時代劇の風景 ロケ地探訪 龍潭寺

 亀岡西郊にあるこの鄙びた寺は、応仁の乱を避けて当地にあった竜安寺僧・雪江が建てた大梅寺を起源とし、細川氏の庇護を受け明応年間に龍潭寺として開山された。皇室や徳川氏の帰依深く、天正の戦禍を蒙ったのちも諸堂が建てられていった。
山際にあり、社叢には巨木が林立する静かな佇まいで、近くの小川では足もとからカワセミが飛び立ってゆく姿が見られる。

参道と山門

 江戸を斬る II 「燃える牢獄」は、遠山金四郎に陰謀をめぐらす鳥居甲斐守の話。入牢させられていた魚政の若い衆が火事によりお解き放ちとなり、出頭場所へ行こうとする彼を阻み金四郎に恥をかかせようと企むがタイムアップ寸前で間に合うという筋で、ここが出頭場の回向院として使われた。
監禁され痛めつけられていた若い衆は戸板に乗せられ門前まで辿り着くが、鳥居が出しゃばり人手を借りて入ってはならぬと嫌がらせをする。仕方なく戸板を降りた彼はずるずると門へ這ってゆく、その姿が長い尺をとって描かれる。この際、門を固める衛士に福本清三氏が真面目な顔をして立っているのが見られ興味深い。騎馬で駆けつける金四郎の場面では参道も使われている。龍潭寺が使われるときはたいていしっとりと落ち着いた場面が多いが、この作では群集ひしめく賑やかなモブシーンという珍しい例。

山門

 龍潭寺でよく使われるのは、上写真の門。鄙びた風情と周囲の緑が美しい画面を演出する。
各地の寺として使われるほか、関所という設定も見られる。

 2003年に放送された大奥では、配下の初島が不祥事で流罪となり疲労の極みにある大奥総取締・瀧山さまが訪れる柳丈の寺・如是寺として使われた。寺で孤児を養っている若い僧を見て、瀧山さまは「家定様」と呟き意識を失う。見送り際、門の隙間からのぞく柳丈の顔がまことに印象的。もちろん、柳丈役は家定を演じた北村一輝。(第二部7、8話)
三匹シリーズでは各地の寺として使われ、殿さま風来坊隠れ旅では白河の関所として使われた。門の前に馬を持ってくると、不思議によくマッチする。

経蔵 方丈と庫裏
青巌塔(開山堂) 鐘楼

 田村正和が拝一刀を演じた子連れ狼 その小さき手にでは、妻の墓に参るくだりで経蔵や墓地が使われた。花頭窓が印象的なお堂で、前にはこの地方独特の「寄せ」タイプの石灯籠が置かれている。
八丁堀捕物ばなし II 「朋輩」では、小室同心の親友が奸計に陥ち監禁される蟠龍図のある寺として使われ、この際は内部も映っている(天井画は演出)
剣客商売4「逃げる人」では、大治郎と水魚のまじわりを持つ老武士が寄宿する新鳥越町の貞岸寺として使われ、門や境内が紅葉に映えて美しい仕上がりとなっている。
痛快・三匹が斬る!「凶悪の里、愛しい女の紙風船」では、凶盗に脅され手先に使われる哀れな女の身の上を聞く吉良右近の姿が経蔵の前に見られる。バックには青巌塔も映りこんでいる。

丘から甍越しに亀岡盆地を遠望
甍の波 屋根の間からのぞく縁先

 長くお蔵入りとなっていた渡辺謙主演の御用牙では、板見家の菩提寺としてここの墓地が使われた。墓参のシーンが何度かあり、凶盗のため言葉を失った少女がカミソリ半蔵を待っていたり、鳥居甲斐守の放った刺客とアクロバティックな殺陣があったり、牢から脱出するため犠牲にした手下の骨を納めに来るくだりでも使われた。

 墓地から甍の波を見るアングルも使われる。子連れ狼 その小さき手にでは、墓地から見たお堂の縁先がズームされ、田中邦衛演じる和尚が座っているのが映る。甍越しには亀岡盆地の雄大なビューが得られるが、京都縦貫道やビルが映ってしまうため当然ながらこのアングルは使われない。
墓地は崖にあり、鬱蒼と茂る林間に散在する。崖には大きな岩が幾つも露出していて、画面に不思議な効果を与える。林床は深く苔に覆われ、これもよい背景となる。

墓標と、露出する巨石

→ロケ使用例一覧

京都府亀岡市稗田野町太田

諸堂の名称については間違っている可能性があります。
また、稗田野町の「稗」は正式には草冠が付きます。


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