島原は祇園より古い花街で、名は島原の乱に由来する。文化人のサロンも開かれた格式高い遊里も明治以降寂れ、今は町中に僅かな痕跡をとどめるのみ。遊郭の周囲にあったという濠や塀は跡形もないが、入口の高麗門が残されている。門前には「見返り柳」とちょっとした塀などがあしらわれ、雰囲気を出している。周囲にはビルもあるので、いま撮影に使うとなると相当の「加工」を要するが、古い映画で京都市中のひとこまにこの門が使われたこともある。
1939年のエノケンの鞍馬天狗は、喜劇王がお馴染みのヒーローを演じた、歌あり笑いありの明朗活劇。鞍馬天狗が新選組屯所に入り込み見つかって逃げ出すくだりで、天狗が走り出てくる門が島原大門。もちろん新選組隊士が追っかけてきて同じく門をくぐり、居合わせた角兵衛獅子の子らをつっ転ばして走り去る。杉作たちは哀れにもせっかく稼いだ銭を落としてしまい、そのことが天狗のおじちゃんと出会うきっかけになる。
この逃走劇は壬生寺からはじまるので設定は現地と思われるが、すぐあとに祇園の白川が出てきたりしているため、はっきりしたことはわからない。 上写真は大門前の駐車場の塀にあいた小窓から。遊び心が楽しい。 大門のほかに残るのは、揚屋の角屋と置屋の輪違屋。
京都市下京区西新屋敷 |