妻は、くノ一

2013年BSプレミアム、松竹/NHK

原作/風野真知雄
音楽/西山宏幸
主題歌/山崎まさよし「アルタイルの涙」
語り/原田美枝子

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第一回 「織姫と彦星」 2013.4.5

 新妻の出奔には深い事情、しかしそれを知らされてもなお妻を恋う男。彼は妻を求め江戸へ、そこで密偵を差し向けられた理由の片鱗を発揮し始める。
「夫」が江戸へ来ていることを知った織江が、鳥追いに化けて様子を窺いに来るところで初回ピリオド。

琵琶湖

ロケ地

  • 一人艪を漕ぎやって来る織江、彦馬が迎える肥前平戸の月の浜は琵琶湖東岸砂浜(佐波江浜と思われる)。後段、浜へ出て桜貝を拾う夫婦のシーンでも出て、こちらは夕方?ぎみ(早暁かも)
  • 新妻のもとに飛んで帰ってくる彦馬、家はセットだが前に坂をしつらえてあり、彼方に海を合成。
  • いなくなった妻を求め江戸へ向かう彦馬、野宿のお堂は丹波国分寺本堂、暗いうちに起き出して山門をくぐり見上げると満天の星。江戸へ二十里の街道、大堰川緑地。双身の石仏に祈る道端は丹波国分寺境内(甍ちらり)。焚き火中の母子に不審がられてしまう里、丹波国分寺境内集合墓の傍ら。
  • お庭番解説のくだり、説き起こしのお城イメージは二条城本丸櫓門、二の丸御殿俯瞰で桜田屋敷表現。お庭番屋敷は大覚寺明智門。内通者が始末されたり、西国諸藩への策謀がなされるくだり。
  • 招福の縁起物を担いで町をゆく静山、芸者にからんだ浪人ばらと事を構えるのは仁和寺中門〜茶所にかけて。立ち回りは参道石畳、段取りよい殺陣が見もの。
  • 唐辛子売りに化けた織江が、密偵の奥女中・お弓とツナギをとるくだり、松浦家上屋敷は大覚寺大門。高窓からお弓がザルをおろす屋敷裏手は随心院長屋門。松浦藩士が織江を誰何する道は妙心寺大庫裏裏クランク、立ち回りあって織江ドロンは大庫裏脇石畳。
  • 誘拐されていた立花屋の娘・おゆうを伴い、高輪へ検分に赴く彦馬、金戒光明寺永雲院下坂。見下ろしの絵、善教院と思しき甍の向こうに海を合成。設定は白金付近。
  • さらに見当をしぼって行ってみるくだり、お香の匂いがしたとおゆうが言い出すのは神護寺和気公廟所前。このあとの芝居はセットにスイッチ。
  • エンディングに被る、藩士時代の彦馬登城風景、ころんだ子を見てやる道は民家南塀際(南側に海を合成)

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 原田朔之助/中村靖日 奥寺勘兵衛(奥祐筆)/金井勇太 安藤祥吾(御用取次)/小木茂光 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯 

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※彦馬の長屋に小さな神社あり、「吾妻はや」に因む妻恋神社。長屋は湯島設定。
※平戸の彦馬宅、松浦家下屋敷の釣殿、凝った造形。


第二回 「あやかし」 2013.4.12

 静山のまわりで起こる怪事は、闇からの警告。謎に迫った彦馬は命を狙われてしまうが、同じ闇から謎の助け手が現れる。
くノ一は、幸せの記憶を胸に抱いていた。

仁和寺

ロケ地

  • 遠めがねを貸して商売をする彦馬、神護寺金堂前(石段下から見上げの図)。見返りの遠景は湖西あたりを合成か。
  • 彦馬が寺子屋の先生をはじめる法深寺、神光院。教室となるお堂は中興堂、内部も使われる(もちろんセット併用)。鐘楼は不明(鐘に下がり藤の紋入り、基壇あり)
  • 怪異の出所を捜しに出る静山隠居所近く、不明(夜の庭から建物と渡廊?)。付近の空家から見る隠居所も不明(林間にのぞく、甍の連なり)
  • 松浦家上屋敷、大覚寺大門。潜入中の「奥女中」お弓が出てくる。
  • お弓と虚無僧姿の織江がやりあう寺院境内(?)仁和寺九所明神。雲水(非・忍者、通行人)が出て水入り。
  • 太郎吉の迷子札を貼りにゆく湯島天神、出雲大神宮。狛犬前に奇縁氷人石をしつらえ。
  • 平戸の海(キノコ毒で寝込み中の織江の回想)琵琶湖東岸(波高く、寒々しい雰囲気)

