濡れ衣を着たままでいいとかがりに告げ立ち去る新十郎、上賀茂神社神事橋たもと。

第13話 絵姿五人娘

 次々とさらわれる江戸の美女たち。若年寄と組んだ絵師が美女をセレクトし自ら誘拐してきて異国に売り飛ばすという悪行を重ねる。こいつらのバックに大奥中揩ェいて、若い娘が憎いなどとヒステリー起こすおばさん、しかも若年寄の愛人。
ワルのほうはよくあるやつ、しかし本作の面白いのは絵師宅の蔵に監禁され異人に売られるのを待つ娘たちの間で展開される人間模様。それぞれの身分や境遇の違いで諍いが起こり、女房を探してやってきて一緒に放り込まれた旦那が脅えた挙句自分だけ助かろうとするなど、細かい描写がなされる。最後は「皆で戦おう」と言う新十郎(こいつもかがりも左近も捕まってる)の提案で辛くも逃走(二度ほど失敗するのがまた細かい)、逃げる際にワルはさくっと始末。

ロケ地

  • 歌川恋麿邸、相国寺大光明寺(南塀通用門、石庭)

※事後、解放され日常に戻った娘たちに接触の新十郎が傑作。婚礼の者には簪投げ込み紙に「御祝い 風」、貧しい家の少女には紙に包んだ小判・紙には「くらしがたつように」…いちびっているのかなにかよく判らないが、新十郎の妙にマメな面を表す挿話。


第14話 孤剣春を行く

 水野越前守暗殺を目論む元老中、新十郎を引き離しにかかる。
左近の馬鹿な企みに陥ち北町に囚われる新十郎だが、かがりの助けで脱出し水野の危機を救う。元老中は自らの養女である将軍の側室を使い水野糾弾の訴状を上げようとするが、城中に潜入した新十郎はこれを奪還。次は元千葉道場師範代の使い手を雇い入れ水野への刺客とするが、これも阻む新十郎、遂に元老中は蟄居の身となる。

ロケ地

  • 歌い初めが行われる江戸城イメージ、伏見城天守
  • 正月三日深更に下城の水野の駕籠が襲われる道、南禅寺僧堂坂
  • 捕えた新十郎のことで早苗にボロクソ怒られる左近、大覚寺心経宝塔(石仏越し)
  • 北町奉行所、大覚寺明智門、蔵。
  • 側室が参詣の寛永寺、仁和寺中門
  • 大奥へ忍び込む新十郎、全景は書割で内部は彦根城か。
  • 愛宕山に定例の馬攻めに赴く水野に刺客が放たれる、粟生光明寺石段上部。
  • 再会するも目の前で果てた恋人を思い流れを見つめる新十郎、木津川流れ橋

※同じ長屋に住む兄妹を気遣う新十郎、兄には妹を貰ってくれとまで言われる。盲目のその妹のため水野に金を要求して治療の段取りをつけてやったり、マメな新十郎。また、元老中の養女の今をときめく側室は五年前仲を裂かれた新十郎の恋人、妹と側室は二役。


第15話 見ろ!言え!聞け!

 油を隠匿し値を吊り上げる悪党たちが、実直な飼葉屋の兄弟を苦しめるお話。岡っ引殺しを目撃したことから巻き込まれ、散々な目に遭う兄弟たち。力に逆らえずにいる姿に、新十郎は勇気を出して立ち向かわねば明日は無いと示唆、か弱き者たちは立ち上がる。

ロケ地

  • 油を隠匿する一味を見張っていて鳴子を引っ掛け見つかってしまう岡っ引、穴太寺鐘楼裏・塀際の木の根方。引き据えられるのは水場付近。
  • 草刈りをしていた兄弟が岡っ引殺しを目撃する野原、不明(大堰川水系の土手付近か。竹林や水たまり等が見える。設定は亀戸へ一里の街道脇)
  • 兄弟を拉致した一味を追って寺へやって来るかがり、荷駄が入ってゆく門は穴太寺東門(戸を閉めても隙間がある築地が効果的に使われる)。中の様子がわからないので表へ回るかがり、山門前(ナイフが飛んでくる)
  • 脅されて飼葉に油樽を隠して運ぶ兄弟、先に出た野面と同じ。
  • 事件解決後、左近とともに晴れがましく油樽を江戸へ運ぶ兄弟、川堤か。

第16話 最後に笑う奴

 高崎城下で切腹した公儀徒目付の件で高崎入りの新十郎、道中でその男の未亡人と関わりいきなり深入り。事情を知る高崎藩次席家老にかけあうが埒あかず、どころか捕われてしまう。しかも当の徒目付は実は生きていて、用林横流しのごまかしに手を貸していたり。しおらしい「未亡人」が本性現すどんでん返しも。いつものかがりに加え高崎に入り込んでいる甲賀の草も登場、この老爺はかがりを仕込んだ男で、かがり子供扱い。

