銭形平次

555話〜571話  フジテレビ/東映

招善寺キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おせん/海原千里 おつる/海原万理
長吉/田渕岩夫
万七/遠藤太津朗 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第555話「凧凧あがれ」1977.1.5 44

 深川の「お救い小屋跡」で肩寄せあって暮らす健気な孤児たち。同じ境遇の、盗っ人に追い使われている少年の闖入でコミュニティは壊されかかるが、子らの夢の大凧は晴れて正月の青空に舞う。

ロケ地
・孤児らが暮らす川べりの掘立小屋、罧原堤際の桂川畔。
・年少の子らが大八の尻押しバイトの坂、吉田神社参道の「車道」。参道石段は映さず。
*孤児らを世話する年嵩の娘は森昌子、子守唄も披露。*凧は子供たちが揚げる希望の象徴であると同時に、賊の手先になっていた少年が抱くただひとつの故郷の記憶。


第556話「居酒屋」1977.1.12 44

 ざっくばらんな人柄で酔っ払いに人気の酒肆の女将だが、哀しい過去の持ち主。たまたま店にやって来た幼馴染との間で急激に昔の恋が燻るが、男は贅沢好きの女房に起因するやばいヤマを踏んでいた。

ロケ地
・幼馴染の伊之助と逃亡をはかるお葉、六兵ヱが船を用意して待っているのは桂川(松尾橋付近か)
*お葉は藤間紫で、いつもの通り濃厚にしてベタな情話が展開される。幼馴染の錺職は内藤武敏、酒肆の親爺の六兵ヱは寺島雄作。


第557話「みそっかすの唄」1977.1.19 44

 惣領の急死後、呼び戻される勘当息子の話。よくある筋立てに、出生の秘密とそれにまつわる父親の苦悩をからめて仕立て、身代狙いの悪党も登場させ濃厚なドラマを積み上げる。

ロケ地
・父の妹の親戚のおばさんに実は不義の子と告げられる清次郎、中ノ島橋下河川敷(お峰の死体発見現場も同所)。駒形屋は材木商なので「材木置場」も二度ほど登場。
*清次郎は佐藤仁哉、父は小栗一也、おばさんは荒木雅子。身代狙いの悪所の元締は佐伯徹、清次郎をハメる元締の情婦は渡辺やよい。平次にシメられ悪党の企みを喋る掏摸は園田裕久。


第558話「花いちもんめ」1977.1.26 54

 永年御用を勤めてきた目明しの爺さまには、娘の「男」のことで消えぬ悔恨。娘かわいさに悪党を見逃したことで起きた更なる凶行の被害者に償いをするべく、爺さまはぎりぎりの決断をして凶賊に迫る。

ロケ地
・千住から出張ってきた文三に付けられた八が置いていかれそうになる道、吉田神社竹中稲荷参道重ね鳥居〜舞殿前。
・凶賊・ましらの卯吉に呼び出されるお澄、中ノ島橋下背割(ススキ等派手にあしらい、設定は「中之橋」)
・娘を思い立ち尽くす文三、みそそぎ川に架けられた平橋。追憶の、娘を遊ばせ童唄を歌ってやったお宮さん、吉田神社参道石段下。
・卯吉と会ったあとのお澄の前に立ち問い詰める平次、鴨川右岸河川敷・みそそぎ川(バストショットの平次の背後に枝垂柳)。昔の事を告白するお澄、平次と二人歩くのは吉田神社竹中稲荷参道重ね鳥居〜舞殿際。
・砂山を作って遊ぶお澄の息子を見張る八、吉田神社竹中稲荷舞殿前(卯吉の手下が現れる/襲撃シーンは描かれず)
*文三は今福正雄、お澄は上村香子。文三の鉾先をかわすためお澄を騙して籠絡した色悪の卯吉は西村利明。下ッ引に井上茂。*タイトルは文三が娘に歌ってやった童謡、折に触れ親子の口をついて出るモチーフ、イメージの導入はお静の差し入れに入っていた飾り切りの人参の煮しめ。
★参考→みそそぎ川


第559話「悪い奴がいっぱい」1977.2.2 44

 裏でいろいろ汚いことをしていたヤクザが殺されるが、万七が捕まえた充分に疑わしい前科者を妙に気遣う男あり。真実を探り当てた平次は、真面目な市井の男の検挙に苦悩する。

