時代劇ロケ地探訪
今浜の菜畑
 南湖と北湖を分ける琵琶湖大橋の傍、野洲川旧南流筋のデルタに菜畑がある。
一面の菜の花畑越しに比良の雪嶺が望まれる絶景は多くの人に愛されていて、菜花が満開となる頃には早めに行かないと人の波となる。

菜畑と湖畔のヤナギ

 湖畔に堤があり、菜畑はその手前に作られている。すぐそばに高層マンションが建っており対岸の山裾にも建物があるが、視点を調節すれば「余計なもの」が消えるのは嵐山の自転車道などと同じ。時代劇では設定場所が深川だったりするので、湖岸のヤナギをポイントに持ってきて雪嶺は映さない傾向にある。
湖畔の堤 堤から見た菜畑
菜花越しに雪嶺 カメラを構える人
 髪結い伊三次は、宇江佐真理氏の人気時代小説を映像化したフジテレビのドラマ。その最終話「約束」で、この菜畑がまことに印象的な使われ方をした。
馴染みの隠居の髪を結った伊三次は、芸者と駆け落ちの約束をしたが、待ち合わせの場所に行かなかったという後悔まじりの昔話を聞く。隠居が語る、芸者・菊弥が待っていたはずの本所竪川・羅漢寺前の菜畑がノスタルジックに映し出される、その場所がここ守山の湖畔。
菜の花畑はこのあと二度出てくる。まず、隠居のもとを辞した伊三次が、富貴など人の幸せでないと言った隠居の言葉を嬉しく噛みしめて脳裏に描く菜畑。次は、隠居殺しの疑いで投獄され散々な目に遭ったあと釈放された伊三次が、家にも帰らず不破家にも寄らず文吉を連れてまっすぐに向かう「約束」の地。最後は、全ての事象を彼方に追いやって睦みあう二人の姿が菜の花に埋もれて終わる。文吉は菊弥姐さんを知っており、彼女が先年亡くなったことを語るのもいい味。隠居が織本順吉なのもことさらに味わい深い。
原作の「菜の花の戦ぐ岸辺」とは少し設定を変えてあり、窮地に手を差し伸べてくれなかった不破のダンナにクサった伊三次が御用返上という深刻な話はなく、みんなの暖かいサポートに救われた伊三次がお文とハッピーエンドというかたちにして最終話を締めくくってある。
水戸黄門の最近作「箱入り娘と最強の用心棒」では、御老公一行がゆく豊後・中津街道として使われた。このときのヤナギは葉っぱなし、「伊三次」では葉を茂らせている。

菜畑越しに比良の雪嶺

使用例
髪結い伊佐次「約束」1999
夜桜お染「金の仏像」2003
水戸黄門35「箱入り娘と最強の用心棒」2006

参考文献
文春文庫刊・宇佐江真理著「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ

滋賀県守山市今浜町 第一なぎさ公園


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