痛快!河内山宗俊
1975/10/6〜1976/3/29 フジ/勝プロダクション


キャスト
河内山宗俊/勝新太郎  お滝/草笛光子
片岡直次郎/ヒデ  丑松/火野正平  お千代/桃井かおり
金子市之丞/原田芳雄  森田屋清蔵/大滝秀治
遠山金四郎/若山富三郎  鳥居耀蔵/岸田森  水野忠邦/山村聡


金子市こけし売りの舞台 三十俵二人扶持の軽輩ながら天下のご直参の御数寄屋坊主。役目柄、権力中枢にダイレクトに接する機会も多い彼らは、聞き込んだ情報をネタにせっせと小金を稼ぎ蓄財に励むのが通例。しかしここに希代の快男児あり、金も欲しいが浮世の義理と人情捨ててはおけぬ熱いハートの河内山。下谷練塀小路に屋敷を構え、弱きを助け、強きからはゆすりたかりの無頼漢の痛快一代記。

第1話 一世一代の大芝居 1975/10/6 監督・三隅研次

 一斉店立てを食らい難渋の長屋衆のために、一肌脱ぐ宗俊。
はじめ自分の葬式を出して香典で金を作ろうとするが、現金は雀の涙で他は借金証文ばっかり。
次は、丑松の拾ってきたネタで遠州屋を脅すが不調、同じネタをもって老中・水野のもとへ乗り込む始末。道具立てはお滝を大奥ゆかりのお局に、自身は大僧正に変装して大汗かきまくり。
猥雑に進む話、初回は宗俊の危機を救うなんだかよくわからない設定で金子浪人が登場、原田芳雄の存在感がなかなか。

 ロケ地、屋形船のシーンやお千代を隠す小舟、嵐山公園中州まわりと思われるが確証なし。ラスト、雨の夜襲撃される宗俊、上賀茂神社ならの小川畔にぼんぼりセット。


第2話 ねり塀小路がひと肌脱いだ 1975/10/13 監督・工藤栄一

 心中の生き残り女が晒される場面から始まり、差し金の悪徳商人が晒され返すシーンで終わる。
この間、女をさらってゆき世話を見る金子浪人の話と、心中の片割れの息子の線から動く河内山一家の話とがクロスする。
一家の仕掛けには、非常にキモチワルイ白塗りの丑松夜鷹と直次郎夜鷹が見られたりして。
また、女の身請け話で能登屋の息子を刺激し封印切りに至らしめる、遠藤太津朗の小判じゃらんのくだりの憎さげな演技は見事。

 ロケ地、晒しの石段、神護寺金堂前石段。能登屋が入水未遂の浜や、越後屋ハメる屋形船繋留の池之端、広沢池東岸(汀、堤道)
*酔っ払い原田芳雄、暑そうに片袖脱いで半裸。


第3話 ここ一番の大勝負 1975/10/20 監督・黒田義之

 商家の息子を養子にとっては、その家の財を吸い取りポイを繰り返すたちの悪い徒歩目付あり。
粗暴な「無用組」なんてちんぴら紛いの若侍の取り巻きまでいて悪さを働きまくり。
河内山一家と金子浪人は、それぞれに別のムカつく理由からこれを懲らしめにかかる。
宗俊がしおらしげに徒歩目付に持ちかけたおいしそうな養子話、来たのはなんと金子市で、酒の匂いをぷんぷんさせながらずずいと荒井に寄ってゆき、今日から俺がこの家を仕切るのでお前隠居などと暴言を吐き、いきなり父上呼ばわり。そして千両で買ってほしいものがと言い出し、荒井が死に至らしめた商家の主人の死体を運び入れる。また、荒井がワルの癖にこれにビビり泡くって金出したり。そのうち取り巻き連など出てきてチャンバラ、無茶なことに皆殺しにして出てゆく河内山一同であった。