ロケ地
・般若の仁兵ヱ殺害現場、大覚寺五社明神本殿前(舞殿に扉あしらい)。後段、平次の憶測のかたちで岩吉がやむなく仁兵ヱを刺してしまった場面が出てくる。
*岩吉は大村崑、万七の幼馴染設定で子煩悩の真面目な親父。女房は猪俣光世、惣領は頭師佳孝。仁兵ヱは藤尾純、輪をかけて悪辣な女房と代貸は野口ふみえと林浩久。万七に誤認逮捕される島帰りは市村昌治。*タイトルは、被害者も遺族も悪人なのに善人を捕えねばならなくなった親分が絞り出す苦悩の一言。


第560話「おひさという女」1977.2.9 54

 辛い人生を生きてきた女の心の支えは、幼い日に貰った竹笛。それがため殺人事件を目撃するも真実を秘す女は、追憶と現実の狭間で苦しむ。

ロケ地
・先に殺された男の連れが死体で見つかる水辺、広沢池東岸
・おひさの回想、幼い日苛められていた彼女を庇い竹笛をくれた「坊ちゃん」の政吉、大覚寺天神島祠前。そこへやって来て竹笛を吹くおひさに政のことを迫る平次のシーンもある。
・政たちがツナギをとる夜の町角、梅宮大社境内の蔵脇。
・おひさが心決めて政と会う夜の平河天神、梅宮大社神苑・門内側。平次が出て立ち回りの際には、神苑南通用門が開いていて東参道の蔵が覗く。
*おひさは市原悦子、政は蜷川幸雄。揺れる心の襞を名手が見事に演じる。政の仲間に田中弘史、黒幕は永野達雄。


第561話「八五郎大いに嘆く」1977.2.16 44

 八五郎のダブル失恋話、仕立てはよくある「見栄張って偉くなったって言っちゃったどうしよう」もの。国から出てきた伯父さんが八の嫁にと連れてきた娘、これが別の男に惚れてしまうのだが、その男を凶賊に仕立てようとした当の盗っ人の企みは親分にバレバレ。結ばれた恋人たちが出した蕎麦屋で苦りきるも、三杯注文の八ががっついて幕。

ロケ地
・信州に現れた凶賊が江戸へ向かう途中、旅人を襲い通行手形を盗る川べり、保津峡落合河口右岸汀。役人の検分を手下たちが見ているのは右岸側の崖から。
・関所を通る与吉、保津峡付近の地道か。
*八の伯父さんは里木佐甫良、八の嫁にと連れてきた養女は竹井みどり、彼女が惚れる蕎麦職人の与吉は剣持伴紀。善人面の凶賊の首魁は勝部演之、手下に小田部通麿や下元年世など。*伯父さんの話に喜んだ八は万七が持ってきた破格の縁談を断ってしまうが、恋破れたあと惜しい上玉と思い知らされる運び。


第562話「風車の唄」1977.2.23 54

 母を亡くした赤子に乳を含ませてやった、子を亡くした女。その「親子」を引き離した悪い因縁は平次の働きで断ち切られ、おっ母ちゃんは坊のもとへ戻る段取りに。

ロケ地
・木更津から来た滝蔵がおとよを求め貼り紙をする天神さま、赤山禅院。本殿と周辺のほか池端、拝殿まわりなど使われ、総門や参道も出てくる。貼り紙は「奇縁氷人石」に、これは祠仕立てのあしらいもの。
*おとよは左時枝、婀娜っぽい姐さんが事後憑き物の落ちたように脂抜けて変化するさまも見もの。滝蔵は柄沢英二、子役の栗又厚がなかなか達者。おとよを手先に使う盗賊の首領は田口計。


第563話「おふくろ」1977.3.2 54

 仲間に裏切られ半死半生の目に遭わされ、不在中に母も亡くしたた男の復讐譚。しかし三人目を殺りに行った先で老母を見てしまい、たちまち心は萎える。仲間の後ろにこすからい黒幕がいたことを知った男は、友を弁護して死んでゆく。

ロケ地
・仕事帰りの大工・勘次が殺される夜の橋、中ノ島橋。検分は橋たもと(橋標そのまま)
・自分たちも殺られると脅え喜助に話す芳三、嵐山公園桂川(左岸・堰堤脇)
・喜助が毎月参る伊之吉の母の墓、招善寺墓地。親分は「七地蔵」脇から坂を登り、登りきったところで喜助とばったり。このあと本堂縁先で話を聞くが、背景に鐘楼脇の通用門が映り込んでいる。後段、平次が和尚に聞き込みの段でも墓地が出る。
・伊之吉が芳三の前に現れ追い詰めて刺すくだり、塀際、背割の溝、不明。
・伊之吉が呼び出される柳原堤の船小屋、広沢池東岸にあしらい(池は水抜き後、立ち回りは土手の段差をうまく使う)
*伊之吉は酒井修、喜助は広瀬昌助、老母はたうみあきこ。昔伊之吉たちが押し込んだ三河屋の主は山村弘三、手引きのうえホットマネーを理由に盗金を分配しなかった若旦那は林勝久。*人情話の締めくくりは親分の気遣い、惨めに死んだ伊之吉の手に母の戒名入りの守袋を持たせ、羽織を脱いで掛けてやる。


