時代劇ロケ地探訪


■ 飛鳥の里

 6世紀から7世紀にかけて政治の中心地だった飛鳥。いにしえの官衙はとうに失われ、田んぼの中に礎石を残すのみだが、古代の香りを求めての観光客がひきもきらない。
飛鳥大仏や石舞台などいつも賑わうスポットを離れると、「里の飛鳥」が見える。

棚田
セットの村を見上げる 井戸
車持氏の家 中臣家

 万葉の歌枕として名高い飛鳥川が山から出て冬野川と会う谷口には、棚田が残されている。日本各地から失われつつある風景が、様々な工夫と努力により維持されていることに感謝したい。
 この地を舞台とする歴史ドラマ・大化の改新では、その棚田がある飛鳥の奥地にオープンセットを組んでの撮影が行われた。場所は丘の上で、峠道のかたわら。山向こうには、ドラマに登場する南淵請安の故地があるのも興味深い。
このセットは西岡善信氏の手になるもので、それぞれに趣きの異なるかたちをしている。登呂遺跡の復元模型に似たものや、秋山小兵衛の家や隠し剣鬼の爪のセットにどこか似通った風情のものもある。内部は、中臣家のみ作りこまれている。
 セットの設定は、この時点では弱小氏族の拝み屋・中臣家の在所で、若き鎌足が幼馴染の車持氏の女・与志古に蘇我氏の嫡男・入鹿の誘いを伝えにくるくだりに使われた。井戸の前あたりで、与志古と鎌足がポンポン言い合うシーンなどもある。
衣装このドラマは鎌足と入鹿が幼馴染の親友という斬新な筋立てで、彼らの青春と歴史的大事件をからめてお話が展開する。ふだんあまり馴染みの無い上代のドラマだが、よき背景と丁寧に作られた衣装が見る者を古代に引き込んでゆく(記事中の写真は犬養万葉記念館に展示されていた、実際にドラマで使われた衣装。左から車持与志古、中臣鎌足、宝皇女。中の人はマネキン)
 現地には三軒の家のほか井戸など小物も残っているが、伏屋等の一部はなくなっている。ここからは盆地の眺望が素晴らしく、ドラマでも青い山なみや秀麗な畝傍山が映りこむ。古代飛鳥の里からも見えた三山を使うことで、説得力の高い画となっている。

高市郡明日香村栗原


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