暗闇仕留人

御所管理事務所北門 1974朝日放送/松竹
 キャスト
  糸井貢/石坂浩二 大吉/近藤洋介 おきん/野川由美子 半次/津坂匡章
  中村主水/藤田まこと


第1話「集まりて候」1974.6.29

 江戸に舞い戻った半次・おきんと再会した主水は、ハナっから裏稼業再開を示唆。
鉄や錠のような男たちがいなければと半次、そして暗殺者が集まってくる。
最初の仕事は、意に添わぬ女髪結いを権力で抑えつけたうえ殺害した富商とその裏にいた侍二人を始末、依頼はどたばたした形で女の老父から来る。主水が役人であることに抵抗を示した糸井貢は殺しの場において心底を見届け、仕込み撥を振るうことにより参加の意を示す。
タイトル通り「集まり」の話、ラストには中村家三姉妹が揃い、それぞれの夫たちも顔を合わせることとなる。

 ロケ地、北町奉行所、京都御所管理事務所北門。半次たちとのツナギに赴く主水がゆく水辺、大沢池と思われるが画面左端に見たことない建物が。裏稼業へ参加の意思を確認しあう三人、堀川河床(改修前)。妙心尼の住持する玉泉院、西寿寺(山門〜石段)。女髪結いの死体が上がる川、大覚寺御殿川河床。中村家の法事の寺、不明。


第2話「試して候」1974.7.6

 貢の芝居小屋に爆発物、これはかつて高野長英門下の同輩で今は講武所助教の須貝の仕業、夷狄を打ち払うための武器のテストだった。須貝の行為はつのり、寄場送りの囚人たちを役人から買い受け大筒の的にするに至る。けちな騙りで捕まっていた半次がその中にいて、爆風でぼろぼろの体を引きずって注進に及ぶ。殺しの依頼は的にされ死んだ男の父から来る。

 ロケ地、北町奉行所、京都御所管理事務所北門。講武所からの帰途須貝の手下に襲撃される貢、下鴨神社馬場。囚人たちが寄場送りになる道、泉川(見送りの家族たちは馬場、瀬見の小川と林を挟んでの構図)。船で護送される囚人、広沢池。大筒の的にされる野原、酵素河川敷(大筒はダートに設置)
*爆破容疑で引っ張られた貢を釈放させたのは須貝、その後接触してくる彼から貢の本名「吉岡」が発せられる(フルネーム吉岡以蔵)。須貝には中山仁。


第3話「売られて候」1974.7.13

 黒船相手の商売で大儲けを企む吉原の楼主、大吉とのことで妙心尼を脅して御側用人から開港場所を聞き出そうとはかる。一方、抱え女たちは洋妾にされるのを嫌い足抜きが相次ぐが、楼主は暴力で押さえ込む。恨みの筋は、これにより死亡した女郎の今わの際の頼みとなる。

 ロケ地、大吉や女郎を閉じ込める地下牢がある角屋の別業、中山邸(通用門、参道)
*猫の「ぺるり」の、と言いながら死んだお女郎の墓石を刻む大吉が可愛い。


第4話「仕留て候」1974.7.20

 お奉行が猟官運動の資金を得るため、回船問屋を陥れ抜け荷を強要、娘まで毒牙にかけられた店の主は縊死。脅迫のため使われていた無頼の一人は北町の昼行燈の息子、悪事を知った同心は奉行に話を上げてしまい、消される。息子が奉行宅に斬り込み死したあと、主水に託されていた金が仕留人たちの前に置かれる。

 ロケ地、妙心尼の玉泉院へ夜這いの大吉、西寿寺山門。北町奉行・稲部山城守邸、大覚寺大門。与力・諸岡の悪行を奉行に上申したと息子に告げた同心・庄内三郎兵衛が刺される神社、吉田神社竹中稲荷舞殿。北町奉行所、京都御所管理事務所北門
*主水の同僚・庄内に加東大介、その息子に池田秀一。*奉行所内で遂行される奉行への仕掛け、実行は糸井貢。主水は奉行が後架で殺られる際スケベ話で同僚の目をくらまし、半次とおきんは訴状を出しに来て夫婦喧嘩を芝居、貢が姿を消すのをヘルプ。後架の描写、カメラは「中」から来ている…


