讃岐は象頭山に鎮まるこんぴらさんは、知らぬ者とてないお宮さん。江戸期には群参現象を呼び、弥次喜多にもお参りの人々が描かれている。
時代劇にもお参りの風俗や金毘羅船々の歌が出てくるが、こんぴらさんが舞台となるのは、なんといっても次郎長ものでの石松代参。
金毘羅さんの石段は、噂に違わずキツい。鳥居前では駕籠が営業しており、大門前まで連れて行ってくれるが、ほんとうにハードなのはここから。
やっと登った先に立派な建物が幾つかあるが、それはまだ本宮ではなく書院や旭社で、石松が間違えて刀を奉納してしまったという言い伝えも頷ける。
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書院前 |
旭社前 |
石松代参の逸話は次郎長ものに欠かせぬ見せ場で、古今繰り返し演じられてきたが、京都撮りでも関東撮りでも本物の金毘羅さんへ出向いた例は少なく、本宮や石段をイメージカットに挿入するのがせいぜい。これは金毘羅さんに限らず、日光東照宮などでも事情は同じである。
中村勘九郎(十八世・中村勘三郎)が石松を演じた森の石松(1992フジテレビ)は後段をたっぷり石松代参に使っていて、金毘羅代参のシーンに本物が出てくる。書院前あたりでは二段ずつ登る元気な石松だが、旭社前に至り疲れを見せ肩で息。ここでは繰り返しのコミカルな表現がなされている。刀の奉納は旭社(左写真)ではなく本宮で撮られていて、石松の背後に南渡廊と三穂津姫社が映り込んでいる。
金刀比羅宮門前町には、歌舞伎専用劇場の金丸座がある。むかし金毘羅参りの衆に愛された芝居小屋が復されたもので、春には四国こんぴら歌舞伎大芝居の公演が行われる。
「勘九郎」の石松では無事代参を終えた石松が観覧、芝居にツッコミを入れ喧嘩沙汰になるくだりに出てくる。篠田正浩監督の映画写楽や、映画阿修羅城の瞳でも、内部が中村座として登場する。
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金丸座 |
香川県仲多度郡琴平町
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