新必殺からくり人 東海道五十三次殺し旅1977-1978朝日放送/松竹

キャスト
蘭兵衛
(高野長英)/近藤正臣
小駒/ジュデイ・オング
ブラ平/芦屋雁之助
塩八/古今亭志ん朝
安藤広重/緒方拳
泣き節お艶/山田五十鈴


第1話 日本橋 1977.11.18

 奢侈禁止令のため江戸払いとなる天保一座、追われ逃げ込んでくるお尋ね者の蘭学者・高野長英、そしてお艶を見込んで広重からのあわせて13件の「依頼」が来る。
高野長英を匿う、奉行所出頭中小屋が焼き払われる、江戸退去の期限を切られるなどの慌しさのなか、広重からの依頼の一件目「日本橋」の謎を解き仕掛けるチーム。焙り出しは日本橋の上に橘の紋、ターゲットは江戸一の大名賭場を開帳の高倉丹波守屋敷。そこでは、博打の借金のカタにとられた娘たちが好き者の富商たちの接待に供されていた。

ロケ地、お艶の新内流しの船がゆく掘割、嵐山公園中州湛水域(セットにスイッチしたところで船から座敷のターゲットに火吹きかけ焼殺)。捕り方に追われる高野長英が走る溝、大覚寺有栖川河床。南町奉行所、明智門。小屋を失ったお艶を招く広重、錦水亭。帰ったお艶が各人に金を分配し「仕事」を手配、嵐山公園中州岸。高倉丹波守江戸屋敷、大覚寺大門。ここからふらふら出てきた男に事情を聞くブラ平、大沢池畔。江戸を発つ一座、琵琶湖湖成三角州汀。
*仕掛けはけっこうダイナミック、イカサマ骰両断を皮切りに山田五十鈴の殺陣がたっぷり披露されるほか、小駒の回転ゴマ額刺しも見られる。もちろん火吹きと催眠術も丁寧に描かれる。高野長英は江戸を発つ一座に合流、「蘭兵衛」と名乗りなし崩しに参加(今回の仕事には不参加)。


第2話 戸塚 1977.11.25

 戸塚宿の茶店の脇を入る「かまくら道」は駆け込み寺・東慶寺への道。この道標と女が赤く変わる。
道を急ぐ女、追いかける亭主の差し向けた男たち、捕まりかけた女を助けに現れる股旅者、親切ごかしに駆け込み女を世話するという店へ連れてゆく。果たしてそこは哀れな女を食い物にするワルの巣だった。

 ロケ地、戸塚宿近辺に木津川流れ橋(橋上、堤、橋下)。東慶寺、不明。東慶寺と間違えた女が入り込み「掃き出される」建長寺、東福寺本堂裏手。逃げてきた深川の材木商の内儀を案内する股旅者、金戒光明寺極楽橋東坂。ワルの手から救われるも絶望深く、逃亡に手を貸した三番番頭と入水の内儀が引っ掛かる杭、桂川大堰
*股旅者(お助け紋三郎)と蓬莱屋は仕掛けの場では殺さず、拘束して彼らが騙し叩き売った女郎たちの前に引き出され嬲り殺される運び。


第3話 三島 1977.12.2

 三島明神の灯籠が赤く変わる。現地のそれには奉納した男女二人の名。男は「病死」し、残された女は自棄となり女郎に身を持ち崩していた。
男の話を出されると激す女から事情を聞きだす過程が哀切。ターゲットの助平商人屋敷へは、小駒を趣向のダシにして大胆に入り込み「地獄変」仕立ての出し物の最中ヤニ下がる男たちを焼殺(裏では蘭兵衛が大立ち回りで役人と用心棒を始末)

 ロケ地、三島明神、不明(鳥居から見える農地にはさ木、亀岡か)。代官所に呼び出されたお艶を迎えにゆくブラ平、湯豆腐嵯峨野の朝鮮石人像前。遠州屋、長屋門
*売らないとはねつけたせいで殺された広重の弟子・清吉の絵や、広重が描いた女の死に顔の絵、70年代ふうのサイケデリックなものでなかなか。


第4話 原宿 1977.12.9

 赤変は浅芽ヶ原の鶴、原宿で繰り広げられた陰謀の果て、お艶の手をすり抜けた女鶴は火中に我が身を投じて果てる。運命と業に絡めとられた女を救うのは死のみであった。

 ロケ地、塩八の先触れを待って夜営の一座、酵素河川敷(ここで依頼者となる女の夫が殺される)。原宿に入る一行、役人に禁足地と追い返される浅芽ヶ原の汀、広沢池東岸。将軍家へ献上の鶴が来る沼、ここを中心に話が進むが、ほぼ広沢池を使用。堤道に汀、芦原が効果的に用いられる。広重の回想シーンや旅立ちのシーンにはわざとデフォルメされた書割ふうの富士山が合成されている。この手法は後のシリーズ「富嶽」でも使われ、効果的なモチーフとなっている。水野出羽守生母・清秀尼が隠棲する常照寺、西寿寺本堂と石段。