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 原田朔之助/中村靖日 お蝶/黒川智花 祥元和尚/織本順吉 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※お弓の腕に川村さまラブの刺青、川村は織江を望んだニュアンスが雅江の台詞に。
※彦馬の危機を救った際の織江のなりは、ばりばり忍者ルック。臙脂?が渋い。


第三回 「歩く人形」 2013.4.19

 静山のもとに転がり込んだ不思議な人形に乗じ、闇の者が動く。またぞろ危ない目に遭う彦馬だが、天井裏には「妻」が潜んでいた。
上屋敷では潜入が発覚しお弓が落命、このことは彦馬と織江それぞれの心に深く突き刺さるのだった。

出雲大神宮

ロケ地

  • 太郎吉を連れた彦馬がお御籤をひく湯島天神、出雲大神宮。お芝居は狛犬脇で。
  • 暮れの賑わいを描くひとこま、仁和寺茶所・塔下部映り込み。
  • 今年最後の授業を終える彦馬の寺子屋、神光院中興堂。遊んでいた太郎吉に声をかけるシーンは池に架かる本堂前石橋たもと。木々は紅葉。
  • 除夜の鐘、金戒光明寺鐘楼・経蔵映り込み。
  • 上屋敷へ年賀にゆく静山、門は大覚寺大門、玄関は随心院大玄関
  • 松浦家下屋敷の天井裏で「夫」を覗き見しての織江の回想、平戸の浜は琵琶湖東岸砂浜、話に出る岬は沖ノ島を見立て。
  • お蝶に頼まれた女がお弓にツナギをとる庭、随心院本堂前・お弓はこのとき書院廊下に。このあと静山に見咎められ立ち回りとなるくだりは、裏塀と裏手林間。
  • 静山に斬られたくノ一の首実検をしたあと、物思う彦馬、大覚寺遣水跡・大沢池北東畔。後段も出て、東望・西望両方の絵が出る。西のほうは陽傾きぎみ。
  • 川村に呼び出され、お弓の死を聞かされる織江、桂川・罧原堰堤下右岸河川敷。ヤナギの緑が美しい。川村求婚も入っていて、尺が長い。

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 お蝶/黒川智花 安藤祥吾/小木茂光 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※お弓と対決する静山の殺陣、見もの。忍者とはいえ、女のヒト真っ向割りは新鮮。
※織江の母の「過去」ちらり、二十年以上前に平戸城潜入の事実。加えて、静山の人となりを深く知るもよう。


第四回 「忍びの宿命」 2013.4.26

 心を押し殺して任務を遂行するくノ一だが、胸の奥に大事な記憶を抱いて生きている。その女を求め続ける「夫」もまた、星を見ては思いを揺り起こす。
すれ違いながら同じ星を見上げる二人が切ない話に、やがて来る大きなうねりの兆候が重ねられる。

神光院

ロケ地

  • カピタン一行江戸入り、お城イメージに二条城本丸櫓門。一話目と同じアングル、桃山門映り込み。
  • 彦馬が教える寺子屋、神光院中興堂。導入はお堂内部から、原田同心がやって来て話すシーンは蔵の前・宝筐印塔映り込み。
  • 桜田屋敷イメージ、二条城二の丸御殿俯瞰。
  • 加賀さまのお宝が投げ入れられた井戸、仁和寺水掛不動参道脇の井戸。原作設定では本郷通りの眼福寺。
  • 長崎屋でシーボルトと静山が会う座敷、不明(座敷から刈込の庭が見えている)
  • 長崎屋からの帰り、異国へ渡る船の話をする静山、神護寺金堂前(石段下から見上げ、見返りの絵では海が合成されている)。ここでの彦馬の回想、妻に海の道の話をした平戸の浜、琵琶湖東岸(対岸の、白髭浜の岬が見えている)
  • 「お里」にちょっかいを出した辰吉が始末されて浮かぶ川、中ノ島橋下掘割
  • 加賀さまのお宝が引き上げられたのを見て帰る彦馬と生徒たち、仁和寺鐘楼前。