 ロケ地、荒井の養子が子供集めてこけし彫ってる金子市と出会う、今宮神社高倉下。養子が無用組にボコボコにされるのは高倉脇の坂。荒井邸、相国寺大光明寺(門、南塀)。事後、EDに被せて元養子が味噌の行商、伏見・松本酒造酒蔵を東高瀬川挟んで対岸から。
*荒井への仕掛けの前、無茶苦茶嫌がる丑松と直次郎、養子に仕立てられるのを怖がってと思いきや二人の仕事は死体の操り役。支えて、手などぷらーんぷらーんと踊らせる。怖がってる癖に、しまいにノリでかんかんのうを歌いだす。


第4話 祭ばやしに男が賭けた 1975/10/27 監督・森一生

 倹約令で鳴り物禁じられ、囃子をさらう音も聞かれぬ江戸の町。冥加金を安請け合いの宗俊、儲け口を探すうち抜け荷話に行き当たる。
今回の大仕掛けは松前藩に誼を通じたい山城屋をハメる。
松前藩の奥方にお滝を仕立てて猿芝居打ったあと、水野老中呼んであるという荒っぽい仕事。
事後、老中に祭りの許可貰うのが企みの主眼というとんでもなさ。

 ロケ地、松前藩の奥方を招聘する料亭、中山邸門。水野老中に「狸」囃子を見せる、鳥居本八幡宮舞殿


第5話 親孝行なさけのかけ橋 1975/11/3 監督・三隅研次

 故郷から出て来た母に今の身分を偽りいいカッコするというおきまりの話も、河内山一家にかかればこの上なく猥雑で荒っぽいことに。
だいたい、出てくる母が丑松の母で、本人は伝馬町の牢の中、身分詐称は侍だから乱暴。北町奉行に一日限りでナシ通した宗俊は医者に化けて伝馬町に赴き、丑松は伝染病とブチ上げうまうまと出牢させる。そして、先に大層な仕掛けで「旗本・丑之進」様の御母堂様を迎えてある屋敷に丑松を送り届けるのであった。
その夜、母の布団に潜り込み、懐かしさに洩らす丑松の嗚咽を聞く宗俊たちもしんみり、という場面も描かれる。

 ロケ地、船着きに丑之進様の御母堂様を迎える裃姿の直次郎たち、大沢池畔。伝馬町牢屋敷、大覚寺明智門。御母堂を迎える屋敷、中山邸通用門。去った母を遠目に見送る丑松、桂川松尾橋下手。
*火野正平が演じた類似の話は他でもあるが、なんでこんなにというぐらいよくハマる。子犬のようなあの表情がポイントか。宗俊に言葉遣いを指導される際の「恐悦至極に」を復唱できず「恐喝します」は傑作。


第6話 米が仇の八百八町 1975/11/10 監督・太田昭和

 米の流通を滞らせ値を吊り上げる悪徳商人と一派を懲らしめる一話。
でもきっかけは丑松たちが作った博打の借金返済だったりする、無頼の河内山一家。
今回は金子市も参加、乱暴極まりない手口で商家に入り込み、これとつるんでいた勘定奉行を脅しつけ、江戸に米を流通させる。

 ロケ地、賭場の証文を破り捨てる丑松、中ノ島橋(正ちゃん欄干またぎ)。札差の女将と奉行の密会を見張る丑松、背後に桂川大堰映りこみ。事後、米を積んだ船を遣る直次郎と丑松、広沢池東岸
*勘定奉行邸を探り、表札の字を体で宗俊に説明の文盲の丑松が可愛い。どこへどのように入り込んでも変わらない金子市、いっつも七輪で焼いてるのはサンマ。


第7話 御祝儀放免 1975/11/17 監督・三隅研次

 牢屋敷が改築。これを嘉して行われる御赦免のしきたりあり、赦される囚人の指名は担当の棟梁が行う。
道楽息子の赦免願う富商と、舎弟の解放を目論む地回りとが金をもって運動、その間をひらひらと舞い欲をかく役人。
棟梁に事を預けられた宗俊は巧みに餌をまき奉行をも動かし、ワルをハメる。
冒頭、宗俊たちが書画を偽造している場面が描かれるが、工作に使うテクニックのネタ振り。