ロケ地

  • かがりが伝書鳩から密書をとる野、不明(荒れた丘)
  • 高崎へ急ぐかがり、落合崖と清滝川(騎馬の新十郎は田畔)
  • 未亡人の回想、若年寄の命で高崎へ発つ夫を見送る門、相国寺光源院(徒目付がゆく街道は騎馬の新十郎のシーンと同じ)
  • 未亡人と新十郎が茶店を出たあと尾行される街道、不明(一部切り通し)
  • 高崎藩次席家老・村沢監物邸、相国寺大光明寺(門、式台玄関、前庭)
  • 村沢の下男が密かに新十郎たちを呼び出す榛名権現、智積院密厳堂(行ってみると下男が蔵の前で倒れている)
  • 源爺いが新十郎たちを牢から救出し、外の虚無僧(かがり)とツナギをとる塀の内外、相国寺大光明寺南塀(内外同時に映るクレーンショット)
  • 老婆に化けたかがりを乗せた駕籠を舁いた新十郎と源爺いが関所をやり過ごすくだり、中山池付近か。新十郎がゆく街道、川堤か。

第17話 いのち果てるとも

 甲州三ノ口採金場、隠し金の不正が行われているところへ踏み込み首謀者・伊太郎を逮捕の左近、江戸へ連行する。これを奪還しようとする者たちとの攻防が主軸。
農家に立てこもった際の人間模様や、伊太郎が見捨てられ一緒くたに殺されかかってからのドラマは秀逸。新十郎たちや農家の夫婦、そして伊太郎との間に不思議な連帯も生まれる。追っ手を全て討ち果たしたあと自ら縛につく伊太郎、ふつうは彼を慕う於兎の愁嘆場などありそうなものだが描かれず、EDに見送る姿あるばかり。

ロケ地

  • 伊太郎が逮捕されたあと江戸へ向け馬を走らせる於兎、不明(丘脇に民家)
  • 於兎が駆け入る江戸の金山奉行邸、大覚寺明智門
  • 番所の人数が正体を現し左近に斬りかかる護送の道、棚田畔(残雪)。あとは山道。かがりが山上から指す里は穴太に似る。「里」の丘陵地には溜池も見える。

第18話 過去からの呼び出し状

 先の事件で怪我した左近が療養している鄙びた山の温泉宿で話が展開する。
偽手紙で呼び出される新十郎、一癖ありそうな宿の主人、主人と因縁ありげな猟師、離れに滞在する御家人たち、そして謎めいた踊り子。大雨で土砂崩れ起き吊り橋も落ち、外界と遮断された山の宿でまず猟師が、次いで宿の主が妙な武器で殺されてゆく。犯人はかがりが所持品から踊り子の同行者の老爺と調べ上げるが、詮索を待たず御家人が殺してしまう。老爺の位牌に踊り子が語りかけるのを聞いた新十郎は真のワルを突き止める。

ロケ地

  • 山乃湯、平野屋(外観イメージ)
  • 別れの街道、不明。

※踊り子は南の島に暮らす平家の落人の裔で、宿に屯していたのは島抜けして踊り子の島に辿り着き彼女の両親を殺して逃げた四人という奇抜な設定がなかなか。


第19話 すばらしい明日

 水野老中の依頼で加賀藩に謀反の連判状を奪いにゆく新十郎。押し込みよろしく巻物は奪うものの、追っ手をかけられけっこう難儀。加賀の家老が差し向けた追っ手には腕を見込まれた郷士の倅がいて、若侍たちは彼を侮り嫌い密殺の計画まで立てている。その郷士は家老の娘を慕っており、侍になりたい彼の葛藤に重点が置かれる。タイトルは結ばれた二人を見送る新十郎の餞の台詞から。

ロケ地

  • 加賀へ馬を飛ばす新十郎、中山池堤
  • 新十郎が巻物を奪ったあと、旅人が詮議される関所、安行山か。
  • 家老が差し向ける追っ手たちが屋敷を出てゆくくだり、屋敷内の通用門および門内、相国寺林光院門内と前庭。
  • 新十郎とかがりが旅の一座と別れる道隈、中山池堤。このあと新十郎たちが通る崖道は安行山と思われる。追っ手の若侍たちが新十郎に殺到する橋は鶯橋、立ち回りは中山池汀に移動。
  • 谷川で火攻めに遭う新十郎たち、保津峡落合河口
  • 一行を追いかけてきた家老の娘・しのぶが駕籠からおりたところへ声をかける新十郎、平野屋前。このあと新十郎に襲いかかる一郎太は不明(神社境内か)
  • 一郎太がしのぶから自分を害する計画あることを聞く街道筋、大覚寺護摩堂脇。
  • 疾風の吉が新十郎から巻物を騙しとろうとする甲州街道の橋、本梅川若森廃橋。川堤を次の宿場へ急ぐ追っ手の馬が駆けてゆく。
  • 一郎太にやり口を批判され抜きかける兵馬、大覚寺五社明神
  • 新十郎がその日の塒にした荒れ寺を襲う追っ手、穴太寺境内(夜間撮影)
  • 抜け駆けを責められた一郎太が吊るされる木、大覚寺天神島大木
  • 江戸へ戻った新十郎、疾風の吉を騙った文で呼び出される神社境内裏手、御香宮本殿裏手(本殿の中から透垣越しに外を見る画も。本殿東側の祠が旧仕様)
  • 加賀に帰る二人を見送る新十郎とかがり、大覚寺大沢池堤

