時代劇ロケ地探訪 琴滝
この滝は、ふだん水の無い滝。滝の上に灌漑用の溜池があり、オーバーフローが滝へ導かれるようになっているが、よほどの増水時以外、溢流は見られない。ちょろちょろと岩盤を伝う水は、池からではなく脇の水路から出ている。ところの名勝としては些か情けない姿であるが、轟々と水を落とすさまをドラマの中に見ることができる。撮影時には、この岩肌をオーバーハングして流下する、華麗にして豪快な滝が出現するのである。
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滝壺から見上げ |
滝壺付近 |
岩盤の下方に入った斜めの切れ込みが特徴
水があればここで激しい跳水をみる |
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滝の中ほどにある祠
ここでの撮影も多い |
池尻から見た滝上の溜池
この上にもう一つ池がある |
劇中で轟と落ちる琴滝は、箱根山中の滝や、各地の霊山にも用いられる。シチュエーションはほぼ深山幽谷、霊剣を求めて走る陰陽師や、刺客依頼を受ける拝一刀の姿などが滝周辺に見られる。将軍吉宗の命を受けて羽黒山で探索に奔走するお庭番が、滝周辺を駆け抜けたりもする。三匹のご隠居のオープニングでは、谷啓演じる忍者が派手なアクションを繰り広げる。必殺まっしぐら!では、闇の仕事人が滝の前で山伏を仕留めている。
琴滝使用例にはトンデモ設定もある。1983年版大奥でのそれは、なんと江戸城内。家綱の正室である伏見宮の姫が身投げしたり、家治の正室が墜死したりする、紅葉山の「滝」なのである。紅葉山は神君を祀る東照宮がある一角で、森閑とした厳かな雰囲気ではあろうし、それなりに起伏もあると推測できるし、ちょっとした谷になっていても不思議ではない。しかし、よしんばその谷に滝があったとしても、どどーって落ちてる滝なはずないじゃないか、どこに水源があるんだと、突っ込みたくなる。「水のある琴滝」の写真(左)を借りてきたのでご覧頂きたい。いくらなんでも城中には有り得ない光景なことは一目瞭然、しかしこの例によって、時代劇ロケ地の書割的な性格が浮き彫りにもなる。御台所の悲劇の心象風景として、轟々と流下する水は抗い難い運命を暗示するのによい背景となる。しかし、江戸城っていったいどうなってるんだと、見ていた人は疑問を持たなかったのだろうか。
琴滝使用例一覧
船井郡京丹波町市森( 旧丹波町域 )
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