時代劇の風景  ロケ地探訪

大覚寺

− 宸殿とその周辺 −

宸殿(東から) 宸殿前白州 宸殿広縁
宸殿の蔀戸 右近の橘 宸殿(西から)

 宸殿は後水尾帝より下賜された寝殿造の広大な建物で、二台将軍秀忠の娘・東福門院が女御御所として使ったものである。廊下・広縁ともうぐいす張りとなっている。蔀戸や、御所と同じく左近の桜・右近の橘が植えられているあたりに王朝の名残がうかがえる。南には広大な白州が広がる。

 必殺!主水死すでは大奥に招かれ将軍家定の似姿を描く北斎、のくだりは宸殿白州で撮られた。この後北斎は密殺され陰謀の匂いが漂う。
鬼平犯科帳7「男のまごころ」では功を焦って問題を起した火盗改同心の件で自らの処分を拝しに登城する長谷川平蔵のシーンが宸殿である。
炎の奉行大岡越前守では尾張藩上屋敷として使われ、藩主吉道が近衛と会談中血を吐いて絶命する場面は宸殿の広縁だった。
剣客商売[藤田・渡部版]「父と子と」では田沼意次の浜町中屋敷で開かれた剣術の試合で七人抜きをする秋山大治郎の姿が宸殿前白州で撮られた。同話後段で田沼の娘・三冬が結婚を賭けて旗本の軟弱息子と試合うのも同じである。同「老虎」で息子を謀殺された老剣客が試合の形で仇をとるのも同じ場所だった。
壬生義士伝では新撰組屯所として使われ、隊士の調練が白州で行われ、入隊試験や隊規違反の隊士の斬首などが宸殿広縁前で執行される。隊幹部が見分に座っているのは広縁で、検屍が行われている背後に右近の橘が映っていたりする。
陰陽師安部晴明「王都最大の危機」では陰陽祭の行われる御所清涼殿として使われ、CGを駆使した派手な画に仕上がっている。

回廊 正寝殿 渡殿
五大堂(東から) 五大堂(大沢池東岸から) 五大堂観月台から大沢池

 大覚寺の建物は優美な渡り廊下でつながれている。今はほぼ失われてしまった平安貴族の館を偲ばせる「むらさめの廊」は、宸殿と同じくうぐいす張り。宸殿北側にある正寝殿の開いた戸から垣間見えているのはこの寺にわんさかある狩野派の障壁画のひとつ。
宸殿の東には大覚寺本堂となる五大堂があり、江戸期の建築。五大明王を祀り、堂内からは読経の声が響く。この堂の東側には有栖川に張り出して作られた「観月台」があり、大沢池の眺望が素晴らしい。

 五大堂の使用例は江戸中町奉行所「禁断の愛に泣く女」での闇裁きチームの一員・お篠が朝倉藩の殿様と涙の別れをするシーン、同「我楽多たちの最後の賭け!」での中町奉行所の存続賭け丹羽遠江守(丹哲)が老中を呼び止める江戸城お廊下のシーンなどがある。
五大堂観月台の例には炎の奉行大岡越前守での隅田川御殿に擬しての使用がある。将軍吉宗が臨席しての水練視察の会場となり、泳ぎ手は大沢池の中に入らされている。観月台には幔幕を巡らせ豪華に飾り立ててある。陰陽師安部晴明では御所昭陽舎で開かれた観桜の舞台として使われ、先の水練視察会場とは趣の異なる装飾が施されている。

■ 大覚寺 表紙

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