第5話「追われて候」1974.7.27

 悪どい検校に騙されマルチの元締となった男、本人はおろか妻子だけはと願う心も空しく母も娘も市中を追い掛け回されたすえむごたらしく殺される。虫の息の母が託した恨みを、仕留人たちが果たしてのけるが、今回は娘に関わった大吉が主犯の白河検校を仕留めることとなる。

 ロケ地、検校の手下から逃げる母子、広沢池東岸(堤道と汀)。母子がはぐれる縁日、大覚寺護摩堂


第6話「狙われて候」1974.8.3

 コロリ騒ぎに乗じて旦那を始末する毒婦。その家に後妻に入るに当っても先妻を殺しており、その依頼の際顔を見られた大吉を消そうと殺し屋を差し向けてくる。その殺し屋の元力士が貢の長屋の健気な老婆、大吉は躊躇いつつ反撃しとどめは刺さずにおくが哀れな大男は毒婦とその愛人の役人に殺られてしまう。母と息子と、二人ながら土左ヱ門として打ち捨てられた亡骸を見て、貢に託されていた老婆の金が置かれる。

 ロケ地、コロリ蔓延を告げる浦賀からの早馬、木津堤。妙心尼に葬儀の礼を述べつつ降りてくる堺屋の女将、西寿寺石段(本堂バック)。玉泉院で大吉を見た女将が物思いつつゆく堀端、嵐山公園中州川端。大吉が不動丸に襲いかかられる、嵐山公園桂川本流臨川寺地区堰堤下の川中。不動丸と母の土左ヱ門が上がる汀、桂川松尾橋下手右岸汀(貢が見物に混ざるのは堤上)


第7話「喰うて候」1974.8.10

 富士から将軍家に献上される真夏の雪、輸送の道中で諸人に無体を働く役人。伽を迫られ自死した女房の亭主から江戸の主水たちに話が来る。一方、箱根の宿で病気の子のため湯を求め斬殺された父を見た貢はお雪様一行を追う。六郷の渡し手前で二つの方向から来た仕留人たちは合流し、ワルの小役人を船上に仕掛ける。

 ロケ地、街道筋のダートには落合付近や嵯峨農道が用いられている模様だが、お雪道中は夜なので暗く判別できず。


第8話「儲けて候」1974.8.17

 警護に駆りだされる諸藩に鉄砲売って大儲けの武器商・堺屋、品不足の売り手市場に小藩などは歯牙にもかけぬ勢い。裏では木作りのフェイクを売り捌き、これをネタに脅したちんぴらは虫けらのように始末され、女を餌に抱きこんだ鉄砲鍛冶も用済みになれば女ごと始末。表の手柄にしようと図った主水の思惑は仲間に止められ仕置に入る運びとなる。

 ロケ地、堺屋を強請る芝居小屋の定八、大覚寺護摩堂脇。鉄砲鍛冶と堺屋の妾が始末される芝口鉄砲場、広沢池東岸。仕置も同所。
*堺屋に津川雅彦、欲深・色悪・酷薄と三拍子揃ったワルを熱演。仕置される際にはわたわたと見苦しく騒ぎ、土下座を装い貢を水中に引きずり込んだりと悪あがき。断末魔は「あェやー」、止め絵が二つに裂けるという演出。*糸井貢、市中でブーメランを見て殺し道具に新工夫の撥を用いる。


第9話「懸想して候」1974.8.24

 半次の留守中おきんが惚れた男には裏の顔があった。はじめおきんの新たな人生を祝福する仲間だが、男が外道仕事をしてのけたことが知れ一も二もなく殺すことに。そして虫の息の男から聞き出した仕事の「起こり」と「蔓」は、罪無く殺された幼児と男の仇として始末される運びとなる。

 ロケ地、おきんがルーレットで野博打の富岡八幡宮、今宮神社境内各所(以降、文七と親方のツナギや、親方を尾ける主水のシーンも同所)。檜屋の先妻の男児の死体が見つかる汀、桂川松尾橋上手右岸汀
*おきんの足抜けについて大吉と議論の糸井貢は青い理屈を開陳、しかし相手が堅気でなくしかも非道を働いたことを知るや即「殺す」発言、揺れる心の描写が興深し。