第564話「狙われた獄門首」1977.3.9 54

 金をしたたか溜め込んでいる獄門首をお上から奪う一味あり、奉行の進退を賭けて解決の期限を切られる事態に。平次の捨て身芝居と、一味を仇と狙う男の思惑がからみ悪党どもは一網打尽、しんみり人情話で終わりを締める。

ロケ地
・逃がし屋一味に金を渡さず殺された盗賊・夜がらすの仙右ヱ門が酷い死体で見つかる川端、大覚寺大沢池畔←見物に混じるしゃぼん玉売りの源兵ヱが遺体を拝む。
・浅草溜へ送られる坊主が逃がし屋に奪われる道、大覚寺大沢池堤水門そば。
・平次が化けた煙小僧を奪いに来る一味、宇治川橘橋(船で逃走)
・一味のかしらが金を隠してあるお堂、大覚寺護摩堂。囚人たちを隠してある地下室のある屋敷は望雲亭か(草戸をくぐって庭を通り建物)
・「煙小僧」が一味を導く谷中清源寺、渡世人に化けて赴く道は金戒光明寺東坂下石垣際(放生池の玉垣越しのアングル)。隠し金のある墓は本堂裏手墓地。
*源兵ヱは小島三児、一味の首領は杉山昌三九で手下の浪人は江見俊太郎。


第565話「親心、涙ひとすじ」1977.3.16 44

 こそこそと裏で事件を糊塗しようとする口入屋には訳あり、事情を知った親分は町方を信じない彼を情で屈服させる。

ロケ地
・喜らくの三人が芝居見物帰りに雨宿りする無住の荒れ寺の門、大覚寺大沢池木戸(草などあしらい「荒れた」風情を演出、吊りの見つかる本堂はセット)
・お堂で「縊死」していた遊び人が突き落とされた現場の検分、金戒光明寺経蔵下石垣
・強請り男を監禁してある上総屋の向島寮、嵐山公園・錦
*上総屋は田中明夫、弟だった罪人は溝田繁、娘は水原ゆう紀。罪人に伝言をするため頼まれて入牢した強請り男は牧冬吉。借金をチャラにしようと上総屋の娘を籠絡した遊び人は峰蘭太郎。*タイトルは引き回しの途中寄った蕎麦屋で実の娘を見てこぼす罪人の涙。


第566話「奇妙なお礼参り」1977.3.23 44

 盗み金の行方を吐かぬ盗っ人を泳がせる話、平次が憎めぬ奴というその男は妹の死を知り心萎え、金も見ずに死んでゆくが、彼の上をゆく鼠がたくさん隠れているのだった。

ロケ地
・町方が張り付く最中に起こった皆殺し押し込み事件のあと、浪人者に追われて辰次郎が出入りする材木置場、玉垣越しのアングルで「境内」の様子がちらり。
*辰次郎は和崎俊哉、怪しい釘樽を置いてあった酒肆の女将は森秋子。


第567話「涙の帰り花」1977.3.30 55

 島抜け者が元の奉公先に立て籠もり。朝を待つ間に裏事情を探り当てた平次たちは疲れ果てて寝込み、帰って来たお静は部屋の惨状に驚き呆れる。

ロケ地
・事件の一月後、奉行所を出た伊之吉を諭し励ます親分、大覚寺明智門(奉行所門)〜参道石橋〜護摩堂。
*島抜けの元手代は北条清嗣、お店の家つき娘はひし美ゆり子。ライバル陥れ・隠し女の偽証・トリッキーな殺しなど多彩な要素を詰め込む割にすっきり仕立て、喜らく姉妹の泣き笑いまでお話に取り込んである。*長やんの在所は大和と判明。


