時代劇の風景  ロケ地探訪  嵐山

亀山

渡月橋と小倉山 桂川大堰 宝厳院寺号
 渡月橋を北に渡って左へ折れ、大堰が涼しげにしぶきを上げているのを横手に見つつ嵐峡のほうへ行くと嵐山のなかでも閑静な亀山付近への道となる。 川沿いの道は料亭・吉兆の前を過ぎてホテル嵐亭に突き当たる。これを山側に行けば閑静な料亭や住宅の並ぶ一角へ入る。
 ここに最近30年ぶりに天竜寺の塔頭として復された「宝厳院」がある。長らく個人所有の邸宅(中山邸)であったがこのほど江戸期のガイドブック「都林泉名勝図会」にも記された名庭・獅子吼の庭とともに公開される運びとなった。
宝厳院 門正面 宝厳院 門・内側
 中山邸時代から、ここは時代劇撮影スポットであった。もう、上の門を見ただけで「ああっ」と思われる方も多いだろう。
夜な夜な悪徳商人と高級役人の邪な企みの席が持たれたり、怪しげな用心棒をたくさん飼っている正体不明のフィクサーのアジト、なんて設定で頻繁に使われる屋敷の門がこれである。
 使用例を見ると相模屋向島寮、備前屋寮、下条掃門太夫寮、柳沢吉保別邸、向島料亭大村、前老中水野邸、大目付別業、天一坊が迎えられる高輪の八つ山御殿、などという設定がずらーっと並んでいる。いずれも大金持ちや幕府高官などの寮や別邸としての使用で、吉兆や嵐亭などが立ち並ぶ亀山の一角にあり高雅な佇まいを見せる旧中山邸の使い方としてはまことにぴったりと言えよう。
宝厳院 参道

 参道となる楓を両に従えた道もよく使われる。たいていは門とセットでの使用で、大層な駕籠が通ったり、高官や富商の動きを探る者がうろついていたり、時にはここで斬りあいになったりするお馴染みの道である。

宝厳院 寺務所門 宝厳院 参道の塀
 参道の北には通用門があり、これも風雅な萱葺きの屋根を持つ。必殺仕事人スペシャル「恐怖の大仕事」では大坂の米商人で実力者の室田屋利兵衛邸としてこの門が使われた。また、暴れん坊将軍における上様の御生母・百合の方の住居小梅清流庵はシリーズ通してここが使われているが、正門と通用門双方が使われる。参道の塀には密偵や忍者が取り付いている姿がしばしば見られる。
宝厳院庭園 蓑垣 宝厳院庭園 苦海
宝厳院庭園 林間
宝厳院庭園 獅子岩 宝厳院庭園 豊丸垣
 宝厳院の庭は「獅子吼の庭」と称される名庭。嵐山を借景とする風雅な苔むした林間が最大の特徴で、枯山水で仏教の教えを表した部分もある。
趣味の高い蓑垣や豊丸垣、小柴垣が散在し、処々には巨岩も配されている。枝を大きく広げた楓が多く植えられていて、林床部は昼間も暗く、木漏れ日が美しい影を苔に落としている。しかし踏み荒らすに忍びない繊細な苔庭もチャンバラに使われたりする。
宝厳院庭園 無畏庵(補修中) 無畏庵 木戸
 庭にある庵・無畏庵も使われる。格子の破風が映るので判りやすい。徳川風雲録 御三家の野望では柳沢吉保邸として使われ、吉宗が台頭してくる報告を受けた柳沢が苦々しげに呪詛を吐いているのがこの庵の前だった。また、剣客商売2「剣の誓約」で、恩師の書状を持って秋山大治郎が訪ねた麻布西光寺下の剣客の寓居がここだった。応対に出た片肌脱いで弓の稽古中のカマっぽい兄ちゃん・伊藤三弥の背後に破風が映りこんでいる。
宝厳院 寺務所内側 寺務所裏手垣根
紅葉と垣根
 使用例はたいてい一回限りの設定が多いが、シリーズ通しての例もある。暴れん坊将軍における御生母邸のほか、剣客商売の佐々木三冬の根岸寮、幕府お耳役檜十三郎の大目付・京極丹波別業などがそれである。
メインの舞台としての使用例に長七郎江戸日記2スペシャル「ふたり長七郎 京の舞」が挙げられる。設定は東山・不老庵で、ラス立ちの際には爆破シーンなども挿入される。神谷玄次郎捕物控最終話で遂に母と妹を殺めた男を討ち果たし積年の思いにピリオドを打つ感動的なシーンもここで撮られた。必殺仕事人・激突!「主水、阿片戦争を気に揉む」では阿片窟として使われたりして、ここの使われ方の特徴がよく出ている。
小柴垣の道 野宮神社への道 小柴垣の道 大河内山荘への道
 ここを過ぎて北にゆくと亀山公園・大河内山荘があり、その先は小倉山の麓に散在する常寂光寺や二尊院、落柿舎などの人気観光スポットへ続く。途中の道は竹林を脇に従え、小柴垣が風情たっぷり。
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