 ロケ地、相模屋の駕籠を役人と地回りに襲わせ奉行に見せる橋、中ノ島橋(下方から側面を望む、水面に影落すシンメトリの大胆な図柄と、橋上)。伝馬町牢屋敷、大覚寺明智門(赦免された男を迎える家族の手前に門前で叩刑受ける丑松を配置)
*ラスト、屋形船で「二瀬川」唸る遠山の傍らで三味弾く宗俊、兄弟競演が渋い。


第8話 三途の川は空っ風 1975/11/24 監督・太田昭和

 抜け荷商人たちの縄張り争い、古参の森田屋は新参の碇屋の掟破りの独占を力ずくで阻止する。
はじめ碇屋の用心棒として、のち森田屋の妾と関わる金子市の姿が描かれる。
トラブルの過程で妾は流れ弾に当たり死亡、身の上を聞いていた金子市は彼女の遺体を船に乗せ送ってやるのだった。

 ロケ地、森田屋の妾・お艶が碇屋に誘拐されかかる神社、今宮神社境内。金子市はこけし売りに高倉下に出ていて行き合わせる。この後、かつての同輩とばったり会うのは楼門。釣りの丑松と直次郎が、通る女の襦袢の色で賭けをしているところへお艶が通りかかる橋、中ノ島橋(釣りは橋たもとの堰堤前、お艶は橋上)。捨て子だった身の上を金子市に語るお艶、罧原堤下汀(夕景)。お艶が拉致され監禁される州崎千本杭河岸の小屋、広沢池東岸にセット。お艶を舟葬の金子市も同所汀(夕景、見事)
*「むさい」けどとっても優しい金子市、女の危機は救ってくれるし、ぶっきらぼうな態度とりながら困っている友達に金作ってきてやるし、なんてイイ奴なんだ設定に?マーク灯る、拉致から助けた女に無造作に手を出す市…原田芳雄ならではの役どころか。金と土産持って帰ったら長屋で友達死んでるし。お艶のエピソードは最終話において回想シーンに使われる。*森田屋・大滝秀治に対抗する碇屋に戸浦六宏、悪役花盛り。


第9話 罠にはまった中仙道 1975/12/1 監督・大洲斎

 宗俊が富商の内儀と駆け落ち、と見えたは狐狸の化かし合い。
富商の阿漕な商売の黒幕を探りたい宗俊、そして女は自身の旦那を見返りその黒幕と通じていた。
「道行き」の果ての雪の湯治場で用済みとばかり斬られてしまう女、最後の息で呼んだその黒幕から本格的に金を毟ろうと意気込む河内山一家、ぶった斬ると息巻く金子市。
しかし結果は、阿漕な富商が我が身を省みずお上に訴え出て黒幕おナワ、一文にもならないのだった。

 ロケ地、街道筋各所まことに良い画なれど皆目判らず。途中、金子市一行が刺客に襲われる茶店は広沢池東岸
*どうしても女を取り返したい唐津屋につきまとわれる金子市が傑作。タカるし、呑んだくれるし、途中で帰ろうとするし、の態度がいちいちなんか可愛い。


第10話 鬼より怖い奴がいた 1975/12/8 監督・工藤栄一

 森田屋の頼りない娘婿が弱味に付け込まれ、抜け荷情報を狙われる話。
婿、森田屋にシメられるは丹波屋に責められるはでボコボコ。
この男の尻拭いして回る宗俊、丹波屋に背中刺されて、フラフラ・血ボタボタ状態で乗り込み婿救出してのける荒技をかます。
この、鬼のような男が忌み嫌い恐れるのは…鼠。ED、宗俊の悲鳴で埋め尽くされる。

 ロケ地、森田屋でシメられた婿を連れ出し事情聴く宗俊、大覚寺大沢池堤・水門そば。金子市が森田屋の孫娘と鼠逃がす、大沢池畔
*飲み代のツケが溜まり、どぶ掃除のバイトする金子市、ついでに頼まれた鼠退治が正業に?鼠とりって染めた法被作ってるし。金ばさみで鼠を相手に鋭い立ち回りを披露。*丹波屋へ乗り込む宗俊、持ってきた鋸でいきなり大黒柱をギコギコやりだすのにはびっくり。こんな乱暴な男が、森田屋の孫娘のプレゼントの二十日鼠にぎゃーぎゃー大騒ぎは傑作。


