1982-1983テレビ東京/歌舞伎座テレビ
原作 柴田錬三郎著「眠狂四郎孤剣五十三次」
キャスト
眠狂四郎/片岡孝夫
武部仙十郎/小松方正 お蘭/松尾嘉代 金八/火野正平
調所笑左衛門/安倍徹 都田水心/岸辺シロー 海老原蔵人/伊吹吾郎
老中水野忠邦の側用人・武部老人は、薩摩を中心とした西国大名を牽制するため、狂四郎を西に向かわせる。旅は隠密行ではなく、白昼堂々街道をゆく。襲い来る島津の人数とやり合うほか、先々で捨て置けぬ事件にも遭遇しつつ、狂四郎の旅は京まで続く。
第1話「女地獄やわ肌炎上剣 −江戸−」1982.11.24
一年ぶりに江戸へ戻った狂四郎だが、すぐにトラブルの渦中に。相手は水野忠邦失脚をはかる薩摩、狂四郎に差し向けられた怪しの清国人が放った手裏剣は通りがかりの女に刺さり、連れていた子は孤児となる。どうしても狂四郎が邪魔な薩摩から執拗な攻撃が続き、親しんだ「身内」と、彼を慕う娘の上にも不幸が降りかかる。
ロケ地
・岸和田藩上屋敷門前で「パフォーマンス」のお蘭、相国寺林光院。
・江戸城、姫路城天守。
・薩摩藩の手勢が狂四郎を襲う夜道、下鴨神社河合社脇。
・船徳へ負傷した旅の女を保護するも死なれ、正太に罵られた狂四郎が立ち尽くす汀、広沢池東岸(後段も船徳付近設定で出てくる)。
・カモ狙い中の金八を呼び正太の父親捜しを依頼する狂四郎、今宮神社楼門。
・父も死んでいたと知りおんおん泣く正太を励ますくだり、塚は二尊院か(石段不明)。
・琉球黒糖の搬出を探っていた隠密が気付かれ斬られて落ちる橋、渡月小橋。
・その隠密に頼られ武部邸へ連れてゆく金八〜隠密の件を知らせに走る佐知のくだり、お屋敷街の路地は建仁寺に似るも不明。
・見かけた入水女がお芝居で清国人とチャンバラ、広沢池東岸(水中で派手な殺陣)。
・その清国女がひん剥かれて届けられる三田の薩摩藩邸、大覚寺大門(後段、怒り狂って藩邸に乗り込む狂四郎の段では参道も映る)。
・自分を庇い傷ついた佐知を連れて逃げる狂四郎、追手から一時身を隠す神社、不明(朱の両部鳥居、前に杉の大木)。
・西へ向けて旅ゆく狂四郎、金八が追っかけてる段では大覚寺心経宝塔や五社明神の前、谷地田を望む山道は大内・亀岡道の、里を見下ろす坂。
*武部邸に潜入していた島津の隠密・佐知に竹下景子。
*毒を見破られた調所が繰り出すのは落とし穴、両から壁が迫ってくる仕掛けつき。危機に陥った狂四郎と佐知に悪態をつく都田水心が佐知の真の仇は家老とつらっと発言。ラス立ちは清国人たちと、頭目の錫烈が青龍刀を持ち出すのに円月殺法でお相手。
☆第一話はスペシャル枠、正味時間90分
第2話「女体いけにえ無情剣 −神奈川・横浜村−」1982.12.1
浦賀では新式銃をめぐり公儀と薩摩が暗躍、どちらにも与する気のない狂四郎が関わってゆくのは、一人の哀れな女ゆえだった。
ロケ地
・荒磯にカモメの本物の海のショットのあとまだ漁村の横浜村は琵琶湖西岸。
・旅籠がないので泊めて貰いにゆく寺、一様院山門。
・金八がミケーレに追い回される水辺、広沢池北西岸。
・唐物商・成海屋の寮、中山邸通用門。