第20話 小指のない武士

 頻発する辻斬り、辻斬り被害者の娘で失踪した夫を待ち続ける女、女の夫で仇を求める旅を続ける浪人、後継争い深刻な道場で繰り広げられる人間模様、これら全てがひとつの糸で結ばれ収斂してゆく。軸にいるのは辻斬りで仇で道場の跡目狙ってギンギンの男、しかし野望は挫かれ、仇として討たれてしまうのだった。

ロケ地

  • 一真流・岡野道場、随心院長屋門
  • 師範代・辻野が家老に会いにゆく津山藩上屋敷、随心院薬医門
  • 辻野を仇と狙う男にお説教の新十郎、桂川河川敷か。
  • 果し合いの場であると共に仇討ちの場ともなる鬼伏ヶ原、大堰川河川敷か(礫河原、河畔林は竹)
  • 自分を慕う坊から身を隠し立ち去る新十郎、金戒光明寺石段(EDと被り)

第21話 誰がための仇討ち

 ある夜新十郎が見たゴロツキを斬る浪人はわけあり。妻は亀山藩師範代の娘で、兄の仇を討つため浪人を婿にし江戸へ来ていた。ゴロツキの身内や左近が探るが、新十郎は沈黙。仇討ちを終えてからと見守るが、酒びたり女びたりの、仇持ちにしてはあまりに不審な浪人の行動。そして、そも追う仇などおらぬ陰惨な事実が明らかとなる。

ロケ地

  • 左近とゴロツキが新十郎に浪人のことを聞く墓地、二尊院墓地
  • 浪人が妓を落籍し囲ったことを新十郎に告げるかがり、不明(一方は腰高な石垣を持つ土塀、もう一方は板塀の路地)
  • 落籍した妓とゆく浪人が町奴たちに囲まれる坂、二尊院紅葉の馬場。立ち回りは湛空上人御廟前の石段へスイッチ(設定は神社の模様)
  • 札差の手代が浪人に声をかける町角、大覚寺か。
  • 浪人が実は恋人の仇と知って掴みかかる妓、大覚寺大沢池堤
  • 新十郎が浪人を呼び出す朝路ヶ原、不明(飛火野に似た芝地)
  • 浪人の妻が父に斬られたと走ってくるかがり、妙心寺か(先の路地と同じ)
  • 娘の遺骨を抱いて帰る父を陰で見る新十郎、北嵯峨竹林か。

第22話 狙われた雛人形

 岡部藩の将軍拝領のお雛様を巡って、改易を狙う大目付やその後代官となるを目論む江戸留守居役が暗躍、ここへ甲賀忍崩れの無法者まで絡み大騒動。雛を運ぶ役の娘を新十郎が保護したことからかがりは嫉妬しまくりで邪魔するし。人形を奪い、奪い返されのドタバタが展開され、藩主を慕う娘やこれを狙う留守居役、甲賀忍と愛人の葛藤などあり最後はお雛様が岡部藩邸に飾られてメデタシとなる。女の弱さを見せるかがり、こういうときには源爺いが出てきて大活躍。

ロケ地

  • 雛が奪われる街道、不明(谷地田、畔に溜池と小屋)
  • 甲賀崩れの長尾重四郎を尾けるかがり、随心院長屋門前。一瞬見失い、しかし土の跡から気付き塀を乗り越え入る、随心院大乗院内部。
  • 岡部藩上屋敷、随心院薬井門
  • 留守居役を脅した長尾を追う藩士たち、東福寺三門(東司と禅堂映り込み)。これを返り討ちにした長尾が東司付近からやってきた新十郎と対峙する。
  • 大目付邸、相国寺林光院
  • 長尾に切りつける尼姿のお吟、智積院密厳堂蔵脇。
  • 長尾と留守居役の取引の芝神明裏の林、仁和寺金堂付近疎林

第23話 地獄の沙汰

 諸価高騰し市民の不満が募る。偽金が出回っていることによるが、裏に富商とつるんだ水野の政敵・阿部老中。新十郎は町奉行・鳥居甲斐守の依頼で探索に動く。一味の女の小唄の師匠に芝居仕掛けで接触した新十郎はうまうまと偽金作りの工房に潜入、そこで展開される職人たちの濃いドラマが見もの。

