小吉の女房

音楽/荻野清子
語り/春風亭昇太


第一回 「旦那様は就活中」 2019.1.11

 勝家の婿どのを何とか御番入りさせようと皆で奔走するが、底意地のわるい小役人の嫌がらせに小吉が耐えられる筈もなく、轟沈。
まさに勝家存亡の危機、跡取りの麟太郎の行く末も案じられるが、生涯無役も覚悟した夫婦は「雲外に蒼天あり」と笑うのであった。

妙心寺

ロケ地

  • 御支配の門前へ駆け付ける小吉ら「就活中」の侍たちが走る道、妙心寺大通院南東角塀際(裏手のラウンド塀)〜雑華院前(北望の画、塀越し俯瞰も)〜東海庵南東角を曲がる。赤坂小普請支配・大久保上野介邸は隣華院門。
  • 小吉の実家・男谷家、妙心寺天祥院門。御取り立ての件で、夫婦して呼ばれるくだり。
  • 御徒士頭の石川について、幼少時の因縁を語る小吉、非礼を咎めとっちめた町角、大覚寺護摩堂前。セピア回想。
  • 男谷家から戻る小吉夫婦、二尊院紅葉の馬場
  • 釣りをしている麟太郎に声をかける碩翁、大覚寺天神島朱橋たもと池端(水路側の汀)。天神島の碑の向こうから従僕の利平次が若様を呼びに来たため、碩翁は朱橋を渡ってその場を去る。
  • おばば様の回想、養子に来たばかりの頃の小吉が同年配の子らと暴れまわる町角、大覚寺五社明神本殿前。十四の頃、家を飛び出しお伊勢参りに行ってしまう小吉、大覚寺大沢池堤
  • 付届けを持って石川家へ赴くお信、妙心寺衡梅院玄関、門。去り際のシーンでは、池越しの画も。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 石川太郎左衛門/高橋和也 勝麟太郎/福冨慶士郎 お律/飯島順子 大久保上野介/南条好輝 矢田/山本通俊 谷原/北村友希 男谷平蔵/平泉成 お遊/高橋ひとみ 利平次/石倉三郎 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/清水一彦


第二回 「麟太郎、出世する」 2019.1.18

 麟太郎に、たいへんなお役目の声が掛かる。父・小吉はそのいい話を断れと叫ぶが、無頼ゆえの暴言ではなく、身の丈に合わぬ場に出た倅が肩身の狭い思いをするのではと案じた、切ない親心からであった。
ようやく射した陽に「前途洋々」のお習字。

枳殻邸

ロケ地

  • 亀戸天神へ参るお信と麟太郎(利平次がお供)石清水八幡宮本殿。帰り道、易者に声を掛けられるのは参道石畳、露店多数あしらい。
  • お城に上がった麟太郎が逍遥する吹上の御庭、枳殻邸。印月池まわりを使い、侵雪橋が映り込む。上様が碩翁といる建物は縮遠亭、背景に櫓合成。土産話に出てくる滝は、臨池亭前の滝組み。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 銀次/小松利昌 勝麟太郎/福冨慶士郎 長兵衛/西園寺章雄 関川讃岐/多賀勝一 徳川家斉/いわすとおる 間宮友右衛門/入江毅 殿村南平/床尾賢一 阿茶局/野村真美 利平次/石倉三郎 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/清水一彦


第三回 「お信の書き置き」 2019.1.25

 小吉が関わった武家の妻女、見かけからもう不幸せが滲み出ているその女に、夫婦してマジになる馬鹿な展開。しかし血の雨などは降らず、わるい上役をぎゅうと言わせて粋な結末。
そのえにしに思いを致ししたためる「合縁奇縁」。

鍬山神社

ロケ地

  • 長兵衛の使いで来た銀次とともに店へ行く小吉、渡る橋は八幡堀の舟橋。
  • おばば様のお供でお参りのくだり、ぜいたく屋を見ての会話がなされる向島界隈は大覚寺有栖川畔(木戸の南)、大沢池側に設置された塀を見て望雲亭前へ。ここが碩翁の隠居所設定で、門前に順番を待つ訪問者が並ぶ情景を描いてある。お参り先の白鬚明神は鍬山神社、本殿に額づいたあと冠木門を出たところでお信が碩翁に話しかける(碩翁はやしろの由来を刻んだ碑を写している)。おばば様と利平次は先に行き、参道石橋で待つ運び。このあと、お信を見かけた石川が嫌味を言うのは摂社前。
  • 銀次が掏ってしまったお雪の財布を返すため、猿江町の戸部宅へ赴く小吉、捜しあぐねて凭れる橋は八幡堀明治橋。下を覗くと、堀端に思い詰めた顔のお雪を見つける次第、このあと止めに行って銀次ドボン。
  • 男谷家イメージ、妙心寺天祥院門。お信が訪ねるくだり、麟太郎の様子を聞く。
  • 江戸城イメージ、大阪城乾櫓。濠越しの図で、石垣の上に塀を足してあるほか、南側にも何やら細工。
  • お雪にずいぶん入れあげると皮肉を言う銀次、八幡堀堀端。小吉は汀、銀次は上にいる画、白雲橋下手左岸の堀端。
  • お信に打ち明けると無茶な方策を示され困る小吉、町で易者に女難剣難と言われヤバいと気付き家にとってかえすくだり、関川先生が出ていたのは八幡堀新町浜。書き置きして出て行ったお信を追っかけるくだりは、既出の八幡堀・捕まえるのは明治橋の上。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎(回想)/升毅 石川太郎左衛門/高橋和也 銀次/小松利昌 勝麟太郎/福冨慶士郎 長兵衛/西園寺章雄 関川讃岐/多賀勝一 お律/飯島順子 戸部玄之丞/柴田善行 井沢屋久右衛門/平岡秀幸 お雪/酒井美紀 阿茶局/野村真美 お遊/高橋ひとみ 利平次/石倉三郎 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/宇喜田尚