・蔵人が配下に狂四郎対策の鍛錬を行う林、下鴨神社糺の森(後段、狂四郎の言いつけで投げ文をしに来た金八が潜むのは池跡)。
・ミケーレが唐丸駕籠のお浜を見初める松林、琵琶湖西岸松原(金八が走るのも同所)。
・横浜へ向かう荷が蔵人らに襲われる山道、谷山林道。
・斬り防ぐ蔵人を置いて先行した荷の前に狂四郎が立ちはだかる道、酵素(まず降り口から、狂四郎登場は河川敷の草原から)。
・街道をゆく狂四郎が洋妾のお浜を見る、罧原堤下河原(船に「新しい」異人とお浜)。
*薄幸の女・お浜に范文雀、浦賀奉行に波田久夫。ミケーレは武器商人。
第3話「みだれ肌からくり女妖剣 −戸塚の巻−」1982.12.8
都田水心の悪企み芝居×2本。推理ものよろしくぴしぴし企みを暴く狂四郎が傑作な一話、都田が忖度する「弱点」がきっちり当っているのも大笑い。
ロケ地
・三吉にたばかられ赴く「流れ橋」、流れ橋と木津河原(橋は完全に桁を失い脚に草を絡みつかせている)。
・三吉らが待っている都田のところへ狂四郎入りの駕籠を運んでくる、相国寺法堂。薩摩の家老に引き渡そうとしていると「起きた」狂四郎が来て失敗のくだり、鐘楼に家老が隠れていて駕籠放置は宗旦稲荷前。このあと三吉が出てきて毒が利かなかった訳を聞くのは鐘楼裏手の塀際・溝端。
・西を指してゆく狂四郎が通る稔りの田んぼ道、亀岡か。
・戸塚へ一里の茶店、酵素ダートにセット。幼女を人柱にすると喚く「大工」を言い負かし子を保護するのは河川敷。
・茶店にいた俳人に誘われる戸塚宿はずれの郷士屋敷、民家門と塀。
・三吉に女児を託し別れる河原、大堰川か(河畔林に竹が目立つ)。
*内田稔演じる俳人のご隠居の中身は元薩摩藩槍指南、円月殺法に斃れる。お蘭、金八不在。
*三吉少年が勧める海苔で作った凧をぱりぱり食って倒れる狂四郎がおかしい。「流れ橋」は三吉が劇中そう呼んでいる。
第4話「武士道残酷多情剣 −藤沢の巻−」1982.12.15
乱暴そのものの殿様に振り回される男女の哀話。殿を諫止し怒りを買い切腹を申し渡された青年、哀れんだ嫂は死を前にした彼に身を任せるが、殿様の都合で切腹は沙汰やみ。しかし兄は罷免、嫂の苦悩、逃れ得ぬ暗い運命が迫ってくる。
ロケ地
・馬上領民を斬る山中藩の殿様、砕石場か崩壊地形か不明。
・藤沢へ四里の道、殿様を天誅と襲う騒ぎに行き合わせる狂四郎(もちろん無視)、木津河原。
・近習の又八切腹の座、相国寺法堂(基壇に見所、幔幕めぐらせ)。
・都田水心が調所に暗殺部隊を見せ前金を貰う、相国寺鐘楼脇。
・弟の切腹中止後出仕する夫を見送るも半ば自失の妻女、相国寺大光明寺式台玄関(石庭との中仕切り越し)。
・水心の差し向けた刺客と斬りあう狂四郎を見る妻女、下鴨神社泉川畔、糺の森。
・兄の罷免を受け遠乗りの殿様に直訴の又八、下鴨神社参道(よい沙汰を下すと虚言して去った殿様が駒を止め又八一家の殲滅を命じるのは参道石橋)。
・狂四郎のあとをつける妻女、大覚寺五社明神〜有栖川畔(河床から見上げ)。人斬りを頼まれた狂四郎が妻女を連れ込むお堂、護摩堂。
・藤沢を去る狂四郎がゆく街道、木津堤(夏草旺盛に繁茂、それに埋もれ流れ橋がのぞく)。
*苦悩の嫂に片桐夕子、又八に草川祐馬。狂乱の殿様は遠藤征慈。金八不在、お蘭は登場しラス立ちにも小太刀で参戦。