第11話 男が泣いたわらべ唄 1975/12/15 監督・森一生

 表で用心棒を世話し、裏で盗賊を差し向けるという、二足の草鞋の梵天一家と河内山一家の丁々発止が描かれ、金子市が先天性心臓疾患の少女のため奔走する哀話が挿まれる。

 ロケ地、金子市がこけし彫ってて茶店の孫娘・おつうを見る、今宮神社高倉下。茶店は東門内の塀際にセット。金子市が茶店を訪ねるくだりでは石橋も使用。おつうの死を見たあと立ち尽くす金子市、広沢池東岸汀。


第12話 ぬれ手に油の三万両 1975/12/22 監督・黒田義之

 単に行灯油切れてたから買いに行った宗俊、これがもとで押し込みの黒幕と思われてしまう。
油屋は裏で贋金作りをしており、事の露見を恐れ盗っ人を必死で追う。
この盗っ人が千代の旧知、ややこしい人間模様が絡む。最後は事情を飲み込んだ河内山一家乗り込みで乱暴に解決、でもまた一文にもならないというお話。男に振り回された千代は、千鳥を出て自立した生活をはじめる。

 ロケ地、金子市が殴られ商売始める縁日、今宮神社境内。千代が仙太と再会の橋は東門内の石橋。千鳥に帰らずほっつき歩く千代が、川を渡って逃げてくる仙太たちと会う、中ノ島橋下河原。千代を探し歩く宗俊が三杉屋の手下に襲われる、中ノ島橋上。追っ手から逃げ回る仙太が走る掘割、中ノ島橋下水路。千代が勤める浅草の水茶屋・かざりや、今宮神社門前茶屋・かざりや(暖簾も提灯もそのまま使用)


第13話 鯉が命の子守唄 1975/12/29 監督・太田昭和

 西の丸が焼亡、再建事業のお鉢回ってこないよう狂奔する大名家の留守居役たち。
あざとく賄賂をとる水野老中の用人、老中は鯛がお好みと焚き付けまいないの道具にさせる魚河岸の総元締。
鯛買占めに疑義を挟んだ棒手振りの老爺が無礼討ちに遭うなど、庶民にも被害及ぶに至り、乗り出す宗俊。
荒っぽくもコミカルに相手の喉元に迫り、つるんでいたワル二人を破滅に追いやる、痛快な一話。

 ロケ地、勤務先の水茶屋で手討実行犯の侍を引っ掛ける千代、今宮神社かざりや。千代に両国の料亭への道を尋ねるお糸、今宮神社東門内の石橋。梅本は大覚寺望雲亭か。
*練塀小路で生まれた赤子の件で宗俊に祝儀ねだる姿や、お糸の商売のヘルプ丑松、くねくねした演技が独特、火野正平ならばこその仕草が秀逸。


第14話 鉄火肌一番まとい 1976/1/5 監督・黒田義之

 町火消しと定火消しの諍いのお話。
矢場の看板娘と祝言間近のい組の纏持ち、宗俊のところへ仲人の話が来ているところ、定火消しとの騒動が持ち上がり、看板娘に言い寄る定火消し取締の旗本などいて深刻なトラブルに発展。乗り出した宗俊は定火消しの太鼓櫓を乗っ取るという無茶に出て旗本以下を土下座させ解決。

 ロケ地、纏持ちの銀二とおしんが逢引の水辺、嵐山公園中州舳先(右岸側)
*喧嘩っ早い銀二に林与一、血の気の多い纏持ちを好演。ちょっと男前過ぎかも。*定火消しの目を欺く芝居の「焚き火」は丑松たちが担当、大団扇であおぐ。正ちゃん、当時のチョコレートのCMのパロなどかますブレイクぶり。