ロケ地

  • 阿部伊勢守邸、大覚寺大門か(扉をナメて式台玄関の破風)
  • 新十郎の隣にいた錺職人が袋(贋金入り)を取り違える茶店、今宮神社門前茶屋・一和。新十郎は甘酒を飲んでいるが職人の食ってるのはここで焼いて売っているあぶり餅。
  • 一味がツナギをとる船宿、堀端は書割で窓外の水面は嵐峡か。
  • 文字秋が母を亡くし信濃屋に拾われた信州の野辺、北嵯峨か。
  • 事後、端唄を口ずさみながらゆく新十郎、大覚寺大沢池堤

第24話 野望の絵図

 タイトルの絵図は地理学者が薩摩の軍備等を詳しく記述した地図。これを公儀に届けられてはと追う薩摩藩の用人、怪しげな用心棒と女道中師を使い動く。当の地理学者は冒頭殺され絵図は不明。これを巡って騙し騙されの大騒動が、川止めの川崎宿で繰り広げられる。一癖ある女道中師に、新十郎もかがりも用心棒たちも、宿の番頭まで振り回される。

ロケ地

  • 用心棒の首魁とサシで立ち会う新十郎、木津河原
  • 女たちと六郷の渡しを船でゆく新十郎、木津川

第25話  江戸惜春譜

 物騒な事件の現場に見え隠れする女あり、尻軽の私娼と見えた彼女は、恋しい男の無念を晴らすため身を汚した者であった。事後、姿を消す女の心情が哀切極まりない。

ロケ地

  • 館林の中間に無体を働かれる提げ重のお七、木場は例の「材木置場」か。人物の背景に、嵯峨らしき山の天辺がちらり。
  • お七を見て調書を繰る左近のダンナ、一年前出た徳三郎の乗った流人船の回想シーン、琵琶湖流入河川河口付近。お七は水辺の葦原から船を凝視。
  • 北の吟味与力が殺されて見つかる屋形船、大覚寺大沢池水門近くの岸に舫い。発見者は新十郎で、釣りをしていて悲鳴を聞く。検分を凝視するお七は大沢池堤。
  • お七をつけた新十郎、怪しの浪人・十内を見かけ尾行するくだり、金戒光明寺。三門前石段〜永雲院下坂〜長安院裏路地(東望・禅堂映り込み)〜善教院前坂(尾行に気付いた十内が坂上から見下ろして鯉口を切るが、新十郎は門に隠れ)〜超覚院(十内が入ってゆく勘定方・館林邸)
  • 屋敷に出向いて館林の中間とよりを戻したお七、鼻緒を切る戻り道は金戒光明寺本堂前坂。腰掛けて鼻緒をすげるシーンは全方位から撮ってある。
  • お七の投げ文にビビり館林邸へ駆け込む伊勢屋、十内に始末される帰り道は金戒光明寺長安院下坂(夜道)
  • 十内が仲間の浪人と屯する寺を急襲する左近と新十郎、立ち回りの「廊下」は東福寺通天橋。開山堂より通じる坂から、洗玉澗に架かる橋梁部、法堂前の回廊部分とさまざまに使う。寺設定根拠の鐘の音のほか、橋上では流水の音を演出。
  • 赦免船で戻った徳三郎、左近が迎えに出る浜は琵琶湖畔か。

※監督は実相寺昭雄、ちょっと「京都買います」テイスト。ヒロインは斎藤チャ子。
※2011年夏、時代劇専門チャンネルにて「発掘」されて放送。中ほどに映像欠落部分あり、字幕で補われていた。


第26話 無法の宿場

 上州・竹鼻宿で繰り広げられる大騒動。
十手を預かるヤクザを粛清したい水野老中の意を汲んで新十郎やかがり・左近が入り込み、不正を糺そうとして果たしえず汚名を着て自刃した代官の無念を晴らす。代官の娘も潜入していて、彼女の恋人の八州回りも一枚噛んでくる。これに加え、新十郎がくっついている旅の一座の色っぽい太夫も花を添える。新十郎の目論み通りヤクザを抗争に導き事は収束するが、事後彼の姿は一座からも消えていた。

ロケ地

  • 元竹鼻代官・林田が切腹する水野老中屋敷前、大覚寺大門
  • 中村胡蝶一座が宿場へ入ってくる道、不明。応援の親分衆がやって来るのも同所。湖西の棚田か。
  • 八州と新十郎が名乗りあう林、不明(土手下か)

第27話 群狼の町

 埋立地の州、獄門島と呼ばれるスラムは食い詰め者や後ろ暗い者の溜まり場。そこを支配するのは謎の「棟梁」。ここへお尋ね者を追って潜入した左近が行方不明となる。一月後、新十郎はアイパッチした怪しの態をつくろい潜入、かがりは辮髪に結った火盗改の人数とともに取引先を装って侵入、しかしバレバレ、いつもの如く事態が二転三転。島の酒場・碇亭の女将や唐人娘、左近を助けた蛮社の獄で追われた蘭方医など多彩な人間模様が描かれ、悲喜こもごものドラマが展開する。新十郎を庇って撃たれる女将のシーンで幕、彼女の昔の男は新十郎の変装と酷似していた。

