時代劇の風景 ロケ地探訪
松尾大社は、平安京が造られるより早く秦氏によってつくられた古社。大山咋神と中津島姫(市杵島姫)を祀る。叡山と御所を挟んで対峙する位置にあり、長く王城鎮護の神として尊崇された。 中世以降は酒の神として広く信仰され、現在も酒造家の献上した酒樽が境内に山と積まれている。保津峡を抜けてきた桂川が山城平野に流れ出すのを眼下に見る松尾山の裾に鎮座し、緑濃い山からは霊泉・亀の井が湧出する。 |
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楼門の両脇には武者像が控えている。絵馬のほか、しゃもじに書かれた願文が取り付けられている。赤い要素がひとつも無いのが、ここの楼門の特徴。 楼門から見える石橋の下には桂川用水が流れていて、岸に植えられたヤマブキの開花期には多数のカメラマンがやって来る。 |
参道と楼門 | 楼門から境内 |
楼門脇の燈籠 | 桂川用水と参道石橋 |
御家人斬九郎「あんぶれらぁ」では、やっと手に入れた洋傘をさして、耳目を集めつつうきうきと歩く麻佐女さまが楼門をくぐってやって来る。参道には縁日が演出されている。 参道では毎月氏子会によるフリーマーケットが開かれていて、ドラマの雑踏と同じように賑わっている。八丁堀捕物ばなし「野良犬」でも参道が縁日として使われていた。メイキング映像ではもちろん明瞭だが、実際の画面は屋台がいっぱいセットされていてわかりにくい。 新必殺仕舞人「大黒舞は殺しの舞」では、本山からの指令を見るチームの姿が、楼門脇の燈籠に見られる。坂東京山が燈籠の前でこよりをほどき、晋松は燈籠に凭れ、おはなは燈籠と壁の間に、直次郎は楼門の基壇にいてしゃがんでいる。人の背よりはるかに高い燈籠をダイナミックに使った、面白い画である。 必殺仕掛人「ゆすりたかり殺される」では、左内の腕に惚れこみ弟子を気取ってまとわりつく若侍が左内の息子に行き先を尋ねるシーンに、上写真の楼門から続く塀にあるくぐり戸が使われた。 |
本殿 |
本殿は松尾造りと呼ばれる独特のもの。いかめしい黒っぽいフォルムと華やかな金具類、のびやかな両翼が識別ポイントとなる。 松尾さんには古い神像が多数あり、なかでも貞観期のものとされる木造の女神坐像は日本でも最古の部類に入るという。 |
本殿 | 舞殿 |
広壮な本殿は、お参りのシーンにロングで使われるとよく映える。殿様風来坊隠れ旅最終話において、水戸の清姫と乳母が参る江戸の天神さんとして使われた際のアングルは好例。斬り捨て御免!第三シリーズ最終話、ラスボス退治に大坂へ赴いた大将・花房出雲の無事を祈ってお御籤をひく小蝶姐さんの姿も本殿にある。 舞殿越しに本殿が映り込む構図もよくある。 |
奉納の薦被り | 水場 | 水場の屋形 |
楼門を入って左手にある水場には、亀の口から水が出ている。 必殺仕掛人「女の恨みはらします」では、元締の女房・おくらが性悪与力に脅されるくだりで水場が使われた。この水場では、暴れん坊将軍の大岡忠相がわがままな町娘を手荒く懲らしめるシーンなども撮られている。痛快!河内山宗俊では、大奥のお局さまから届いた大量の羊羹に辟易した男たちが水を飲みに来ている。 水戸黄門31「刀が教えた賢兄愚弟」では刀鍛冶兄弟の弟が相愛の芸妓といちゃつくラストシーンで亀まではっきり映っていた。用水に架かる石橋も使われている。 |
本殿脇の摂社群 |
本殿左手にある摂社もよく使われる。三つあり、中央の一つは赤く塗られている。上左写真にあるように、本殿の外壁が背景になることもある。 |
曲水の庭 | 亀の井屋形 | 亀の井 |
裏山から湧き出る湧水はちょっとおどけた表情の亀の口に導かれている。古来、醸造の際に混ぜると酒が腐らないと言い伝えられる名水・亀の井である。 毎11月には醸造の無事を祈願する祭りが行われ、全国の醸造に関わる人々が松尾様に参詣にやって来る。 また、病を癒したとも巷間伝えられ延命水・甦りの水としても尊崇を受ける。 このほか、三態の様式の庭・松風苑もある。境内はずれには酒造りに関する資料館もある。 |
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京都市西京区宮町 |
松尾大社ロケ使用例一覧 |
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