十三詣りの虚空蔵さんは智恵授けのみほとけ、数えで13になった子供が4月13日にお参りする慣わしがある。「帰り道の渡月橋でうしろ見たらアカン」という言い伝えがあって、ホンマは賢かったのにあの時振り返ってしもたさかい、という笑い話にもなる。
梵名をアーカーシャガルバという虚空蔵さんは、宇宙の如く広大無辺な智恵と慈悲を体現する存在。弘法大師・空海の高弟が虚空蔵求聞持法を修した際菩薩が顕現、そのお姿を刻んだものがご本尊と伝わる。
原田龍二の求馬シリーズ第三弾大江戸を駈ける!「陽のあたる場所」は、不遇のため歪んだ野望を持つに至った青年の話。彼の師である養父の剣客が葬られた川越・光雲寺のシーンがここで、山門と周辺が使われている。
さむらい探偵事件簿は時代劇を記号として遊んだユニークな作品。「お父さんを探して」の身代金受け渡し場所がここの山門と石段で、誘拐犯の一人である福本清三の横顔からそのシークエンスは始まる。主人公の探偵である高橋英樹と、お友達の同心・石橋蓮司は山門に隠れて経緯を見守るが、なかなか来ない応援に焦れてせかせかと動いたレンジは足を引っ掛けてよろけ、あろうことか十手を取り落とし高らかな金属音を立てて犯人に逃げられてしまう。誘拐されていた富商の中田浩二は、千両とられたことに怒りレンジを役立たずと罵り、むかついたレンジに突っ転ばされて時ならぬ階段落ちとなる。
長七郎江戸日記第二シリーズ「悲しい女」は、根来衆再興を悲願とする女が悪党に利用される悲話。被害者を装って近付いた女はさまざまな手を使って長さんを狙うのだが、その極めつけのシーンがここの石段で撮られた。悲鳴を聞いた長さんが駆けつけると踊り場で女がからまれており、助けようと寄ったところ石段の上から大樽がいくつも落ちてきて、女を庇った長さんはたいそうな打撲傷を負ってしまうのだった。
法輪寺はけっこうな高台にあるので、眺望が素晴らしい。本堂脇の展望台からは嵐山と嵯峨一帯が一望できる。望遠鏡を持っていれば、渡月橋をゆく人力車まで見ることができる。もちろん、その渡月橋側からも法輪寺が見えているのである。
新必殺からくり人 東海道五十三次殺し旅の最終話は京都。渡月橋に擬宝珠を付けて三条大橋に仕立ててあるのだが、自ら目を潰し父の遺志を継いだ娘を見送り殺し旅を終えて京を去る天保一座のラストシーンで、渡月橋の向こうに法輪寺の多宝塔が映り込んでいた。三条大橋設定なので見立ては東山だが、永観堂の多宝塔でも念頭に置いたものか。 *法輪寺ロケ使用例一覧はロケ地資料・その他嵯峨嵐山に 京都市西京区嵐山虚空蔵山町 |