第5話「仕込み傘女郎花殺生剣 −大磯の巻−」1982.12.22
水心から学習したのか、少女を雇い仕掛ける薩摩。からくも逃れた狂四郎を親身に世話してくれた女郎はその少女の姉という奇縁、姉の借金を済すため危ない橋を渡った少女はしかし、大金の出所を問われ漏らしたため命を奪われてしまう。
ロケ地
・お花を乗せた暴れ馬が暴走し狂四郎が助ける街道、大内(亀岡道の坂を巧みに使い、狂四郎が馬を制するのは辻堂前で)。
・お花と「祖父」が経営する茶店、琵琶湖岸にセット(傘を開いた狂四郎が痺れるのに虚無僧が斬りかかる汀も近く。林に松が混じる)。
・大磯宿の女郎屋裏手、広沢池西岸湿地に裏塀あしらい。
・蔵人と琉球忍びが人数を集めて大磯へ向かう道、北嵯峨農地か。
・お花の墓、黒谷墓地(塔の際か)。
・薩摩の人数とチャンバラは金戒光明寺参道石段(宿はずれの東禅寺)。忍者も倒し立ち去る狂四郎を見る蔵人、三門。
・街道をゆく狂四郎、酵素ダート(お握り食べてる金八がダンナを見かけるのは河川敷、降り口から姿が見える趣向)。薄の野道、大堰川河川敷か。
*姉の女郎に永島暎子、同僚のお姐さんに三島ゆり子、琉球忍びに高野真二。
*狂四郎にぶっかけられた毒はお花が親切ごかしに渡した傘に仕込まれ。琉球ハブの毒液で作った粉とかいうなかなかキモチワルイ代物。
*金八が吹き込んだ狂四郎情報を頭から信じる、調所のじいさんの悪人にあるまじきおめでたさが大笑い。
第6話「こぼれ花情け無用の無頼剣 −小田原の巻−」1982.12.29
矢傷を負った狂四郎を手当てしてくれた娘は鏃を見て驚愕、同じものが彼女の兄の命を奪ったのだった。仇討ちと狂四郎への思いに揺れる切ない女心、仇は討ってやるものの心には応えず狂四郎は去る。
ロケ地
・冒頭狂四郎がゆく街道、水面越しの堤、池か川か(小田原へ二里の道)。
・直後襲う薩摩の刺客、不明(山道)。
・剣戟を見て発作を起こしたという旅の女を休ませる祠、鳥居本八幡宮。
・箱根登り口・三枚橋の薩摩の隠れ宿、毘沙門堂薬医門。
・船に火矢を射込まれ毒矢を受けてしまう酒匂川の渡し、広沢池か川岸か。
・武部が薩摩の隠れ宿の話を持ちかける、石清水八幡宮本殿脇。
*小夜に佐藤万理、仇の薩摩の遣い手に八名信夫。薩摩くの一登場で帯パラリあり。
*小夜の仇を討ちに薩摩隠れ宿へ侵入の狂四郎、調所とお茶してるのが笑える。
第7話「無惨!乙女肌魔性剣 −三島の巻−」1983.1.5
剣術狂いの山犬に敗れた父から打倒の悲願を託された娘は、女を捨てて修行に励む。敵うはずもない勝負は狂四郎の一計で切り抜けるが、ようやく呪縛から逃れ女に戻った娘に酷い運命が降りかかる。
ロケ地
・臥竜軒の前で子犬を拾い上げ飼い主の幼女に渡してやる狂四郎、砕石場(背景に養山工事中の段差)。
・山の湯元への道標を細工され山中に迷う狂四郎、不明(山道、萱葺民家)。
・山の林間で剣の稽古をする須磨、不明。
・狂四郎に仕掛けたものの正気に返り逃げた女が薩摩藩士に追われ斬られる崖、保津峡落合落下岩。
・須磨がその女を見つける上の川、落合河口。
・手当ての甲斐なく死んだ小枝の墓、谷山林道。
