南町奉行事件帖 怒れ!求馬

嵐峡1997〜1998TBSナショナル劇場/C.A.L

キャスト
根岸求馬/原田龍二(南町奉行の孫で次男坊) 根岸巴絵/野川由美子(求馬の母、未亡人) 根岸栄太郎/岡野進一郎(求馬の兄、南町内与力・妻子あり) 根岸肥前守/田村高廣(求馬の祖父、南町奉行) お松/沢田亜矢子(蕎麦屋・千鳥女将、求馬の乳母) 姉崎真吾/田中健(南町与力) お京/宮内知美(岡っ引) 為吉/湯原昌幸(お京親分付き下っ引) 豆千代/野村真美(芸者・正体は綾姫) 太田蜀山人/植木等(戯作者、奉行の友人)


第1話「両国橋に駒が飛ぶ」1997.11.3

 両国橋普請中に起きる大事故、人足ら多数死傷。手抜き工事と囁かれるが、そのことを訴えようとしていた男は消される。早々と打ち切られる不審死に関する調査、残された娘が役人への不信を募らせるのを見た求馬はブチ切れ、お奉行の祖父に強談判→「勘当じゃ」。ここからはじまる求馬の大活躍、身分を離れ悪党めがけてまっしぐら。但し、彼の行動は様々な人にサポートされているのだった。

ロケ地
・両国橋の事故で大川へ落ちる人足たち、嵐山公園中州掘割(湛水域)
・お静の父の死体検分、中ノ島橋下手河原
・老中・水野を呼びつけ両国橋に関する詮議を牽制するお艶の方、粟生光明寺(堂内部、回廊)
・姿を消したお静のことを聞き回る求馬、茶店のシーンは大覚寺放生池畔に床机あしらい。手がかりなく座り込みボヤく求馬、放生池堤。普請奉行改方が出て彼に突っかかるのは護摩堂前。
・お京らが屋台蕎麦の親爺にお静の父の目撃情報を聞き込み、中ノ島橋たもと(先に出た改役が出て凄む)
・普請に関する暴露本を出した蜀山人のもとへ駆けつける求馬、中山邸門。ここへ殺到した改役らを誘導し自分を追っかけさせた蜀山人が豆千代姐さんの船に飛び乗り逃れる川、嵐峡
*普請奉行は川辺久造、改方は内田勝正、つるむ材木商は外山高士。こやつら三人が尻尾切りされて今回はおしまい、黒幕には至らず持ち越し。


第2話「大奥に駒が飛ぶ」1997.11.10

 前回残ったままの黒幕にメス、木曽屋毒殺に関わった牢同心から悪徳商人にアシがつく。その男がもてなすお中揩ェらみで風紀紊乱著しい大奥が出てきて、これが黒幕を屈服させる決定打に。

ロケ地
・豆千代が田安の使いで大奥へ赴くくだり、お城イメージに二条城隅櫓、城門は北大手門
・田安の使者が大奥へ入った旨報告を受けるお艶の方、清流園
・京坂屋の駕籠をつける花井同心、大覚寺観月台脇〜五社明神
・お艶の方と懇ろの役者に苦言を呈する求馬、大覚寺天神島(祠、汀)
・お艶の方が役者と密会する京坂屋の寮、中山邸通用門
*お艶の方は山本ゆか里、奥野哲翁は坂本長利、京坂屋に高野真二。*お白州に無資格で入ってくるのだから驚くに当らないが、役者とお中摶ァ会の閨からぬっと出る求馬は大笑い。


第3話「歌麿美人画の謎」1997.11.17

 北町同心殺害事件出来、月番は南。両奉行所の面子がかかったデリケートな案件を、飄々と乗り切るお奉行が見もの。お孫さんは勘違い方向へも突っ走るが、とにかく忙しなく動いてヒントを探り当てる。

ロケ地
・殺された同心が握りしめていた美人画のモデル・高島おひさ宅へ赴く花井のダンナたち、大覚寺大沢池畔〜望雲亭(おひさの暮らす「寮」)。帰り道、お京が冷かした為吉をどやしてドボンは放生池堤
・江戸城イメージ、姫路城天守(御廊下で北町奉行が根岸肥前守に捜査中止を申し入れ、このシーンはもちろんセット)
*北の内通者宅を家探しするのに使われるお奉行、自宅に呼び出して長いこと待たせ、出てきたと思ったらのらりくらり、次第に追及のトーンが上がってゆき「証拠は!」と同心が叫んだそのとき、泥だらけの花井らが現れるナイスな構成。高廣さん巧すぎ。*求馬が判じ物の解説をしていて火箸の意味に気付くくだりも傑作、「ユリイカ!」状態で走る走る。笑えるポイントは柴のお長屋家探し現場にも・床の根太まで切っちゃって、見つからなかったり帰って来ちゃったりしたらどうしたんだろう。*柴誠十郎に藤堂新二、北のお奉行に大林丈史、高島おひさに由美かおる。*クサっていた花井のダンナに花を持たせる「思いやり」もなかなか利いている。


