粟生光明寺が時代劇で使われるのは圧倒的に石段である。幅の広い緩やかなもので、段も大きくとられている。
特徴は上下二段に分かれていて中ほどに踊り場を持つことと、両脇から張り出した楓の見事さである。新緑の候、晩秋に紅葉に染まる姿、冬ざれの景もそれぞれに趣深い。
石段は邂逅の場面、立ち回りの舞台、連絡を取り合う場などと幅広く使われる。
翔べ!必殺うらごろし「女は子供を他人の腹に移して死んだ」では火事で解き放ちになった囚人たちの集合場所の浅草寺として使われ、時刻に遅れまいと石段を駆け上がってくる囚人の姿が見られる。この設定は他の作品でもよく使われ、設定は回向院のこともある。服部半蔵 影の軍団「潜入!大奥の昼と夜」では奥女中の名に惹かれた大八を乗せた駕籠がのぼってゆき、一万両を詐取された富商が段に座り込む。江戸中町奉行所「闇の元締を消せ!」では水流添我童が意気投合したあと殺し屋と知った浪人と斬りあう。幕府お耳役檜十三郎「公儀大目付の陰謀では江戸・長谷寺という設定でお耳役チーム初の連携プレーが繰り広げられる。必殺仕事人・激突!「主水京に上る」では次期京都所司代が前歴の暴露を恐れてかつて弄んだ女の妹を消させる。鬼平犯科帳「本門寺暮雪」では「凄い奴」と立会い危地に陥る鬼平の姿がある。同「消えた男」では長谷川平蔵就任以前に長官のやり方に不満を抱いて江戸から消えた元火盗改同心と久しぶりに出会う筆頭与力・佐嶋の姿がある。同「おれの弟」では本所の銕の身代わりで弟分の滝口丈助が闇討ちされる。
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