2015.10.31スカパー/時代劇専門チャンネル/松竹
キャスト
仲代達矢 桜庭ななみ 徳永えり 進藤健太郎 柳下大 高橋龍輝 小倉一郎 田根楽子 平井真軌 舞羽美海 松浦唯 周防ゆう 西尾塁 清家一斗 三好大貴 松井勇歩 伊庭剛 窪田弘和 木元としひろ 金子珠美 船津正康 外山夢恩 石田大和 井芹涼介 川崎あかね 矢島健一 益岡徹 原田美枝子
原作/藤沢周平「果し合い」
脚本/小林政広
音楽/加古隆
監督/杉田成道
∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴
その昔、果し合いにより前途も愛も全て喪い、部屋住みという名の生ける屍として無為徒食の日々を送ってきた男。
老境にさしかかった厄介者の彼をただ一人気にかけてくれる、孫同然の甥の娘が、昔日の悪夢をなぞるかのように「果し合い」によって悲劇の淵に沈もうとしていた。
「二の舞はさせぬ」と決意した大叔父は、あれ以来たばさむこともなかった大刀を取り出すのであった。
ロケ地
- 庄司家、美山町かやぶき美術館・郷土資料館。回想シーンも含め全編に出ていて、母屋も「離れ」もここ、水車も映り込んでいる(離れと井戸、前畑はここに組まれた「セット」)。
- 美也が従姉妹と行く茶会、関西セミナーハウス茶室・清心庵。
- 大叔父と美也が参るみちの塚、龍潭寺墓地(裏山の山腹、甍を見下ろす図もある)。草に覆われた石塚を清める間、大叔父とみちとの悲話が語られる。帰りに大叔父が立ち寄る橋川家の立派な墓はありものか(そなたの二の舞はさせぬと誓うシーン)。原作設定、「庄司家の墓がある浄光寺は、城下町で一番西端れにある大工町に」。
- その墓の主について美也に問われ語る大叔父のくだり、二人が立ち止まって眺める、能が演じられている神社は油日神社舞殿。
- 家に戻る途中、今日は天気がなどと言い突然大叔父を置いて走り出す美也、民家塀際(南塀際・東望、美也は「路地」を南の方へ)。
- 美也を追ってゆく大叔父、美也の思い人・松崎信次郎の家は日本民家集落博物館・越前敦賀の民家。途中、信濃秋山の民家近くの、石仏群の前の坂を通る。美也は一言も告げられず走り去る。原作設定、松崎の家は日吉町。
- 今夜にでも縁組の話は断るがいいと美也に告げる大叔父、二人歩く夕暮れの野原は大堰川緑地(土手下の草原、ヒメジョオン群生)。断ってもすんなり行く話でもない、手はひとつと言う大叔父のシーンは汀に移動、「桟橋」設営。原作設定、「日吉町の外れを流れる中川」。
- お城イメージ、彦根城天守。縁談を仲介した上司・黒川に平謝りの美也の父・弥兵衛、城内居室は金戒光明寺方丈虎の間。
- 「碁にうつつをぬかす大叔父」、得てきた金を歌うように数えつつ、次の指南はと呟く城下の道、油日神社参道(石積と石積の間)。
- 縁談を断った相手・縄手達之助と行き会い、手荒くからまれる美也、雨の竹林は大覚寺竹林。大叔父が駆け付けて戦うもフクロにされその場はおさまる。大叔父の手当てをする神社は大覚寺五社明神舞殿(ここでも雨演出)。原作設定、長源寺横塀際、人通り少ない場所。
- 相手が縄手の倅と知り、押し入れから大刀を取り出す大叔父のくだり、ここに挿入される回想シーン、祝言を間近に控えた庄司佐之助と牧江がデートの祭りの広場、不明(草原、火焚いて夜間撮影)。その後二人寝転んで睦む船は広沢池東岸葦原近くに浮く(夕景)。
- 果し合いを挑まれ仕方なく赴く佐之助、決闘場所に指定の熊野神社は摩気神社裏手谷地田(草ぼうぼう、野焼きで煙もうもう)。一撃で討ち果たすも、相手の刀が折れ佐之助の腿に突き刺さる。原作には具体的な場所設定無し、劇中では果し状に記載あり。
- 大叔父が刀を振りに行く野原、酵素河川敷。朝靄演出。
- 牧江が旅支度して佐之助を待つ夜の街道並木、大覚寺大沢池堤(桜散り初め、花びらで来る来ない/六地蔵もあしらわれている)。時の鐘が撞かれる寺院、金戒光明寺鐘楼(坂下から見上げ、手すりあり/ここにも散る桜演出、桜はここに生えている一件)。
- 街道へ行かず約束の刻限まで酒肆で呑んだくれていた佐之助、街道へ行かず家へ戻る際通る堀端は八幡堀、桜満開。突っ伏して嘆くシーンは二段のところの下の段汀へおりて。グリーンスリーブスが流れる。原作設定、「茶屋酒に酔い痴れる」と表現。
- 信次郎が達之助と斬り合う夜の河原、大堰川河川敷(流芯を奥に見て手前湛水域で芝居)。信次郎の危機に大叔父登場、達之助は川中に倒れ伏す。原作設定、「中川の柳の河原」。
- 信次郎と美也がゆく、明けそめてきた街道、大堰川堤。
- 二人は国境を越えた頃と呟いた大叔父、「ゆうべ達之助と果し合いをした」としたためた大目付宛ての奏上文を書き上げ、「支度」して出てゆく朝日差す城下の大路、二条城二の丸御殿南塀際(東望)。
摩気神社
※大叔父・庄司佐之助は仲代達矢、兄が作ってくれた離れに暮らし、ここで嫁も迎えた設定。百姓の娘だったその嫁・みちは松浦唯、正式な結婚ではなく墓も簡素。佐之助の若い頃を演じるのは進藤健太郎。庄司家現当主は兄の息子の弥兵衛、益岡徹。大叔父を邪魔に思い嫌味も浴びせかける弥兵衛の妻女・多津は原田美枝子。弥兵衛の娘・美也は桜庭ななみ、泣きべそかいて大叔父を呼ぶさまを見ていると「孫左はうちが」と掻き口説く台詞も思い出される。美也の相手・松崎信次郎は柳下大、美也に縁談を断られ逆上する縄手の倅は高橋龍輝。
※ドラマにも原作にも、藩の具体的設定は見られない。地名を拾ってみても海坂藩と断じることはできない…藩内で始終物騒な揉め事があるふうでもないし。
※OA日時は、BSスカパー!で先行放送されたときのもの。劇場公開日は2015年11月7日。冠は「藤沢周平新ドラマシリーズ」、四篇の一。
参考文献 藤沢周平著「果し合い」 新潮文庫「時雨のあと」所収
日本民家博物館 越前敦賀の民家
大覚寺竹林
二条城
|