放生池でよく使われるのはなんといっても堤である。形が面白く、よく画面に映える。
使われ方はさまざまで、そのまんまの道筋や各街道筋のほか、縁日や茶屋をセットしてある例もある。上野不忍池に擬されることも多い。
少しカメラを引いて人物の動線を追う画もよく撮られる。主人公が情感たっぷりに歩くかと思えば、走り役の役者さんが裾をからげて走り抜ける。
また、ラストの旅立ちを見送るというよくあるシチュエーションでも多用される。また、左右から来て堤上でツナギ、待ち合わせなどにも使われる。
鬼平犯科帳「引き込み女」では密偵のおまさが偶然出会った今ばたらきの引き込み女と再会を期して別れるシーンに使われた。同「用心棒」では見掛け倒しの用心棒・高木軍兵衛がいい仲になった勤務先の女中と参詣の帰途に通る。同「隠し子」では不忍池のほとりを歩きながら長谷川平蔵とおまさが捕物の相談をしている。同「浮世の顔」では友人を見舞った帰りの鬼平が若い娘に悪さをする浪人たちを見て慌てて駆け出す。同「鬼火」では彦十と平蔵がツナギを取っている。
斬り抜ける「女が道を変えるとき」では街道筋で一人でいる若君を拾い上げる弥吉のシーンに堤が効果的に使われた(水面はほとんど映っていない)。暴れん坊将軍では新さんが人質の子供を助けに赴く(主役だから走らない)シーンや材木高騰の理由を聞いたりしている。長七郎江戸日記では懲りない女金貸しに長さんがくだくだとお説教を垂れていたり、密偵の六さんに情報を聞いたりしている。神谷玄次郎捕物控では銀蔵親分の報告を聞く神谷のシーンでよく使われている。八丁堀捕物ばなしでは屋台をセットして縁日の風景が演出されたり、堤上をじゃれながら行く同心たちの姿が見られる。
江戸中町奉行所「死を待つ男の危険な賭け」では商家を強請っていた南町同心が遂に拉致されてしまうが、堤上をゆく駕籠から逃げた同心が池に落ちて逃れ、大沢池流出口に架かる橋の下に潜みやり過ごすというシーンが撮られている。
この作品では大沢池畔がかつて草深かったことを示すよい例がある。「大奥に棲む魔物」で、事件が解決したあと闇裁きの面々が談笑している席に一人いない水流添我童が「魚と遊んでるんだろう」と揶揄されるが、切り替わった本当に釣りをしている水流添のシーンが放生池堤上で、汀には草が茂り放題、水面をびっしり睡蓮が覆う。
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