時代劇ロケ地探訪 旧地裁官舎

 京都地方裁判所長官舎が、このほど財務省に見直しを迫られ引っ越すことになった。すわ取り壊しかと気を揉んだがさすが京都、すぐ南にある平安女学院が買って現状のまま保存される運びとなり、まことにめでたい。
禁門ノ変でほとんどが丸焼けになってしまった公家屋敷の遺構が保存されるのは文化的にもたいへん意義のあることで、ここは旧有栖川宮家から移築した建造物も残る、貴重な遺産なのである。

長屋門 西から
長屋門 東から
長屋門 正面

 ロケに使われたのは、下立売通に面した南側の長屋門。すぐ東の京都御苑内にもそっくりな長屋門があるが、使われ方も似ている。使用例は古く、バンツマ映画と、モノクロのテレビ時代劇。

 大曽根辰夫監督の魔像(1952年松竹)では、神尾喬之介に付け狙われる御書院番衆が頼る、北辰一刀流・神保造酒道場として登場する。通りの向こうから撮ったのか、かなりロングの絵もある。神尾喬之介と茨右近はもちろん阪東妻三郎の二役で、晩年ながら力強い殺陣が見られる。

 栗塚旭主演の俺は用心棒「木屋町非情」では、京都西町奉行所の門。高杉晋作が市中に潜むとの情報がもたらされる場面で出てくる。立番の衛士のほか、前を通る行商人が演出されている。
同じく栗塚旭の新選組血風録「虎徹という名の剣」では、小石川試衛館の門として使われている。

琺瑯製の地名表示板 長屋門越しに御所望
烏丸下立売交差点から 烏丸通に面した青天門

 下写真は、青天門に新しく掛けられた看板。最初に記事を書いた時点では無かったもので、流麗な筆致が美しいので撮ってきた。
建礼門前にあった有栖川宮邸が移築され、ながらく法曹関係の用に供されたあと、平安女学院「有栖館」となった経緯が、門前のプレートに記されている。そこには、青天門脇にのぞく枝垂桜が、醍醐寺三宝院の桜の子孫と伝わる旨書かれているが、先頃の報道で、DNA鑑定の結果本当に醍醐の桜の直系だと確認されたと聞いた。こういう話題が夕方のテレビニュースになるあたり、いかにも京都らしい。

※参考・当サイト内視聴記
魔像 1952年松竹
雪之丞変化 復讐の舞 1954年東映
新選組血風録 第1話「虎徹という名の剣」 1965年NET/東映京都テレビプロ
俺は用心棒 第12話「木屋町非情」 1967年NET/東映京都テレビプロ

京都市上京区下立売烏丸西入五町目町


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