時代劇の風景  ロケ地探訪

天神川

鎧ダム 天神川は、大津市南部を流れる淀川水系の川で、源の湖南アルプスは禿山で有名。この山なみからは古代、宮城造営のための材が伐り出されたが、以降の放置により禿山となったものである。ために崩落した山腹からの土砂が夥しく、近代初頭から砂防の手が入っていて、外国人御雇技師のデ・レーケが作った鎧ダムなどの土木遺産が残されている。
 ロケには、砂防ダム上の広河原と、デ・レーケの堰堤を奥に持つ谷が使われる。


■ 天神川堰堤上の広河原

天神川堰堤上の河原

 天神川が山から出かかる付近には、規模の大きい砂防ダムが作られている。
この川に作られた砂防堰堤は、夥しい流送土砂のためすぐに埋まってしまい、広く浅い河原を作り出す。
同様の地形の「酵素」と比べると、格段に広い。休日にはたくさんの人がやって来て、のんびりと過ごしている。
こうした場所は派手な野戦などに好適で、大立ち回りに用いられる。
荒れた山腹 天神川堰堤
 暴れん坊将軍II「吉宗狙撃!消えたお庭番」は、お忍びで豪雨被害を視察の上様が狙撃されたうえ、お庭番の才蔵まで川に落ちて一時行方不明となるなど、のっけから荒っぽい展開のお話。事件は罷免されたことを恨む元勘定奉行の差し金で、こやつの手先の忍群と決戦となる目黒の御狩場が、この河原。
上様は狩場へ行くことを公表して囮になるという設定で、金ぴかの豪華衣装に身を包んで白馬に跨っての勇姿が見られる。爆破シーンあり、谷筋から派手な水しぶきを上げて忍者が現れたりと、派手なラス立ちとなる。
 吉宗を北大路欣也が演じた徳川風雲録 御三家の野望では、参勤交代の徳川頼方を襲う山内伊賀介の派手な野戦がここで撮られた。頼方の駕籠を水辺に置いて休息中に襲撃が行われる。駕籠が爆破されるが、中は替え玉なのであった。
 新・三匹が斬る!「非情剣!これが噂のオオカミ男」では、殿様も千石も歯が立たぬ凄腕の剣客が現れるが、山野に起居する野獣のようなその男を探しての大規模な山狩りのシーンで、この広河原が使われている。
いずれの場合も、遠景には荒れた山腹を持つ山が遠景に映り込んでいる。

■ 若布谷

 若布谷は、天神川上流部に注ぐ谷の一つで、デ・レーケの鎧ダムを奥に持つ。下写真は天神川に注ぐ谷口で、大径の巨岩がごろごろ転がっている。
このすぐ上には、最近デ・レーケのものに倣って作られた迎不動堰堤がある。
谷口は砂がちの浅い河原で、焼肉ファミリー出没スポット。
若布谷の谷口 谷口の大岩

 ここでは、上写真の巨岩がロケに使われる。
 広河原の項で述べた新・三匹が斬る!では、赤子の頃捨てられ狼の乳で育ったというその剣客が、手負いとなり隠れる洞窟がこの岩の下にある、という設定で撮られている(洞窟のシーンはセット)。傷ついて尚近づく者に唸り声をあげる男だが、実母との数奇なめぐり合いで急速に人の心を取り戻してゆく。しかし家老追い落としの陰謀に巻き込まれ、男は母を庇って銃殺されてしまうのだった。この悲劇の母を朝丘雪路が演じている。オオカミ男を探して大岩を這い登るシーンなどあり、こんなところを和服で草履、女優さんも大変である。
 お毒見役主丞 乾いて候では、江戸を去る主丞が野営する河原として使われた。彼を仇と甲賀くの一が襲いかかるが、大岡忠相の妹が立ちはだかり身を挺して庇い、その情にくの一は一旦去る。
 長七郎江戸日記「海を渡る五十万両」は、明の武将が日本に隠した軍用金をめぐって清国人や海賊と戦う長七郎ぎみの話で、スペシャル版の旅もの。はるばる唐津の山奥に黄金を求める、なぜか長さんと一緒に来ている夢楽堂一行がゆく怪しげな谷がここ。しかし金を見つけた途端悪者が現れ、女たちがさらわれてしまうのだった。

撮影日 2003/9/23 滋賀県大津市田上森町、枝


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