時代劇の風景  ロケ地探訪

山科随心院

− 門と路地 −


■ 参道

総門から続く参道 参道北側の塀

 総門から境内に入る参道の両脇には、サツキの植え込みが続く。
大刈り込みの右手には広大な梅林があり、遅咲きの紅梅が咲く頃、はねず踊りが行われる。
この参道は、薬医門から出た駕籠行列が角を曲がってくる、などという場面によく使用される。
 必殺仕掛人「理想に仕掛けろ」では、陽天塾へ走る火盗改の人数が走る。
必殺スペシャル 仕事人VS仕事人では、次期大老職をめぐる陰謀に巻き込まれた若侍の悲劇が描かれるが、彼が近習頭に取り立てられて喜び勇んで帰宅する路地、および暗殺されてしまう帰宅途中の路地がここである。彼は主水の若き日の恋人(池内淳子)の一人息子で、この悲劇のあと母は殺し屋・松風の佐和に立ち戻り、主水と共にワルに仕掛けることとなる。
炎の奉行 大岡越前守では、実家の兄が八丈送りと聞いた幼い市十郎(忠相の幼名)が駆けつける道として使われた。


■ 通用門

拝観入口 通用門を北から

 参道をゆくと、五本線のクリーム色の塀の端に、拝観入口となる簡素な通用門がある。ゆるいスロープがついていて、この段をうまく使う例もある。
 江戸を斬る 梓右近隠密帳「凧々あがれ」では、薪に隠してクーデタの軍資金となる金塊を運び込む松山藩邸の通用門として使われた。
剣客商売「御老中暗殺」では、一橋家の密名を受けて田沼意次暗殺をはかる飯田平助を尾行する弥七親分の姿が、スロープ脇の段にある。
深作欣二監督の阿部一族では、下城する弥一右衛門のくだりや、長男の斬罪を知らせに走る末弟のシーン、阿部一族討伐の軍勢がゆくシーンなどに、通用門付近の塀が使われている。設定は熊本城下、阿部の山崎屋敷近く。


■ 薬医門

 大玄関に通じる薬医門は、大名屋敷や大身旗本邸という設定でよく使われる。広角で撮られた門に「○○家上屋敷」などというテロップが入ったりする。
昔から山ほどのドラマで使われた門で、両に築地を見せた重厚な作りは、なるほどお屋敷に相応しい風格である。
 使用例を拾ってみると、老中土井利勝邸、柳生藩江戸屋敷、田沼意次上屋敷、水戸藩邸、紀州上屋敷、尾張下屋敷、などがずらずらと出てくる。役者さんの映らない、イメージに使われることもある。

薬医門

 必殺仕置人「塀に書かれた恨みの文字」は、辻斬りが趣味の馬鹿殿を仕置人たちが散々に嬲る話だが、ズタボロの大童となってよたよた上屋敷に辿りついたその馬鹿殿は、鼻先で門を閉められ、家老に殿は病死して跡継ぎも決まったと冷たく言い渡される。この壮絶なさまが長い尺をとって描写されていて、必死でがんがん門を叩く殿様には隠居が勧められるのだった。
必殺仕事人・激突!「主水、幕府のクーデターに巻き込まれる」では、改革派の雄の大老・後藤備前守邸として使われ、警備兵が物々しく門前を固めるシーンが撮られた。
剣客商売(藤田版)では、三冬の父・田沼意次の上屋敷として設定され、シリーズを通して使われる。

薬医門前広場 (北望) 薬医門塀際 (北望)

 薬医門前から参道のほうを眺めると、塔頭の白い塀が奥に見え、左手には薬医門続きの重厚な高い塀が続く。
このアングルで、塔頭前あたりで行われている大立ち回りを映す例もある。
 風の新十郎の活躍を描く痛快劇・で何度か使われているが、塀は今のようにきれいでなく、ところどころ漆喰が剥落しているのが見られる。は1960年代のモノクロ作品で、壁の陰翳がカラー作品よりかえって美しかったりする。


■ 長屋門

 長屋門は参道からまっすぐの北面にあり、腰板と漆喰壁がコントラストを見せている。
ここは薬医門とは異なり、町道場や本陣、奉行所などに使われるスポットである。

長屋門 東から 長屋門 西から

 新必殺からくり人では、庄野本陣として、江戸中町奉行所では木暮楽太郎が復する北町奉行所として、必殺スペシャル「勢ぞろい仕事人・春雨じゃ悪人退治」では千葉周作道場として使われた。
 八丁堀捕物ばなし2「初恋」では、殺人犯として捕らえられた女(岸田今日子)が「おやっさん」江藤十兵衛の初恋の人だった、という哀話で、いかりや長介演じる江藤同心の回想する、菊枝の嫁入りの下谷練塀小路の旗本屋敷として使われた。
2002年に撮られた赤ひげでは、松平壱岐守邸へ往診し、飽食を戒めて帰る新出去定の姿が見られる。
吉右衛門が大石内蔵之助を演じた忠臣蔵 決断の時では、赤穂の大石邸。

長屋門前から参道を見返る 大乗院塀際から長屋門
大乗院内から長屋門を望む 墓地から長屋門への路地

 では、後継争い深刻な道場だったり、水野老中配下のくの一・かがりが敵の忍者を尾行する武家屋敷街だったりする。この際、忍者たちは大乗院の中へ塀を乗り越えて入ったりしている。その塔頭から長屋門を眺めるかたちもある。

長屋門内側 左写真は、長屋門を内側から見たもの。名の通り、左右に小さな部屋がしつらえてある。
 御家人斬九郎2「仕官の罠」は、斬九郎に来た仕官話が大騙りで、身持ちのわるい城代家老のどら息子のかわりに切腹させられかかるという話。麻佐女さまがご馳走をよばれ支度金を貰いご機嫌で大田原藩邸から帰る姿が門前に見られるほか、切腹の場から逃げ出す斬九郎の殺陣が、門の内外を使って繰り広げられる。


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