・川辺で狂四郎に襲いかかる臥竜軒、落合河口巌脇(洗濯女たちは河口汀)。
・三島神社の奉納試合、走田神社境内(ちょっと自信なし)。
・須磨ごと臥竜軒を斬ったあと狂四郎がゆく道、谷山林道。
*臥竜軒に小林稔侍、毛皮を荒縄でくくって帯にした荒くれスタイル。棍棒で撲殺などやることも荒っぽい。狂四郎が須磨に授けた秘策は弱味を突くもので、洗濯女の脛を凝視していたケダモノの眼から思いついたトンデモ企画。これに怒った臥竜軒が復讐に現れる際やらかす技がちょっとかなりアレで、昼間の再放送なんかでは茶の間の空気が凍ること必至の映像。
*狂四郎を仇と狙う薩摩女たちに悪霊落しとか言って雷を召喚…アリかよ。だいたい自分も同じ部屋にいるのに。ゴムかなんかの絶縁体なのかオマエは。
第8話「闇に光る女吹き針無想剣 −沼津の巻−」1983.1.12
尋常の手段では無理と判断した薩摩は、素人を駆り出す。夫の仕官を夢見ていた妻と、生まれてくる子を楽しみにしていた夫は、非情の者どもに使い捨てにされ路傍に屍を晒す。
ロケ地
・沼津へ一里四丁の道標、大覚寺石仏前。雨宿りの狂四郎と倉田源之助が邂逅のお堂、大覚寺護摩堂。
・目の痛みをこらえ斬り抜けた狂四郎を匿うお蘭、渡月小橋下の船(追手は橋上)。
・妻を人質にとられた源之助が狂四郎に戦いを挑む道、不明(竹林際、草に埋もれて墓石、所々に大木)。
・沼津を去る狂四郎に巡礼姿の駿河屋が斬りかかる橋、流れ橋(増水し濁りが入る。倒れた田口計の顔の向こうに水が近く見えて迫力)。
*吹き針で狂四郎を襲う千佐に岡まゆみ、瞼にぶっつり刺さる二本の針は思いっきり痛そう。隠れ宿主人の駿河屋に田口計。何度も失敗する手下にイライラ蔵人、なんだかギャグっぽい存在になってきてておかしい。
第9話「はぐれ三味線運命剣 −蒲原の巻−」1983.1.19
生き別れの母と子、出会えはするもののすぐに悲しい別れというのがいかにも眠狂。がきんちょには優しい狂四郎、救われぬ者を眺める表情はさすがにいつもより暗い。
ロケ地
・狂四郎から金を巻き上げようとするごろつき浪人たち、および鶴吉が親分の仇をとりに向かってくる街道、大内か(谷地田の畦道)。
・浪人たちがツナギをとる祠、不明(三基並ぶ)。
・鶴吉に逃がして貰った親分が性懲りもなく狙う大百姓の屋敷、不明(前に短いステップ付きの萱葺の門、また又三匹でも出た所)。
・凶賊と浪人に呼び出される狂四郎、大堰川堤傍か。
・蒲原を去る狂四郎がゆく道、大覚寺放生池堤〜五社明神舞殿(雨宿り)〜大沢池北西畔。
*悲劇の母に山田五十鈴、元柳橋芸者設定でもちろん三味を弾くシーンあり。せっかく会えた坊は死罪、痛快時代劇なら助けてくれるんだろうけどこれは眠狂、「年少ゆえ罪一等を減じる」のあとに来る判決読み上げは「…ところなれど見せしめのため死罪」。狂四郎は役人に願い出て二人に時間を作ってやる。
*殺伐ムードを盛り上げる野盗と浪人、賊の親分は沢竜二で手下に丹古母鬼馬二でガラ悪さ満点。浪人たちは揃って天然理心流とか言ってて笑える。
第10話「無頼子連れ旅必殺剣 −府中の巻−」1983.1.26