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 原田朔之助/中村靖日 お蝶/黒川智花 奥寺勘兵衛/金井勇太 お弓(回想)/佐藤めぐみ 宵闇順平/梨本謙次郎 隻星雁二郎/梶原善 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/服部大二

※ドラマには静山の愛犬が出ていないため助け手は現れず、くノ一は耐える。
※養子の芸、「犬のぷるぷる」か。


第五回 「いのちのお守り」 2013.5.3

 川村に不審を持たれたことで、母は織江に早々の任務遂行と「平戸の夫」の始末を示唆する。
侍としては情けない限りな彦馬の行動について、胸が痛くなる織江と、苦々しく思う川村と、それぞれの心の襞が描かれる。

八幡堀

ロケ地

  • 寺子屋、神光院中興堂。原田同心が立ち寄る際は本堂脇から裏手、雨の日仕事にあぶれた藤松が「登校」する際は中興堂座敷を使う。
  • 太郎吉を連れて氷人石へ詣でる彦馬、出雲大神宮。参道を雁二郎がやって来て、両国へ誘う。
  • 藤松の父が後生小判の商売をする両国橋、八幡堀明治橋。藤松が小判を拾って上がってくる堀端は、松竹セット。
  • 雅江と織江がツナギをとるくだり、仁和寺鐘楼前石畳(雑踏演出)〜観音堂脇石畳(ここへ茶店をしつらえ、二人の芝居をぐるっと一周レール撮り。観音堂にはビケ等見受けられず)
  • 静山を訪ねた帰り、雁二郎と町をゆく彦馬、上賀茂神社ならの小川畔。妻と会えるかについて問答。
  • 後生おんなの商売をする川端、八幡堀新町浜。別の日設定では松竹セット堀端でもやる。

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 原田朔之助/中村靖日 お蝶/黒川智花 宵闇順平/梨本謙次郎 隻星雁二郎/梶原善 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/服部大二

※原作では女の子の「おふじ」を、男の子の藤松に変えてあり、後生おんなをやる時は女装。このほか、後生おんなの洒落が通じず怒って暴れた客の設定も構成上変更されていて、川村の心の動きもニュアンスが違う。


第六回 「つぐない」 2013.5.10

 織江の持ち出した、ヤバい書物が事態を動かす。
ふたり暮らした日々を、至高のものと熱く語る彦馬。それを盗み聞いたくノ一は、「愛する夫」を害するやも知れぬ、己が属する組織を脱する決意を固める。
そして織江の母は、娘の思いを肯定するのだった。

大覚寺

ロケ地

  • 桜田屋敷イメージ、二条城二の丸御殿俯瞰。松浦藩下屋敷を退去した織江が、川村に報告するくだり。
  • 報告を終え出てきた織江に声をかけるお蝶、大覚寺放生池堤。二人話す橋は天神島朱橋。オオバンなどの水鳥はここで撮ったものか否か不明。
  • 静山が隠居所として入手した深川・森下屋敷、宝厳院参道、通用門。中もちらっと使うが、座敷はセット撮り。
  • 寺子屋、神光院中興堂。縁先にいる彦馬らを映すのみ、建物全体は映らず・須弥壇の金飾りがちらり。寺の中庭に作る畑はセット撮り。

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 お蝶/黒川智花 奥寺勘兵衛/金井勇太 安藤祥吾/小木茂光 宵闇順平/梨本謙次郎 隻星雁二郎/梶原善 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※隠居所には秘密の資料部屋が作られているが、敵方に仕込まれた怪しの仕掛けは無し。「養子」がここの番人に。
※失踪した飯炊き女がいた部屋の障子に、北斗七星の形をした切り裂き。彦馬はそれを見て確信する運び。


第七回 「身も心も」 2013.5.17

 彦馬は、ヤバい本の複製を作りばらまく。結果、静山への詮議は沙汰やみ。
一方、母子が「抜ける」日はふいにやって来る。もちろんすぐに追っ手がかかり、織江は友と戦うことになる。