第5話 府中 1977.12.16

 ターゲットの安倍川渡し「駕籠の女」を求めて混乱の一座。判らぬも当然の実は男、女装は盗みのあと官憲の目を晦ますためだった。
そして目指す「女」である凶盗の頭目はお艶の元弟子で茶問屋の主、妖艶にして冷酷な春之助。小駒を震え上がらせるホントかどうかわからない過去のエピソードも、お艶と弾きあわす三味もピーターならではの熱演。

 ロケ地、春之助一味に押し込まれ幼女一人残し皆殺しとなる庄屋屋敷、走田神社社務所。凶盗のため詮議厳しい関所、下鴨神社馬場に柵セット。安倍川渡し、罧原堤下桂川(中州を効果的に使用)。生き残りの幼女と遊んでやる蘭兵衛、下鴨神社泉川畔と糺の森林間。


第6話 日坂 1977.12.23

 日坂の夜鳴き石が赤く変わり、そこに捨てられていた赤子が今回の「因縁」の子。そしてもう一つの因縁は小駒の兄、今回のターゲット。
お艶にからくり人としての道を選ぶと告げ兄に会いにゆく小駒、裏切りを案じる塩八やブラ平に、あの娘が裏切るなら皆して死ねばよいだけとお艶は吐き捨てるのだった。

 ロケ地、夜鳴き石、谷山林道頂上付近にセット。小屋掛けは鳥居本八幡宮鳥居脇にセット、赤子を保護する「叔母」おふじが襲われるのは竹林。小駒の兄が養子となる掛川宿の庄屋屋敷、。小駒が兄と再会、広沢池東岸。話す二人は観音島へ移動。一座が婚礼の宴に赴く道、
*孕んだ情人と手を切るため地回りを使い抹殺の悪辣男に綿引洪。かっぱらいまでして小駒を育ててくれた優しい兄と、人を殺すも平気で、妹にもつらっと嘘をつく冷血漢を熱演。生硬な台詞回しが余計にドロドロの情念を際立たせる。「妹」小駒の、兄と見極めた瞬間訛りも変わる演技も見もの。


第7話 荒井 1977.12.30

 赤く変わるのは浜名湖を渡る船、そしてもう一つ、渡った先の荒井の関所。
表街道を通れぬ者を食い物にするワルどもと結託する関所役人、お艶に駆け落ち者の追跡調査を命じられたものの見失う塩八、寝覚めの悪さに夜さり出す船が狙い撃たれる。身に弾を受け半死半生の態で高座に上がる塩八、中ほどで引かれた幕、瀕死の彼の目に映る幻の観客が泣かせる。

 ロケ地、浜名湖畔で朝顔を洗う蘭兵衛、琵琶湖畔(砂州、河口州?。バックに屏風状の山、比良山系か)。今切の渡し、汀の石垣、遠景にはエリ、唐崎神社あたりか。荒井関所、上賀茂神社北神饌所前に柵セット、蔀戸には幔幕張り。夜、荒井宿から船を出す塩八、広沢池東岸。塩八が死力を尽くしてつとめる高座の間仕置に走る蘭兵衛とブラ平、上賀茂神社ならの小川畔を走り北神饌所にセットの関所へ。ラスト、道中塩八の経緯をモノローグのお艶、琵琶湖畔の河口州と堤道。
*ワルどもの餌食となる駆け落ち者、身を汚されても毅然と復讐を誓う気強い女に鮎川いづみ。


第8話 藤川 1978.1.6

 宿場から献上馬を出して栄達を図る宿役人と名主、民から馬を召し上げる際には殺してでも奪う悪辣さ。広重の見たのは前回のもので、一座は再び横車を押して名馬を召し上げるワルを見る。そして祖父を殺され愛馬を取り上げられた盲目の娘のため、ブラ平は炎を吹き蘭兵衛は細身を振るう。

 ロケ地、街道筋や犬の飼い主の青年が斬られた道端、大内辻堂と周辺。
*今回狙われる名馬・フジの飼い主に西崎みどり、馬子唄をたっぷりと披露。宿役人に和崎俊哉、遣い手設定で蘭兵衛の頭巾が一部裂かれたり。しかし今回の主役はなんといってもお馬さん、西崎みどりの呼ぶ声に応えぱかぱかと駆けてくる可愛さ、役者の直近まで走らせてて迫力。