第15話 地獄に花をつみに行く 1976/1/12 監督・勝新太郎

 通い髪結いの身分を蔑まれ、亡き兄まで誹謗されるも愛想笑いの男が牙をむく。
相手は両替商の平戸屋、裏では買い叩いた娘たちを使った変態じみた絵草紙屋を営む。
間に入った宗俊は、髪結いがさらった娘を取り返し、平戸屋には今回のことは身から出た錆、人の痛みを解れと諭し髪結いにやる金を毟ってゆく。
派手な立ち回り等無い一話、髪結い・長次の心理が細かく描かれる。ゲスト緒方拳。

 ロケ地、集金の金を強奪され入水の平戸屋の番頭、嵐山公園中州岸。長次が番頭をハメて殴り倒す池之端の桜並木、広沢池西岸(水無)。長次の長屋から平戸屋の娘を救出し、岸で待つ宗俊のところへ船をつける丑松たち、嵐山公園中州湛水域。宗俊が置いていった百両を叩き返しに来る長次、殴り合いになる林、大沢池堤水門前。


第16話 夜明けに消えた男星 1976/1/19 監督・安田公義

 宗俊が出会った謎めいた浪人、蘭学の件でお上から追われ、藩主との関わりで国元から追われる。
宗俊は悪びれるふうも無いその男と次第に意気投合してゆき、最後は乱暴ないつものノリで助力するに至る。
ワルをはめるのに、丑松と直次郎に「死んだ」と大嘘をつかせ誘き出す宗俊のくだりが傑作。

 ロケ地、大樽転がしてある浜をゆく宗俊たちが竜岡浪人と出会う、罧原堤下河原。千代の水茶屋にみかじめ料取りに来る地回りの前に立ちはだかる竜岡、今宮神社門前茶屋・かざりや。この後、尾行の直次郎をまく(帯解かれてあーれー)竜岡、今宮神社高倉脇坂楼門
*竜岡に石原裕二郎。勝新自身がメガホンをとる。


第17話 火と燃えよ恋のかよい路 1976/1/26 監督・太田昭和

 異国への渇望を抱く青年に惚れこんだ森田屋、金子市と丑松に依頼し牢から出そうとする。
しかしその青年は牢内で運命の女と出逢ってしまうのだった。
つんぼ桟敷のまま奉行に下駄を預けられてしまう宗俊、言葉とは裏腹に恋人たちを逃がそうと剣をふるう金子市、捕縛され引き回しとなる男女、どんでん返しの大騒ぎののち、洋上の小舟には二人を伴い舳先に立つ森田屋の姿があった。

 ロケ地、小伝馬町から浅草溜へ送られる大次郎が救出されてくるのを待つ森田屋、金戒光明寺石段上(御影堂大屋根バック)。金子市の働きで解放されるも、一瞬の邂逅の女の顔が脳裏をかすめ、鎌倉橋の宮津屋へ走り出す大次郎、桂川罧原堤下付近河床。大次郎と雪を中川の船小屋に隠し、森田屋へ船の手配に走る金子市、捕り方と交錯は中ノ島橋(橋上、中州料亭裏岸)。乞食を集め踊らせ誘導する宗俊、遠ざかる船を見て浜を走る捕り方が踊る乞食集団に阻まれる、琵琶湖西岸汀。
*脚本、尾中洋一。見応えある必見の一作。牢名主を演ずる江幡氏もなかなか、丑松が「命の蔓」を「出す」リアルな表情もマル、お滝と宗俊のしっとりも見せる。ラスト、お廊下をゆく宗俊の脳裏に響く大滝秀治の台詞が出色。


第18話 雪に舞う女の絵草紙 1976/2/2 監督・太田昭和

 母を捨てた父に言いたかった、ただひとことのの恨みごとは口に出せずに終わる。
半ば狂気に陥り旅に果てた母の記憶、ひたすらに模写した父の絵、老耄と成り果てた父の呻き声に耳に蓋する娘、恨の一念で生きてきた彼女は、震える父の手に介添えし贋作を切り裂くのであった。

 ロケ地、理恵を連れお参りの宗俊とお滝、木島神社(本殿、舞殿)。千鳥を辞し龍谷宅へ赴く理恵が渡る雪の橋、中ノ島橋(下からアオリ/橋上)。「本物」の龍谷の喚き声にいたたまれず耳を塞ぐ理恵を連れ出す金子市、松尾大社手水場(楼門バック)
*今回の金子市の風貌、髭ぼうぼうのきったない顔が見もの。しかしこれ一回きり、次にはすっきり剃ってある。


