時代劇ロケ地探訪 本堂と開山堂の間には谷があり、洗玉澗と称される。ここに架かるのが通天橋で、開山堂へ通う僧のために作られたともいう。三の橋川が刻む深い谷は楓で埋め尽くされ、紅葉期にはどっと人がおしかける。
ジプシーキングスのギター曲にのせて情緒たっぷりに日本の四季が映し出される鬼平犯科帳エンディング、秋の一景は通天橋。西側から見た橋に、もみじ狩りの江戸市民をあしらってある。
通天橋の真ん中あたりにはバルコニーが設けられていて、鬼平のエンディングもここを大写しにしている。禅刹らしくいかめしい色目の橋と、鮮やかな紅葉のコントラストが美しい。また、よく見ると微妙に黄葉や緑も混じり、リズミカルな美を醸し出している。
紅葉期ばかりでなく青葉の候も美しいほか、木々が葉を落しきった真冬には橋の構造がはっきり眺められて良い。
橋上を使う際の設定は、江戸城内が多い。政務の場のほか、大奥にも使われる。大覚寺や粟生光明寺の回廊とは一味違う雄渾な形状は、お城の廊下に相応しい風格。江戸城設定では、2000年代に撮られたフジの大奥シリーズに多用された。古くは工藤栄一監督の大殺陣で上野寛永寺として出てくるが、シチュエーションは城内と似通ったものである。
洗玉澗が使われることもある。俺は用心棒「真葛ヶ原にて待つ」では、顔が桂小五郎と似ていて見廻組に斬られてしまう地方役人の話に京都・清水寺境内として出てくる。 臥雲橋は塔頭建ち並ぶ路地に架かる、三橋中もっとも下手にある橋。規模こそ小さいものの、通天橋と同じ屋形つき。通行が自由なので抜け道として重宝され、散歩の人も多い。鬼平EDの情景はここから手軽に眺められる。 臥雲橋がドラマに登場するのは大川橋蔵の銭形平次、市中の情景として用いられる。車止めもそのまま映り込み、橋の構造材とともに面白いシルエットを見せている。
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