第4話「密命帯びた男の剣」1997.11.24

 勧進相撲をネタの博打で儲けた金を、お家乗っ取りの資金に使う痴れ者あり。秘密を守るため重ねた殺しで町方が動くが、当のお家のほうから獅子身中の虫を駆除すべく忠義の臣が遣わされていた。

ロケ地
・勧進相撲の土俵、不明(後段、回向院のそれも同所)
・幕下の力士を殺めたと目され失踪していた火消しの死体が上がる川端、嵐峡汀。
・不知火藩下屋敷、門は不明、庭は中山邸庭園(苔庭、苦海)。上屋敷門、嵐亭か。
・相撲の博打はイカサマと胴元の口入屋に捻じ込んだ米問屋が襲われる帰り道、大覚寺護摩堂前。
*謎の浪人・鏑木に北大路欣也、留守居役に磯野勤、つるむ博徒あがりの口入屋に黒部進。行司が峰蘭太郎だったり、米問屋を襲うチンピラに福ちゃん。*鏑木を呼び出し釘をさすお奉行、やり取りが将棋の指し手で進むのも面白い。


第5話「騙されつづけた女」1997.12.1

 筆屋を営む未亡人は世話好きで気のいい女、その人望に付け込み大金を騙し取る男は彼女の恩人。女は裁きの場でも彼を擁護し被害届を出さず、ために戻るはずの金も頑として受け取らない。

 ロケ地、後藤屋の手代が心中を擬装されて見つかる野原、不明(丘の上か)
*おせいは中村玉緒、大悪党の札差に和崎俊哉。お白州にいる椅子に座った同心に福ちゃん。


第6話「消えた女囚」1997.12.8

 火事でお解き放ちになった女囚を縦糸に進むお話、そもそも火事は付け火で、回向院に出頭せぬ彼女は、復讐に燃える賊の悪謀に巻き込まれていた。
そもそもの彼女の罪状が同情すべき偶発事、放火から幼時誘拐・脅迫に至る凶賊の企みに、身を危険に晒して解決に手を貸した女にお奉行から寛大な処置が下る、いい話。

ロケ地
・解き放ちの囚人が出頭する回向院、大覚寺大門(炊き出しを受ける囚人らは護摩堂前)
・吉野屋の孫娘の身代金受け渡しが行われる浅草寺、清凉寺(山門には赤提灯あしらい、境内描写には本堂前が使われ、多宝塔が映り込むほか張り込む姉崎は茶店に)
・身代金受け渡しに現れたお政が浪人らに囲まれ殺されかける水辺、広沢池東岸
・一味を誘い出すため、お政を市中に出しお参りをさせる駒形堂、大覚寺聖天堂
*お政に斉藤とも子、吉野屋先代の妾腹の息子で憎しみに燃える賊の首領は伊吹剛。広沢池でお政を襲う雇われ浪人のヘッドに福ちゃん、求馬にボコられ鼻血でクレジットは浪人A。お政は姉崎同心の幼馴染設定。


第7話「濡れ衣晴らす乳兄弟」1997.12.15

 盛り場で殺された男の胸には植木鋏がぐっさり、持ち主の植木職人が捕えられるが、彼は無実を主張するもののアリバイを話さない。この兄ちゃんはお松の実子で求馬の「乳兄弟」、心痛めるお松のため、お奉行まで乗り出して解決に当る。

ロケ地
・捕まった半次郎の植木屋(青山)へ向かう求馬らが、帰ってくるお松を見かける夜道、広沢池東岸か。
・半次郎は自分の乳兄弟と姉崎に打ち明ける求馬、大覚寺大沢池畔。
・殺しのあった日、半次郎が仕事に出掛けた先の材木商・近江屋の屋敷(芝)嵐亭門。
・釈放された半次郎を迎えに出る求馬、大覚寺大沢池木戸。同じく来ていたお松と涙の出会い、背景に御殿川流れ込みがのぞく。
*アリバイ黙秘のわけは、その日身分違いのお嬢様に別れを告げに行った故。死罪になっても言わぬと決めていた・それは叶わぬ恋の完遂と言う半次郎に、珍しく高声のお奉行がいい味。毎度のことながらピントはずれの兄上が今回絶妙におかしい。


