北山には、頻繁に撮影が行われる仁和寺や今宮神社などのほか、ごくたまにしか使われないものの印象深いスポットも点在する。 |
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■ 蓮華寺 平安期の開基になる古寺であるが、応仁の乱の戦禍を蒙り衰微し、現在の形になったのは昭和になってから。風雪に耐えたみほとけ達は、仁和寺の駐車場があるため前が開けた高みで燦々と陽光を受けている。よく晴れた日には、仏さんの脇に昼寝の猫が気持ち良さそうに寝そべっていたりする。 |
五智如来像 |
大きな五体の仏さんは、お堂の中ではなく野外におられる。これが登場人物とからんでフレームに入ると、とてもダイナミックな画となる。 長七郎江戸日記「黄色いカラス」は、お家再興をエサに騙される浪人の話で、父が世を騒がす凶盗と知った息子は傷つき奇妙な絵を描くようになる。長さんは子のため両親を諫めにゆくが、お説教の場所がここ。五智如来像のまわりを逍遥するかたち。 同「十手に賭けた青春」では、巨額の強請りにからんで殺された番頭の墓として使われた。 |
京都市右京区御室 |
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■ 平野神社 平安遷都の折り、大和から移されたという縁起を持つ古社で、比翼の社殿は珍しい独特の造り。 |
本殿 |
必殺仕事人「仕事人が女に惚れて何故悪い?」は、恋に迷う秀の話。元締であるおとわは秀を呼び出しきつい叱責を加える。その背後に本殿が映り込んでいる。たくさんの千木が印象的。同「落し技替玉斬り」では、命講の仕込みで替玉の仇討ちが行われたというツナギが行われている。 |
京都市北区平野宮本町 |
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■ 広隆寺 秦氏の本拠地に古代からあった蜂岡寺が起こりという、京最古の寺院。歴史の古さゆえ数多ある寺宝のなかでも、弥勒菩薩半跏思惟像はその優しいお姿で人の心を捉えてきた。 |
山門 | 北塀 |
境内が使われた例は見ないが、山門が面白い使われ方をしている。 必殺仕置屋稼業のオープニングは、シリーズ中でも異色のもので、現代の風景の中に仕置屋メンバーを置いてある。そのうち、印玄の場面に広隆寺山門が使われた。和尚姿で門を出てきた印玄は、石段下に停めてあったカブに跨る。 また、映画村の中となる北塀はたくさんの東映時代劇で使われている。時には「日本橋」の大向こうに広隆寺の甍が映り込んでいることもある。 |
京都市右京区太秦蜂岡町 |
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■ 等持院 暦応4(1341)、足利尊氏によって創始された古刹で、庭は夢窓国師の手になる。庭の一隅に尊氏公の墓と伝わる宝筐印塔があるほか、霊光殿には歴代足利将軍の木像を祀る。この木像は幕末、徳川家への面当てに首を斬り晒すという事件に巻き込まれた。また、大正期には境内にマキノ省三が撮影所を建てたこともある。 |
書院から見た方丈 | 方丈南縁から前庭 |
ここは、2005年正月の長尺ドラマ国盗り物語で、当の等持院として使われた。この頃の足利将軍家の権威は見る影もなく衰えており、13代将軍の義輝は居館を持てず等持院に仮寓していた、と原作にある。 こうした背景のもと、越前朝倉家と足利将軍との仲介をつとめている光秀の働きを愛でた将軍・義輝は、彼に拝謁を許し佩刀を下賜する。この際、奏者番の細川藤孝が光秀を呼びにくるシーンで、開け放たれた方丈の座敷にいる光秀を北側から映し、カメラが寄ってゆき室内に移動すると南の庭が背景になるという趣向。 義輝に「直参と思う」とまで言われた光秀はむろんこの上なく感激し涙にくれるが、このあと程なく義輝将軍は松永弾正によって弑逆されてしまうのだった。 |
京都市北区等持院北町 |
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