ロケ地

  • 州に架かる橋、木津川流れ橋。ロングやクレーンショットもあり。水嵩がずいぶん多い。
  • 殺された女の葬送に事寄せて脱出の左近漕ぎ出す沖、琵琶湖北湖(西岸か)。汀のシーンは木津河原と琵琶湖岸を複合。

第28話 暮六つまで

 十手取り上げになった元岡っ引は元泥棒の更正に力を尽くすが、この連中に今ばたらきの疑いかかり、無実を証明すべく奔走する。そして彼が捕えた盗っ人は、父を恨み家を出てグレていた息子だった。この間父を誤解していた息子の心が溶けてゆくさまが描かれる。新十郎はこれを邪魔せぬよう左近を抑えたり。タイトルは、元岡っ引の太兵衛が現役の三次に盗っ人を捕えてくると約束した刻限。

ロケ地

  • 太兵衛が掏摸の青年を説得するも、盗っ人の中に息子がいると知らされる墓地、金戒光明寺塔頭内墓地

第29話 若き祈り

 疱瘡が大流行、種痘をもって市民を救いたいと志す若き医師・大庭正吾は御典医の師匠に破門されても全くめげず、理想に邁進する。そんな彼に水野老中は牛痘の種を入手させるべく手配するが、水野の政敵がこれを阻み追い落としの材料に使おうとする。
周囲の状況なんか見ちゃいねー熱血漢の大庭は、捕われた先でも怪我をした刺客の傷を気遣うなどするイイ奴。その熱意に兄貴分の死体を腑分けされたと怒る盗っ人も、夫を切り刻まれた女房も、反対していた師匠の娘も、手厚い治療を受けた刺客も彼の行為に助力をはじめ、その結果種痘は世間に認められ、接種にはひきもきらぬ人数が押し寄せることとなる。

ロケ地

  • 盗賊・源吉の梟首場、琵琶湖西岸松原。
  • 牛痘を黙認され水野邸を出てくる大庭たち、門は勧修寺山門、出てきて参道塀際をゆく。
  • 源吉の墓、埋葬してくれたのは若い医者と女房に告げる新十郎、不明(山腹に墓標散在)
  • 大庭の師匠宅、塔頭か。破門になって出たところで源吉の弟分に切りつけられる。
  • 大庭が水野の政敵・奥祐筆の梅津の手下に襲われるのは下鴨神社(河合社、糺の森池跡)、監禁される目黒不動の荒れ寺、不明(蔀戸)
  • 左近のダンナが見つけるゲンカイの梅津の屋敷、東福寺一華院門。
  • 牛痘接種に人が押しかける会場、宝塔寺本堂前。見届けて去る新十郎、山門と大提灯越しに参道坂。

※大庭に治療を受ける刺客・別所一角に川合伸旺。


第30話 頼まれた略奪

 加賀藩の抜け荷を巡ってのすったもんだ。お話は加賀から将軍に献上される仏像を中心に展開する。加賀藩にたばかられ罪に落とされた海運業者の娘、加賀の殿様に無理強いされ側室となる公家の寡婦、事を穏便に進めるため水野から遣わされたかがり、抜け荷の証拠が隠された仏像を入手し殿様を強請ろうと企てる道中奉行、騙されて関わる新十郎。いつもの如く騙し騙され、事態は二転三転。最後は、加賀藩を恨んでいた娘が密書を処分し騒動は収束。

ロケ地

  • 番頭に言い寄られるお嬢様、棚田か(はさ木が見える)←止めに入った新十郎に鎖鎌出してかかってくるが新十郎と確認するための芝居。
  • 中山道の風景、木津堤と河原ほか不明な山道(湖南アルプスか)、棚田の池端。

※加賀の殿様の妾予定の寡婦、行動が怪しいと思ってたら正体がトンデモ。


第31話 虫けら野郎

 どぶ浚いをして暮らす竜吉たち若者三人組は金を溜め込み、いつか這い上がりハイソな暮らしをと夢見る。そのためには富商を脅すことも厭わず、金を取り返しに来たチンピラも殺す羽目に。
殺しの現場を見てしまった娘・おせきに近づき、甘言を用いて女房にし口を封じる竜吉。しかしおせきの純情に打たれ、始末する段になってためらい、そのうち手下二人もシンクロ、竜吉は一人進み出て左近のお縄を受けるに至る。

ロケ地
・黒汐屋を脅す竜吉たち、金の受け渡し現場は今宮神社(楼門、境内、高倉)
・竜吉たちがどぶ浚いをしていて金持ちのお嬢様に泥をはねる溝、梅宮大社門前の橋と水路。金を取り返しに来た男と揉み合うのは楼門内外。その男を追い詰め刺すくだりは不明(塀際に池、殺害現場には祠や蔵)
・殺しを見た娘を狙うも新十郎に阻まれる河原、大堰川(自首も同所)
・結婚したことをさぎりに告げるおせき、不明(鳥居前)


