時代劇の風景  ロケ地探訪

大覚寺

− 明智門 −

明智門 明智門から明智陣屋

 大覚寺の二つ並んである門のうち向かって左の白い門が明智門である。重厚な漆喰塗籠造で、海鼠壁が印象的。大門は一般拝観受付の門で、明智門は写経等宗教施設としての大覚寺の門となっている。
この門は必殺仕事人などの必殺シリーズにおいて南町奉行所としてよく用いられ、中村主水が出たり入ったりしている馴染みの深い門である。大門とは異なった印象から、各奉行所のほか火盗改役宅、小伝馬町の牢屋敷、各地の代官所および陣屋などによく使われる。
よく似たセットが使われている場合も多いが、識別ポイントは門からのぞく明智陣屋である。

 必殺商売人「裏口を憎む男にない明日」では新規採用の同心の合否が塀に張り出された。
翔べ!必殺うらごろし「赤い雪を降らせる怨みの泣き声」では諸大名の注文引きも切らぬ名陶・陶夢斎邸として使われ、ごった返す門前で走り役の正八が騙りを働こうとする。同「足の文字は生まれた時からあった」では郡代陣屋として使われ、足裏に死児の名前が浮かび上がる不思議を持つ少女が解き放ちになるのをうら殺しチームの面々が門前で待っているシーンが撮られた。同「童が近づくと殺人者が判る」では漆ケ原代官所として使われた。
長七郎江戸日記「風流献上鷹始末」では、逃げた筈の献上の御鷹が何故か長七郎の寄宿先に置いてあるのを運ぶ長さんと辰三郎が門前を通過してゆく。同「大江戸哀歌」では火盗改役宅として使われ、門前で同心と目明しがひそひそと密談している。
三匹が斬る!「信玄の亡霊見たかおしゃれ鳥」では赤目代官所として使われ、実は信玄の隠し金を狙う大ワルの代官に騙された千石が用心棒をしている。
江戸中町奉行所「私怨無用の闇始末」でも南町奉行所として使われる。最終回において中町解散後元の職場に復帰してゆく闇裁きチームの姿が描かれるが、水流添我童の戻ってゆく南町が明智門で、木暮楽太郎が戻ってゆく北町奉行所が山科随心院長屋門となっていて対比が面白い。
幕府お耳役檜十三郎「大名馬鹿、罠にかかった六万石」では転封を繰り返し利益を貪る大名とそれを操る幕閣の陰謀に関わった男が改心し離脱を申し出に赴く唐津藩下屋敷に使われた。
炎の奉行大岡越前守では吉良さまに次々難題を吹っかけられあたふたと藩士が出入りする赤穂藩上屋敷に使われた。
京極夏彦「怪」の「隠神たぬき」では準レギュラーとしていい味を出している乾同心が入ってゆく京都西町奉行所であった。

御殿川の中から明智門を眺める
 雲霧仁左衛門[山崎努版]「最後の大仕事」では小伝馬町の牢として使われ、雲霧のおかしらの身代わりとして自ら捕えられた実兄・蔵之助が搬送される唐丸駕籠に「おかしら!」と叫んで走り寄る因果小僧六之助のシーンが明智門の前で撮られた。彼の意図は捕えた蔵之助が真実雲霧の首魁か否か判じかねている火盗改の疑義を払拭せんがためであった。このあと六之助は斬首されることになる。それを覚悟の上で最後に見せた雲霧への忠誠心が泣かせる名シーンであった。
新必殺仕置人「訴訟無用」では御馴染みの南町奉行所であるが、明智門付近でドラマが進行する。訴状をナイナイして貰う際のやりとりが門前の御殿川べりで行われ、この訴状操作につけこんで悪事を働く公事師の手先を鉄チームの走り役・正八が尾行するのだが、参道をゆくそれを見張る正八は堀の中をゆき上写真の個所からひょこっと顔を出すシーンがコミカルに描かれている。
■ 大覚寺 表紙

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