神光院

ロケ地

  • 太郎吉と並んで寺子屋の階に座る彦馬、神光院中興堂階。子らの振る舞いから写本を思いつくくだり。
  • 深川森下屋敷、宝厳院通用門。内部はセット撮り、雁二郎が写本アップを報告の段。
  • 寺子屋にいる彦馬を暗殺にくるお蝶、飴売りの口上は神光院蓬月庵前で。太郎吉は石橋たもと、生徒の男児二人は本堂階に。
  • 織江と母が手裏剣の鍛錬をする竹林、北嵯峨か。

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 お蝶/黒川智花 原田朔之助/中村靖日 奥寺勘兵衛/金井勇太 安藤祥吾/小木茂光 宵闇順平/梨本謙次郎 隻星雁二郎/梶原善 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※写本に、月夜の船に乗る二人の図を書き込む彦馬。これは、あとで形を変えて織江からのメッセージとなる。
※織江がお蝶を倒し去ったあと、雁二郎は己が静山付きの平戸忍者であることを、彦馬に告白。


第八回 「いつの日か」 2013.5.24

 彦馬の懊悩も、織江の苦衷も束の間。抜け忍と「公儀」の激突の舞台は、よりにもよって静山の別業となる。
死闘を生き延びた娘は修羅の道へ向かって歩みだすが、心に思うただひとりの人との邂逅を夢見ているのだった。

広沢池

ロケ地

  • 桜田屋敷イメージ、二条城二の丸御殿外観。誰がお蝶を殺ったか詮議のくだり。
  • 西海屋が語る、平戸に現れた怪しの船と一団、不明(夜の岬と船、戦いのシーンは山腹)
  • 桜田屋敷門、大覚寺明智門。川村が出てゆくのを、巡礼に身をやつした雅江が参道にいて凝視。川村の行き先・奥寺邸の門は不明。
  • 手裏剣の技を磨く織江、竹林は北嵯峨か。偵察を終えた母がやって来る。
  • 老中の代わりと称し森下屋敷検分にやって来る奥寺たち、宝厳院通用門。雁二郎が迎えに出る。
  • 森下屋敷での死闘を終え出てきた織江、宵闇順平と遭遇し戦う堀は大覚寺有栖川河床。深手を負った川村が這い登るのは御殿川落ち口。
  • 奥寺から激しく叱責される安藤と川村、平身低頭の廊下は西教寺書院廊下(設定は城内か私邸か不明)。その後川村が雅江は殺した/織江を追い続けると決意を述べるのは墓地。
  • 雅江が葬られた「水辺」、広沢池観音島脇池底・水脈のそば。その墓に詣でる静山と彦馬を、織江が島の向こうから見ている。ひとり歩みだす織江、広沢池池底。
  • 織江のメッセージを受け取ったあと寺子屋に出勤する彦馬、神光院中興堂(内部)

隻星彦馬/市川染五郎 織江/瀧本美織 川村真一郎/和田聰宏 西海屋千右衛門/堀部圭亮 奥寺勘兵衛/金井勇太 安藤祥吾/小木茂光 お蝶(回想)/黒川智花 宵闇順平/梨本謙次郎 隻星雁二郎/梶原善 雅江/若村麻由美 松浦静山/田中泯

脚本/金子成人 演出/山下智彦

※織江のメッセージだった、船に一人乗る人の絵、もう一人書き加えられた状態で、死闘のさなか彦馬から織江の手に。事後、彦馬の長屋に届けられた「その絵」に添えられた文言が「いつの日か」。
※雅江の墓所、原作では本所中之郷の平戸藩下屋敷のすぐ隣の寺。ドラマでは事情が違うし、劇中何も語られていないので設定は不明。
※宵闇、雅江、川村は森下屋敷で深手を負うが、そこでは死なず。川村のみその後も生存。くノ一二人(+雁二郎と静山)とお庭番モブの総力戦は、息もつかせぬ迫力。

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 尺ゆえか、鳥居耀蔵は登場せず、幕府方では奥祐筆と御用取次が出て、静山を陥れようとする。鳥居が出ないため、四天王とか、エロ絵ためてた仕掛けいっぱいの屋敷も無し。また、雅江のライバル設定の、浜路のおばちゃんも出てこない。あと、同心の原田さんは独身のもよう。

 2013年6月20日より、地上波でも放送。

 参考文献 妻は、くノ一シリーズ 角川文庫

 → 妻は、くノ一 最終章

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