第32話 今千姫

 倹約令の出る町で、湯水の如く金を使い派手に遊び「今千姫」と評判をとる女あり、ふとしたきっかけで新十郎も宴席に誘われる。どうにも奇妙な行動のその女は、人探しをしているようだと同席の遊び人は言う。女の去ったあとの座敷に首吊り死体が見つかるという不穏な事件も起こる。探るうち、女は水口藩近習頭の妻女で、拝領壺の紛失(翌日に戻る)で詰腹切った夫の死に不審を抱き陥れた仇を求めていることが知れる。遂に陰謀の主を現江戸家老と突き止めた女が仇討ちするのをヘルプの新十郎と左近、かがりは水野の殿様に免許状を貰ってきてやるという働きを見せる。女に付き従う若党のほのかな恋情の逸話も挿入される。新十郎に「美しい」と言わせかがりの嫉妬を買う今千姫は白木マリ。

ロケ地

  • 橋を渡る今千姫の駕籠、中ノ島橋(タイトルロール)
  • 今千姫に誘われた新十郎が船に乗り込むのは大覚寺放生池堤。乗って行く先、望雲亭
  • 新十郎を用心棒に雇った女が駕籠を止める、下鴨神社瀬見の小川紅葉橋上。
  • 水口藩邸、不明。
  • 壺を盗んだ盗っ人を片付けた女が佇む橋、下鴨神社泉川の橋。
  • 仇討ちの場となる谷中・斉明寺墓地、黒谷墓地。
  • 自分への思いをしたためた今千姫の文を川に捨てる新十郎、中ノ島橋

第33話 地獄からの使者

 水野老中暗殺の大ピンチ。
狙撃され負傷した水野を新十郎のもとに連れてゆくかがり、事が知れては社会不安を呼ぶためしばらく屋敷には帰らず市中に潜むことに。
水野を襲うは凶悪な殺し屋・野ざらしの主膳、さしもの新十郎も苦戦を強いられるが、危機にはフィクサーのくらやみの徳兵ヱが現れ辛くも勝ちを得る。
 町屋で過ごす水野さま、左近の旦那は別件でそこへ入ってきて冷汗をかく、かがりは使命感から逸り新十郎に諌められ惚れ直すなどレギュラーの見せ場も多く、ゲストの主膳を演じる南原宏治の凶悪さも光る濃い一作。新十郎の裏の顔が垣間見える徳兵ヱとの一幕もなかなか。

ロケ地

  • 船を出した水野が狙撃される大川、宇治川か(流れは瀞)
  • 主膳たちのアジト、中山邸(門、参道)
  • 長屋へ乗り込んできた主膳を尾行する新十郎、東福寺東司。気付かれていてチャンバラは禅堂前。
  • 水野を診た医師・玄庵が襲われる道、鳥居本八幡宮鳥居下。

第34話 白州の鬼

 御用金を預かる商家が次々襲われ、富商の嫁入り行列が度々襲われるなどして威信失墜の北町奉行・立脇将監。奉行所に内通者ありと疑われるなか、奉行の娘と祝言間近の与力が槍玉に上がる。苦境に陥る奉行に力を貸す新十郎、奇策の果てワルを焙り出す。陰謀の主は、奉行を推挙しておきながら隠居の身に虚無を感じ返り咲きを目論む元奉行と、奉行の婿となる与力を欲と色と両面から妬んだ同僚の与力だった。ラスト、隠居の爺は腹に刃を突き立てながら、新十郎にもう一度真っ白な白州で罪人どもを見下ろしたかったと少々異常な欲望を口にし事切れる。

ロケ地

  • 奉行所内外でのツナギ、不明。遠州屋襲撃中止を伝えるお堂は鳥居本か。
  • 曲者の後をつけ、奉行の婿となる与力の屋敷付近で見失う左近、金戒光明寺長安院下坂善教院が善玉与力の早瀬邸。
  • 婚約者に会うことを禁じられた奉行の娘が抜け出して恋人と会う道、大覚寺大沢池堤
  • 怪しい鳥追いを追ってゆく新十郎が刺客に遭う道、随心院長屋門前の路地
  • 奉行の娘の輿入れの駕籠が出る屋敷門、相国寺林光院、行列は相国寺路地から金戒光明寺東坂へスイッチし東西の路地を経て善教院前坂へ。
  • 元奉行・高山典膳隠宅、中山邸(門)、庭は不明。
  • かがりが扮した富商の花嫁行列がゆく、下鴨神社泉川畔から参道を見上げ。
  • ワルの手下のアジト、鳥居本八幡宮(舞殿に扉セット)、広場でチャンバラ。

第35話 金塊消失

 佐渡から金を運ぶ勘定方の一行が襲われる。このことで新十郎に助力を要請の勘定奉行。
荷が消えた三国峠に赴く新十郎、行方不明の宰領役の息子の面倒まで見て、金塊は宰領役により襲われる前に隠されていたという真相に迫る。怪しい浪人者の影がちらつくなか、ようやく見つけるも自失の宰領役の記憶を無茶して戻す新十郎だが、実は勘定奉行が企みの主体でチャンバラ。酒肆の女将は欲をかいて金塊の隠し場所に先行し落盤で圧死、憮然とした表情で現地を後にする新十郎であった。