第10話「地獄にて候」1974.8.31

 地獄絵の入墨ある女を好事家に斡旋する座頭あり、ヤサの二階には彫師を飼っている。妙心尼のもとにいた若い尼僧が毒牙にかかり果てたことから事件が発覚、その尼僧と遊んだ客が脅され娘をさらわれ、身代金のトラブルから刺されるにおよび仕留人たちは動き出す。

 ロケ地、春香尼がさらわれる祠、大覚寺五社明神・有栖川畔の小祠。北町奉行所、京都御所管理事務所北門。春香尼の死体が上がる神田川、桂川松尾橋付近汀。手がかりを求め屋形船を見て歩く半次とおきん、大沢池西岸に係留。座頭の手下の駕籠かきを水に落す主水、有栖川通用門前の橋。彫師を始末してきた大吉を待っている貢と主水、大沢池木戸
*拉致され墨を入れられる美濃屋の娘に片桐夕子。


第11話「惚れて候」1974.9.7

 山から出てきた獣じみた男が、純朴な性質を利用され磔刑台に消える悲劇を描く。
はじめ盗っ人の一味として弥太を捕え激しい拷問にかける火盗改、将に土壇場の際の際で処刑を止め、一転平謝りで冤罪だったと認め、その後は仕事や住居や結婚の世話まで見る。感激し火盗長官の乾を仏と崇める弥太、そのうちそっと耳打ちされる暗殺話、乾に恩返しと受ける弥太。引かれゆく馬上の彼に仕組まれたことと主水が告げるが、とうに諦めきった男は黙したまま刑に服し、その夜弥太の新妻が死の間際託した五両が分配される。

 ロケ地、火盗改長官・乾寛兵衛役宅、大覚寺大門。小伝馬町牢屋敷、明智門。弥太の濡れ衣が晴れたとはしゃぐおきんの妹分・おまき、でんぐり返りは大沢池堤。釣り禁止の池で釣り(リリースしている)の主水に声を掛け火盗を見直したと言うおきん、大沢池水門そば。縁先で虫を追いかける老中松平和泉守の側室・千鶴、相国寺方丈縁先。玉泉院の石段、乾と行き会い女の匂いを嗅ぐ大吉、西寿寺石段。千鶴の駕籠が出る、相国寺庫裏。弥太に得物が渡される、方丈塀南西角。駕籠が近づく、大光明寺南路地。駕籠に極太手裏剣を打ち込む弥太、法堂前。乾の部下に斬られるおまき、今宮神社合祀摂社前。刑場はどこかの砕石場か。おまき暗殺犯に仕掛ける主水、中ノ島橋上。
*弥太に新克利、おまきに池波志乃、そして乾に金田龍之介とコテコテのキャスティング。


第12話「大物にて候」1974.9.14

 捌き屋の小兵衛は役人も恐れる闇の世界の大物、その甥・長一郎は手先となって荒っぽい手口で富商乗っ取りを働くほか市中で無体の限りを尽くす。姪もいて、こちらは男狂いで、つれなくされたなどの益体も無い理由で殺し屋を差し向けたりする。そんななか、正義漢の北町同心が彼らを調査中陥穽に落ち親族を悉く殺されてしまう。次いで主水が衆人環視のなか殺しを仕出かした長一郎を捕えてしまい狙われる仕儀となり、動けぬ彼の代わりに他のメンバーが小兵衛殺しに奔走。その過程で、斬り込んで失敗した北町同心から貢が恨みを託されることとなる。

 ロケ地、北町同心の妻の父母が殺される、柊野堰堤落差工下の大岩前(老妻は軽石を求めている…火山灰土壌の西山、練馬あたりか)。おなつの使嗾で殺された役者の死体が上がる河原、桂川松尾橋付近汀(おなつが駕籠から見て薄笑いは右岸堤上)。小兵衛の屋形船に言い訳しに行く北町与力、大沢池。北町奉行所、京都御所管理事務所北門(ツナギの場面で塀も多用)。小兵衛が出席の香の会が開かれる、中山邸通用門