第8話「罪を償うお役者小僧」1997.12.22

 その昔義賊で鳴らした老盗は、金を与えて身投げから救った親子が幸せに暮らしているのを見たくて江戸へ戻ってくるが、盗っ人どころではない悪党が彼らを踏み躙り、悲劇の上に胡坐をかき栄えている事実を知る。

ロケ地
・お奉行に長崎行きを指示された花井同心宅を訪ねた求馬が、帰り道「ケッ」と毒づく路地、妙心寺大心院前路地(北望、画面左端に東海庵の築地端っこをナメて)
・お奉行登城イメージ、二条城北大手門(お城の廊下で関宿藩の殿様に家老の悪事の証拠書類を手渡し)
*隠居として千鳥に来ていて「義賊」の与えた金が親子をとんだ不幸に落とした事実を知るお役者小僧に市川左團次。求馬に引っ張られ関宿藩邸に忍び込む際、昔とった杵柄が錆付いてて「お役者じじい」とか言われるお約束が大笑い。お白州での泣きも見もの。恩を受けた「小僧」の人相風体を吐かぬよう縊死した母の遺志を継ぎ証言を拒む花魁もいい味、島崎路子。久世の殿様は川浪公次郎、盗っ人を利用して使い込み穴埋めの悪家老は波多野博。


第9話「親子引き裂く贋小判」1998.1.5

 事件は贋金作り。巻き込まれた飾り職人の、健気な子供たちを中心に描く人情話。逃走中の職人を追うほか、求馬に頼まれた豆千代姐さんは子の母に戻るよう説得しに旅へ。

ロケ地
・贋金作りの工房が八幡掘端の蔵に設定されていて、出てくる川筋に八幡掘各所を宛ててある。橋は明治橋が使われ、背景にも。
・家に戻ってきた職人を追う求馬、一味の用心棒が斬りかかる神社、車折神社か(石畳と鳥居)
・豆千代が職人の女房を説得にゆく川崎の海辺、琵琶湖(街道筋の茶店と干物作りの里、汀は落ち込んだ急崖や岩浜/島影からすると宮ヶ浜あたりの東岸か)
*贋金作り/マネーロンダリングの両替商は入川保則、番頭に下元年世、用心棒は谷口高史。ラス立ち、チンピラの福ちゃん入り。


第10話「お見合い誘拐事件」1998.1.12

 お見合いに引っ張り出されてぶーたれる求馬だが、当の相手が自分のせいで誘拐されたと言われ奔走する。大立ち回りのすえ救出してくれた求馬にお嬢様はメロメロだが、求馬は逃げ出して豆千代姐さん上機嫌。

ロケ地
・求馬が母に連れられお見合いに赴く道、妙心寺東海庵前路地(帰り道も同じ、逃げた求馬の背後に東海庵の唐門)
・お相手の旗本寄合衆・大宅邸、相国寺林光院
・大宅の娘・志乃が根岸家を訪ねる道、妙心寺衡梅院前路地。誘拐は妙心寺大庫裏脇路地クランク。
・豆千代と誘拐現場に行ってみる求馬、妙心寺春光院南塀際〜相国寺大光明寺南路地(塀をナメて湯屋前)大光明寺門(歩き疲れた豆千代がへたりこみ、出てきた中間に水を撒かれる)
・身代金を置けと指示された小日向の切支丹坂、不明(林間の緩い坂)
*誘拐の主体は大宅家に縁談を断られた旗本の冷や飯食い、彼に雇われた浪人衆のヘッドに福ちゃん、ベタでクレジット。打首獄門のところ、被害届が出ていないので寄場送りの処置に「へへーっ」。


第11話「肥前守暗殺!」1998.1.19

 事件はお奉行暗殺の企みで佃島開発をめぐる鞘当て、福祉施設を建てるというお奉行が煙たい、歓楽街作って大儲けを企む一味。彼らが追い使う殺し屋は深川の中州に巣食う、「濠外」スラムものでもある。