ロケ地

  • 御用金を運ぶ荷駄がゆく山道、谷山林道か。
  • 宰領役が強盗に落とされる三国峠の崖、保津峡落合落下岩。ラス立ちは河口
  • 三国峠へ出向く新十郎を追い越していったかがりが脅し文をつけて見つかる道、川堤か。
  • かがりが浪人衆に襲われる神社、不明(低いステップと小祠、石鳥居)

第36話 悲願兄妹鏡

 奸計に落ち改易となった津山藩の浪士たちと知り合う新十郎、リーダー格の侍・吉田清太郎の心底を見て助力を申し出る。
目的は公儀に反省を求めることと言い、同志になるべく犠牲が出ない方策を摸索する吉田、恥を忍び昔の恋人で現将軍家側室の女に縋ろうとしたりする。
左近やかがりも動き、大目付と津山藩のあとに転封しようと画策する花咲藩との関係を暴く。水野の使いと称し大目付邸に乗り込み証拠書類ゲットの新十郎たち、大目付は切腹となる。吉報を喜ぶ浪士たち、しかし新十郎は吉田と妹のお新が世上を騒がせた詫び自害しているのを見るのだった。

ロケ地

  • 大目付の駕籠を襲う津山藩の浪士たち、随心院長屋門前路地
  • 津山藩士たちが新十郎を襲う寺、穴太寺本堂前。
  • 大目付・内藤甲斐守邸、随心院薬井門
  • 中間部屋で賭場を開く旗本・吉川邸、随心院長屋門、変装した左近が入ってゆくのは寺務所門(拝観入口)

第37話 若さま飛び出す

 小大名の部屋住みの身分を嫌い屋敷を出る若様、そのあとに将軍の妹君との見合話が振って湧いて大騒動。江戸家老から、左近にまで探してくれとの依頼が来る。
以降、若様に刺客が放たれるは、見合相手の姫様はかがり連れで町に出てくるはのどたばたが続く。そして刺客を始末して屋敷に帰る若様、実は藩内にいた内通者を焙り出すためのお芝居だった、という結末。陰謀は将軍家の姫を息子のほうに貰いうけ、下賜される領地ゲットも企む本家から。これは捕えた刺客に以降の手出し禁じる旨したためた水野老中の文付きで届けられて幕。賭場の手入れから二人して逃げた若様と姫はラブラブ状態、見合の席で再会のオチ。

ロケ地

  • 刈谷藩上屋敷、大覚寺大門と式台玄関、仁和寺書院と宸殿。
  • 内通者が首尾を報告する神社、平岡八幡宮本殿前。導入は崖下から舞殿越し。
  • 前老中・土井利位邸(本家)随心院薬井門
  • 江戸城イメージ、彦根城天守
  • 照姫が出てくる江戸城西の丸の坂、知恩院黒門道。鑑札を見せ出る門、知恩院黒門
  • ラスト、かがりと新十郎がおっかけっこの河原、木津川流れ橋(橋脚のみ映る)

※若様・源次郎に田村正和、ぽっちゃりと可愛く、育ちの良さ丸出しの遊び人となる。江戸家老のじいに左卜全、わちゃわちゃ走り回る様が傑作。


第38話 香木騒動始末記

 早馬から子供を救ったのが縁で新十郎と意気投合した侍は、他藩との折衝に赴く伊達家の家臣・戸ヶ崎精四郎。泉州の浜に流れ着いた香木を入手しようとする伊達家と山内家の評定は屁理屈の応酬となり、最後は香木を二つに分ける運びに。しかし香木のことを知らぬ伊達家は価値の低い上のほうを掴まされてしまう。これには新十郎たちが介入し山内家の御用邸から盗み出す。しかし盗ったほうの香木を寄越せと言い出す戸ヶ崎、斬り合いとなる。
後味のわるい結末、伊達のほうの香木も盗み出してきた新十郎は火祭りに赴き、二つながら火中に投じるのだった。

ロケ地

  • 早馬が子供をひっかけそうになる街道、不明(谷地田の中、溜池も見える。香木が運ばれる街道も同所)
  • 水野越前守邸、随心院薬医門(張り出した築地は映らず)
  • 泉州双子浜、マジ海か琵琶湖かよく判らない(岩の多い浜、松原)
  • 両家の話し合いが行われる法然寺、妙顕寺本堂(イメージに大屋根、お堂の中も使用か)
  • 伊達家御用邸、不明(門、池泉)
  • 山内家御用邸、随心院大乗院脇路地、山門、拝観口、大玄関。
  • 火祭りは鞍馬(松明の形状と「サイレイ、サイリョウ」の掛け声から判断)