第13話「自滅して候」1974.9.21

 我が子の出世を望む母の思いは狂気を呼び、悪魔の囁きのままライバル殺害を依頼するまでに膨れ上がる。しかし、土壇場で思いとどまり断った筈の「願い」は何者かの手により実行され、脅され大金を強請り取られる日々がはじまり、最後には親切面した男が欲望を剥き出しにして迫り来ることとなる。子の家庭教師をしていた貢は、母の自死を繕ってやったあと仲間たちの前で遺書を読み上げ仕置を迫るのだった。

 ロケ地、中根邸、不明。小一郎を釣りに誘う貢、大覚寺放生池堤。釣りのおじさん「半次」が待っているのは護摩堂前。中根の奥方を待っている脅迫者の浪人、今宮神社石橋上。たかり屋の弥八が待っていて金をせびる、高倉下。墓ができたと呼び出した漢学者・佐島昌軒を始末する墓地、化野念仏寺(鐘楼〜石仏群脇)。ラスト、貢と釣りの小一郎、桂川堰堤下河床。
*タイトルのままの「自滅」を遂げる佐島昌軒、墓石を割るシーンはもちろんだが、日々頭を打ちつけている自室の柱がまぁるく刳れているのが怖い。


第14話「切なくて候」1974.9.28

 半次の故郷で繰り広げられる哀話。
大吉を連れ出して「内職」の半次、妻を鷹匠に殺された同郷の男からの依頼。しかし探りに行った名主邸で、当の鷹匠と義母の密会を目撃、その後義母が男を慕い頼り切っていることを聞き仕事は断念。半次に断られた村の男たちは敵わぬと知りつつ狩場に鷹匠らを襲うも返り討ち、加えて男に裏切られ上役に差し出された義母は、半次のたった一人の弟を道連れに逝ってしまうのだった。

 ロケ地、依頼人の回想、鷹に無礼あったとして殺された妻が出される名主屋敷の裏門、相国寺大光明寺通用門(後段、半次が義母の密会を目撃したあと歩くのも同所塀際)。名主宅へ向かう鷹匠たちがゆく道、北嵯峨農地竹林沿いの道。鷹匠らが滞在の府中の名主屋敷、(道路越しのショット、畔に彼岸花)。狩場、酵素河川敷
*義母に惚れていた半次、仇討ちの匕首を自ら振るう。内職の旅ものなので糸井貢は不在、主水はせんりつを迎えに来ていて飛び入り参加、八州に偽装して狩場に潜入。


第15話「過去ありて候」1974.10.5

 過去のしがらみが大吉を襲う。かたちは元の頭から足抜けへの制裁、しかしそこには大吉の初めての女の影。毒婦のため運命を狂わされ下辺に堕ちた彼に再び伸びた魔手は、近しい者の命を奪ってゆく。

 ロケ地、自分の墓の注文書に次いで打ち込まれた手裏剣に家を飛び出し追う大吉、西寿寺石段〜墓地(お浜と会う)。このあと、大吉の回想の和尚嫁取りのシーンに山門、心配のあまり仕事場へ来る妙心尼のシーンに石段上部越し本堂。
*石屋を襲う刺客に石橋蓮司、冷酷な殺し屋も似合う。*大吉が半次に過去を語るくだり、半次の故郷を尋ねる場面あり、日程の都合等でのねじれか。


第16話「間違えて候」1974.10.12

 一旦貢が始末した男を、知らずに大吉が「治療」して蘇生させてしまい大混乱。警戒したワルは剣客と拳法家を雇いこみ夜は蔵で寝やがる始末に、貢は自ら申し出て囮となり用心棒を誘い込む。ワルが人を陥れる描写も細かくなされ、用心棒たちとの対決も見もの。

 ロケ地、冤罪で獄門となった八坂屋の梟首、下鴨神社糺の森。安積屋が脅しに行く大野藩邸、大覚寺参道〜大門。貢が安積屋を襲い水に落す、嵐山公園中州(右岸側、中ノ島橋橋脚映りこみ)。その後大吉が「治療」はもう少し下手の河川敷。貢が用心棒たちを誘い込む相生の森、下鴨神社河合社塀際〜林間。逃げ出した安積屋たちがゆく街道筋、保津峡落合(トンネル手前の道、茶店しつらえは落下岩、崖下巌頭では中村家の女たちがお昼、逃げたのを追う主水は崖道、安積屋が水飲んでるのは清滝河口部、大吉は保津川本流に潜り接近)