ロケ地
・求馬の父の法事が営まれる浄土宗・善栄寺、粟生光明寺(来ない求馬に焦れる一同は本堂座敷、娘に挨拶して引き上げるお奉行は回廊、帰りの駕籠が襲われるのは紅葉道・薬医門前)。この襲撃実行犯の浪人たちが殺されて見つかる谷中は紅葉道崖際か。
・深川中州のスラム濠端、嵐峡左岸河川敷(「濠外」へ通じる「橋」は足場を水に張り出させてあしらい、船着や汀をセットと組み合わせて表現されている)
・訳あり女のお蘭が経営する、密談現場となる料亭・江戸春、嵐山公園中州料亭・錦
・佃島開発の黒幕だった高砂屋が消され死体で見つかる百本杭、嵐峡汀。
・「危篤」のお奉行が来ないつもりで行われる佃島開発についての評議、お城イメージに姫路城天守
*お蘭に清水ひとみ、自分を踏みつけにした男を見返ろうと野心を燃やす悪女なれど、亡くした赤子に心痛め続け潔く罰を受ける哀しい女を好演。欲深な癖に腰の引けた勘定奉行は山本紀彦、殺し屋の元締は山田吾一(濠外もので定番の記号も纏う)、お奉行毒殺を強要される医師は草川祐馬。ラス立ち福ちゃん入りで用心棒の浪人。*己に企みありと察知していたお奉行は医師の薬を金魚で試すが、「許せよ」と桶に薬を振り掛けるのは珍しく、また高廣さんの言い回しが味わい深い。ラス立ちでは豆千代姐さんの裾まくりキックも拝める。


第12話「消えた死体」1998.1.26

 半田たちが夜回り中遭遇した斬り合い、しかし死体が掻き消える。お奉行の「うっちゃっとけ」に求馬はかんかんに怒り、「勝手に」関わってゆく。出てくるのはお家騒動、デリケートな問題をうまく捌くお奉行が憎い。

ロケ地
・烏山藩邸から出る物々しい人数を尾行する求馬、神護寺明王堂脇〜五大堂脇から石段(求馬が石段を登りかけると、上からわっと出る集団が迫力。下からも出て囲まれ、中ほどで立ち回り)
・かつて烏山藩に仕えた腰元の暮らす高井戸へ向かう求馬、広沢池西側の道(カメラは畦道にあしらった灯籠をナメて・法華の衆あしらい)。同じ所へ向かう烏山藩ご舎弟派の人数、北嵯峨農地の畦道。汐路が畑を耕し、爺さまが「若君」に稽古をつけているのは同じく北嵯峨農地の高台・杉林際(刺客と爺さまがやりあうシーン、一部大沢池堤際か/竹林での立ち回りも)
・事後、鷽替え神事の天神さま、梅宮大社(千鳥ご一行は神苑門から境内へ出てきて、本殿前をゆく求馬と豆千代を見る。冷かされた二人がくぐるのは楼門。天神さまは亀戸か湯島か)
*汐路は伊藤美由紀、彼女の父は土田嘉男。留守居役に若君捜しを命じられ斬られる藩士は峰蘭太郎。*「兄上」、考え事をしている爺さまに冷たくされ萎れる→母上の短絡→「求馬が何かした」が大笑い。


第13話「求馬危うし!」1998.2.2

 西洋からの武器購入に警鐘を鳴らす蜀山人、そんな説を広められては儲けがフイになる死の商人に命を狙われる。お奉行の要請で護衛につく求馬だが、悪党は凄腕の殺し屋を雇っており苦戦、しかも魔手はお奉行にまで伸びてくる。

ロケ地
・江戸城イメージ、二条城隅櫓(老中に蜀山人の本発行差し止めを迫られるが、お奉行は老獪さを発揮して煙に巻く)
・大名たちも武器購入の動きと求馬に話す豆千代、嵐峡船着
・蜀山人の隠れ家、中山邸門
・事後、水辺に佇む求馬を呼びに来る豆千代、嵐峡汀
*凄腕の刺客に木村栄、お白州でのお奉行とのやりとりも味わい深い。死の商人は田口計、つるむ旗本は睦五朗。福ちゃん二態、絵草紙屋へ押しかけた攘夷浪人の騒ぎを見ている大工(このとき横に峰蘭太郎)と、奉行を襲う刺客の一人で黒イカ。*「危うし」は最初殺し屋と対峙した際、喉元に刃を突きつけられ絶体絶命だったほか、殺し屋たちの入った岩城屋小梅寮に潜入すると床下に大量の火薬が仕掛けられていてどっかん(殺し屋を始末の算段)。


*放送日時について制作元のC.A.Lのサイトを参照させて頂きました。
*参考 怒れ!求馬 II  大江戸を駈ける!


・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧
・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