粟田口は京七ッ口の一つで、東海道が通じる要衝。ここを抑えるため、徳川氏が金戒光明寺と知恩院を要塞として置いたとの説もあるホットスポットだった。鎌倉期に名工を幾人も輩出した、粟田口派の刀工が住んでいたことでも知られる。江戸期には粟田焼陶器の産地ともなった。 ■ 佛光寺本廟 佛光寺は烏丸高辻を入ったところにある、浄土真宗佛光寺派の本山。その墓所が粟田口の山裾にあり、親鸞上人の御廟がある。山門は旧東海道に面し、参道は三条通から続いている。
栗塚旭が土方歳三を演じたテレビシリーズ燃えよ剣の中盤、伊東甲子太郎分派直前の状況を描く第15話「わかれ雲」は、新選組八番隊隊長・藤堂平助の苦悩がテーマ。13話で山南敬助が脱走の罪により切腹、16話で藤堂平助が伊東一派とともに斬られて果てる悲劇の、中間に来るエピソードで、山南を死に至らしめた新選組主流派に対し、生え抜き幹部ではあるものの山南や伊東と同門である藤堂の胸にわだかまりが萌す。
山門を入ると、石畳はまっすぐ親鸞上人の御廟所へ通じている。門を入って右手には茶所があり、ドラマでも墓守の婆さんがいる茶所として使われている。墓参を終えた藤堂が、婆さんに桶を返し茶を貰い話をするのが茶所周辺。やがて、藤堂がここでよく見かける兄妹が門をくぐってやって来る。互いの素性は知らぬまま会釈を交わす仲だが、藤堂の人柄は伝わっているらしく、のちに兄が売りに出した刀を買ったのは藤堂とわかった際には、いい武士の手に渡ったと喜ぶ場面もある。しかし運命は過酷、兄のほうは倒幕浪士で、或る日新選組の急襲を受けて、当の藤堂に父の形見の刀で斬られてしまう。闇夜の事ゆえ藤堂は斬った相手を知らず、後日再び山南の墓にやって来た際に、一人で来ている放心した様子の妹を見ることになる。 京都市東山区粟田口鍛冶町 ■ 粟田神社 主祭神は素戔鳴尊と大己貴神、付近一帯の産土で、七ッ口の立地に相応しく霊験は旅の安全。
殿舎は丘の上にあり、眺望が素晴らしい。上写真上段右、屋形越しに見える鳥居は平安神宮の大鳥居。
燃えよ剣「わかれ雲」の墓から帰る藤堂のシーンは、佛光寺御本廟からここにスイッチする。だいたい、挙げた写真の順序で坂を降りてゆく。 京都市東山区粟田口山北町 ■ 良恩寺 ここも旧東海道に面していて、その昔太閤秀吉に手取釜を所望された隠者・粟田口善甫の逸話を秘める。秀吉の意向に逆らうも却って大度を嘉された通人は、粟田口に住み往来する人々に茶や粥を振舞ったという。良恩寺には太閤から贈られた、損じた釜の代品が収められている。
このお寺の本堂が、山南の墓標のシーンでうしろに映っていたお堂。 京都市東山区粟田口鍛冶町 *参考 「燃えよ剣」視聴記」 |