第9話 鳴海 1978.1.13

 はじめヤクザに無体を強いられる被害者と見えた女は、広重の直感どおりの異常さを現してゆく。魅入られた男は逃れえず非業に斃れ、ちょっかいを出した地回りも巻き込まれるかたちでからくり人たちに始末される羽目になる。深間におちた業深き女はお艶に引導を渡されるが、あとに残るのは遣り切れない後味わるさばかりであった。

 ロケ地、鳴海宿手前の街道をゆく一行、身投げ女を見る汀は広沢池東岸。以降、身を隠す船小屋まわりも同所。旅立ちの山道は不明。
*不倫の果て夫を殺し、なお男を追い求める恋に狂った女を際立たせるため、ヤクザの親分が泣き節お艶の芸も解さぬ田舎オヤジとして描かれる。男を監禁させた屋敷で、お艶に三味を弾かせておいて男を掻き口説く女が凄絶。


第10話 桑名 1978.1.20

 舞台は桑名、お大尽と呼ばれる角屋は役人も手なづける化け物だった。
からくり人たちは、調査途中に関わった哀れな恋人たちを救い得ず、彼らの死を見て仕置に入る。看板の木綿問屋のほか、船の建造から賭場、宿も支配し渡船の運行も欲しいままにする大ワルの座敷で、お艶は彼が嫌う「桑名の殿さん」の歌詞を変えて唄い、控えていた刺客も鮮やかに討ってとる。

 ロケ地、船大工の仕事場に聞き込みに入るブラ平が乗る船、嵐峡。小駒が洗濯の河原、保津峡落合河口。女郎から織り子に下げられたおしのが逃げて恋人を待つ雨の夜の氏神さま、上賀茂神社校倉(奈良社鳥居越しのショットも)。桑名を発つ一座をおしのと小吉の墓標越しに見る、北嵯峨農地と思われるがどこかの川堤っぽくもある。


第11話 庄野 1978.1.27

 庄野本陣の株をめぐってのキナくさい陰謀。広重が世話になったという主は既に亡く、娘が焼き米を往来で売ってしのぐという状態。ここへ、参勤交代の先触れがやってくる。やりくりを重ねなんとか凌ごうと頑張る娘、しかし如何なる苦労も本陣株を狙うワルの前には無力だった。

 ロケ地、庄野本陣、随心院長屋門。亀山へ金策に出たじいやが密殺される峠、保津峡落合落下岩(この付近は、冒頭ブラ平が聞き込みに回るシーンでも使われている)。脇本陣の村田屋に汚され、恋人にも見放されたおるいが絶望の果て彷徨う川、桂川大堰(杭際を歩くおるい、落とされたか落ちたか定かではないが流されるカスケードは魚道)。庄野を発つ一座、北嵯峨農地


第12話 大津 1978.2.3

 一座の宿に入った盗っ人は、広重の画を持ち去る。画を見た代官が「赤変」を見つけて殺し旅に気付くという、からくり人チーム未曾有の危機に。
代官は盗っ人とそれを使う問屋場の主とグル、目をつけたいい女の道中手形を盗ませ、難渋する女に甘言を用いて売り飛ばし私腹を肥やしていた。

 ロケ地、大津代官所、不明。ブラ平が蜆売りの男に接触する畑地、丹波国分寺裏手の農地。盗っ人もつとめる問屋場の小者が、騙した女を俵に詰めて運ぶ道、北嵯峨農地


第13話 京都 1978.2.10

 「仕事」の一件は、検校の位を貰いに上洛した座頭親子が金を騙しとられるお話。所司代役人が噛んでいて、二十倍もの金をここ数年詐取しているというもの。親子が持ってきている千両の金は、仲間の盲人42人の共同出資という泣かせる設定。
親子を魔手から救おうと立ち回るチーム、しかし父のほうは斬られ落命、逃した下っ端から蘭兵衛の正体がA級お尋ね者の高野長英と知れてしまう。

 ロケ地、三条大橋、渡月橋。遠景ではそのままだが、寄ってのシーンでは擬宝珠を取りつけてある。検校について「鴨川べり」で話す蘭兵衛とブラ平、渡月小橋下。京都所司代、大覚寺大門。検校の位を授ける公家の久我邸、民家塀と門。座頭の回想、妻を亡くした旅先の河原、清滝川。座頭父子が連れ込まれ消されかかる無住の寺、不明。捕り方に追われブラ平に己の顔を焼かせる蘭兵衛、中ノ島橋下。
*はじめに焙った絵は赤くならず橋が落ちるように変わり、「もう一枚」は橋上の立ちんぼが赤。これについて広重を問い詰めるお艶のくだりがラストにあるが、詳細はぼかされたまま終わるのが趣き深い。


・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧 ・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