第39話 帰って来た男

 左近が島送りにした元錠前師が赦免となり帰還。更正を誓う彼に世間は冷たく、しかも女房は実の弟と結ばれていた。そんななか昔の仲間が彼を引き込もうと弟を拉致して脅し、錠前破りを強要。許しておけないと踏み込んだ新十郎はワルどもを叩きのめし、窮地から救ってやるのだった。
しっとりと描かれる人情話に、新十郎行きつけの酒肆の親爺(入墨者)の逸話が加味され奥行きをつける。

ロケ地

  • 赦免船の着く浜、琵琶湖か(松原の中に低い鳥居)
  • 伊太郎を盗みに誘う伝次、「材木置場」。
  • 左近が辻斬りを追うも伝次に邪魔され取り逃がす林、上賀茂境内か。
  • 次々と職を追われ疲れ果てた伊太郎が川面を覗き込むところへ伝次が声をかける橋、上賀茂神社ならの小川神事橋
  • 伊太郎の弟が拉致され運ばれる道、不明(小川沿い、石橋を渡ると長い塀が続く)
  • 弟を受け取りに出向く伊太郎、天神島か。

第40話 刀の中の顔

 旗本・三田村家では幼少の殿をよいことに用人が家政を壟断、札差とつるみ私腹を肥やす。
浪人・池田種之助には三田村家に仕える友人から剣術指南として入り、殿の傍近くにあって諌める役を果たしてくれと申し出が来る。しかし指南役となるには、用人が推す道場主と試合をして勝つ必要があった。この試合を巡りさまざまな妨害をかけてくる用人一派、闇討ちで右手を負傷し一時は自棄になる池田を手荒く励ます新十郎、札差がらみでかがりも動く。
そして試合、池田はここでも奸計に陥ち斬り死にしてしまう。これを聞きぷちんとキレた新十郎、道場へ乗り込みワル皆殺し、道場主ご自慢の長船は真っ二つに両断されるという大立ち回りを演ずる。
事後、水野老中が裏切りに遭い暗雲立ち込める気配が示される。

ロケ地

  • どうしても刀がと呟く池田の話を聞く新十郎、そこへ元朋輩の浪人が引き立てられてくる町角、御室霊場池端。
  • 新十郎に用心棒(護衛ではなく刺客)の口をかけた男が案内する神田お玉ヶ池、斬る相手が入ってくるやしろは御室霊場池中の摂社(顔を見ると池田)
  • 刀を求めた先の金満家の伊達道場、不明(門の部分のみ)
  • 池田の息子が苛められているところへ通りかかり悪ガキを散らす新十郎、御室霊場放生池と橋。池田が素振り、同所宝筐印塔と石仏群前。以上二ヶ所も設定は神田お玉ヶ池。
  • 三田村屋敷、随心院薬井門大玄関。伊達道場外、新十郎が伊達一角と雷鳴のもと対峙、随心院寺務所入口門前。去る新十郎、同所参道

※池田の敗因となった伊達一角の「汚い手」は金ぴかの鍔で光を反射させ目を眩ませるというもの。池田の時は陽光、新十郎の時は雷。*池田を演ずるは露口茂、運命に弄ばれる生真面目な浪人を好演。


第41話 海原はるかに

 水野老中への風当たりいよいよ強くなり、市中には糾弾の貼り紙がべたべた。腹心の大目付も裏切り、諸侯ほか上様にまで水野憎しのふう強まる。
そうした情勢のもと、水野が老中就任以前鎖国の禁を破って国外に調査に出した男・村越が、異人との間にできた娘を伴い帰還する。一発で失脚材料となる村越を巡り大目付が暗躍、かがりや新十郎に加え甲賀の里から源爺いも駆けつけ村越は奪還。しかし時勢の流れ早く、水野のもとには罷免を告げる上使が来る。新十郎は裏切りの大目付が許せず、屋敷に押し入り大立ち回り。大目付はかがりが斬り捨てる。
水野は渋谷村の陋屋に蟄居、新十郎は村越父子と新天地へ船出、かがりは彼と共にゆくのを断念し水野の傍に仕える道を選択する。

ロケ地

  • 町方に追われる村越が新十郎(夜釣り)に娘を託す橋、穴太橋か。
  • 左近に村越のことを問われる新十郎、不明(石段の上に鳥居)
  • 大目付・大鳥甲斐守邸、相国寺林光院(門のほか、源爺が忍び込む段で式台玄関も使われる)
  • 水野さまも今度は危ないと新十郎に話す左近、不明(鐘楼など見える境内)
  • 水野失脚直後、村越父子を隠してある寺へやって来る左近、勝持寺仁王門(扁額そのまま)
  • ついてくる気があるならと、国を出る新十郎がかがりに約束した五色の浜、不明(砂浜に干し架台、岬の端は巌。湖東かと思うがマジ海の可能性も)

※村越の話を聞きアメリカに興味津々で目を輝かせる新十郎、阿片戦争の実相を知り自らの立場を省みず国情を憂える水野、二人の男の対比がなかなか。


※話数は本放送時のもの。再放送される時は欠番分を無視してカウントされるのが通例なので注意されたし。


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