第19話 見果てぬ夢の宝の山 1976/2/9 監督・斎藤武市

 河内山一家に持ち込まれる埋蔵金ばなし、夢のある話スキな森田屋が出資し、親子孫三代で探し続けているという青年を案内に秩父の山中へ。
しかしその金は由井正雪の軍資金、見つけられては困る紀州藩の妨害が来る。そして出た紀州の刻印入りのホットマネーは、爆破され瓦礫の下に封印され直すのだった。

 ロケ地、千代の茶屋に文読んで貰いに来る丑松、今宮神社(東門、かざりや)。こけし彫りの金子市が埋蔵金掘りの男に声をかけられる、今宮神社高倉下。登城イメージ、彦根城(天守閣、佐和口多聞櫓)。秩父天目山尼寺跡のガレ場、いずこかの砕石場と思われるが著しく風化している。


第20話 おれとあいつの忘れがたみ 1976/2/16 監督・工藤栄一

 宗俊の元隣人・船倉の板八が20年ぶりに江戸に帰還、昔惚れた女を訪ねたがとうに亡く、忘れ形見の娘がいるという。
行き方知れずのその娘、話すうち千代と知れる。
慌てて呼びにやった千代は、足抜け女郎が生死の境の母に会いたいというのに同情し、セリヌンティウスよろしく身代わりを申し出て廓にいるという始末。
一家は千代の貞操のため居続けを画策、金を掻き集めに走る。このあとは丑松が掏摸して回るわ、宗俊は賭場ですってんてんになるわ、千代と板八は血がつながっていないと知れるわ、宗俊が河豚に当たって砂埋め(毒抜き)になるわとドタバタ大騒ぎ。
そして最後は千代を足抜けさせる騒ぎのさなか板八が刺され、宗俊は千代に父と呼んでやれと頼むのだった。
コミカルな展開のなか、板八の三味の音が哀切に響く。

 ロケ地、再開した板八と宗俊がしんみり話す大川端、嵐峡汀。足抜け女郎が駆けて来る坂、今宮神社高倉脇坂。千代の水茶屋へ駆け込み、かざりや。廓の用心棒に打ち据えられる女郎を庇う千代、東門内の石橋。河豚買って帰ってくる宗俊の渡る橋、足抜けした千代たちが逃げて隠れる橋に中ノ島橋


第21話 妻恋い、母恋い風ひとつ 1976/2/23 監督・太田昭和

 重役の息子に踏み躙られ藩を追われ、別れ別れの母と父子。
流れ着いた先の江戸で、かたや女郎、かたや辻斬りに身を落しての再会は新たな悲劇を呼ぶ。

 ロケ地、千代が丑松と直次郎に上月浪人の妻探索を提案する水辺、嵐山公園桂川右岸(中州)。中津奥平藩領、重役の息子に陵辱される上月の妻、大覚寺天神島。宗俊に諭されるも諦めぬ千代が再び丑直コンビと図る、渡月橋上手桂川左岸(大堰と橋バック)。直次郎が探索中上月と行き合わせる、大覚寺護摩堂。娘を抱えて走り出す、大沢池堤。丑松が上月の妻を女郎屋から連れ出し同行を迫る、中ノ島橋上。母子の再会、大覚寺五社明神広沢池観音島を併用。上月が金子市に斬られる、広沢池底。


第22話 桃の節句に雪を見た 1976/3/1 監督・黒田義之

 経費捻出のため貨幣改鋳を図る水野老中、材を産する浜北藩を籠絡するため姪を藩主に縁付かせようとする。
しかし藩主は女嫌いの変人、姪は男勝りの利かん気姫。
宗俊は藩主に接近し「柔らかく」教育しようとするが不調、そのうち転がり込んでくる姫とも関わり、二人は宗俊を介して奇妙な出会いを果たしゴールインの運びに。
天然系の二人に振り回される一家がコミカルに描かれ、その過程で鳥居耀蔵と確執を得ることとなる。