第17話「仕上げて候」1974.10.19

 「仕上屋」との抗争のすえ貢が妻を失う悲痛な一話。
仕上屋は幕閣のポストも金で請け負う闇の稼業。身代を乗っ取られ殺された富商の娘からの依頼を受けていた仕留人たちは、これを裏で操っていた仕上屋と対決の運びに。仕上屋の頭目・宗達は余裕の態度で貢を呼び出し、メンの割れていない最後のメンバー・主水の情報を迫るが貢は頑として撥ねつけ、直後、妻・あやが狙われることとなる。

 ロケ地、名張屋の娘がならず者に襲われる墓地、くろ谷。悲観した娘が入水、中ノ島橋上手岸。通りかかり助ける貢、橋上。奉行所に清二郎を連行する主水、京都御所管理事務所北門。吉岡宗達の木挽町の将棋指南所、中山邸門。貢を呼び出す宗達、今宮神社参道脇に茶店セット。あやの墓、くろ谷
*仕上屋を仕留めるラスト、主水は用心棒たちと大立ち回り。貢は逃げ出した宗達を追い詰めあやの簪で止めをさす。ぬらぬらと血に染まった銀の簪、常より放心度合のひどい、殺しの後の貢の顔が印象的。


第18話「世のためにて候」1974.10.26

 世のため人のためを標榜し人気の瓦版、よろず評判。罪人の親族の所在を書き立て民衆を扇動し、係累を地獄のどん底に叩き落す。しかし裏では「書くぞ」と脅し大金を毟り取り、金を出さなかった者のプライバシーを暴き立てていた。そのうち、貢が得物にする「丈夫な」簪を買った小間物屋が標的となり、毅然として対応したためいいように書き立てられ店は潰れ、その後も執拗な追跡は続き遂に夫婦は自死を遂げるに至る。そして瓦版に乗せられいちばん騒いでいたおきんが、小間物屋からくすねていた櫛を頼み料として置くのだった。

 ロケ地、牢にいる兄に面会後、蔦屋夫婦が聖古堂の手先に脅される、相国寺大光明寺南路地。蔦屋の婿養子が雇ったヤクザが聖古堂の主人に手を引けと迫る、中ノ島橋上〜橋たもと堰堤脇。蔦屋のおゆきが聖古堂のどら息子に差し出され、のち夫婦とも自死を遂げる待合、錦水亭。仕置後、三人が佇む橋、中ノ島橋(下流側から見上げ、橋下に堰堤の落水が白く光る)
*貢の得物が変更。ぶっとい簪を研ぎ上げたもので、喉輪を刺す。


第19話「乗せられて候」1974.11.2

 オランダ行きを切望する貢の元同輩、妻を泣かせた身勝手な願いながら抱いた夢は、艀にも乗れず無惨に潰える。洋行話は北町与力と組んだ回船問屋の詐欺、ばかりか男の妻は金の工面のためそのヒヒ爺の餌食となっていた。

 ロケ地、北町奉行所、京都御所管理事務所北門。新島から洋行話を聞く貢、罧原堤付近桂川汀。主水を拉致った駕籠が三洲屋へと急ぐ道、桂川松尾橋下手右岸堤
*今回主水は三洲屋の井戸から這い出てきて仕留に参加する。放り込まれた際付いていた戒めの跡が、出てきた折のほうが濃いのもご愛嬌。*冒頭、機械のように冷静に暗殺遂行する貢の姿が描かれ、ラストにはおきんをして「怖い」と言わしめる迫力、主水は貢がようやく本物の仕留人になったと述懐するのだった。


第20話「一途にて候」1974.11.9

 賊に斬られた父の後を継いだ若い同心、腐敗した奉行所の体制に反抗するが、奉行を叔父に持つ賄賂与力はその青さを疎んじ消そうと図る。そもそも父の殉職も与力の陰謀、加えて彼の許婚者の父・笠井も奉行に直言しようとして果たせず斃れる。結局若者は白昼奉行所内で斬られ恋人の娘も自死、主水は若者に受け取らせろと与力から預かっていた「賄賂」を仕留料として置く。

