時代劇の風景 ロケ地探訪 鹿王院

山門 嵯峨の宅地の中にある鹿王院(ろくおういん)は、足利三代将軍・義満が作らせた禅刹で、覚雄山と号する。かの一休禅師も、この寺で経典の講義を聴いたと伝わる。
現在の堂宇は、江戸期に再興されたものが多い。山門には、山号を大書した義満の手になる扁額が掲げられている。
参道 中門 庫裏
 山門をくぐると、まっすぐに石畳が続く。脇をみごとな苔が縁取る。もう一度門をくぐると庫裏、玄関の前庭にも苔。
暴れん坊将軍VI 最終話「江戸自慢、吉宗うれしや天下餅!」は老中追い落としをはかる若年寄の話で、ワルは気の毒な経緯で出戻っている老中の娘にスキャンダルを仕立てて追い込む。孤閨をかこつ姫が町で若い男をハントさせ連れ込んでは御乱行というのがそれで、上様は御殿に連れ込まれたという火消しとともに現場を見にゆく。このくだりで御殿として使われたのが庫裏の脇にある入口、カメラは本庭から覗き込むかたちで来ている。前庭の優しげな苔の具合が、いかにも身分の高い姫が隠れ住む屋敷に相応しいムードを醸し出し、騙りの道具に使われるのが納得の設定。
参道から本庭の塀を見る 本庭から見た塀
 参道と本庭は塀で仕切られている。塀にはくぐり戸がついており、ここを出入りする例もある。
暴れん坊将軍VI 「標的は将軍様」では、上様暗殺のスナイパーに選ばれた元猟師の植木職人がワルのアジトに連れ込まれるくだりで使われた。このお話のワルは将軍の縁戚なので、アジトも豪奢なものである。
客殿 前廊 客殿と回廊
回廊と本堂 舎利殿
 庫裏から廊下を通ってゆくと客殿、嵐山を借景とした本庭をたっぷりと眺める趣向。ここから西に回廊が巡らされ、本堂と舎利殿に続いている。
 暴れん坊将軍VI 「愛と憎しみの孤剣」では、回廊が大岡忠相暗殺の毒と誘拐されていた子と交換する場に使われた。敷き瓦の落ち着いた黒が画面によく映えて美しい。
同シリーズ「名探偵!新井白石」では、客殿が白石邸として使われた。先代に仕えた白石は「大久保彦左衛門のような爺」になっており、老いてなお意気盛んなきかん気のじいさまを長門勇が演じている。お話は小判改鋳にからむ不正もので、作事奉行をつとめている白石の息子がワルの勘定奉行に陥れられる。窮した彼が腹を切ろうとするのが、客殿の縁先。白石が駆けつけてやめさせ、徳田新之助が危機回避の秘策を授けるのだが、息子は新さんの顔を見て首をひねるのがおかしい。
同じく暴将VI 「吉宗、騙りを働く!?」では、ワルの証拠を握るため、小悪党の旗本屋敷へお忍びの形で庭へ入る徳田新之助のくだりで客殿前庭が使われた。そして暴将VIIIでは、上様と結婚寸前までいくヒロイン・鶴姫が教授をつとめる女大学・明徳館としてレギュラーで登場する。門は相国寺の大光明寺で、中庭として鹿王院の回廊が使われている。回廊の石篠の上で立ち話をする「鶴姫」千鶴先生と「徳田先生」を覗き見した娘たちが、黄色い声を上げる。
 2004年正月のテレ東時代劇竜馬がゆくでは、訪ねてきたお田鶴さまにおりょうを娶ったことを話す竜馬のくだりで客殿が使われた。ところは馬関、原作設定では回船問屋・白石邸とされる。お田鶴さまは本堂のほうから回廊をやって来る。
 大奥 第一章では、将軍家光の側室・お万の方が心を通わせたキリシタンの笛吹きが、お城を下がったのち身を寄せる寺として使われた。最初は正室・孝子に連れられて、二度目は身の危険を知らせに、お万の方がやってくる。参道に舎利殿、客殿と回廊が使われている。
 四十七番目の義士・寺坂吉右衛門にスポットを当てた最後の忠臣蔵では、遠島になった義士の身内を救うべく「自首」して出て幕府に揺さぶりをかけるくだりで、大目付・仙石伯耆守邸として使われた。伯耆守に手厚くもてなされる寺坂が、体がなまらぬようストレッチをしている縁先が、客殿の前廊。
京都市右京区嵯峨北堀町

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