第568話「ひとり心中」1977.4.6 55

 尽くす甲斐もない男に惚れた女の哀話。別の女との別れ話がらみで殺しの疑いをかけられハメられかける男のため、迷いつつも証言した女の心遣いは、馬鹿には遂に通じない。

ロケ地
・捨てられた男に縋るもすげなくされたうえ口汚く罵られたおときが身投げする藍染川の橋、中ノ島橋(ここで刻の鐘を聞くのがアリバイの要諦、設定の川は現在暗渠化。闇に照らされる堰堤からの落水が劇伴と相俟って印象的。親分がザボーンの水音を聞く番屋も川辺)
・若旦那が女に別れを告げようと会う約束をしていて当の女が刺された稲荷、吉田神社竹中稲荷(本殿、舞殿見越しの参道も)
・おときの回想、若旦那とデートの池辺、大覚寺大沢池堤水門傍。
・おときの証言で放免されたあと、若旦那とおときが番頭の画策で呼び出される柳原の船着き、広沢池東岸(水少なし/灯台や漁具あしらい)
・不吉な予感に柳原へ走るお静、および悲惨な結果を見て帰る平次夫婦がゆく道、鴨川右岸河川敷のみそそぎ川畔。
*おときは関根世津子、若旦那は大竹修造、番頭は中田博久。*タイトルは男を刺して自ら胸を突いた女の心情を指しての平次の表現、馬鹿者生存に関して痛烈な寸評つき。*時々出てくる、キンキン鳴る「変わった劇伴」の回。


第569話「可愛げのない娘」1977.4.13 55

 大店の身代乗っ取りの企みは、娘の心を警戒心ばりばりに鎧わせていたが、親分の奔走で悪い芽はすっかり除かれ、「可愛げのない娘」に朗らかな笑顔が戻ってくる。

ロケ地
・番頭が丹次を迎えに出たと話す六郷の渡し、宇治川か(流れは急な瀞)
・事後、大番頭の墓に参る平次たち、永観堂墓地。帰り道は放生池傍。
*平次にも剣突を食らわせる相模屋の先代の娘は森川千恵子、母は西朱美。当主は山岡徹也、番頭は三上真一郎で当主の甥と称する丹次は峰祐介。海原万理のご亭主が「婿はん」で登場。*なっさけない万七に代わり清吉が活躍、按摩で捨て身の潜入捜査のほか、渡船が川止めの伏線をもたらす運び。*六郷の渡し川止めでトリックが崩れる「同じ話」をよそで見た記憶あり。


第570話「明神下に来た女」1977.4.20 55

 手の込んだ芝居で平次宅に入り込んだ娘は、恋人の仇をとるつもりでいた。女心を利用して邪魔な平次を消そうとした凶賊の企みはぎりぎりの切所で潰え、娘は在所へ帰ってゆく。

ロケ地
・ごろつきに絡まれているおさきを助ける八、今宮神社石橋。
・おさきの鈴を見て蘇える平次の記憶、凶賊一味の文七を追い詰めるも自ら墜死の橋、宇治川橘橋。後段、おさきの企みに気付いた平次がわざと連れ出す段では中州側の橋たもとに茶店あしらい。
・おさきの回想、故郷を出てゆく文七を見送った辻、木津堤か(土手下に民家)
・八が人質にされ平次が呼び出される天神境内、赤山禅院本殿前。
*おさきは岡まゆみ、文七は鳥巣哲生。凶賊の首領は入川保則。芝居に使われ消される地回りに福ちゃん、「安吉/福本清三」とクレジットあり。


第571話「清吉の十両」1977.4.27 56

 男のため身を引いた女だが、思わぬ相手と添った暮らしは二人ながら不幸な日々。五年ぶりに出会う二人、女の難儀に金を調達した男の行動は、身上狙いの悪党に利用されてしまう。
タイトルの金高は流用されてしまった清吉の積立金、これをとらぬ狸で浮かれ騒ぐ一同と、おつるの結婚祝いの馬鹿騒ぎで前後をしめた、賑やかな節目のお話。

ロケ地
・宇之助が女房を「刺した」ことにされる八幡境内のくだり、宇之助を追って入る清吉は上御霊神社楼門、「現場」は境内参道石畳脇石碑前。
・事情を聞きにやって来た平次と話すお昌、宗忠神社拝殿前石段下を水場越しに。このあと回想シーンを挿み、境内を出てくる際は参道坂、一の鳥居と脇の石灯籠が映り込む。
・お昌の回想、亭主の博打で売り飛ばされかかっているところへ通りかかった宇之助のくだり、不明(土手下でヤクザにからまれ、宇之助が見下ろす背後にお堂の屋根。古い作品で大沢池の南に時々のぞく例のアレかも)。翌日訪ねてきた宇之助と話すお昌、桂川大堰脇右岸側(中州側)
・「叔父」が親切ごかしに宇之助らを匿う州崎の小屋、罧原堤下河原にあしらい。
*入船の板前上がりの婿養子・宇之助は柴田p彦、元入船の女中で宇之助と恋仲だったお昌は倉野章子。入船の女将の叔父は西山嘉孝、つるんでいたヤクザは中島正二。*幼馴染を庇う清吉がなかなかに可愛いが、宇之助を逃がそうとしたお昌にボコられてたいへんお気の毒。積立は頼母子講。


銭形平次 表紙


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