 ロケ地、北町奉行所、京都御所管理事務所北門。父の墓参の一平、くろ谷。その帰途一平と笠井の娘がゆく坂、金戒光明寺永運院下坂。笠井の娘が父に一平についてゆくと告げる道、東坂下路地


第21話「仏に替りて候」1974.11.16

 地獄絵を描く絵師・秋水、縊死したモデルも平気でスケッチ、別のモデルは孕ませた挙句体のラインが崩れたと捨てる。無茶の始末は版元・雅泉堂が引き受け、彼は秋水の絵と金を武器に変態趣味のある奉行とも誼を通じ幅を利かせ、果てには島帰りの男を利用し女殺しの罪を着せて獄門に追いやる。この外道に怒るとともに、処刑される男を救い得ない無力を噛み締める仕留人たち、上役のやり口に主水の怒りは殊に激しい。

 ロケ地、縊死したモデルが赤子を捨てる玉泉院、西寿寺前庭。雅泉堂の手下・釘六が首吊り女の死体を棄てる夜の弁天池、大覚寺大沢池(のち大吉が菰包みを引き上げる際は昼、妙心尼の念仏つき)。モデルの一人が勤める一ノ木茶屋、今宮神社門前・一和。島帰りの大工が処刑される小塚原、下鴨神社糺の森。雅泉堂を強請った夜鷹が釘六に追われ逃げる道、湯豆腐嵯峨野朝鮮石人像前。
*悪役花盛り、絵師に藤岡重慶、版元に今井健二、手下に志賀勝ときて、とてもコワい画面構成。奉行を斬る主水、珍しく懐紙で刀を拭い派手に散らす。


第22話「怖れて候」1974.11.23

 獣のような男から逃れ江戸の家に帰り着く女、しかし少しの物音にも脅える日々。そして遂に獣はやって来て山へ戻るよう脅迫。我が身をあきらめ子を父に託し山へ赴く女、そのとき仕留人たちは裏で獣を操る女の叔父を始末し、山中の小屋にて待ち構えるのであった。

 ロケ地、大吉が荷車を引いて駕籠屋と競争の街道、北嵯峨農地(竹林際、畦道)。熊蔵たちが砂金採りの川、保津峡落合河口部。以降、逃げ出したちよと檜屋一行が出会うくだりに崖上と河口部を使い、熊蔵に返り討ちにあう山狩りの男たちのくだりはトンネルを使って。北町奉行所、京都御所管理事務所北門。檜屋の主人が用心棒を雇いに行く道場、大覚寺明智門。子を抱いて菩提寺の玉泉院へ来るちよ、西寿寺墓地。大吉が檜屋を呼んできてからのくだりに山門、石段、鐘楼、本堂も映る。ちよが秩父へ発つ道、大覚寺大沢池畔。孫を抱いて見送る檜屋、放生池堤。これを窺う儀助と、暗殺に来た貢のくだりは護摩堂から天神島へ移動してゆく。祠に儀助を押し付け仕留める貢の場面では、大楠の向こうで何も知らず孫に小便をさせている檜屋の姿を映す。秩父山中・アシビ谷の山小屋、酵素。ダート部も使用。事後、大八を引いて去る大吉のシーン、落合崖上を桟道から見上げ。
*夫を殺して女房は二年間も監禁のケダモノ熊蔵、江戸では屈強の用心棒たちもビビって逃げ出す凶暴さ。最後の大吉の仕掛けの際も手強く、小屋なんかかしいでしまう始末。心臓掴みが空振りというオマケもついている。


第23話「晴らして候」1974.11.30

 抜け荷探索の与力を消すのに、偽装のため一家皆殺しのうえ無実の男を罪に落す外道ども。アリバイをめぐってさまざまな経緯があり、兄の無実を信じる妹の希望の糸は次々断ち切られてゆく。証言できぬ立場の石屋の煩悶が活写され、依頼を受けるくだりも殺しの段も凝った濃い一作。