狂四郎襲撃の巻き添えを食って横死した老爺から幼女を託される話、行く先全てに手が回っていて肩を痛めているが円月殺法は無敵。
ロケ地
・ちよの祖父が巻き添えで殺される海辺の茶店、琵琶湖岸河口州か(内水面際は葦原で林は松や柳など)。
・ちよの母・おすみが薩摩の手の者に身請けされ駕籠で運ばれてくる街道、酵素ダート。
・狂四郎がちよの発熱で旅籠へ泊まったとツナギをとる一味、不明(祠脇)。
・府中宿を出たとツナギの草戸、不明。
・ちよを連れ鞠子へ向かう狂四郎が狙撃される道、谷山林道。
・手当てに退避する小屋、酵素河川敷(川べりに水車小屋セット)。
・おしまに先導させ狂四郎のもとへ向かう一味、北嵯峨農地か。
・ちよとおすみに見送られ発つ狂四郎、大内亀岡道(見上げ)。
*雇われ刺客に御木本伸介、あらくれ法師スタイル。道中師と知ったうえでの狂四郎の信頼にうるうるのおしまに北川恵(添い寝の際乳で子を窒息させた過去を語るも、原因となった立派なものは開陳されず)。
第11話「姫君みだれ舞い妖艶剣 −藤枝の巻−」1983.2.2
川止めの金谷宿、長逗留の阿波の姫君は千姫もどきと評判。狂態を芝居と見抜く狂四郎、しかし度重なる乱行は姫の心を腐らせていた。
ロケ地
・輩台で大井川を渡る狂四郎、琵琶湖。
・金谷宿へ向かう狂四郎の前に狂気の姫が現れる林、下鴨神社糺の森。
・金八に口説かれながら街道をゆくお蘭、大内亀岡道(谷地田見下ろし)。休んだ茶店で島津侍の謀議を目撃、辻堂裏。
・寝巻姿の男が姫から逃げて殺される本陣の庭、枳殻邸印月池北東畔(背後に回棹楼がちらちら。後段、金八が呆けているのも同所)。
・殺し屋の元締を待つ島津侍たち、宝塔寺楼門(雨)。
・殺し屋の鍛錬が行われる野原、酵素河川敷(導入は林越し見下ろし)。
・姫の顔を傷つけたかどで狂四郎を求めて宿場を走り回る阿波の侍たち、宝塔寺方丈通用口〜坂〜楼門。
・姫が狂四郎に斬りかかり殺し屋が殺到する安土ヶ原、不明(斜面がススキ原で両側は植林杉の谷あい、ススキの中に孤立木。藤田剣客「剣の誓約」で出た薄原と同じか)。
・先発したお蘭がまた金八に口説かれながらゆく道、大内・亀岡道(谷地田映さず)。
・船で発つ狂四郎、琵琶湖(西岸と思われるが対岸曇っててほぼ見えず特定不能)。
*貴世姫に山内絵美子、家老のじいに早川雄三、宿の主実は殺し屋の元締は山本昌平。千姫もどきに引っ張り込まれるのは眠のダンナではなく金八、頑張ったみたい。
第12話「月光けもの谷暗殺剣 −掛川の巻−」1983.2.9
隼人隠密党とは別組織が、大がかりな芝居を仕掛けて狂四郎を襲う。危機一髪の狂四郎を救ってくれるのは、時代劇にとどまらず偏在しスーパーで桃を押して品定めする妖婆だったり。
ロケ地
・日坂宿手前の街道で狂四郎を襲う浪人たち、大堰川堤か(対岸の河畔林は竹)。
・浪人に頼まれた遺髪と金を渡し旅籠を出た狂四郎に共に道中をと願い出る妻女、民家塀際。
・日坂と掛川間の山あいの道(東海道とは遠い)、谷山林道(本物の浪人の妻女・たかがゆく場面では切り通し遠望のショットも)。
・槍の浪人が行き合わせた一行を誘う閻魔谷下の温泉宿、広沢池北東岸の団体施設内萱葺屋根を遍照寺山斜面から遠望。