 ロケ地、地震騒ぎで屋敷を抜け出した夕姫がナンパされる橋、渡月橋


第23話 真っ赤に咲いた想い花 1976/3/8 監督・勝新太郎

 宗俊が一目惚れ?の女堕胎医、暗い影のある不思議な女。
宗俊は用心棒を買って出るが、丑直コンビが患者に下手な強請りをやらかしおおごとに。
奇妙な経緯の末、女医は刺客の凶弾に倒れるが、実は妹の手伝いの女児は金子市が強請った大金を投げ出し助かる。
陰惨な暗い話だが、最後は刺客の出所を脅しにゆくと明るい一家で締め。

 ロケ地、ラスト、女医とデキてたかと宗俊に聞く金子市、そこへ女児が助かったと報告に来る丑直コンビ、激しい流れのしぶき越しに描かれる、桂川大堰前左岸。


第24話 手玉にとられた鬼三匹 1976/3/15 監督・安田公義

 鬼三匹は宗俊・森田屋・金子市の三人。
将軍のお手つき中揩ニなるを厭った御台所づきのお菊にたばかられ、婦女暴行犯として罪に落されかかる。
しかしお菊の意図に反し養親の旗本が事件揉み消しを図り、加えて水野忠邦への反逆をはかる。
宗俊はいつもの強引な手で事を収めるが、仕儀に感謝の御台所から下された音物は山ほどの羊羹、中を調べるも小判なんて入っちゃいねー始末。
晴れて自由の身になったお菊につきまとわれたり、小悪魔に振り回される男たちなのであった。

 ロケ地、金子市が店を広げていてお菊に声を掛けられる、今宮神社高倉下。森田屋不在で行われる抜け荷、町方に邪魔される夜の浜辺、広沢池東岸。事後、羊羹にゲップの男たちが水を飲みにゆきお菊に絡まれる、松尾大社亀の手水場。宗俊を残してそそくさと立ち去る男たち、楼門


第25話 桜吹雪江戸の夕映え 1976/3/22 監督・勝新太郎

 さんざん儲けたすえ森田屋を切る上つ方、捕縛の指示が遠山金四郎に下され、「いい顔」した悪党をお好みの北町奉行は河内山に下駄を預ける。
宗俊は身代わりを立ててと示唆するが奉行のもとに出頭の森田屋、証拠の割符をむしゃむしゃ食ってしまう御数寄屋坊主の無茶苦茶で幕。
森田屋が掏られた割符を横取りの女スリのエピソードが絡み、河内山若者組がセイシュンしたりもする。

 ロケ地、遠山奉行がスリの親方と引き合わされる、粟生光明寺石段(大屋根映り込み)。事後宗俊が割符を消化するためランニングの石段も同所。遠山が宗俊を呼び出す汀、怪我したおまきを匿う夜鷹の苫船、出頭するという森田屋、広沢池東岸。スリの親方に追われるおまきのくだり、中ノ島橋上〜河川敷。


第26話(終) 無頼六道銭 1976/3/29 監督・太田昭和

 別れの予感を孕みつつ進行するストーリィは、水野失脚の仕上げを図る鳥居耀蔵との対決を描く。
小判改鋳の書付と共に金座後藤拉致って来る森田屋、対する鳥居はお滝を拉致。
荒れ屋敷での鳥居との対峙、自分はいいから思い通りにと訴えるお滝にあの世で夫婦にと返す宗俊、乱闘の口火を切るは森田屋の銃ぶっ放し、甲斐守は宗俊にのされる。
市中をゆく若者三人組、船出の森田屋と金子市、そして堤上をいちゃつきながら行く宗俊とお滝の姿で幕。

 ロケ地、宗俊とお滝のラブラブ堤道、伏見・松本酒造前東高瀬川左岸堤。金子市が捕り方を斬ってしまう浜辺、広沢池東岸。千代がねちねちと話しかけて金子市に逃げられる、嵐山公園桂川右岸・栗石の河川敷


*放映日データ参考文献
  別冊太陽「勝新太郎」1998年平凡社刊 ISBN4-582-94313-6

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