 ロケ地、佐吉をハメた与力のいる南町奉行所、大覚寺大門。証言を約束していた伊佐次の死のあと、佐吉の妹と話す大吉、中ノ島橋(橋上〜中州岸、堰堤バック)
*これまでも時々人前で殺しをするシーンが見られたが、今回は主水が石屋を窺っていた目明しを戸越しにぶっすり殺るところが目撃され三人揃った状態で「あなたたちはもしかして」。


第24話「嘘つきにて候」1974.12.7

 喜捨を施す備前屋に人生訓を聞いた直後、手ひどく現実を突きつけられた蜆売りの少年は幼稚さ純真さゆえに暴発、自身も思わぬ立て籠り騒動を引き起こす。そしてこの騒ぎに乗じて邪魔な女将を始末の備前屋、罪は少年に着せられ死体は二つとなる。事の裏には、先代を殺して後釜に座った備前屋の悪行とその実行犯、つけこんで脅迫しようとしていた十手持ちのヤクザがいた。

 ロケ地、乱暴な十手持ち・虎松の噂をする大吉とおきん、大覚寺大沢池畔に茶店セット。備前屋の河岸の米倉、伏見・松本酒造酒蔵(米俵をあしらって両岸堤をうまく使い、蜆売りの佐助の帰り道や仕留後おきんが歩くシーンは詩情溢れるよい画となっている。菜の花も似合うが遠目にはセイタカアワダチソウの黄色もなかなか)。佐助たちのため弔いの鐘を撞きに玉泉院へ行く大吉、西寿寺(石段と本堂〜鐘楼)


第25話「晒されて候」1974.12.14

 米の仲買商・越後屋を狙う悪党、正面から搦め手から陰謀の手が伸び女将は心中を装い始末、残った娘も一味だった愛人の奸計に陥ちる。女将は岡場所から落籍された、かつての主水の初めての女性で、辛くも命はあったが心中の片割れとして高札場に晒されることとなる。女将の言い分を認めチームを招集して探索にあたる主水だが、シロアリは既に越後屋を食い尽し逃げにかかる段、女将の願いで娘の恨みを晴らすことになる。

 ロケ地、お陽が心中態で見つかる大川端、広沢池東岸汀。
*シロアリの親方に川合伸旺、お陽に中村玉緒。


第26話「拐かされて候」1974.12.21

 仕留人チームに危機迫る話。事件は、行商仲間の浪人が借金で苦境にあるのを見たおきんが狂言誘拐を仕出かしたことから起こる。高利貸しには目明しと北町与力がついており、主水の動きが封じられるなか、妙心尼まで関わって誤魔化しをはかるも当の浪人は疲れ果てて自ら縛につき、責め問いのすえ殺されてしまう結果となる。そして仕留は、高利貸しの毒牙にかかる寸前の浪人の娘救出も兼ねる運びとなる。

 ロケ地、おきんの長屋からおさきを運び出す「野辺送り」がゆく道、大覚寺放生池堤。尾けてきた目明しの手先を貢が始末するのは護摩堂前。着替えさせたおさきを寺にいざなう妙心尼、西寿寺山門(おさき出奔を石屋に告げに走る際は本堂石段が映る)。おさきが松五郎親分のもとへ走る道、広沢池東岸京都御所厳島神社(与力が根岸へ向かう道にも使用)。北町奉行所、御所管理事務所北門と塀。松五郎の根岸寮、中山邸通用門、参道。


第27話「別れにて候」1974.12.28

 黒船が江戸前で大砲をぶっ放し、緊迫する世情。頑迷な幕閣のなかに開明派の若年寄あり、しかしこの男裏の顔は汚く、「愚民」どもの家を目障りと撤去させるなど傲慢。依頼はこのために消された職人の娘から来る。そして仕置の場、これを最後の仕事と決めていた貢が返り討ちに遭い死亡、チームは解散となる。

 ロケ地、高台から黒船騒ぎを見る民衆、その下で情勢について語る主水と貢、西寿寺石段。北町奉行所、京都御所管理事務所北門。貢が佇む隅田川、嵐山公園中州舳先付近汀。貢を送るため船を出す主水たち、嵐峡
*世を厭い来し方に深く懐疑を抱く貢、惑いは決所で彼の命を奪う。矢立で迫る貢に投げかけられた松平玄蕃頭の「日本の夜明けが」に躊躇し返り討ちにあうシーンは何度見ても圧巻。


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