・槍の浪人が正体を現し狂四郎崖落ちの閻魔谷、保津峡落合落下岩。
*妖婆は原泉、たか女に悪さをする荒くれを礫技で撃退したりと活躍、狂四郎を救ったときも山菜採りに来ていたなどと言うが、正体は大盗・夜叉丸というトンデモ。豪快な態度で狂四郎の口もとを緩めさせる、滅法かわいい泉ばあさん。槍の浪人は青木義朗で裏薩摩の首領。
第13話「いのち花わかれ盃情炎剣 −袋井の巻−」1983.2.16
思わぬかたちで現れるお蘭の過去、互いに情甦るものの立場は遠く離れてしまっていた。悲しい決断を下したお蘭を労わるように、狂四郎は盃に萩の花びらを浮かべてやる。
ロケ地
・賭場の借金のため灯籠に縛られている片倉浪人が行き過ぎる狂四郎に声をかける神社、藪田神社鳥居前灯籠(狂四郎はやしろの南から現れる)。
・百姓家の傍を通りかかった狂四郎の耳に娘の悲鳴、民家脇川堤。
・博打の金で遊んだ帰りの金八と片倉浪人が勝ち逃げは許さんと囲まれる野道、本梅川堤(片倉の腕を見込んだ福知山藩の鮫島が声をかけるのは汀、そこから見える「若森廃橋」をお蘭の駕籠が通り、片倉が見つける)。
・お蘭が使者とツナギをとろうとして雷神党に捕まる松原、琵琶湖西岸・舞子浜(碑脇の松原で立ち回り)。
・狂四郎が身を置く見附宿の荒れ寺、丹波国分寺(門左手に鬱蒼と竹藪)。
・片倉に逃がして貰ったお蘭が狂四郎と出会う道、広沢池東岸。
・事後、一旦江戸に戻るというお蘭の盃に萩を散らしてやる狂四郎、峠の茶店は大内・亀岡道、別れて歩み出すシーンは谷山林道切り通しを見下ろし。
*片倉新九郎は元勘定方、上役の不正を糺そうとして叶わず出奔。お蘭とは許婚者だった模様。萩の一件は、花びらを盃に浮かべ干すと縁が強くなるというおまじない。
*狂四郎が強奪した密約書を奪還すべく、家光時代にお払い箱になった忍群・雷神党が登場。悲鳴の百姓女ももちろんこいつらで罠。
第14話「津軽恨み節孤愁剣 −天竜川の巻−」1983.2.23
日影の身でいいからと縋った母を斬り捨てた父を求め津軽から旅してきた娘、身の上を聞き狂四郎でさえホロっとくるその薄幸の少女をためらいもなく殺す実父の代官、無事で済むわけがない。
ロケ地
・お冬にからむチンピラを懲らしめる狂四郎、御室霊場(丘の上のお堂)。
・島津侍が狂四郎情報をツナギの茶店、琵琶湖岸か(金八が子犬を拾う)。
・見附宿を出て西へ向かう旅人たちが雨宿りの屋形、大覚寺五社明神舞殿(お冬が三味を弾き歌う。設定は少し行くと天竜川)。
・池田宿へ泊まった翌朝水辺で三味を弾くお冬、柊野堰堤(落差工下の巌上)。
・代官の悪事を嗅ぎつけた隠密が見つかり人足らに囲まれる水辺、広沢池北西岸(水少なし)。
・虚無僧らに狂四郎の居場所を告げ殺害を指令する島津侍、大覚寺護摩堂前。
・三味線を墓標のお冬の塚および当地を去る狂四郎と金八、北嵯峨農地(小丘と農道)。
*用心棒の死神主膳に黒部進。ここんとこ曲のない島津の企み、今回は天竜川代官に川止めさせて狂四郎を封じ込めやっちゃうプラン…何回失敗すれば気が済むか。
*終始犬をいじる正ちゃん、懐に入れて運ぶほか手荒い真似も。頭上高く放り投げるのは高い高いではナイ。
第15話「ふたり狂四郎木枯し魔風剣 −浜松の巻−」1983.3.2
