全国に数多ある若宮八幡宮と同じく、ここも仁徳帝をお祀りするやしろで、一帯の鎮守。すぐ傍にできた運動施設に詰め寄られつつあるものの、ほどよく茂った社叢を持つ、なかなかいい雰囲気のお宮さん。

入口の石灯籠 本殿

 村内の狭い路地に入口があり、鳥居をくぐったあとは南北に細長い参道が続く。処々に近代設備はあるものの、基本的にむかしの風情を保つ佇まいが、江戸期の下総取手宿の鎮守に擬されて使われた。

玉垣外から見た本殿

 作品は長谷川伸の名作・沓掛時次郎を、晩年の大川橋蔵が演じたテレビ時代劇。場面は、渡世の義理で六ツ田の三蔵を斬りにゆく前。
三蔵宅を見分してきた襲撃者たちは、一旦引き上げてきて近くの鎮守で夜を待つ。
導入は上写真と同じアングルで、時次郎が草鞋を脱いだ先の貸し元の乾分たちがわらわらと入ってくる。彼らは本殿前で刀を振るってみたり、柔軟運動をしてみたり、襷を掛け直したりと準備に余念が無い。

本殿脇から拝殿を見返る

 橋蔵演じる時次郎は、乾分たちのおさおさ怠り無いさまを見て相手の人数を問う。一人に四人掛かりと聞き不審を抱くが、関係ない・見ていればいいと言い放たれ鼻白む、その彼が凭れているのが本殿の階。
この間、カメラは回頭し拝殿の裏側を捉える。邪魔なら帰ると去りかける時次郎だが、居て貰わねば困ると引き止められる。そう発言した山本昌平演じる大野木の百助が、本殿の階で草鞋を締め直している。

拝殿正面

 一行が話しながらくぐって出てくるのは拝殿、ドラマではこの前に灯籠が多数あしらわれていた。拝殿はいわゆる割拝殿、本来左右対称のかたちで、劇中に見えるのもその通りなのだが、いまは建て替り写真の如く開口部が少し狭められた。また格子窓には、以前は葭簀が掛けられていた。

 ドラマにある通りのかつての拝殿は、こちらのサイトで窺い知ることができる。
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境内から見た木津堤 参道半ば、竹林が途切れたところからは木津川の堤が望まれる。この神社のロケ使用例は他に見当たらず、流れ橋使用時にたまたま起用されたものと思われるが、夜間撮影も行われていて、なかなか印象的なひとこまだった。
社地と田地の間の道路は22号八幡木津線。

竹林越し本殿 参道は楓などの樹々で、本殿まわりは竹林。よく手入れされた若竹が天を突き、やしろを外界と隔てている。
拝殿の篇額には「佃森」とある。鎮守の杜が永く保たれることを願わずにいられない。

京都府八幡市野尻

*参考 →大川橋蔵版沓掛時次郎視聴記


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