第四回 「麟太郎、三途の川から呼び戻される」 2019.2.1

 勝家に暗雲、若君の不予でお役御免の次は、生死の境をさまよう大怪我。しかし人々の熱い思いは届き、麟太郎は現し世にとどめられる。
内職の色紙を書き損じ、仲良い父子のさまを書きつける「似た者親子」。

日牟禮八幡宮

ロケ地

  • 桜草売りが来る堀端、八幡堀白雲橋下手堀端。このあと勝家へ回る。
  • 伯父・彦四郎に連れられ城を下がってくる麟太郎、二条城東南隅櫓前濠端。
  • 命もあやうい麟太郎のため小吉が願を掛けにゆく夜の金比羅社、日牟禮八幡宮。脇参道から駆け入り、手水舎で水垢離、本殿に祈願。
  • お信がお百度を踏む能勢妙見宮、神光院中興堂。本堂脇に百度石を設置、通りかかった碩翁は庵前から植え込み越しにお信を見るかたち。
  • 麟太郎が夢に見た三途の川、大覚寺大沢池船着(大)。船には白装束の子らが乗り込んでいて、乗ろうとした麟太郎は「鐘馗さまに止められる」。対岸とか消してあって、真っ赤な光芒を配してある。
  • 菖蒲売りがゆく橋、八幡堀明治橋。橋下の堀端に遊ぶ子ら演出。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 銀次/小松利昌 勝麟太郎/福冨慶士郎 長兵衛/西園寺章雄 お清/まつむら眞弓 小林隼太/西村匡生 篠田道庵/峰蘭太郎 能勢妙見宮の寺男/浅田祐二 お遊/高橋ひとみ 利平次/石倉三郎 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/宇喜田尚

※両親のほか、長兵衛さんたちが六地蔵に参ってきてくれる。碩翁は高価な薬を贈ってくる。大わらわ褌一丁の願掛けは古田氏ならでは、生きた小吉を目の当たりにするが如くで配役に納得。
※峰蘭さんは、麟太郎を診てくれる医者。褌一丁で夜の町を走る、通り魔のような小吉を目撃する蕎麦屋の親爺は小峰さん。


第五回 「おばば様の秘密」 2019.2.8

 あのおばば様が感化された偉いお上人さまには、凄絶な過去があった。
とれていたツノが戻り、再び小吉とバトルの日々復活に「恨みは恩で返す」と大書してお信の一本勝ち。

坂本里坊

ロケ地

  • 男谷道場イメージ、大覚寺明智門。十二歳の麟太郎が稽古に励むくだり。
  • 老い込み、利平次を亡くしてクサるおばば様、白髭さまへ参る途中差し込みで行き悩む河岸、琵琶湖東岸松原に石垣を設営、遠景の橋や町は書割。
  • いそいそといずこかへ通うおばば様を尾行するお信、坂本里坊周辺。本所原庭町にある一日上人の無徳庵は實蔵坊、扁額を変えてあるほか境内に「水死塔」を置いてある。入口の石灯篭はそのまま。庵内部はセット撮り。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 勝麟太郎/鈴木福 銀次/小松利昌 男谷精一郎/青山草太 長兵衛/西園寺章雄 お清/まつむら眞弓 お紋/雪代敬子 筒井政憲/高谷恭平 定町廻り同心/木谷邦臣 一日上人/伊武雅刀 斎藤監物/菅原大吉 お遊/高橋ひとみ 利平次/石倉三郎 登勢/江並杏子

作/山本むつみ 演出/井上泰治

※上人の正体は河内山宗俊の手下・暗闇の丑松、江戸を売る際逮捕されかけ、お紋婆さんの息子の岡っ引きを殺めた次第。庵に保護された老人の一人に小峰さん。


第六回 「お信、鼠小僧の一味になる」 2019.2.15

 窮鳥を懐に入れる夫婦だが、それは近頃大名屋敷に出没する「鼠小僧」だった。
哀れな若者たちを追い回す町方に一矢報い、おんな鼠は屋根の上で見得を切り「盗みハすれど非道ハせず」と開陳。