狂四郎の見た悪夢は正夢、過去に倒した剣客と曲折あってのち立ち会うことに。一度は別の道を夢想する盲いた剣客だが、幸せは彼の手から零れ落ちる。
ロケ地
・渡れば浜松の橋を行った狂四郎を見る島津トリオ、摩気橋。
・美代と水上浪人が大道芸の神社、摩気神社舞殿脇。
・発熱した水上のため医者を訪ねる美代、走田神社社務所。門前でばったり会った狂四郎になぜ捨てたと恨み言をぶつけるのは本殿前。
・水上と対峙の河原、木津河原。
・胸に矢を受けた美代を保護する小屋、酵素河川敷。
*水上源之進に長塚京三、ひたすら剣の道を求める堅物。
*島津トリオは今回も人任せ、道場主や弓の名手を大金で釣る。
第16話「悪女志願!美男剣 −荒井の巻−」1983.3.9
男を蕩かす艶婦の心底を見通す狂四郎、まとわりつく山犬も始末され自由となるも廓に身を置く女。しかし「狂四郎の言いつけ」を守り心は売らないと明るく笑う。
ロケ地
・おもんが監禁されている船小屋、琵琶湖畔(以降も砂浜が出てくるが、植生等から西岸の河口州と思われる。ラス立ちは湖畔の荒地か)。
・才蔵が代官の指示で旅人を襲う街道、不明。
・子分の直次郎と才蔵から逃げるおもん、広沢池北西畔・田畔。
・林に逃げ込んだおもんが金八とばったり再会し隠れるあばら家、不明(斬り捨てご免等でも出ている瓦練りこみ塀と門)。
・当地を去る狂四郎、桂川松尾橋下手右岸汀。
*「天女」おもんに大信田礼子、彼女に執着する山賊の親分に草薙良一、おもんに手をつけ斬られてしまう子分に本郷直樹。
*島津トリオ、今回は遠江代官を頼る。賊とつるむ悪代官は円月殺法にやられるが、その前にトリオはちゃっちゃと逃げ去り。
第17話「美女姫みがわり残念剣 −白須賀の巻−」1983.3.16
欲をかいた公家のため落命する娘、「姫様」殺しの犯人として捕われる金八。仲間の危機には動く狂四郎、奉行に切られた期限をいっぱいに使って真相に迫る。
ロケ地
・金八が逃げてくる「姫」に行き会う道、広沢池東岸並木道(姫は汀を走ってくる)。
・女装して吉田宿へ向かう金八、広沢池北西岸田畔。
・公家屋敷を窺う金八、中山邸門、参道。
・京極文麿と立ち会う狂四郎、下鴨神社河合社脇。
・当地を去る狂四郎、桂川松尾橋下手左岸汀。
*跡目を狙うワルおじゃるに綿引勝彦、おじゃる法則通り妙に強い。大金出して姫を買った好き者の贅六に中村錦司。
*島津トリオ、一応文麿に声をかけ工作にかかるが無視され、以後出てこない。
*お尋ね者になってしまい女装を余儀なくされる金八、けっこう楽しそうに女をやる…「あら」なんて言ってシナ作って立小便やめて座り込むとか。
第18話「夕陽の群盗多殺剣 −土山の巻−」1983.3.23
凶賊の頭目を捕えるものの難儀の小役人に助勢する狂四郎、礼にと招かれた彼の家で見た妻女には見覚えがあった。狂四郎は女の前身について黙すが、かしらを取り返しに来た賊により幸福は打ち砕かれる。
ロケ地
・土山へ二里半の道をゆく狂四郎、不明(堤道を対岸から、馬あしらい)。
・護送中の鹿蔵を取り返しにくる一味、酵素河川敷。
・矢ノ沢宿へ向かう道、不明。金八が矢ノ沢へ向かう途中桂木の妹を拾う道、不明(片側崖で岩盤露出)。