摩気神社

ロケ地

  • 天明の飢饉まっただなかの情勢が語られるくだり、近郊の百姓が流入する際の一場面に摩気神社鳥居前。
  • 夫婦が留吉と太助を問いただすくだり、二人が語る故郷・那須の村の情景、里の風景は摩気神社裏手塀際と谷地田、芝居がうたれる鎮守は舞殿に舞台しつらえ。
  • 男谷道場イメージ、大覚寺明智門。小吉がお町のダンナ・青木を呼び出すくだり。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 勝麟太郎/鈴木福 銀次/小松利昌 男谷精一郎/青山草太 長兵衛/西園寺章雄 お清/まつむら眞弓 青木利十郎/稲田龍雄 喜八/本山力 水野忠邦/白井滋郎 留吉/西井幸人 太助/新村宗二郎 鳥居耀蔵/橋爪淳 お遊/高橋ひとみ 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/井上泰治

※同心・青木らは悪徳商人とつるみ御救米で不正をはたらく次第、銀次が証拠の書付を掏ってくる。喜八は目明し。


第七回 「お信、花魁の文使いになる」 2019.2.22

 小吉の留守中に起こる、悲劇。優しい人々は恋の成就を希うが、若者たちは障壁を乗り越えられなかった。
旦那さまとの甘い思い出の、恋多き才女の歌が、悲しみを際立たせる。

本法寺

ロケ地

  • 花里が兄哥たちにからまれているところへお信と麟太郎、上賀茂神社渉渓園
  • 花里とお信が参る金比羅社梅宮大社本殿。絵馬掛けはあしらいもの?(松の前に斜めに置いてある)
  • 絵馬について話し、約束を交わすお信と花里、茶店は上賀茂神社ならの小川神事橋たもと藤棚前に設営。
  • 男谷家イメージ、妙心寺天祥院門。精一郎の門弟で旗本の次男坊・磯貝が御番入りの報告に来ているくだり。
  • 花祭りの法恩寺、本法寺。楼門前から本堂まわりを使う。花御堂は本堂前に置いてあり、塔や諸堂が映り込む。お信が碩翁と邂逅、花里の事情が「白髭さま」の耳に入る次第。
  • 麟太郎が、母からことづかった文を兄弟子・磯貝に渡す男谷道場門前、大覚寺明智門
  • 意地悪を繰り返し陥れた同輩を斬ってしまう磯貝、大覚寺大門前参道。導入は御殿川越し。
  • 碩翁隠宅イメージ、大覚寺望雲亭主屋玄関。 助けるつもりが、と悔やむくだり。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 石川太郎左衛門/高橋和也 勝麟太郎/鈴木福 銀次/小松利昌 男谷精一郎/青山草太 黒沢林蔵/内藤邦秋 安田清右衛門/山田永二 花里/朝倉あき 磯貝半次郎/河合龍之介 工藤与次郎/内田滋 お遊/高橋ひとみ 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/清水一彦

※本所に吉原の仮宅ができていて、花里はそこの遊女で間夫が磯貝、石川が花里に執心という態…吉良さまみたいなイジメをやらかす次第。忠臣蔵や曽根崎心中の隠喩めいた台詞もあって面白い。
※お習字は二首の短歌、小吉の帰還の願掛けをする中納言行平のアレ(猫か)と、花里のために選んだ坂上郎女の相聞歌。
※小吉は、むかし世話になった小田原の漁師が飢饉で難渋と聞き訪ねてゆく設定。


最終回 「小吉、隠居して夢酔となる」 2019.3.1

 奢侈禁止令に乗じ、民を苛める町方に怒った小吉、女房にも手伝わせ芝居を打ち、赤っ恥をかかせて留飲を下げる。もちろんただでは済まず、小吉の隠居で手打ち。
そしておばば様の死、己を筋金入りの武士・本物の男と称えてくれた「おっかさま」の死に、豪傑は声を上げて泣くのだった。
〆にお習字「小吉の女房」。

大阪城

ロケ地

  • 男谷家イメージ、妙心寺天祥院(見上げ)。彦四郎の薫陶を受ける麟太郎、禁令についてご政道に疑義を呈するくだり。
  • 江戸城イメージ、大阪城濠越しに六番櫓望む図。石垣上に櫓や塀を「描き足し」、濠外には町並み合成。鳥居が禁令の徹底を申し渡すくだり、「みだりに町人とまじわる旗本」に石川が反応。
  • 南町奉行所門、セットかありものか(控所付きの内事門みたいな一件)。青木失脚のくだり。
  • 易者が喜八に八方塞がりと見立てる町角、大覚寺五社明神境内(奥に心経宝塔ちらり)。こちらも失業のくだり。

お信/沢口靖子 勝小吉/古田新太 男谷彦四郎/升毅 石川太郎左衛門/高橋和也 勝麟太郎/鈴木福 銀次/小松利昌 長兵衛/西園寺章雄 赤堀喜右衛門/信太昌之 関川讃岐/多賀勝一 お清/まつむら眞弓 筒井政憲/高谷恭平 青木利十郎/稲田龍雄 喜八/本山力 仁杉五郎左衛門/勝野賢三 鳥居耀蔵/橋爪淳 斎藤監物/菅原大吉 お遊/高橋ひとみ 登勢/江並杏子 中野碩翁/里見浩太朗

作/山本むつみ 演出/清水一彦


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