・賊一味に取引を持ちかける水心、保津峡落合巌上。
・当地を去る狂四郎、大内・亀岡道。
*鹿蔵に亀石征一郎、手下に五味龍太郎も。
*水心、鹿蔵の娘に刺されるという役柄に相応しい死に様を遂げる。
第19話「京洛の闇に舞う死闘剣 −京都の巻−」1983.3.30
遂に薩摩は西国13藩を結集し企みを押し進めようとするが、策士策に溺れ壊滅の憂き目を見る。
ロケ地
・大津を経て京へ三里の湖畔に立つ狂四郎、琵琶湖西岸(砂浜に草むら)。
・峠に狂四郎を襲う島津の侍、不明(山道)。
・京入りした狂四郎がゆく寺、仁和寺参道・茶店前(塔映り込み)〜二王門(阿形像前をアップ)。
・京へ着くも狂四郎と会えぬ金八がいる茶店、今宮神社楼門前(内側)にあしらい。
・武部の手配で滞在する宗雪の嵐雪庵、不明(斬り捨て御免でも出た、茶室ふう)。
・庵で狂四郎の世話をするお淋がお参りに出て金八を拾う神社、今宮神社本殿〜境内。
・お淋が兄・蔵人と話す水辺、広沢池東岸(水無し)。
・狂四郎を誘導するニセの茶会会場の大仙寺、門は黒谷か。蔵人たちが「警護」する門口は相国寺方丈入口。
・狂四郎の言いつけで岸和田藩京屋敷を見張る金八、相国寺大光明寺。
・金八の報告を受け薩摩藩邸へ向かう狂四郎がゆく道、仁和寺参道(茶店前のステップから見上げ・金堂の甍が大写し)〜中門(開口部から二王門を見る絵、狂四郎が左から右へ通り過ぎる)。
・蔵人と対決の林、鳥居本八幡宮。
・金八がゆく街道、大内か。狂四郎がゆくラストシーン、琵琶湖・舞子浜汀。
*薩摩藩筆頭家老に西沢利明、藩主たちを集め謀議の会場を狂四郎に察知され乗り込まれてしまう。この場面、フツー出会え出会えの声に下っぱ侍が殺到し立ち回りなのに、殿様連中は最初から抜いて向かってくる無謀さ。もちろん遣い手なんかじゃないから、もう一方的撫で斬り状態。一度にこんだけの殿様が大量死なんて珍無類。
■オープニングナレーションでは将軍「家慶」とあるが、原作では家斉の代。ドラマでは途中でいなくなる調所の爺さまだが、原作では最終話の京都で出てくる。またドラマにあるような派手な結末ではなく、13藩から脱落相次ぎどう見ても薩摩劣勢、というのが原作の最後。
■狂四郎のビジュアル、黒紋付(角花久留子紋)にムシリ頭。髪の色はさほど茶色くなく、ほぼ黒。被り物は深編笠。
■レギュラー陣は常時出ているわけでなく、敵方の蔵人も不在の回あり。しかし隼人隠密党の「島津トリオ」は毎回登場(島本半三郎/関根大学、森田周之助/鶴田耕裕、松浦与一郎/片岡松之助)。
■火野正平はちゃきちゃき江戸っ子の金八というより、正八・正十や丑松、辰三郎と同傾向でアドリブくさい呟きもいっぱい、ときには眠のダンナを変なおっさん呼ばわりもする。それでいて暗ぁいドラマにしっくり馴染み、出ていないと寂しい愛すべきキャラクター。
*下記のサイトのデータを参照させて頂きました。
火野正平サイト☆かまゐます
*参考文献 柴田錬三郎「眠狂四郎孤剣五十三次」新潮文庫
→眠狂四郎 無頼控
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